LOVE LIVE!! The Rainbow For yoU   作:RASっさん

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六話 Wanna be?

「で、ですよ。○条さんが反転術式から、呪力の核心に目覚めるシーンが本当にかっこよくて、作品を通して最強と分かってはいたのですけど覚醒の仕方がまたグッとくるのですよ!」

「まぁ、確かによかったなあのシーン…あの後、あっさりと敵の甚○さんがやられたのも驚きだった」

「そうですよ!あの人も作中で最強に匹敵する肉体を持っていますから!それに戦い方も対人特化なのもその世界のアウトローな感じがしてよくないですか!?」

「まそうだな、フィジカルギフテッドだもんな…」

 

 

 そこは激しく同意。結局死んじまったのは残念だけど。でも過去にぽっと現れては凄まじい印象を俺らに植え付けたからな…

 この先も株を落とすことはないだろう。そんな予感がするのだった。

 

 尚、その話が入っている単行本を昨日貸したんだが、こうやって感想会になっているということはまた徹夜したんだな。

 

 なのに眠気を一切感じさせない彼女の状態…ハイになってる。

 

 因みに、これが彼女の素の姿らしい。別に真面目が猫かぶりなわけでもないが、普段の彼女はこのように好きなことを大々的に曝け出す元気ハツラツ少女であるようだ。

 

 好きな話題はあっという間なもので、中川とこうやって話し始めて1ヶ月ほどが経過した。

 

 彼女に貸す本が最近はラノベだけではなくマンガにまで増えている。

 部活が終わった時間や昼飯に彼女が訪れては、貸した本の感想会になって、終わりには新しいのと交換する。

 

 そんな日を繰り返していたのだが、想像以上に中川の読むペースが早い。

 そろそろ俺ん家の在庫がなくなるぞ…今回貸したのもこの調子じゃ1週間くらいで終わりそうな勢いだし。

 

 この先どうするか、思わずソファーに体をグッと沈めた。椅子とは違い、柔らかいクッションに包み込まれる。

 

 

「というか、無断で生徒会室に来ていいのか、俺?」

「…教室だとアオトさんのように部活帰りの方と鉢合わせる場合がありますので、生徒会室なら──」

「生徒会長ー、生意気にも職権乱用する1年がいまーす」

 

 

 その生徒会長はどうやら所用でここを離れているようだけど。俺、部外者で1番この部屋に来ているんじゃないだろうか。

 

 同好会で世話になることが増えるってあらかじめ伝えていたはずなんだが、まさかこんな形でここにいるとは。

 

 きっちりと片手間に書類整理をしながら、中川が慌てて訂正する。

 

 

「生徒会長からは自由に使っていいと許可されていますから!…それに、薄々ですが私の素顔を勘づいている気がしまして」

「あー、あの人なら分かってそうだな」

 

 

 飴ちゃん舐めているけど…偶に廊下でも出会うけどいつも口に咥えているんだよ。見ていると口内炎とか虫歯とか心配になってくる。

 

 する中川が咳払いしながら、ギラついた目で俺を見てきた。

 

 

「それでですね、アオトさん。私は決めたんです」

 

 

 …ウメの時もそうだが、溜めを生じさせるような宣言はどうしてこうも嫌な予感がするのだろうか。

 

 だが中川はそんな俺の内心を吹き飛ばすように叫んだ。

 

 

「私、この学園でスクールアイドルをやりたいんです!」

 

 

 

 

「……はぁ?」

 

 

 彼女のシンプルな言葉を脳内で復唱する…聞き間違いじゃないな。

 

 今、スクールアイドルって言った?あの、スクールアイドル?

