あべこべ貞操逆転世界のガーリッシュ白馬の王女様系男子 作:フェルナンデス
今後も頑張ります。
(弱みを握るとは言ったけど・・・あいつに弱みなんてあるの?)
金閣寺の見学を終え、修学旅行生一行はバスに揺られ宿泊地である旅館を目指していた。
バスの車内では各々が会話を楽しんでいる。
その中で私――村上唯は真剣に考えていた。
天敵である山本伊月の弱みを探ろうとするが、考えれば考えるほど奴が完璧人間だということを思い知らされる。
成績は常に学年トップで、何のことではないかのように100点を取ってくる。その度に周囲の男子からチヤホヤされており私は全く面白くない。
奴に勝ちたいと思い塾に通って勉強量を増やしても、奴を越すことができない。常に私の上に奴がいる。
そのせいでどんなに頑張っても、評価されるのは奴だけである。
更に憎たらしいことに、奴はスポーツまで万能である。
忘れもしない、あれは2年生に上がって新しいクラスになった時のこと。
親睦を深めることを目的に5、6時限目の時間を使い、クラスでドッチボールを行った。
(本気で勝ちにいって男子に当てたら嫌われそうだし、ここは女だけ当てにいって嫌われないようにしよう!)
私は計画通り、女には本気を出し男子には手を抜いた。そのおかげか男子たちは私の活躍を見てヒソヒソと小声で話し合っている。
口の動きをよく見ると「かっこいい」と言っているように思えた。
(これ絶対私のことかっこいいって話してるじゃん!これはいつ告られてもおかしくないパターンじゃない!?)
生まれてはじめて彼氏ができる。憧れていた青春の日々を私が送る事ができる。
この時の私はニヤニヤしていて相当気持ち悪かったと思う。
しかし、それは直ぐに打ち砕かれた。
私のチームと相手のチームは残り1人になった。私が当てることができればこっちの勝利である。美味しい役回りが来たと思った。
相手は男子の癖に背が高く、顔は男子が読む漫画に出てくるような白馬の王女様そのものだ。
(確か・・・山本君だっけ?正直男として見ることできないけど一応男の子だよね・・・。ここで勝ちにいったら女が廃るか!よし、ここはあえて負けて男子の好感度ゲットだ!)
私は彼に山なりのボールを投げてあげた。数秒後、彼はボールをキャッチして男子特有のふにゃふにゃしたフォームでボールを投げてくるだろう。
それに当たることでゲームセット。これで私の好感度は爆上がりだ。
この時はそう思っていた。
ボールをキャッチしたあいつは息を整えると、メジャーの大谷翔子顔負けのフォームで私に豪速球を投げ返してきた。
(待って、話が違うが・・・ぐふぇぇふ!!!)
気がつくと私は家のベットに寝ていた。
訳が分からず次の日学校へ行くと、教室へ入るなり視線が私に集中する。
何事かと言おうとしたその瞬間、クラス中から爆笑が起こった。
「あはは!主役が来たよ!!」
「待ってました、鼻血姫!(笑)」
「唯!昨日のはワザとなん?めちゃくちゃ面白かったわー(笑)」
「え、ちょっと待って?何のこと?」
友達が何を言っているか分からず、私は思わず聞き返した。
「え?覚えてないの?まさかそれもギャグなん?昨日ドッチで唯、山本君から顔面にボールくらって白目剥きながら鼻血流してたじゃん(笑)クラス中爆笑だったよ(笑)」
そう言われて私は全て思い出した。
カッコつけるつもりだったのに、思いもよらない反撃を受けて顔面にボールを受けたことを。
鼻から血を吹き出しながら地面に倒れたことを。
教師から担がれながら保健室に行く私を。
大笑いする女子たちのアホみたいな顔を。
運ばれる私を見てドン引きしている男子たちの顔を。
「あ・・・あ、あ〜そうそう!いや〜面白かった?え?わ、わざとに決まってるじゃん(笑)そうしたほうが面白いかな〜と思って狙ってやったのよ(笑)いや〜まさかそこまでウケるとは思ったなかったわ!!」
全てを思い出した私は道化に徹することにした。
