LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU   作:RASっさん

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やっと主人公とラブライブキャラが近づくぜ。


五話 クラスメイトの一面

「……〜〜♪、〜〜!!」

 

 

 学校に設置されているスタジオに3つの音が重なる。教室より少し狭いこの空間だが、3人しかいない今音はより響いていた。

 外の開放感とは違うが、この空間だけに広がる音もまた気持ちがいい。

 

 晴れて同好会デビューした俺たちだが、スタジオ練習は無事に行えるようになった。

 まぁ、前回あれだけ暴れたらいい宣伝になったからな。あの時の、ということで快く(?)許可を出してくれたよ。

 

 …部室で爆音出したからか、俺たちへの視線がかなり厳しいものだったが。

 

 そんなわけで俺たちは毎日のようにここで演奏している。とは言っても、基本思いついたメロディをそのまま弾いてはアドリブ祭りになる始末だ。

 

 

「〜〜〜♪♪…!!」

 

 

 ギターの千切れるようなメロディにベースの重圧が乗りかかり、そこに俺のキーボードが2つを繋げる。

 うーん、結果で臨場感のメロディが完成したけど、ここはサビにしてはパンチ弱めか…途中の繋ぎにするのはありかもな。

 

 相変わらず全力で突っ走りながらアレンジも欠かさないウメのギター。堅実だけど他人に合わせない、自分のベースを奏でるエモコもいる。

 

 こっちも大変だ。追いつくのにどれだけ手を動かさなきゃいけないんだよ。2人の音楽を繋ぎ合わせるのは骨が折れる。

 実際、定められた楽譜通りに弾くはずなのに色々乗っかかりすぎて破綻寸前だ。

 

 でも、これがロックの醍醐味でもあるし、盛り上がるからなぁ…観客との一体感を組めるこの演奏はクセになる。

 

 あっ、エモコ…ノリ過ぎてギターより出しゃばってるじゃねぇか。ついでにアンプの音量も一段階上げたな?

 これじゃあ主役を横取りしたみたいに──

 

 待て、ウメも挑発に乗るな!おい、早まるな!今そこでギア上げたら──

 あぁ…曲のテンポ自体まで変えちゃってるじゃねぇか!

 

 こいつら、マジかぁ!?

 

 

「……〜〜〜!!」

「〜!!…ー♪…!!」

 

 

 無理無理無理、立て直せるわけねぇだろうがぁ!!

 

 

 

 

 

 

「はぁ…お前ら、協調性ってものないの?」

「「隣が合わせてくれるなら」」

「皆無じゃーん」

 

 

 1周回ってその反応はわざとだろ、お前ら…

 

 結局、セッションは2人が好き勝手暴走した挙句、音が強くぶつかり合ったせいで曲として成り立たなくなってしまった。

 

 もう少し、音楽全体をバランス取ってくれる存在が欲しいんだけど、本来その役割を担うエモコがあれだからなぁ。

 別の案を探すしかないか。この雰囲気までは壊したくないし。

 

 後は…ストレス発散にはなったからいいものの、本来の曲作りは進んでない。

 それでも途中までのメロディーは悪くなかったから、そこはこっちで改善しておくか。家に帰ったらまた徹夜しそうだな…

 

 そろそろ他の部活がここを使う時間だ。俺らは迅速に片付けへと取り掛かる。ギターをケースにしまいながら、ウメが次の予定を聞いた。

 

 

「ふぅ、取り敢えずこんな所ね。エモコ、次は何時取れてるんだっけ?」

「明後日の4時ー6時ですね。その次は土曜日で午前中は貸切…午後も行けますね」

「マジ!?土曜日、1日中ギターに浸かれるの!?」

「見たいですね…ふふっ、昂りますね♪」

 

 

 そしてこの変わりようよ。さっきまで喧嘩してたんじゃないの?

 

 怖いくらいに仲良くなる2人、情緒が毎回こうだからこっちも黙って見守るしかできない。変に刺激したらまた喧嘩しそうだし。

 

 さて、俺もさっさと撤収しますかね。キーボードの一式をケースにしまい、コードをまとめる。後は鞄を──

 

 

「…あっ、鞄を教室に忘れた」

「何やってんのよ…」

「まぁ、キーボードも結構デカいからな…他の存在忘れる時があるだろ?」

 

 

 特に今回は授業が終わって直ぐに向かったからな。注意不足が生み出したミスに思わず天を仰ぐ。

 

 わざわざ教室に戻るのも面倒なんだけど…てか、バンドの部長になってるからこの部屋の鍵とか引き継ぎ作業しなきゃいけないし。

 

 

「…エモコ、悪いけどここの報告頼めるか?100円で」

「今日はジャンクな気分ですね」

「…160円ね」

 

 

