王様戦隊キングオージャー幕間 煉獄の咎人   作:banjo-da

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災厄の凱旋

……その昔。

 

五人の英雄が守護神・キングオージャーと共に、地底国バグナラクを打ち倒し…人類に平和をもたらした。

 

────だが。誰が言ったか分からない、こんな予言が……おっと。今更隠す必要も無いかな?正しくは俺が残した予言さ。

 

…失礼、話が逸れたね。

『二千年の眠りを経て、バグナラクが地の底から甦る』……今年がその予言の年。そして予言の通り、彼等は再び人類の前に姿を現した。

 

人類を滅ぼすべく、チキューの国々へ侵攻を仕掛けるバグナラク。各国の王は民のため国のため、時に争い時に手を取り合い…各々が思惑を秘めながらも、協力してバグナラクに抗っていた。

 

 

これは。平和を守る王達の物語。

─────そして。

 

 

 

 

 

「─────俺様が!世界を支配する!!」

 

 

 

 

 

未だ玉座に着いたばかりのひよっこ……これから真の意味で、『王になる男』の物語である!!

………とさ。

 

 

 

 

 

ここは、『シュゴッダム』。

チキューに存在する五王国の中でも最大にして、最強の工業国家。

かつてチキューを救った五人の英雄の内、頂点の座を手にした始祖の王『ライニオール・ハスティー』が治めた始まりの国でもある。

 

「ギラ様。」

 

「……はい。」

 

「貴方が民を大切に思っている事は、このドゥーガ…重々承知しております。特に貴方が育った養護園の子供達は、貴方様にとって家族も同然だと。」

 

「そう!そうなんです!!だから……」

 

「しかしですね!!!城内の間取りや、玉座の間に繋がる城の抜け道を勝手に教えて良い事にはなりません!!!そうホイホイ喋ってたら衛兵が警備してる意味が無いでしょうが!!!」

 

「……ごめんなさい。」

 

そんなシュゴッダムの王城コーカサスカブト城。

その玉座の間で、一人の青年が床に正座させられている。

 

「……全く。気持ちは分かりますが、貴方はもうこの国の王なのです。きちんと正規の手続きさえ踏んで頂ければ、子供達を招く事も、養護園を訪ねる事も咎めはしませんので…どうか王としての自覚を持って下さい。

───良いですね?ギラ様。」

 

「………はい。」

 

素直に反省して頭を下げる青年。

彼こそが、このシュゴッダムの若き新王……名を『ギラ』という。

 

「分かって頂けたようで何よりです。……では。ここからは次の話題に移りましょう。

貴方様が教えた抜け道を使ってまで、子供達が伝えたかった事……それは。」

 

「はい。ヤツが……追放された筈の『エレファス』が、シュゴッダムに帰って来た…ですね。」

 

 

 

 

 

 

「エレファス?誰だそいつ?」

 

「……エレファス・アクティオン。15年前、『神の怒り』の直後。未だ復興途中のシュゴッダムにおいて、混乱に乗じた汚いやり口でのし上がろうとした罪人だ。元々はシュゴッダムの地主の一つ、多少は名家…と呼べる程度に過ぎなかったアクティオン家の当主だった。」

 

「───左様!!しかし奴は、混沌とした世情を良い事に……ありとあらゆる悪逆で、自らは力を蓄えながら、善良な市民に負担を強いていたのです!!!

例えば……我が国トウフの前王イロキと手を組み、食糧を独占する彼女の方針を手助けしておりました。エレファスはその見返りに、シュゴッダムにおけるトウフ産の食糧流通において大きな力を得た。……無論、これだけに留まりませんよ。」

 

「……なんて穢らわしい。やってること、醜悪そのものじゃない。」

 

─────五王国。

テクノロジーの国『ンコソパ』。

美と医療の国『イシャバーナ』。

食を担う豊穣の国『トウフ』。

法と裁きの国『ゴッカン』。

ここにシュゴッダムを加えた五つの王国こそ、かつての英雄達が作り上げた五王国である。

シュゴッダム国王のギラを除く四人の王達は、各々の玉座に腰掛けながら通信越しに言葉を交わしていた。全員が眉間に皺を寄せ、厳しい表情を浮かべている。

 

「……所で。カグラギ、その話は誰から聞いた。」

 

「ハッ!シュゴッダムからの情報です。」

 

じっ、と一人の男を見詰めながら静かに問うのは、国際裁判長兼ゴッカン国王の『リタ・カニスカ』。

それに対して大真面目な表情を浮かべ、恭しく答える大男…トウフ王殿様『カグラギ・ディボウスキ』。

 

「あのお人好しが俺らに黙って、テメーにだけンな大事な話するワケねぇだろ。嘘にならねー微妙な言い回しすんじゃねぇよスカポンタヌキ。」

 

「どうせ、またシュゴッダムに部下忍び込ませてたんでしょ。それかスズメさんからの密告…どっちにしろ全部バレてるわよ。」

 

カグラギの言葉を鼻で笑うガラの悪い青年は、ンコソパ総長『ヤンマ・ガスト』。

そして呆れた様子で肩を竦めているイシャバーナ女王の『ヒメノ・ラン』。

 

「………どうなんだ、カグラギ。」

 

「……ほぇ?」

 

「おい。裁くぞ。」

 

「───そんな事より!!!!

