LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU   作:RASっさん

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やっと虹ヶ咲が1人登場するぜぇ!

アオト「…1人だけ?」


二話 スタートラインにも立てていない

 俺たちはここでロックバンドを始める……とは豪語したのの、掲げているゴールの見えない目標に実際不安でしかなかった。

 

 第一、この学校にはロックなんて文化は1つも存在していない。

 ロック研究会みたいなのならあるかもしれないけど、少なくともここでロックを始めているJKはいなかったのだ。

 

 前例がない、と言う意味では部活の申請から始まるのだが、1年だけでそれが通るかと言われると…何とも言えないな。たった3人で始められるかも問題に上がる。

 

 なので、今日もここの食堂に集まっては、ラテやらコーヒーやら飲みながら駄弁っている。実際、ウメの申請待ちだからな。

 ここの食堂、大抵のものは何でもある上に数百人は入るキャパシティだから憩いの場にもなってるんだよな。他にも異常に広い外庭や屋上など挙げられるけど、俺らはここを拠点にしている。

 

 その一角のカフェで頼んだラテをちょびちょび飲む。甘さは控えめだけど、これがちょうどいい。

 ウメたちに目を戻すと、彼女は七色が混じったカラフルなフラペチーノを口にしていた。が、いろんな色がぐちゃぐちゃになっていてグロいことになっているな…

 

 

「ウメ、それ美味いのか?色がとんでもないことになってるぞ」

「レインボーなんだから当然でしょ。それよりバンドよバンド!」

「同じ言葉の繰り返しは飽きました…安物のプログラムですか」

 

 

 尚、そうトゲを指すエモコは無難にコーヒーを頼んでいる。ブラックとか、少しは甘味欲しくないのか…?

 

 

「てか、本当に申請書出したのか?その時点で不安しかないんだが……」

「当たり前でしょ?私を何だと思ってるのよ」

 

 

 ズズズ……とフラペチーノに口をとんがらせるウメに、俺はエモコと揃って目を細める…自覚ないのか?

 

 こいつの当たり前は高確率で失敗、或いはとんでもないミスをやらかしているからな。

 中学でも受験の願書を進路表と間違えてたし…入学早々、自分の学科とクラス間違えてたし…

 

 

「全員の名前書いたか?部活名は書いたか?ちゃんと委員長に渡したか?」

「雑草にでも書いてませんか?貧相な語彙力で平気ですか?爆せますか?」

「2人揃って本当に何だと思ってるのよ!!……あとエモコ、殴られたいの?」

 

 

 でも実際、本気でやらかしかねないからなぁ…

 

 薄々感じているだろうが、ウメは感覚派だ。頭が悪いわけではないが、物事をフィーリングで決めていくタイプなせいで毎回突拍子もない行動をするのだ。

 それに当たって、行き当たりばったりだし周りも彼女に振り回されている。

 

 

「そもそも、ここを選んだ理由が校則ゆるいし近いからだし……」

「単細胞にしてはよく考えた方でしょう。彼女の放牧したいい結果を得られましたし…それに従うのは2度とごめんですけど」

「わ、悪かったわよ!でも他の学校はピンと来なかったし、仕方がないでしょ」

 

 

 この学校もウメのセンサーに引っかかったから選ばれたのだ。キャッチフレーズが「自由」「多様」で、そこに惹かれたのだろう。

 

 他にも、彼女のヤベー前科を挙げればキリがないほどこの女は暴走している。

 キャラが露出する前は心優しい子だったのに、何処で道を間違えたのやら…

 

 …それほど、彼女の性格が急変する出来事はあったんだけど。

 

 そのままジャブ…猫パンチを始めるウメとゆっくり立ち上がるエモコを眺めていると、校内放送が流れ始めた。この放送で2人の喧騒止めてくれね?

 

 

『…七咲逢音さん、七咲逢音さん…至急、生徒会室に来てください、繰り返しま──』

「は?」

 

 

 今、間違いなく俺の名前呼んだよね?もう一度放送を聞いてみると、案の定。

 

 繰り返される「七咲逢音」の名前に俺だけでなくウメもエモコも手を止める。

 確かに放送には頼んだけどそういうことじゃねーよ!!

 

 えっ……というか俺、何かしたか?

