LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU   作:RASっさん

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ライブシーンって描写するの難しすぎない……?

歌詞の色対応は

ウメ…「九条ウメ」
エモコ…「鰐淵エモコ」

となってます。


四話 Lucky☆Lucky

 私、中川奈々は急いでいました。なるべく早く、でも走るとまではいかない早歩きの速度で目的地へと向かう。

 心がけている学校のルールにこの時ばかりは恨まずにはいられません。

 

 そんな感情を抱いてしまうのも無理はない。つい先ほど、同級生から1件のメールが届いてきたのですが…

 

 何やら学校の部室棟で騒ぎが起こっているようです。

 それも、突然にして始まったようで添付された写真には既に人だかりができ始めていたほど。

 

 無論、生徒会にもそこで催しが行われるなんて伝わっておらず、急いで現場に急行している今につながります。

 

 …いけませんね、だんだん腹が立ってきました。

 

 ゲリラライブなんて、正気ですか!?しかも部室棟でなんて…あの人は何考えているんですか!

 

 写真に写っていた生徒らには見覚えがありました。

 自分と同じ赤色のネクタイ、リボン。1年生の顔と名前を全て網羅していますので、彼、彼女たちが誰か直ぐに分かりました。

 

 授業態度から警戒していましたが、まさかこんなに早く問題を起こすなんて!

 入学から1ヶ月も経ってないのですよ!?いくら何でも早すぎます!

 

 一体なぜ…もしかして申請できなくてヤケになった?あまり彼らしくはない気がしますが…

 

 …いいえ、そもそも普段の態度に違和感がありました。もしかして本当の彼は──

 

 それも含めて、あの状況を直ぐにでも確かめなくてはなりませんでした。

 

 …間も無く、校舎を抜けて部室棟に到着しました。入り口を潜った時点で耳に音楽と歓声が入ってくる。

 彼らの周りに集まっている生徒の数も100人近くまで増えており、事態の収拾がつかないことは明確でした。

 

 先に到着していた会長を発見したので、そちらに向かいましょう。人ごみをかき分け、会長が寄りかかる角に辿り着きました。

 

 

「会長!これは一体…」

「あ、奈々ちゃん…いやぁ、私も来た時にはこうなってたんだけどねぇ」

 

 

 頭を掻きながら会長は珍しくため息をこぼします。やはり、突発的に起きたのは間違いないみたいですね。

 

 問題児の3人はというと、部活棟の真ん中で演奏しています。そこに簡易アンプ、スタンドマイクまで設置して大音量で堂々と音を出していました。

 

 ギター、ベース…そしてキーボード。

 

 そのキーボードを弾いている彼を発見しました。水色の髪に、黒のメッシュが特徴の1年生。

 

 その名も七咲逢音さん…やってくれましたね。

 

 

「見たところ、1年…曲調からしても間違いなく却下した部活動だろうね〜」

「確かロック部でしたね…となると、生徒会に対する抗議なのでしょうか?」

「いやぁ、それはなさそうだね。そもそも申請書をちゃんと書けば通るのにここで行動出るのは得策じゃない」

「それじゃあ、何故──」

 

 

 すると会話を遮るように楽器の音が鳴り響く…この音…ギター?こんなに高い音が出るのですか?

 目を戻すと、生徒の1人演奏の中でソロに入ったみたいです。

 

 辺り一体を突き破るようにエレキギターの音が鳴り響く。眼を見張るほどの技量…素人目ですけど、それくらいの迫力を彼女の演奏から感じ受けます。

 それは他の目からしても同じだったのでしょう。歓声がより一層大きくなります。全員、自ずとその時間は彼女に釘付けになる。

 

 彼女は…普通科1年の九条ウメさんでした。ギタリストだったんですね…じゃない!

 

 普通に圧倒されちゃいましたけれど、こんなところでギターを弾いたら迷惑ですよ!

 部室棟だから尚更、ギターの音で他の部活動に影響が…

 

 そんな考えをしている間にも、彼女たちの演奏が続いていました。

 スタンドマイクに口を近づけ、九条さんが歌い始めます。本当にライブを始める気ですか!?

 

 

「そこかしこチャンスを逃した」

「君もきっと そう」

 

『Lucky!! Lucky!! Lucky!! Lucky!!』

 

 

 初めて聞く彼女の歌は嗄声のような掠れ…ですが、その立ち振る舞いと声色はみんなを振り向かせる力強さがありました。

 そして周りの生徒たちはノリがわかっていたのでしょうか。彼女の歌に合わせて盛り上がっています。

 

 その掛け声に満足したのか、ギターを更に激しく弾きながら自信の笑みを浮かべながら歌い続けます。

 

 

「飛び魚のジャンプの真似して」

「飛べないとクラクラするの」

 

 

 コールを誘う姿も、演奏と歌を並行して行うのも、手慣れている…過去にもこのようなことをしていたのでしょうか?