バグナラクとの戦いも激化し、おまけにギラ殿が玉座に就いた直後のこのタイミングで!!!あの大罪人がシュゴッダムへ帰って来たのは由々しき事態かと!!!!!」

 

リタの追及を勢いだけで押し返し、強引過ぎる話題の転換を図るカグラギ。既にカグラギのやり口にも慣れていたリタは、短い沈黙の間に"カグラギ追及"と"話題の再開"とを天秤に掛け……結局、元の話題に戻る事を選らんだ。

 

「その通りだ。ヤツは悪知恵と搦め手で成り上がった男。……ラクレスを相手にしていた時、ギラは反逆者だった。ある意味、最もしがらみに囚われず、ラクレスの策も正面から力業で突破していくだけの自由な立場だったと言える。

───だが今のギラは王だ。国と民を守るべき立場にあり、重責を抱えた状態のギラが相手をするには…エレファスの様な人種は最も相性が悪いだろうな。」

 

「ラクレスは気に入らねぇヤローだったが、そういう手合いを相手にするにはギラより向いてるだろうな。有無を言わさず、従わない者を許さず、偉そうな態度崩さないクセして付け入る隙を見せない。……対してギラは。」

 

「お人好し、無鉄砲、純粋。……エレファスやカグラギみたいなのに、良いようにされる要素の塊じゃない。」

 

「───ヒメノ殿?何故そこで私の名前が?」

 

「俺が眠ってる間にそんなヤツがいたのかい…。随分と悪どい真似をするものだね。───だが、罪人…とか戻って来た、とか言うからには……そいつは今まで何処にいたんだい?」

 

「「「「───!?」」」」

 

当然の様にするりと回線へ紛れ込んで来る、白い装いへ身を包んだ一人の男。

彼の名はジェラミー・ブラシエリ……人とバグナラクの間に生まれし、自称『狭間の王』がニコニコと笑みを浮かべていた。

 

「急に入って来んなよスカポンタヌキ…ったく。ジェラミー、テメー今何処に居やがる。」

 

「おっと、驚かせたかい?実はコーカサスカブト城に来ていてね。コガネとブーン…ギラと仲良しの子供達が、彼に伝えたい事がある、って言うから俺も一緒に来たのさ。それがまさか、そんな大事だったとは……。」

 

「────待て。その情報、つまりエレファスが戻って来たという話は…シュゴッダムの情報網が得た物では無いのか。」

 

「そのガキ共は俺も会った事がある。なんでそんな重要事項、ガキ共経由で伝わってんだ…。」

 

「そもそも何故、彼らがエレファスを知っているのです?15年前と言えば、ブーン殿は生まれておらず…コガネ殿も生まれていないか、知らない、良くてうろ覚え程度でしょうに。」

 

「正確には神の怒りの後…二年ほどヤツは暗躍していたがな。裁かれたのはその後だ…が、それを加味しても、カグラギの意見に私も同意だ。」

 

ジェラミーの言葉に疑念を浮かべる王達。ギラと最も近しい少年と少女を把握している彼らには、子供達の年齢からして辻褄が合わない事に気付いたためだ。

 

「どうやらそのエレファスとやら、養護園を訪れてわざわざ名乗ったらしい。その上ギラ宛ての手紙も預けたそうだよ。ドゥーガが確認して本物だと断言した。……一応、後で裁判長にも確認を依頼すると言ってたから、後日ゴッカンにも連絡が行くんじゃないかな。」

 

王達の言葉に疑問に笑顔で応えるジェラミー。だがそれを聞いてなお、王達の表情が和らぐ事は無い。

 

「それは分かった。だが…何でわざわざガキ共にエレファスが会いに行った、ってのは分からずじまいか。」

 

「国を追われた罪人なんでしょ。ギラの時みたいに、そうそう王城には入れなかっただけじゃないの?」

 

「だとしても他にやりようは幾らでもある。ギラやシュゴッダム王室に用が有るのなら、わざわざ子供達を使う以外に方法は有るだろう。」

 

「ギラ殿と子供達の関係性を知っているのなら、彼等に姿を晒すのは悪手でしかない。逆にそこを利用するなら子供達を人質にでもしそうな所ですが…名を名乗り、姿を見せ、そのまま去る等リスクが大きい。何かしらの思惑があっての事でしょうね。」

 

各々思案を始める四人の王。話が進んでしまいそうな気配を感じたジェラミーは、慌てて彼等に制止をかける。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!お前さん達、相変わらず行間を読む癖が無いな!……どうやらエレファス…奴さん、ただギラへの伝言を頼みに養護園へ行った訳では無いらしい。」

 

