LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU 作:RASっさん
ステージからの景色…たくさん見てきたが、これほど綺麗と思ったことはない。夕日も沈みかけているにも関わらず、会場が熱い熱気に包まれいる。
ここに来ているファン、それが俺たち目当てか、
「ハァ…ハァ…ハァ……っ!」
全力で声も出したから息が長く持たない。次の曲まで時間は無いから、早く立ち直さないといけない。
だが何とかなる…次も、その次も最高のライブができる自信があった。
それほど、今の俺たちは神がかっている。会場の熱気を直に感じ、無限に等しい活力が湧き上がってくる気分だ。
想いが一つに重なり合った結果生み出された音楽は爆発し、見事にここにいる全ての人を巻き込んだカオス空間を形成していた。
それだけではない…
全く違う系統、目的のはずなのに、実際合わさるとここまで調和して盛り上がるのか。
それを客席の雄叫びと腹からの歓声で実感しながら、俺はライブの手を止めない。この瞬間を逃したくない…もっとこの情熱的な、享楽と狂乱な時間に浸かりたい。
このライブを、このまま終わらせたくない。
心に焼き付けるような、そんな曲を歌いたい。
「おいおい、客席や画面越しのてめーら!俺らのライブをもっと感じろ!そして身も心も灰になるまで燃え上がれ!」
「
「この感じぃ…最っこうに輝いてるじゃない!」
「ふっふっふ…皆さんかすみんに夢中ですぅ…も〜っとかすみんのこと見てもいいんですよぉ?」
「でも、掛け声は私たちの方が多かったわ…これも、天才美少女の
「んなあぁぁ!?聞き捨てなりません、かすみんの方がかわいいですぅ〜!…皆さんも一緒にライブ、もっと盛り上げますよぉ!」
「喧しい犬の2人は放っておいて…でも、悪くないですね。今回は群衆を上手く焚きつけてます」
「「誰が喧しい犬よ(ですか)!!」」
「あら、それって私たちに魅了されているの間違いじゃない? このまま、
「…笑えない冗談ですね、朝香さん。安い挑発なら痛い目見てもらいますけど、良いですね?」
「望むところ…このライブで勝負よ!」
「
「大丈夫、
「璃奈ちゃん…うん!それに、こんな風にみんなと一緒にライブするのは楽しいんだ〜」
みんな、各々の自分を表に曝け出している。時には純粋にこのライブを楽しみ、時にはライバルと情熱の火を燃やし、時には真っ直ぐに自分の気持ちを歌にして伝える。
あぁ、こんな感覚に陥るのはいつぶりか…もしかして初めてかもしれない。
ステージ上から映るこの景色…虹のように広がるペンライトを目にした瞬間、心が熱くなる。
鼓動が今までにないほど大きくなっており、興奮の熱が冷めやまない。
それは、何処か自分が忘れていたことを思い出せそうで──
『LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU』
ガヤガヤと教室から音がし始める。同時に耳に入ってくる椅子や机の音で、俺の意識が一気に現実に戻って来た。
学校のチャイムと脳が認識した時には、6時限目のが終わりみんな解散しているところだった。
「……んあ?」
それじゃあ、今までのは…何だ、夢かよ。それにしては、やけに現実味のある夢だ。
もうあんまり内容は覚えてないけど…とにかく体がふわふわしているのが印象に残った。所詮、夢だけど。
それよりしまった、完全に授業を寝過ごしたか。まぁ、運がいいことに席は一番後ろだから心配ないけど…
入学して数週間で早速寝落ちはどうかと咎められるかもしれないが、春の眠気に勝てる生物なんて真面目かバカしかいないので、俺みたいな平凡一般人には抗えないってことだな。
4月…それは新しい学校への期待、不安が込められたひと月だと考える。
高校生という大人と子供、規律と自由の中間に位置する年齢で、どうやって学校に生き残れるかが鬼門だ。
そして自分にとっても苦境だ。単に確定した面倒ごと以外に遭遇したくないのが一つの理由。
そしてもう一つは、この学校の特色である、極端な男女比が原因だ。
虹ヶ咲学園…東京お台場に堂々と構えるこの学校は自由な校風と、多様な専攻で人気を博していた。
そんな学校が近年、共学化したのだ。今年も全校生徒の男女比が2:8と圧倒的に女子の数が多い。
そのせいか、このクラスにいる男子は10人もいない。幸い、男女間での距離感はそこまで悪いことはなく、部活も共同しているところ、別々のところさまざまだ。上手く共存できている…この学校の校風に適応できていた。
別に居づらくは無いが、俺は人付き合いが苦手だ。クラスメイトと話すことはあれど、必要最低限にすぎず何処かぎこちなく感じてしまう。