 続いて彼女の隣でベースを弾いていた生徒が前に並びました。どうやらベースボーカルを担当しているみたいですね。

 

 彼女は確か、鰐淵エモコさんです。この学園に特待で入学した…筈なのですが。

 そういえば、2人とも彼と一緒にいる時が多かった記憶が…彼の教室に集まることも何回かありました。

 

 特待生剥奪…などと心配はされてないようですね、はい。

 

 

「黄泉の国から ダイスを振って」

「出ためゾロだった 夢を見たり」

「赤か黒なら 白が好みよ」

「答えはアベコベ」「心はウラハラ」

『浮世はそうまぼろしね──!』

 

 

 交互に歌いながら、確実に上がっていく2人の演奏に周りも沸き立ちます。ここまで一体感を学校の一棟という不安定な会場で作り出せるなんて…

 

 それに、九条さんと鰐淵さん…彼女たちのギターとベースは暴走と言ってもいいほど走らせています。

 

 作曲の知識は…スクールアイドルなどで少し知っていますが、2人の弦を弾く手がより速く、刻んでいるのが見て取れました。

 下手をすれば不協和音になるでしょう。ですが、曲が成り立っている。

 

 それは一重に、2人の後ろにいる彼が土台となっているからでした。

 一歩間違えれば破綻する音楽が、キーボードのメロディがかろうじて形を保たせている。ですが形が保っているだけでその曲は最高になる…

 

 そんな風に感じ取れました。こんな曲、今までに聞いたこともありません。

 不完全だからこそ、完全になれる曲なんて…

 

 やはり…七咲さんは、()()()()()()()なのですね。

 

 

「だからきっと 君とその 超失敗の昨日を愛せたら」

「後悔は後でしょう 大人のフリはいらない」

 

 

 サビに入って、鰐淵さんと九条さん綺麗にハモらせています。

 彼女たちの周りには、最早全校生徒が集合していました。既に職員の方にもこの騒動は伝わっているでしょう。それでも、教員や生徒会も一切の手出しをしない…全員、彼彼女らに魅了されているのです。

 

 そんな光景に、飴が割れる音と一緒に笑い声が隣からしました…芦沢生徒会長です。

 

 

「…ははっ、これは凄いや。とんでもない1年が入ってきたね」

「…そうですね。間違いなく問題児ですけれど」

「でも、楽しそうだ。ここまで思いっきり個性を…自分自身を爆発させている部活動もなかなかないよ。奈々ちゃんもそうは思わない?」

「それは…」

 

 

 もう一度ライブをする彼らを眺めます。九条さん、鰐淵さん、七咲さん…3人ともロックという、この学園で他に見ないジャンルのバンドを立ち上げようとしていた。

 

 なのに誰も、顔に不安の色が見えません。全員が、本気で自分のロックをみんなに見せつけています。

 

 私も、あんな風に輝けたら──

 

 

「この空は君のもの もう一回と胸で決めたなら」

「余所見はもう禁止ね」

 

「大事なものだけ抱きしめてたら」

 

 

 ドクン…ドクン…

 

 

 あれ…何でしょう、この感覚は。

 

 心の中が熱く燃を帯びる。思わず心臓の鼓動を抑えてしまうほど身体が震えそうです。

 

 会長の言葉が頭の中で反響する。目の前の彼、彼女らが自分自身を曝け出している姿に、純粋な感嘆を抱いた。

 

 と、同時に、彼女たちの恐れ知らずな行動力とみんなを震わせる音楽魂に嫉妬心も…

 

 彼女たちは清々しいほどに、自分の大好きを表に出していました。今、この瞬間、それを見ている皆さんが感じ取れた。

 

 私も含めて。

 

 その証拠に、最後まで目を離すことが出来ませませんでした。

 

 

 

「……すごい」

 

 

 

『完璧です☆』

 

 

 

 そのまま暴走列車のような曲を最後まで走らせた3人に、盛大な拍手と歓声が送られました。九条さんは満足気に、鰐淵さんは澄ました顔で、そして七咲さんは肩の力を抜いて各々が自分達の演奏を完遂させていました。

 

 会長も間合いを見て、彼らへ駆け寄ります。そうでした…彼ら、思い切り無断使用、無断活動、無断申請の三拍子が待っています。

 

 ですが、1つだけ…1つだけ変わったことがありました。それは長い間心の中に閉じ込めていた感情。自分の立場には見合わない熱。

 

 

 

 自分も、胸の中にある大好きな気持ちを…あの人たちみたいに出したい…!