 

 

「あれれ〜、アオったら悪いことしちゃったの?いっけないんだぁー!」

「遂に贖罪の時ですか。骨くらいは拾ってあげ…汚いですね、やっぱり取り消しで」

「お前ら好き勝手言いやがるな…」

 

 

 他人事かのように…しかも遠慮なく煽るな、こいつら…

 でも、俺も本当に心当たりがない。出し忘れとか特にしていないと思うんだけどな。

 

 まぁ、行ってみればわかることだし。残りのラテを飲み干して席を立つ。

 

 

「取り敢えず行ってくるわ。2人はここで待っててくれ」

「行ってら〜……早く戻ってきなさいよ?」

「へいへい」

 

 

 楽器を背中に背負って俺は2人と別れた。まぁ、あいつらならバンドのことで適当に時間潰してくれるだろう。

 喧嘩はしても、話は合う不思議な関係で成り立ってるし。

 

 長い廊下を進んで目的地へと向かう。でかい校舎だから、油断していたら迷いそうだな…ウメのことも言えなくなる。

 

 

「はぁ…何で俺が行くことになったんだか……」

 

 

 そんな訳で、この長い道のりを徒歩なわけだが。

 生徒会室まで足を進めながら、原因はなにか考える。

 

 別にこれといった問題は起こしてない……他生徒とのトラブルも無いし、そもそも関わりが薄すぎる。

 となると、俺の成績…は、まだ1ヶ月も経ってないのに突っ込まれる訳ない。

 

 となると…バンドのことか?でもそれなら申請書を出したウメが呼ばれるはずだよな?

 

 うーん、本当に何で俺が呼ばれるのか……

 

 

「きゃっ!」

「おっと……」

 

 

 っと、気を取られていたのがいけなかったか。十字路で生徒とぶつかってしまった。

 同時に彼女の手元にあった書類も散乱する事態に……やっべ。

 

 少し考えに飲み込まれていた事に反省しつつ、彼女が落としてしまった書類を拾い集めた。

 

 

「悪い…じゃなくて、大丈夫ですか?」

「は、はい…私も不注意でしたので…」

 

 

 ぶつかったのは両肩に下がる黒い三つ編みと白渕の眼鏡が特徴的な女子生徒だ。

 委員長みたいなイメージを感じさせるな。彼女の方が仰け反ったのは身長差もあったからか。

 

 それに、リボンの色が赤色だ…ここの1年って事か。この学園の学年の区別は男はネクタイ、女はリボンの色で分けられるからな。

 俺たち1年は赤色が目印となる…ってことは同級生のはずなんだよな。

 

 でも、佇まいというか、雰囲気というか…どこか大人びていてこっちも変な敬語になってしまった。

 

 

「はい、これ落としてましたよ」

「ありがとうございます、七咲さん」

 

 

 全ての書類を拾い集め、彼女に渡す。ふぅ、大事に至らなくてよかった…そのまま生徒会室に行くとするか。

 

 ……ん?

 

 今、彼女はなんて?

 

 

「え──っと…何処かで会いました?」

「え……クラスメイトですよ?」

 

 

 思わず聞き返したことで今度は彼女に驚かれた。

 てかクラスメイト?あんまり見覚えないな…ってか、自分のクラスの生徒の顔全然思い出せない。

 

 自分の人付き合いを見直すべきかもしれない。これじゃあ、エモコを揶揄うこともできない立場だな…

 

 そんなことを考えていると目の前の彼女はため息をつきながら眼鏡をクイっと上げた。

 

 

「七咲さんと同じ普通科の中川奈々です……あなたの1つ前の席ですよ?」

「……?」

 

 

 若干、眉をひくつかせている彼女の苗字を思い返す。中川……中川奈々……そういえば、前に座ってたか?

 確かに俺の前の座席の生徒が背筋も伸ばして真摯に授業を受けていたな。

 

 お陰で俺の居眠りも滅多にバレることがない。今までの快適な学校生活は彼女あってのことってわけだ。

 

 なるほど、そんな有難い生徒を忘れるのも失礼だな。

 

 

「…そういえば居たな。いつもお世話になってます」

「はぁ……七咲さん、授業中に睡眠ばかりしていると後々の試験や成績に響きます。今すぐ授業への姿勢を改めて──」

「えー……」

 

 

 まずいな…地雷を踏んだか、なんか説教パターンに入った。

 てか寝てることバレてら。我なりに完璧な熟睡だったはずなのに。いや、委員長タイプだから周囲の状況もよく見ているのかもしれない。

 

 くどくど言葉を並べる彼女との出会いに後悔し始めた時、そういえばとここにいる目的を思い出した。

 

 即ち……ここから逃げちゃおう!幸い、それなりの理由もあるし!

 

 

「あー……俺、生徒会室に用あるので、それじゃ!また今度何処かで〜」

「あ!待ちなさい!そもそも廊下走らない!」

 

 

 …一応、早歩きに戻しつつその場を去ろうとしたが、背中に中川がピッタリ張り付いてついてきていた。

 これは予想外…てか、委員長も意外と早いな。こっちは体格差による歩幅で有利なはずなのに。

 

 というか、ここまできて説教を受けるのはどうも気に食わない。実質初対面の彼女から小言を受ける理由まではないと思うのだ。

 

 

「あーもう!少しくらい授業中に寝てもいいじゃねぇか!ずっと集中なんてできないだろ」

「七咲さんこの前4限目からずっと寝てましたよね?しかも予鈴も全て通してですよ!」

「よっぽど先生の子守唄が快適だったんだろうよ。そもそも、授業妨害もしてないんだし放っておいてくれよ」

「私が被害に遭ってます!」

 

