うちの姫様はチョロ可愛い   作:水代

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時には昔の話をしようか⑧

 

「ふむ、ミミクリーフロッグ……南のほうだとよく食べられている一般的な蛙肉だネ」

「何だ、知ってたのか」

「昔南に行った時に少し見たくらいだネ。温暖で水源の豊富な南以外にはほとんど生息してないからこの街だと見ることは無いかもヨ」

 

 確かにあの化け蛙は水分が足りないと乾燥で死ぬし、極端に冷えると凍死するので砂漠地帯の多い西と寒冷地帯の北など他の地方では生きられないかもしれない。

 

 たしかにこの街だと見ないとは思っていたが、それでもマオが知っていたということに少し驚かされた。

 

「ま、しばらくは化け蛙狩って過ごしてたな。肉美味しいし」

「ん、蛙は美味しいな」

 

 出身が同じ地方なだけあって、姫様も心当たりがあるらしく頷いている。一匹のサイズが大きいし、それなりにたくさん生息している、さらに味は良いので庶民から王侯貴族まで幅広い層で愛される(食欲的な意味で)モテる蛙である。

 

 まあとにもかくにも、あそこでミミクリーフロッグの肉という食肉を獲得できたのはかなり大きかった。

 食生活がぐっと豊かになったし、便利な魔石も獲得できた。

 そうしてしばらくは蛙を狩り続け、レベルを上げていったのだ。

 

「転機は……そこから7年ほど先の話だな」

 

 

 * * *

 

 

 RPGにおける敵というのは基本的に無限に沸いて来る。

 何せRPGというやつは敵を倒して味方キャラの強さを伸ばすのが基本的な方式だからだ。

 当然敵の数が有限となると強化のリソースが有限となってしまう。

 

 故に一部のボス役などを除いて基本的に敵というのはいくらでも沸いて来るわけだ。

 ただ少なくとも俺にとってこの世界は現実だ。

 どこからともなく魔物が沸いて来るなんてことあり得ない、それがあるならとっくにこの世界の人類は滅んでいるだろう。

 

 ただ今だけはゲーム時代の仕様を残していてほしかったと嘆くばかりだった。

 

 初めてミミクリーフロッグを相手にしてから一週間。

 

 そう、ついにいなくなってしまったのだ……。

 

 湖周辺のどこに石を投げても最早あの舌は伸びてこない。

 ちょっと周辺で一週間トータル30匹ほど狩っただけなのにこれは酷い、と嘆く。

 いやまあ一か所で30匹も魔物を狩ればそれは出なくもなるだろうというものだろうが。

 

 けれど多分またどこかの水辺に行けばいると思う、思うのだが。

 これ以上必要か、と言われるとまた悩ましいところだ。

 

 ―――最後のほうもう効率追求し過ぎて何やってんだみたいなことになってたしなあ。

 

 それもこれもミミクリーフロッグから獲得できる魔石が便利過ぎるのが悪いのだ。

 

 『穿孔(ボーリング)の魔石』

 

 それがあの化け蛙から獲得できる魔石である。

 文字通り『(あな)』を『穿(うがつ)』ための魔法が使えるようになるわけだが、これのお陰で殺した蛙を掘り出す手間が省けた。

 窒息させた蛙の元に行き、『穿孔』の魔法を発動するだけで地面に穴が開く。

 最初は小さな穴だったが、今となっては一度の発動で蛙の全体が見えるほど大きな穴を開けることができる。

 

 魔法というのは使えば使うほどに熟練度のようなものが上がるわけだが、熟練度が上がると同じ魔力量でも魔法の効果が上昇する。

 同時に『オレ』の記憶によれば()()()()()()()()()()()らしく、しかもそれは『悪食(バッドイーター)』によって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()らしいのだ。

 

 ―――まったくもって『悪食』さまさまである。公式チートは伊達じゃない。

 

 『オレ』のゲーム時代の記憶を辿れば、30個も魔石食いをすれば下位魔法ならばとっくにカンスト*1している、とのことなのでもう良しとすべきなのだろう。

 

 レベルも大分上がって今なら鬼面鼠相手でも素手でもやれるくらいには強くなっている。

 