 

 

 

 隠していたはずの、その想いは静かに燃えていました。

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆ ★   

 

 

 

 

 

 

 数日後、生徒会室に並ぶ俺たち3人。目の前では生徒会長が俺たちの出した申請書に目を通している。

 

 

「…うん、問題はなさそうだね。それじゃあ私のサインと判子っと。君たちの『ロック同好会』はめでたく承認されたよ」

 

 

 新しい申請書に押された生徒会の判。本人からも許可が降りたことで俺たちは見事に今日から部を立ち上げることができたのだった。

 

 …まぁ、その書類の隣には10枚に及ぶ反省文が束ねられていたのだが。

 

 あの後、俺たちは無断でゲリラライブを開いたことで生徒会をはじめとする学校関係者にこっ酷くお叱りを受けるハメになった。

 まぁ、生徒たちはともかく、あの場所は普通に公共のところだし、何も連絡もなしに始めたからな。

 

 そして罰として反省文を1人3枚…割と良心的な罰則に済んだのはラッキーだったけど。

 それでもゲリラライブを開いた理由とか、反省とかツラツラ書くのは流石に疲れる。

 

 そういった過程の末、俺たちは遂に部活動を立ち上げたのである。

 やっとスタートラインに立てて俺は静かに肩を下ろすのだった。

 

 

「長い、道のりだったな…」

「何処かの誰かさんが先立ってライブなどするから、反省文など書かされる羽目になりましたからね」

「あんたたちもノリノリだったじゃない!同罪よ同罪!」

 

 

 尚、発端人のウメだけ原稿を1枚増やされた。本人も涙目だったことは隠しておく。

 

 それでも俺たちに反応する元気は有り余っているようだ。ライブや練習する場所も取れるようになったからな。

 

 俺も、ここで無料で使わせてくれることに少し興奮していた。スタジオ練習でお金をぶん取られる心配もない!

 

 

「まぁ、しっかり書いてきたところは評価するけど。君たちはこれから1つのコミュニティーを作ったんだから…その分の責任は持つようにね?」

「全ての責任権はキャンキャン娘にありますので」

「エモコは毎回逃げるのをやめなさいよ!てかそんなものは部長が受け持つものなの!」

「俺に全部なすりつけるな、連帯責任じゃい」

 

 

 責任を隣に転嫁する気満々のエモコはともかく、ウメには一番言われたくないな!

 確かに俺、部長になるけど問題を起こしているの大抵ウメだからな?

 

 

 すると次に生徒会長が少し大きめの封筒と、1個の鍵を差し出した。

 そういえば、部活動を設立したら専用の部室がもらえるんだったな。

 

 だけど、貰えないところもあるはずなのに…俺らが与えられることに少し違和感を感じた。

 

 

「君たちがあんなに目立っちゃったから、部室を与えなきゃ変な目で見られちゃうんだよ。あんな凄い奴らに部室がないなんて…ってね」

「あー、なるほど…って、質問してないのに会長はエスパーですか」

「顔に書いてあったからね…これが部室の鍵。それと予算申請書だったり、部活を立てるにあたった注意事項をまとめた封筒だよ」

「ありがとうございます…おーい、2人ともそろそろ戻ってこい。見てて恥ずいから」

 

 

 ギャーギャーワーワー。一方的にウメが叫んでいるだけだが、生徒会室で始めることじゃないぞ…

 

 でも、ゲリラの時もこうやって目立ったからこの鍵が手元にあると。

 うーむ、暴走がこんな風に役に立つとは…本当はダメのはずなんだけどね。

 

 そんな俺たちを見かねてか、生徒会長から何処か温かい視線が送られていた。

 

 

「仲良いんだね、君たち」

『……』

「まぁ、中学からの同期なんで…」

「そういうことにしておくよ…とにかく、前みたいなライブは前もって連絡してほしいかな?でないと、我が校の自由が放牧と間違われちゃうから」

 

 

 うわぁ、パンチライン高ぇ…これ、下手すれば俺らを家畜って見做してるもんだな。

 暖かいはずの彼女の視線で部屋の温度がグッと下がった。流石に大きなやらかしは今度こそダメかもしれない。

 

 それを3人とも実感した時、フッと生徒会室にいつもの空気が戻ってきた。怖っ、会長さん覇気でも出してたのかよ。

 同時に、俺らは退出しても良いようだ。早速、ウメが扉へ進み、後ろをエモコが追従する。

 

 心なしか、歩く足が軽く見えるな。今から部室に直行するつもりだな。

 

 俺も、鍵と書類一式を手に外へ向かう。が、扉に手をかけた時、ふとこれからのことを思い出した。

 

 多分、ここにはこの先も何回か訪れることになるし…

 

 

「失礼しましたー…会長、多分これからも何回かは世話になりますので」

「聞きたくなかったよ…まぁ、ほどほどにね?」

「どーも」

 

 

 そうして今度こそ俺は生徒会室を去る。取り敢えず、ロック同好会のスタートだぜ。

 途中で終わったかと思ったけど、何とかなったな。このまま普通のロックンロールができれば良いけど…

 

 それじゃあ、反省文によって溜まったストレスをぶつけに行きましょうかね。

 

 

 

 ……その後、部室棟から異常に大きな騒音が発生しているとのことで俺らは呼び出された。

 生徒会長の背後から般若らしき影が見えたことは秘密にしよう。

 

 あの部屋、どうやら防音じゃないらしい。更に反省文5枚書かされた…解せぬ。




中川奈々…今更ですが、この物語は同好会結成前から始まってます。なのでまだ1年で生徒会書記ということにしてます。彼女の曲がロックぽい…ってわけではないですが、炎や自分に正直な曲調がどこか似ているから1番初めに彼らと関わっています。
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