 ジャンクな気分=自販機のコーラ160円という等式。よく分かったな俺…全然嬉しくねぇけど。

 

 取り敢えず、鍵の戸締りは2人に任せることにした。エモコならしっかりやり遂げてくれるだろうし…代わりに俺は目的の教室へと向かう。走っていけば直ぐで、5分ほどで扉の前に着く。

 

 流石に残っている人は…いないか。6時までここで駄弁る生徒はいないだろうからな。夕日も暗い教室を紅く照らしていた。

 そして俺の席には鞄がそんな中にぽつんと置かれていた。ヒョイと取り、中身も確認…何もなくなってないな。

 

 

「ふぅ、鞄ゲット…あれ?」

 

 

 と、視線を偶々前の席に移したその時だった。その机の上には白紙のカバーで覆われた一冊の本。いつもは何も残されていない机だからこそ、俺の目に入ったのだ。

 

 無地の白カバー…しかも紙材質かぁ。

 

 そういうのってラノベとかだったりするよなぁ。やっぱり原作の表紙を大々的に見せるのは恥ずいし。本によっては普通に暖簾の裏だったりするからな。

 

 

「つまり…これ、中川の…か?」

 

 

 いや、あいつなら参考書とかか?でもこのサイズ感、間違いなくラノベとか文庫本の大きさだろう。

 …誰もいないし、少しだけ中を確認してもいいか?目の前にある疑問を解きたい欲が迫り上がる。

 

 …こっそりと中身を拝借。どれどれ……

 

 

「迂闊でした…忘れ物──」

「あっ…」

 

 

 っと、聞き覚えのある声だ。同時に扉が開き、息を切らした中川が入ってきた。

 急いでたんだなぁ…そして俺にも気づいた。肩で息をしていた動きが止まり凍りつく。

 

 暫く固まっていたが、一体何を考えているのか。とにかく、これを返したほうがいいのかもな。

 

 

「ど、ど、どどどどうも、七咲さん」

「キョどってるなぁ…」

 

 

 めちゃくちゃ動揺しているじゃねぇか。メガネ奥の目がピクついてるぞー。

 

 そのままぎこちない動きで手元の本を指差す。やっぱり、この本はお前のか…

 

 

「そ、そちらの本は…もしかして落とし物ですか?」

「ん?まぁ、前の席に置いてあったし…てか、お前のだろ?」

「い、いえいえ、私はそのようなもの持って来るはずがありませんよ!それより、私は生徒会室へ用事がありますので、ついでに届けておきましょう!」

 

 

 うん、意地でも自分のって認めたくないのか。そのまま俺に本を渡すように急かしてくる姿が何とも白々しいな…

 

 何でわざわざ隠しているのかは気になるが、実際この本を返さないと面倒ごとにはなりそうだよな。

 

 時間も遅いし、普通に返すこか。彼女に差し出すと途端に表情が綻んだ。

 おい、せめて最後まで演じとけよ…分かりやすいやつだなぁ…

 

 

「じゃあ、はいよ」

「あ、ありがとうございます…よかった…」

「…因みにそのラストで、サクラとミズネが死ぬぞ」

「………」

 

 

 ピシッと音を立てて彼女が固まる。時間が止まったように静寂が包み込んだ…本当に純粋な反応だな。

 

 その本のシリーズ、実は俺も追っかけている。ジャンルはローファンタジーで王道を行きながらも、魅力的なキャラと緩急の激しい展開が人気を博している。

 

 だから、ちょいと釜をかけてみたわけだが…ビンゴってことで良いのかな?

 流石に、釣り針がデカすぎた気もするが…何せ、名前にあがった2人ともトップの人気キャラだし。

 

 だが、安心してほしい。

 

 

「…………………………本当ですか?」

「いや、嘘だ」

「……え?」

「これ、昨日でた最新刊だろ?俺、まだ買ってないから展開なんて分かる訳ねぇんだよ」

「…な、なーんだ、そうでしたか。桜も水音も紅姫の中でも1、2を争う親友ですから、それが消えてしまったら紅姫が、いえ、私までもが耐えられませんでしたよ……」

「だな…」

「「………」」

 

 

 再度訪れる静寂。だが今度の彼女は笑顔を固まらせたまま、大量の汗を流している。

 

 もう、ギルティもいいところだが…すごく早口で、ラノベの内容と自分の感想までしっかり纏めてくれた感想、ありがとう。

 

 同時に、もう隠す気もないんだな?