名前:ルド

年齢:5

性別:男

レベル:7

体力:371/388

魔力:61/67

心力:78/99

身体能力:D

魔法適性:C

 

 まあ実際にやり合うと手足の長さの問題で不利なのだろうが、そこは槍を使って誤魔化せば良い。

 何よりいざという時に魔法が使えるという点が頼もしい。

 いざ逃げるという時に『穿孔』の魔法で足元に穴を作れば即席の落とし罠となって相手の動きを止めることができる。勿論攻撃の際にも有用だ。

 

 戦闘の感覚は大分()()()()()()()

 そもそもI F S(インフィニティファンタジーストーリー)というゲームはフルダイブタイプのVRゲーなのだ、自分の手足を動かして戦う感覚は『オレ』が良く知っていた。

 その記憶を掘り起こしながら今の自分にアジャストしていけばよい。

 

 ―――もう山に籠ろうかなあ。

 

 などと思う。

 実際もうあの家に戻る意味など寝る時くらいしか無い。

 この一週間の間に一度だけミミクリーフロッグの肉を持って村へと向かったのだが、大量の肉と引き換えに渡されたのは一籠分の野菜と麦だけだった。

 

 『不満なら別に構わんのだぞ』と上から目線で、完全に子供相手と舐め切った態度の村長の顔面にパンチをお見舞いしたくなる気持ちを抑えながら帰ったが、今回のことで完全に理解した。

 

 あの村はもうダメだ。

 何があっても自分を受け入れる気など無い。

 精々うまく利用してやるくらいの考えしか無いのだろう。

 どうしても必要なものがあれば不利レートなのを承知で交換をすることもあるかもしれないが、接触は最低限で良い。

 あっちも何か問題があればあっさりと自分と切り捨てるに違いなく。

 

 結局頼れるのは自分だけなのだ。

 

 そのことを理解して、これまで以上に強さを欲した。

 

 

 

 それから7年。

 

 無理なく魔物狩りを続け、魔石を収集していく。

 そもそもゲーム時代、魔物の設定というのはシナリオと違って固定だったのだ。

 『オレ』は結構IFSというゲームをやり込んでいたらしく、大半の魔物は思い出そうとすれば思いだせた。

 その中でこの辺にも生息していそうで、それでいて自分でも倒せそうで、尚且つ魔石が有用なものをピックアップし、さらに敵の攻撃パターンも記憶の中に残っているのだから、慎重にやれば早々危険も無く順調に強くなっていくことができた。

 

名前:ルド

年齢:12

性別:男

レベル:20

体力:1770/1770

魔力:576/576

心力:96/99

身体能力:C+

魔法適性:B+

 

 これが現在の俺の簡易ステータスになる。

 身体能力などの詳細なステータスはまだ見たことは無いが、なるべく多色の魔石を取り込むようにしたのでそうバランスの悪いことにはなってないはずだ。

 

 さて、一つ疑問に思わないだろうか。

 

 7年前、わずか一週間で4まで上がったレベルが7年かけてまだ20ということに。

 実際レベル20までへの到達は1年ほどで終わっている。

 

 つまりそこから6年、レベルが一つも上がっていないということになるのだが、これには一つどうにもならないゲーム時代の仕様がある。

 

 簡単に言えばIFSというゲームは『種族』と『年齢』でレベルキャップがかかる仕様があるのだ。

 

 『オレ』の記憶の中の制作者からのコメントによればゲーム開始は最低5歳から始まるが、5歳の子供が剣振り回して大陸最強になって無双ゲーしてたらおかしいだろ、とのことらしい。

 

 というわけで人間種族の場合ならば5~11歳まではレベル20、12~17歳まではレベル50が上限となり、18歳以降がレベルの制限が消える。

 

 そして俺が『オレ』を思いだして7年近くが経ち、先日ついに12歳の誕生日を迎えたのでレベルキャップが解放されたはずなのだ。

 

 そんなわけで今日もまたレベル上げと夕飯の獲物探しに山へと向かおうと家を出て……。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

*1
カウンターストップの意。要するに限界値に到達している、ということ。

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