しかし、心は大泣きである。
男子たちは私の顔を見て笑っている。
こんな筈ではなかった。
2年生になったら彼氏ができていろんな経験をするつもりだった。
部活の応援をされたり、活躍したご褒美に膝枕してもらったり、放課後に夕日を見ながら手を繋いで帰ったり、お互いドキドキしながらエッチをしたり・・・
これも全て山本のせいだ。
山本は男子に囲まれ昨日の活躍を褒め称えられながら、こちらに興味ないかのように振る舞っている。
体育祭でも奴は私のプライドを傷つける。
私が徒競走で一位をとっても、奴は私以上の差をつけて一位をとる。
アホな女共は山本のちんこがめっちゃ揺れていたとかエロかったとか揉みたいとかで盛り上がっていたが私はそれどころではない。
私は奴を許さない。
憎しみの炎を抱きながら奴を睨みつけた。
(こう考えると、あいつって考えれば考えるほど完璧人間なんだよなぁ・・・。まるで人生2周目ですよっていう感じ)
奴に目をやると、クラスの1軍男子を侍らせながら会話を楽しんでいる。
女には絶対に見せないような笑みを浮かべながら。
私はなぜか無性に腹が立った。
(何でもいい!奴の弱みを握りたい!小学生の時にうんこを漏らしたとか恥ずかしい話ないの!?・・・あ、そう言えば!)
私は隣に座ってる強子が奴と同じ小学校だったということを思い出した。校区が違うため、奴の小学校時代の話を私は知らない。
私は強子に聞いて見ることにした。
「ねぇ、ちょっと強子?あのさ、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「ん?何?エッチな話?」
「いや違うんだけど。山本っているじゃん?あいつとあんたが小学校が同じだって聞いたことがあるからさ、小学生時代のあいつの面白い話ない?」
強子に聞いたのが間違いだった。
強子はしばらく黙った後、ニヤリと笑い「みんな注目!」とバス全体を見渡した。
「唯がさー!山本君のことが気になるんだってー!なんか好きらしいよー!」
こいつは何を言っていやがる!?慌てて否定しようした瞬間、バスの中は盛り上がった。
「え、マジ!?唯が山本君のことを!?」
「ヒューヒュー!カップル成立じゃん!」
「エロじゃんエロ!エーロエーロ!」
性欲で脳をやられたアホ女共が沸き立つ。
「ちょっ、違うって!!強子の嘘だって!!」
男子たちは驚愕の目で私を見つめる。莉央君は呆気にとられた顔をしている。
(やばい!聞く相手を完全に間違えた!これじゃ完全に私が山本のことを気になっている奴じゃん!私は莉央君のことが好きなのに!てか、山本も直ぐに否定しろよ!)
山本に視線をやると、私は思わず息を呑んだ。
私は山本がこちらを睨みつけているのを想像していた。
しかし
山本は、信じられないというような目で私を見つめていた。それも、真っ赤な顔で口を押さえながら。
普段は女らしく振る舞い、女のことを汚物のように冷たく接する山本とのギャップに、不覚にも可愛いと思ってしまった。
ドキドキが止まらない。天敵相手に?こんな筈はない。
否定しようにも、山本のことを可愛いと思っている自分がいた。
いや、私は莉央君一筋だ。山本のことなんて嫌いだ。好きではない。
好きになっちゃいけない。
山本のことを必死に否定しようとするも、心の中では
(結婚したら村上伊月になるってこと?家に帰ったらあいつがご飯作って待ってる?あいつとの子どもはどんな顔になるんだろう・・・?)
私の心は山本への好きという感情に支配されていた。
その後、男子たちからの女子への罵倒に、私は正気に戻された。
山本も普段の、女を何とも思っていないような表情に戻っている。
しかし、顔はまだほんのりと赤いままだ。
私は山本の顔をちゃんと見れなくなってしまった。
好きでもない異性から優しくされたり話しかけられたりするとなぜかドキドキして好きになってしまう経験が誰しも一度はあると思います。