 

 

「それ、お前のだな?」

「………はい」

 

 

 さっきよりも随分小さな声が返ってくる。まぁ、最初から分かってたんだけど…わざわざ隠そうとするからこうなるのだ。

 

 大体、こう言うのは最近は全然普通なんだし…って、真面目なこいつだから変に隠そうとしたんだろう。

 

 すると今度はギリっと俺を睨んでくる…物申したいことがあるようだな。でも頬を膨らましているし自体が事態なのでいつものような凛々しさは無だ。

 

 

「騙しましたね、七咲さん!」

「お前がちょろすぎただけだろ。むしろお前の方が先に嘘付いてたからな」

「うっ…それは、そうですけど!」

 

 

 いろんな感情が篭った視線が俺に突き刺さる。それほど自分の趣味を知られたくなかったのか。

 

 …確かに、普段の生徒会やクラスでの中川が、こんなジャンルの本が好きなのは意外に捉えられるだろう。真面目に授業も受けているし…一言で言えば優等生だからな。

 

 なるほど、ってなると不真面目な俺にも知られたくなかったのか?

 ずっと寝てるもんな…日頃の行いから俺が他人のプライバシーも破る男みたいなイメージつけられてたのか?

 

 何はともあれ、彼女の心配には及ばないだろう。俺も口は硬いから。

 

 

「はぁ、別に誰にも言わねぇから安心しろって」

「え?」

「その様子だとあんまり知られたくないんだろ?流石に秘密をバラすほど鬼畜じゃねぇし…日頃の居眠りのお返しってことで」

 

 

 こう言っておけば安心してくれるだろうか。

 まぁ、もし誰かにバラしたら、その後の彼女との関係も悪くなるし、学校での俺の立場も狭くなる。

 

 面倒ごとは避けるスタイル…それは変えたくない。これなら、俺の学校生活も平穏になるだろう…バンドの時は別として。

 

 その言葉に、中川の顔が伏せられる。同時に俺へ足を進めて肩をがっちり掴んできた…あれ?

 

 思った反応と違うような…しかもワナワナ震えているし──

 

 

「七咲さん!」

「お、おぉ!?」

「ほんっっっとうにありがとうございます!!」

 

 

 …おう、凄い感謝された。伏せていた理由は感極まってしまったからのようだ…目尻に涙までたまているし。

 

 どれだけ自分の趣味隠したかったんだ…俺の肩をガッチリとホールドを続ける中川を何とか落ち着かせた。

 

 何れにせよ、彼女にとって大切だったラノベが手元に戻ったのだ。周りに人もいないし、一件落着と言ってもいい。

 

 強いていうなら、中川の意外な一面を見ることができたくらいか。

 

 

「気にするなよ…にしても、このシリーズ好きだったんだな」

「もちろんですよ!『紅蓮の剣姫』は今1番熱いシリーズと言ってもいいですからね…」

「確かに…キャラとストーリーの緩急がいい具合に噛み合ってるな。アクションの描写も挿絵多めで俺らも想像しやすいし」

「そうですよ!それにナレーションの言葉1つ1つが全部忘れられなくて…前巻では哀愁漂う橙子に『そこにあったもう一つの背中と…』って、泣くしかないじゃないですか!」

「あー、あれなぁ…片方だけ残すのは作者の性格が出てて憎い演出だったと思う」

 

 

 しかもその前に丸々1章を使って2人のライバル性を読者に埋め込んでからの退場だ。結構堪えるところがある。

 特に死んでしまった蒼衣は主人公の紅姫のお姉さん的ポジションだったからファンも多かったはずだ。これから純粋な紅姫のおねーさん枠は誰が担うんだ。

 

 …とまぁ、このシリーズはそんな風に面白い。アニメ化も順調に成功していたし、今かなり覇権とも言える存在だから俺も読んではいるのだ。

 

 それにしても中川は分かってるな。予想以上に物語への理解度が高くで、話してみると泣き所には弱いみたいだ。

 それに、キャラを話すときの感情移入も激しい…もう、紅姫が万が一死んだりしたら息しなくなるんじゃないか?

 

 今も話している間に目をキラキラさせている彼女があまりにも子供らしく見えて、思わず笑みが漏れてしまった。

 

 

「ははっ…お前、マジでアニメとかラノベとか好きなんだなぁ」

「え、ええ…そうですね。実は始めは夜にテレビアニメを見たことがきっかけで──」

 

 

 そこから彼女は自分の趣味との出会いについて聞くことになった。

 どうにも、親が厳しい性格のようで真面目に勉学に励む毎日らしい…俺には真似できん。

 

 彼女自身は勉強が嫌いではないようで、苦には思っていないみたいだ。だが、ある日偶々深夜のアニメを見てしまったようだ。

 そこから、のめり込むのに時間はあまり掛からなかった。

 

 

「実は、ライトノベル自体買うのも今回が初めてで…少し浮かれていたのか、ついこちらに忘れてしまいました」

「なるほどな…って、これ8巻だけど?」

「それまでのは何とか他の伝手で読みました!アニメ化された4巻と、それ以降も1夜で!」

「シンプルに凄い情熱だな…」

 