 

 両手をグッと握りしめている本人は、そのまま熱の篭った眼差しを向けながらテンション高めで続ける。

 

 

「いいえ、やります!私がやります!」

「○ヴァ構文で言い直されても…てか、スクールアイドル?何でそんな話になるんだよ」

「そういえば言い忘れていましたね…私、アニメやラノベも好きですが、それ以上にスクールアイドルが大好きなんです!」

 

 

 …こりゃまた知らない情報だな。今までただの隠れオタクの印象しかなかった分、このカミングアウトは意外には思った。

 

 一応確認だが、スクールアイドルは誰もが知る一大コンテンツだ。歌って踊ってみんなと繋がる…そんなモットーで中高生から爆発的人気を持っている。

 

 それは世界まで広がり始めており、1種の文化にまで形成されていっている。例の如く、中川もそのファンなのだろうが…

 

 まさかそのスクールアイドルになりたいとか、急すぎて訳分からんわ。

 そんな感情が表に出たのか、中川は苦笑いでその理由を語り始める。

 

 

「アオトさんたちのライブを見た時、皆さん生き生きとしていました。自分の出したい音を出して、楽しそうに歌ってて…」

「一種の暴走だろうけどな。特にあの2人は」

「ですけど、アオトさんも楽しそうにしていましたよ?」

 

 

 え、俺たちのライブが影響与えちゃったってこと?面倒なのを引き起こした戦犯じゃねぇか…結局自分に返ってくるのか。

 

 それに楽しそうって…俺としては、2人がライブへポカしないようにビクビクしていたからな?普通に観衆に嫌われたくない中いつ暴発するか分からない仲間とのライブは毎回ハラハラする。

 

 ──でも、俺らのロックは観ているもの全員の心に刻む、本物の音楽を目指している。

 

 

「それで、自分の大好きに正直でいたいから…この気持ちを高校生活に打ち込みたいと思ったんです!」

 

 

 …そんな俺らのロックでもみんなの心に残ってくれた。今ここで決意を固くしている彼女もその1人だろう。

 

 そう考えてみると…まぁ、悪い気分はしない。

 

 

「歌って踊って、自分の気持ちをも皆さんに届ける…スクールアイドルは、大好きを伝えることができる…私の大好きも、スクールアイドルで伝えられると思うんです!」

「……」

 

 

 めっちゃ真っ直ぐな心情だなぁ…多分、彼女がスクールアイドルを始めれば人気は間違いない。

 

 ラノベや漫画への情熱が証明している。基礎である歌や体力づくりをマスターすれば上位に入るのは確実だ。

 

 それに、自分に正直でいたいなんて、誰もが出来るのに、勇気がないと出来ないことだ。それを届けたいと彼女は言う。

 こんな志で成功してみろ…ラブライブとかで伝説作っちゃいそうだ。いやマジで。

 

 

「言わんとしてることはわかるけどなぁ…実際、部活として作るのか?」

「はい!そして目指すはラブライブ優勝、です!」

「大きく出たなぁー」

 

 

 あ、もう決めてるのね。まだメンバー1人なのにそこまで未来見据えてるのスゲェよ。

 でも、人数さえ集まれば成し遂げそうなのが怖い。

 

 …と、ここで中川がやっと現実に戻ってきてくれた。スクールアイドルになると言う目標に舞い上がっていたことに気付いたのか若干顔が熱くなっている。

 

 

「ゴホン…それでですね。1つ、アオトさんにお願いがあるんですけれど──」

「…嫌な予感しかしないが、一応聞こう。何だ」

「嫌な予感とは失礼な!…スクールアイドルデビューする時の1曲を作っていただきたいです」

「的中しやがった…」

 

 

 俺の嫌な予感は今日もしっかり働いていますとさ。

 

 まぁ、こんなところでスクールアイドル始めるって言ってた時点で大体の展開は予想できてたけど…にしても、俺をガッツリ関わらせる気満々じゃねぇか。

 

 俺とスクールアイドルの接点なんて…殆ど無いのに。

 

 

「何で俺が作曲担当しているって分かるんだよ」

「初めてゲリラライブを行った時、九条さんと鰐淵さんの演奏を成り立たせているように聞こえまして…」

 

 