そうして彼は、その手に持った一枚の紙を掲げて見せる。

 

「その子…確かハーカバーカの…!」

 

それは肖像画。描かれているのは一人の女性。

彼女の姿には四人の王達も見覚えがあった。神官を思わせる赤い装束に身を包んだ彼女の名は…。

 

「皆、彼女の事は記憶に新しいだろう?ギラの戴冠式に現れ、お前さん達を死の国へ誘った……名をデボニカ。

エレファスは彼女を娶りに来た…そう言っていたらしい。」

 

 

 

 

 

 

シュゴッダムの王室から、どういう経緯で養護園へ移ったのか…僕は昔の事は殆ど覚えてない。

けど。あの日の事は僕も覚えてる。

 

シュゴッダム全土が神の怒りから立ち直りつつある。けれどそんな中で、圧政と言っても良いほどに民を苦しめていた男が居た。

当時の王…それがまだ幼いラクレスだったのか、僕やラクレスの父親だったのかは覚えてないけど……とにかく、王様がそいつを何とかしようとしていた事も民の間に広がっていた。だから僕は、ラクレスの欺瞞を目の当たりにするまで王様を信じる事ができた。

 

その悪逆を尽くした男は当然有名になり、貧しい養護園の小さな子供…当時の僕ですら分かる程に、その男の顔は広まっていたんだ。

 

だから僕は、ある日養護園へ訪ねて来た人物がその男───エレファス・アクティオンだとすぐに分かった。

 

 

 

『美しい少女よ!確か…名はデボニカと言ったな?私の妻となる権利を与えよう!』

 

突然やって来たそいつは、当時僕達と一緒に住んでいたデボニカにそう宣言した。

 

「……ウッザ。それ、私に何のメリットがあるわけ?」

 

「ほう?今このシュゴッダムにおいて、王以外で最も力のあるこの私にそれを聞くか…面白い女だ。」

 

「勝手にやって来ておもしれー女扱いするようなヤツに、嫁いで良い事なんて一つも思い浮かばないんですけど。大体、歳の差考えたら?変態貴族扱いされますよ、エレファス…さ~ま?」

 

心底面倒くさそうな顔をするデボニカに対し、男は愉快そうに笑う。

全身を成金趣味な装飾で飾り、整った顔立ちを台無しにする程下品な笑顔を浮かべる男。

 

だけど一番恐ろしかったのは、そんな三下悪役を演じているだけだと感じさせる…氷の様に冷たい瞳。

バグナラクの様な殺意では無い。

ラクレスの様な尊大さでは無い。

比較対象に挙げるのは申し訳ないけど…リタさんの様な、感情を押し殺していた目でも無い。

 

ただ、どうでも良さげに。妻となれと告げた女性に対してすら、一切の感情が籠らない…とても冷たい、無機質な目を向けていたんだ。

 

僕はそれが怖かった。とても恐ろしくて、デボニカが殺されてしまうんじゃないかと思って。

 

「───止めろ!デボニカに触るな!!」

 

「ちょ、ギラ!?」

 

気付けば二人の間に割り込み、エレファスを睨み付けていたんだ。

 

「………ふむ。どうやら、立派なナイトが付いていたようだね。…少年。名は?」

 

「………ギラ。」

 

「ギラ…覚えたよ。君の勇敢さは素晴らしい。始祖の王、ライニオール・ハスティーの伝説を思わせる。私は君がとても気に入った…気軽に兄弟、と呼んでくれても構わないよ。光栄に思いたまえ。」

 

手を叩いて称賛の言葉を口にするエレファス。表情も上機嫌そのものって感じだったけど…やっぱり目は笑って無かった。

 

「誰が───」

 

「断るのは早計というものさ。さて…今日は素敵な騎士の勇気に敬意を示して帰るとしよう。───だが、私は諦めないよ?愛しのデボニカ…それに勇敢なギラ。また会おう。」

 

 

 

────結論から言うと、エレファスは二度と養護園には来なかった。

 

後で聞いた話だけど…エレファスが去った翌日。

上手く裁かれないギリギリのラインで悪さをしてきたエレファスの一派は、ついに言い逃れの出来ない悪事が発覚し…裁かれた。一度こうなれば、今まで見逃さざるを得なかった悪事も全部余罪として含まれ、アクティオン家は取り潰しに。

悪事に加担した大勢が死罪、投獄、国外追放等の厳しい処分を言い渡され……ギリギリで死罪を免れたエレファスも、持ち得る全ての財や名誉を剥奪され…そして国を追われた。

 

 

 

シュゴッダム史上最悪の民と呼ばれた男の成り上がりは、こうして幕を閉じた……ハズだったんだ。

 

 

 

 

 

宇宙の片隅の惑星・チキュー。五つの王国が治めるこの星に、巨大な危機が迫っていた。

………これは、王様達と。

地獄を巡る旅路を終えた、一人の男の物語である。

 

 

 

 

 





ギラくんの「ナァーッハッハッハッ!!!」でしか得られない栄養がある。
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