 

 そんなにハマったのか、紅蓮の剣姫…徹夜なんかすれば次の日の授業とかオールで寝てるだろうに。でも彼女の燃え滾る眼からして、その日は気合と読破後の情熱で乗り切ったんだろうな…

 …なるほど、俺の睡眠にめくじら立ててたのは、それもあるかもな。中川が居眠りするところ見たことないし、徹夜して頑張ってるのにこんな爆睡してる奴いたら腹たつよなぁ。

 

 これ、先手打っておいた方がいいかもしれない。題して餌付け作戦。

 

 

「……俺ん家に幾つかラノベのシリーズものあるけど、良ければ貸すか?」

「……!?」

 

 

 目の色がわかりやすく変わったな。

 

 行動から表情まで可愛いかよ…でも予想通り、家にあるラノベに興味を持ってくれた。密かに作戦が成功したことを表情に出さないよう続ける。

 

 

「ラノベ媒体の作品はお前の今の状況を考えれば厳しそうだしな。学校の休み時間とかにこっそり読めば親にもバレねぇだろ」

「ち、因みに持っている本はどのような…?」

「うーん、魔○学院の不適合者にス○イ教室、○AO…あぁ、外伝もあるぜ?」

「貴方は神ですか!?」

「んな大袈裟な」

 

 

 まぁ、俺も割とアニメやらラノベやらは好きでよく読んでるからな。家は寧ろ高校生になったからと放置主義みたいだし。そんな環境の違いがあってか、中川からの視線が眩しい存在へのそれになってしまった…勘弁してくれ。

 

 まぁ、今あげた本は既に何回も読んだし、結構状態も綺麗だと思うから普通に貸し借りは出来る。

 

 

「本当にいいのですか?」

「いいぞ…まぁ、オタク友達が増えるなら俺も満足だし」

 

 

 これは紛れもない本心だ。このままだと俺、バンド以外ではボッチだし。ずっと寝てるせいで一切近付かれないの、偶に寂しくはなる。

 

 …まぁ、本音は中川とのギブアンドテイクだけど。これで少しは多めに見てもらえるぜ。

 

 

「んじゃ、今度持ってくるからな」

「ありがとうございます!重ねてお願いなのですが…これからは逢音さんとお呼びしてもいいですか?」

「あぁ、別に良いぞ?バンドとかではむしろ名前呼びが多いし」

 

 

 寧ろ、逢音以外で呼ばれることなんてなかったかもな…七咲って苗字。ウメに至っては省略して「アオ」って読んでるからな。まるで犬かと思ったわ。

 

 すると中川が俺をじっと見つめていることに気づいた。何か探っているようにも見える視線…さっきと違いすぎる雰囲気にたじろぎそうになった。

 急に生徒会モードに戻ったか?我に帰ったのか!?

 

 

「……な、なんか俺の顔についてる?」

「っ!いえ、何も…」

「?」

 

 

 そのまま思案顔のまま自分の世界に入ってしまった。何を考えているのか分からねぇー…

 俺の名前、そんなに変なのか?逢音って…それとも、七咲に反応したのか?

 

 

 七咲…まぁ、それなら分かる気もするが…

 

 

 と、ここでタイミングを見計らったように鐘が鳴る。最終の下校時間の知らせが入ったか…思ったよりも長居しすぎたな。

 そういや、ウメたち待ってるんだっけ…あ、終わったわ。

 

 

「あー、俺そろそろ帰んなきゃヤベェわ(色んな意味で)」

「そ、そうですか…では、逢音さん。私は生徒会室に戻りますので…また明日お会いしましょう」

「おう。お前も生徒会の仕事、頑張れよ」

 

 

 最後はなんか歯切れが悪かった気もするが、気にしなくても良いだろう。別れる直前には、一瞬だが爽やかな笑顔に戻っていた。

 俺も鞄を背負って帰路に…2人が待っているであろう校門へ走る。完全にジュース2本分奢る流れになるな…

 

 …こうして、俺は中川と少しだけ距離が近づいたのだった。ただの真面目な生徒会員と生徒くらいの関係が、少し好きなものを話し合う友達になったくらいだ。

 

 くらいなのに……このあと起きる展開を知ってれば、もう少し別の動き方してたのになぁ…

 

 

「私、スクールアイドルになりたいです!」

「……はぁ?」

 

 

 こんな展開とか、知ってればね?




中川奈々…彼女が煌めかせた、逢音の家にあるラノベシリーズ…中の人繋がりですね。自分的にはどちらの声も奈々ちゃんで、せつ菜ちゃんです。

七咲逢音…色々と性格がめんどくさい奴。
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