 …あのゲリラライブでそこまで見られていたのか。ウメとエモコの演奏で目を奪われがちだが、彼女は俺のことも観察していたらしい。

 

 そして彼女は気づいていた。あのライブの真意。そもそも『Lucky☆Lucky』がウメの発案で急遽やることになったせいでウメとエモコ、どちらが主体になっていくのか決まっていなかった。

 

 だから実際のライブでは2人の音が主張し続けるとんでもない事態に陥ってたりする。なんとかバレないようにメロディで調整したり、我に帰らせたりしてたが…

 

 

「もし、それが出来るなら曲の構成をよく理解していないと出来ないと思ったんです…だから、作曲も貴方がしたのではと」

「…本当に、よく聞いてるな。普通に音楽の才能あると思うぜ?」

「アオトさんには負けますよ」

 

 

 ニコッと笑う彼女だが、間違いなく音楽の才能がある。こいつの底なしポテンシャルに頬を引き攣らせてしまう。

 

 

「…逆に私からも1つ質問してもよろしいですか?」

「ん、俺に答えられるならな」

 

 

 彼女の様子が扱く真面目になり、俺をまっすぐ見つめる。珍しいな、趣味の話で真面目モードになるなんて。

 

 そして次の言葉を出すべきか、一瞬迷うような仕草をしたが、意を決して彼女は俺へ質問を投げかけた。

 

 

「では…七咲逢音さんには、兄弟姉妹はいますか?」

「……」

 

 

 …そう言うことか。側から見れば平凡な質問…だが俺はそれで今まで彼女から感じていた視線や疑問が一気に解決した。

 

 初めて生徒会室に来て、俺がバンドを始める時…不自然な間があった。それは俺がロックに行くことへの疑問だったんだ。

 

 自分の名前を口にした時、俺の反応を変に待っていた。あれは俺の名前じゃない…苗字を気にしていたんだ。

 

 それもこれも、俺がスクールアイドルに深く関係があると思っていたからだ。スクールアイドルという文化…コミュニティに俺は片足突っ込んでいると。

 

 なのに、俺はその真逆をいくかのようにロックの道を歩んでいる。確かに、気にはなるか。

 

 

「姉が1人、いるな」

「…っ!」

 

 

 先ほどの質問、正直に答えよう。隠す必要もない事実だから。

 口にした瞬間、彼女の目が見開いた。そしてそのまま続く俺の言葉で確信を得ることになる。

 

 

「七咲ニコル…といえば分かるか?」

「っ…やっぱり、そうだったんですね」

「まぁ、七咲なんて苗字は珍しいだろうしな」

 

 

 七咲ニコル…彼女は俺の3つ上の姉であり、中川の言う歌って踊るスクールアイドルだった。俺と同じ水色の髪を揺らしながら、快活で溌溂とした眩い存在。

 

 そして、ラブライブ界にも伝説的な優勝をしたグループのリーダーでもある。七咲という名前が一時期世界にまで響き渡るほどの輝き。

 

 

「3年前、7th(セブンス)としてスクールアイドルで活動していて、その年のラブライブで優勝した…は、知ってるようだな」

「はい……私が好きになるきっかけでしたので。尊敬するスクールアイドルの1人ですよ」

「そっか…まぁ、姉は人気者だったからなぁ…」

 

 

 懐かしむように俺らは当時の記憶を思い返す。虹色に点滅するライトに写る、スクールアイドル『セブンス』の6人の影。

 歌って踊ってライブを楽しむ姿は見る者も心から奮い立たせる。

 

 その存在感は星のように眩い光で輝いていた。何人もがその光に熱狂し、或いは羨み、或いは目標にした。

 

 スクールアイドル、七咲ニコル率いるセブンスはそんな存在だった。

 

 

「誰よりもスクールアイドルに…音楽に愛されていた。それと同じくらい音楽を愛していたな」

「私の目からも、ずっと輝いて見えました。何より、彼女の大好きだと思う気持ちが、私たちにも伝わってきて…そんな風に気持ちに正直なスクールアイドルだったと思います」

「気持ちに正直な…いい表現だな」

 