 

 中川本人が?自分を強調しながら力強く発した彼女に思わず後ろを振り向いた。

 

 表情は崩していないものの、その額には青筋がくっきり見えた気がした。

 

 

「いつも後ろで寝息を立てて、時より寝言で『()()』とか『()()()』とか呟いていますよ!」

「え゛……マジで?」

「マジです!他の人には聞こえていないようですけれど、前に座る私からしては迷惑もいいところですからね!」

「…だが睡魔には勝てない…それが宇宙の真理だ!」

「勝手に宇宙のせいにしないでください!」

 

 

 割と迷惑かけていたのだと発覚した。俺、そんなに寝言を吐いていたのか。

 そういえば今日も夢見ていたし、もしかすると彼女はずっと俺の寝言を聞いてきたのか?

 

 にしても面倒な…いや、俺の自業自得なのは確かだけど。苦手なタイプにロックオンされたみたいで困った。これ、素直に謝るべきか…?

 

 ……いや、でも俺の睡眠が阻害されるのはもっと嫌だな!やっぱり3大欲求の睡魔様には勝てん運命だ。

 そのまま彼女の小言をスルー&言い訳をしつつ、足を止めない。こいつ、一体どこまでついてくる気なんだ?

 

 遂には生徒会室まで一緒に向かってしまった。勢いよく扉を開けて部屋に突入する。

 

 

「「失礼します!」」

「お、おぉぅ…どうぞ〜」

 

 

 ……ペンを片手に持った生徒会長らしき人が俺たちに若干引いていたが、俺たちはというと息を整えるので精一杯だった。

 

 ノンストップで力みながら歩いてきたからな…競歩でもしていた気分だ。

 中川も同じように膝に手を置いて倒れそうなのを何とか堪えている状態だった。マジで俺ら何してんだか…

 

 

「ゼェ、ゼェ……1年の七咲逢音です…放送を聞いてここに来ました……」

「はぁ…はぁ……1年の中川奈々です。会長に頼まれたクラスの書類を届けに来ました」

「ご苦労様。うーん、2人とも仲がいいようで」

「「よくないです!!」」

 

 

 何故かハモった。解せぬ……

 

 気を取り直して…改めて生徒会室を見てみると他の教室と違い、落ち着いた色で広い空間だった。生徒会長の机の前には複数人が座れるソファーが設置されている。

 

 棚にも学校関係の資料や書類が並んでいて職場のような雰囲気を感じられた。

 高校となると一段と大人びた空間になるものなんだな。

 

 そしてそんな生徒会室にどっしり構えられている生徒会長の席…そこに座っている彼女が、生徒会長なのだろう。中川もそう反応していたし。

 

 

「あはは…私はここの生徒会長をしている芹沢だよ。よろしく〜」

 

 

 あー、やっぱり生徒会長だった。黒緑の長髪を後ろに束ねて、からからと笑う姿はフレンドリーな明るい人柄に感じる…でもそこからこの学園を引っ張っているリーダーの風格が隠れていた。

 …でも、口に飴ちゃん咥えているからやっぱり風格が薄れているけど。てか、校則違反にならないんですかね?

 

 何だかなぁ…こういうタイプも苦手だな。中川とは違うけど、話しているだけで主導権握られそうな感じがする。

 今回呼ばれたのも変な話を吹っ掛けるためとかじゃなきゃいいんだけど…

 

 

「それで、俺…自分が呼ばれた理由って何でしょう?心当たりないんですけど…」

「あぁ、そうだったね。君に来てもらったのは所属する部活について話すことがあるからだね」

 

 

 部活…じゃあ、ウメの出した申請書か。それが何で俺につながるのかは置いておいて、ロックバンドの活動に何か問題があるのだろうか。

 

 

「俺たちの始めるバンド活動のことですか?」

「そうそう、まさか1年で始めるなんてねー」

「…七咲さん、バンドするのですか?」

「まぁ、成り行きみたいなもんだけど…それで、それが何か問題でもありましたか?」

 

 

 中川がそれを聞いて少し驚いた顔をした。そんなに意外なことかね?

 

 そしてそれを聞いた生徒会長から一言。

 

 

「結論から言っちゃうね。このロックバンドの部活動の申請はできないかな」

「……えー」

 

 

 どうやら、設立までの道はまだ先になりそうである。




お気づきでしょうが、虹ヶ咲の本編1年前からスタートしてます…ですので、1年ズやアニガサキ2期ーズが出てくるのは結構後かもしれません。個人的には頑張ってみんなを登場させたい…璃奈とか璃奈ちゃんとかりなことか。

あと、せつ菜会長の一個上の会長の名前は知らなかったので勝手に決めました。聞き覚えのある人もいる…かもしれないですね。
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