まぁ、ごく一部の奴らとなら話せるんだけど。
「…長文の独り言気持ち悪いですね。キャンキャン娘の癖でも移りましたか?」
「吹き出しもないのに声に出てるわけ…え?出てた?俺が学校の一匹狼ってのがバレた?」
「1人でいる時点でおおよそ察せます。それに正しくは孤独の畜生にですね…あぁ、人間やめたのですか。おめでとうございます」
「一生やめるかっての…はぁ…」
例えばこの毒舌女。ベージュ色のミディアムヘアーを揺らし、お淑やかそうに振る舞っているが、口から出る言葉は一に罵倒、二に罵倒、最後にも皮肉混じりの罵倒で締め括られる。
会話を交わせば心に傷がつく…そんな強烈なキャラのこいつは
この学校に俺と同じく通うことになった1年あり、中学からの腐れ縁だ。
どうやら彼女は授業が終わって俺の方まで来たようだ…そして俺の現状を見て察したのだろう…流石の洞察力だな。
「お前こそ良く起きていられるよな。歴史とか古文とか誰得なんだか」
「言語の類いを嫌っている時点で人間ではありませんね。そのまま節足動物でいるのも烏滸がましいのでは?」
「あー、授業中だけみじんこにでもなれるなら悪くないかもな…」
こんな風に、彼女の言葉の攻撃を防ぐには一定のメンタルと慣れが必要になる…ただの会話に何で必要になるんだか。それほど彼女の性格は難ありってことだ。
でも、慣れてしまえばどうって事ない。一種のコミュニケーションだなぁって感じるのだ。
それに、彼女の言葉の裏腹に含まれるのは普通の優しい少女…かもしれない。
「そういうお前はどうなんだよ。ここに直ぐ来ているあたり、ダチはできてないんじゃないのか?」
「下等生物と触れ合う趣味でもあるんですか?」
「この学園が下等ならもう全部の学校が生きる価値ないみたいじゃねぇか」
「そうですが何か?」
「……」
一応、彼女の言う下等生物は「格好も話すことも同じ無個性の集団」であって、流石にこの自由で個性あふれる学校の生徒らではない。
まあ、要するにこいつも友達はあまりできてないんだな。自分から作るタイプでもないだろうし。
「流石にここの生徒は個性もあるだろうよ」
「どうでしょうね…キャンキャン娘にな比べれば落ち着いているのは良いですが」
「さりげなく自分の親友を貶すね…」
彼女は…彼女も今年から虹ヶ咲学園の生徒になった。まぁ、なってしまったって言い方が正しいかもしれない。
元より、こんな自由でイベント盛りだくさんの学校には来たくないのが本音だ。
そういった面倒ごとはなるべく避けたいのは俺たち2人同じ認識であった。
だが、もう1人の友達…そいつの我儘に連れられてここに転がり込んでしまったのである。
「それで、そのキャンキャン娘は何処にいるんだよ」
「無駄に忙しないですからね…アオトのところへ向かったのではないかと私はここに来たのです」
「なるほど…あいつのことだし、迷ったんだろ。その証拠にほら、来たぞ」
「やっと見つけたわ!アオ、エモコ!」
噂をすれば…扉が大きく開かれて叫ぶ声に俺らは無言で耳を押さえる。
ボーカル担当だからか毎回、声量をミスってるんだよ、全く…
薄く紫に染めた髪をピンクのシュシュで纏めた、如何にも世の流行に寄り添っている彼女の名前は
エモコから「キャンキャン娘」と命名されているこいつも性格がエモコに負けじと濃いのだが…それはまた今度。
最後に遅れてきた彼女はそのまま俺たちの席にやってきた。
「ここって本当に広いわよね…おかげでここに来るのも手間取っちゃったわよ」
「フっ…授業終わって早々教室を出たのに、どれだけ迷ってるんです? 頭の中スポンジですか?」
「だから広かったから迷ったって言ってるでしょうが!?」
…あぁ、でも加えて一つ。こいつとエモコが一緒にいるとコントレベルの罵詈雑言が飛び交う。その惨状はもう、言葉の戦場に思わず頭痛が襲いかかってくるレベルである。
これでもこの2人、すごく仲がいいなんて見ている他からは思われないだろうなぁ…
「ほら、食堂に行くわ。そこでバンドの作戦会議よ!」
「設立もしていないのに1人で空想に浸るのは飽き飽きなのですが」
「うっさいエモコ!申請書は出したって何度も言ってるでしょ?良いから行く!…ほら、アオも早く来ないと置いて行くわよ!」
「へいへい…」
いつの間にか扉まで向かっていた2人を追うため、俺は急いで荷物を片付け始めた。
行動力が早いことで…だからせっかちが目立つんだよなぁ、はぁ…
そう言えば忘れていた。俺たちのここにきた理由。
ギター&ボーカルの九条ウメ、ベース&ボーカルの鰐淵エモコ…そして俺、
俺たちは
だけどこの時、俺は知らなかった。
まさかこの学園での生活がほんの物語の前座に過ぎないと。
…第一話なのにラブライブキャラが殆ど出てこない、だと!?