 

 確かに、ニk…彼女ほどスクールアイドルに真っ直ぐで楽しんでいる女はいない。そう思えるほど笑顔でステージに立っていた気がする。

 

 俺も、中川もきっとそんな彼女に元気づけられたのだろう。他のみんなだってそうだ。

 これからもずっと俺たちに永遠の輝きを与え続ける存在だと信じて止まなかった。

 

 だからこそ──

 

 

「だからこそ、あの時は驚きました。まさか、優勝した直後に解散するなんて」

「……」

 

 

 懐かしむ顔から一変し、中川は俯いた。声も数段下がってあの頃の悲しみが伝わってくる。

 

 ラブライブに突如現れては彗星の如く輝き、頂点に立った彼女たちセブンスは…そのまま流れ星のように消えていった。

 

 決勝戦でのライブを皮切りにステージから姿を消し、後にネット上であれが引退ライブだと言うことも明かされた。

 

 その当時は最強だったスクールアイドルの消滅にスクールアイドル自体が揺らいだものだ。

 落胆する者、懇願する者、悲嘆する者…みんながみんな、あの夢のような時間が見れないことに悲しんでいたのは確かだ。

 

 セブンスのリーダーであった七咲ニコル。その弟の俺も引退騒動に驚いた1人だ。

 そしてガヤと同じく、何も知らなかった1人に過ぎない。

 

 

「先に言わせてもらうが…俺もその事はよく知らねぇ。何故なら姉はその後に消えたからな」

「え……」

「解散した次の日に、忽然と消えた。家にも姉の残り物は殆ど無くなってた…だから俺は、彼女の行方が分からないんだよ」

 

 

 彼女はクリスマスに行われた決勝戦以降、突如姿を消した。何も言わずに、家にも帰ってこなかった。というか、俺が姉から予約されてたホテルから帰ってきた時はもぬけのからだった。

 

 唯一、スマホには1通のメールが入ってきて、そこに俺を親戚の1人に預けることと、自分の部屋に残っているものを自由に使ってもいいとしか書かれていなかった。

 

 まるで他人に成り下がったような疎外感と孤独をその時感じたものだ。あれだけ近くに感じていた姉にどんな心変わりがあったのか。

 

 それは今でも謎のままだ。ただ、姉が俺を置いていった事実のみ残っている。

 

 

「そう、でしたか…」

「まぁ、3年も経てば意外と慣れるもんだ。現に七咲で反応されること殆どないし」

 

 

 俺自身も、ある程度は乗り越えたわけた。今の暮らしも満足してるし、こうしてバンド活動とかできてるし。

 それにスクールアイドルは移り変わりが激しいコンテンツでもある。新しいグループも数えきれないほど全国で生まれているのだ…忘れ去られるのも早い。

 

 彼女の栄光に縋りついていたわけでもないし、彼女の失踪が枷になるわけでもない。ただ、1人の姉がいなくなってしまったに過ぎない。

 

 別に特段話して明るい内容じゃないから、他には話していなかったんだけど…こいつみたいに知っている人からすれば俺の態度は不思議に思えたわけだな。

 

 

「悪かった、こんな話して…でもそう気を落とすなよ。俺はロックも好きだから始めたわけだし、とっくに乗り切った過去だからな」

「…すみません、軽率に聞いてしまって」

「だからいいって」

 

 

 …部屋の空気が悪くなっちまったな。こんな話をするのも、俺の作曲が上がっちまったからだけど。話を戻そう、俺がこれにどう関わるべきか。

 

 作曲ねぇ…しかもスクールアイドルの曲を作れとか俺のジャンルに合ってない。曲調も使う音響もまるっきり違う。

 通常、ジャンル曲はそこに知識と経験を持っている奴が担当するべきだ。俺はこの3年間、ずっとロックの曲しかやってこなかったら不適切に決まってる。

 

 でも、こいつの本気は伝わってくる…目の前の夢に手を伸ばしている…

 ロック同好会の俺たちと同じような気合だ。誰もがこんなに真摯に打ち込もうとは思わない。

 

 そう、中川も自分の思う「大好き」に夢中な点では、俺らと似ている…普通にスペックも高いし。

 

 

 

 俺は、そんな彼女にどうするべきか…

 

 

 

 

「はぁ……どんな──」

「え?」

「どんな、曲にしたいんだ」

 

 

 …結局、自分から面倒に片足突っ込むんだよなぁ。

 

 その返事が来るとは思ってなかったのか、中川が一瞬静止する。だが直ぐに驚きの表情で俺を見返した。

 

 

「作ってくれるのですか!?」

「1曲だけな…勘違いするなよ?こっちも新曲の構成で悩ましていたから息抜きになると思ってやるんだ」

 

 

 その場で思いついた嘘をつらつら並べるが、どうせこいつのことだ…なんで手伝うかバレるだろう。

 

 ただのお人好しだ。彼女が困っているから手伝おうとしたのだ…我ながらポリシーに反しているというか、バカというか…

 

 とにかく、一度言ってしまった言葉は取り消せない。目の前で喜びを露わにしている中川を見ながら、己の中途半端さに毒づいた。

 

 

「ありがとうございます、アオトさん!」

「へいへい…でも、ベースとなる歌詞は作ってくれよ?俺、ボキャ貧だから」

 

 

 歌詞の才能は流石にないからな。こればかりは歌う本人が決めた方が歌いやすいし。

 

 そんなわけで俺は中川が歌詞をくれ次第、彼女の曲を作ることになったんだが…これが後のバンドライフに大きく影響するなんて思ってもいなかった。

 

 …何か、このパターン多過ぎないか?

 

 

 

 

 

 

 ☆★

 

 

 

 

 

 

「スクールアイドルねぇ…」

 

 

 その帰り道、俺は1人で帰路に着いていた。バンドは今日お休みだし、家に直行ルートを中川に捕まった形だったのだ。

 思えばあそこで出会ってなければこの話はなかったのかもしれない…イベント発生の予知能力でもないものか。

 

 …もう空が暗い。結構な時間、駄弁ってたんだな。向こうに沈む夕日を眺めながら、ふと思い出してしまった。

 

 あれも、こんな夜空だった。日も暮れたというのに、盛り上がり続ける歓声。スポットライトに当たる6人と、会場がシンクロし合う。

 

 そしてセンターで、メガホンを持ったリーダーが意気揚々と俺たちに煽るのだ。まだ祭りが始まったばかりとでも言うかのように。

 

 

『てめーら!楽しんでいますかー!?』

『オオオー!!』

 

 

 一斉に観客席から咆哮にも似た歓声が響く。コーレスの一環とはいえ、ここまで盛り上がるステージはなく、それは一重に彼女のカリスマ性の現れであり、みんなから愛されるスクールアイドルだったことの証明である。

 

 そして、夢のような時間がステージで繰り広げられるのだ。特に最後となったドームライブは半端じゃなかった。

 

 

『どうよ?アオもニコッとした?』

『うん…!すげぇよニコ姉!』

『フッフッフ、今日も最高だったぜい!このまま突っ走って笑顔になるダス☆』

 

 

 …家に帰ってきて、俺に1番で聞く質問。彼女のライブを見るのはライブで自家に焼き付けることもあれば、テレビ越しに応援する時もある。

 

 だけど、その全てのライブで七咲ニコルは最高のライブとしていた。他の仲間たちもそうだ。会場と一体化するあの空気はまさに無敵そのものであり、すごい意外言いようがなかった。

 

 そして姉からの話もワクワクして、舞台裏での出来事や本番中のトラブルなど、唆るような話題にこっちもハラハラして、でもそれも含めて楽しくて…

 

 …でも、もう見れなくなったし、聞けなくなったんだよなぁ。あの頃の記憶もだんだん輝きを失っていくのだろう。

 天を仰ぐと、暗くなった夜空がある…だが都会の夜空の下からでは星を見ることはできなかった。

 

 

「……久しぶりに、昔の動画漁ってみるか」

 

 

 過去の記憶を思い返すと、そんな言葉がこぼれてしまった。

 

 確か家に過去のライブのファイルがあったはずだ。ドライブの奥底に埋まっているだろうけど。

 大切に保管されている動画を見れば、何かインスピレーションが湧いてくるかもしれないな。

 

 そんな調子で家に到着した。シャッターが閉まっている表を確認し、裏手に回る。

 今日も早仕舞いしたのか。まぁ、最近はショッピングモールとかにもあるからな…元から客が少ないのは置いておいて。

 

 裏口の扉は鍵がかかっていなかった。そのまま入ると電気のついていない暗い空間が迎え入れてくれた。

 スイッチを押すとこじんまりとした部屋に灯りが付く。店部分にほとんどスペースを奪われているから、キッチン件リビングのテーブルに荷物を置いた。

 

 それにしても、静かだ…今日は平日だと言うのに、この静寂に包まれた部屋にいると存外孤独を感じるものだ。

 

 そうか、これってもしや──

 

 

「…遂に夜逃げでもしたか?」

「誰が家を捨てるかアホ、ここにおるばい…キサンこそ帰ってきたならただいま1つでも言わんかい」

「…ただいま,ネロ姉」

 

 

 ただ仮眠を取ってただけのようだ。口の悪い女性の声で振り返れば、そこにはこの家の主人…そして俺の引き受け人であるネロ姉が突っ立っていた。

 

 黒髪の長髪をボサボサにしながら特徴的な喋り方をする彼女だが、これでも20代。

 だから勝手にネロ姉と呼んでいる。本人はあまり好んでいないようだけど。

 

 眠そうだけど、またバイクでどっか走ってたんだろう。店があるからと夜中に爆走するのは人としてどうかと思うんだけどな…

 

 でも、態々1人で俺を育ててくれてるし、文句は言えない。精々彼女の言葉の返しに毒を吐くくらいだ。

 

 シンセサイザーを片手に、俺は自分の部屋へ向かう。早速今日から調べたりしなきゃな。

 

 

「早速、作曲かいな…またあの狂瀾バンドの曲」

「ロックな…まぁ、今回はそれに加えてって感じだ」

「……?」

 

 

 そのまま扉を閉める。多少は作業ができる俺の部屋にシンセサイザーを置く。パソコンを開き、目的のフォルダを探し始める。

 

 …スクールアイドルは、過去に俺が離れた存在だ。星のように輝いたが、消えてしまった存在。

 

 3年間、俺はスクールアイドルの曲を聞かなくなった。自分の音楽を好きだと思えなくなってしまったからだ。

 嫌いになったわけではない…ただ、好きにもなって良いのか分からなくなったのだ。

 

 でも、誰かが輝きたいのなら、俺がその手助けをしてもいい…それくらいなら、いいよな…俺の音楽が何であれど。

 

 昔の動画を引っ張り出しながら、俺はセブンスが引退してから初めて、スクールアイドルに近づくのだった。




中川奈々…スクールアイドルは結構前から見ている。セブンスの中ではニコル推し。

七咲逢音…七咲ニコルの弟。過去の出来事がきっかけでスクールアイドルから離れ、代わりにロックに夢中。でものはクールアイドルと少しだけ向き合おうとしている。

七咲ニコル…伝説的なスクールアイドル。アオトと同じ、水色の髪に赤メッシュを入れた「音楽に愛されし者」。天才的な音楽センスと圧倒的カリスマでセブンスを一世風靡させた。

ネロ姉…今のアオトの姉(のような存在)。これから深掘りしていく予定…あれ?でもネロって何処かで……?
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