あべこべ貞操逆転世界のガーリッシュ白馬の王女様系男子 作:フェルナンデス
(き、気まずい・・・)
私は山本と並んで仲良く夕食を食べている。いや、仲良くではないな。
すごく美味しいご飯の筈なんだけど、緊張でよく味が分かんない。
彼氏ができた時のことを想定してトレーニング(妄想)してきた筈なんだけど、こうも上手くいかないとは考えていなかった。トレーニングではクールな私の振る舞いで男の子は勃起が止まらず、私に治めてほしいと懇願してくる筈だったのに。処女特有の妄想ってやつだろうか。私は他の陰キャとは違うと信じ込んできたが、結局同じだったか。
漫研部のオタク共を馬鹿にしてきたけど、オタサーの王子を囲んでいる時点で男の扱いは私よりも上だろう。漫研部の奴らすげーな。
やばい、自分が惨めに思えてきた。
チラッと山本を見てみる。
山本は何でもなかったかのように小鉢の料理を上品に口に運んでいる。
山本の顔を間近で見ることは今までなかったので、こっそりと観察してみる。
山本のことを「男を侍らせる嫌な女男」というふうに見ていたが、間近で見るとこいつも男なんだなと思う。
きめ細やかな肌、男らしい長い睫毛、潤いのある唇。
男特有の良い匂いもする。やばい、ドキドキが止まらない。やばい。
(もし山本と付き合うことになった女はこの体を堪能出来るんだろうな・・・)
私は山本との生活を妄想する。
朝起きたら家の前に山本が立っていて一緒に通学する。私は寝坊してしまったので山本の機嫌が悪い。私は何とか機嫌をとって許してもらう。
授業中に寝ていると、隣の席の山本が起こしてくれる。クラスの連中は私と山本が付き合っていることを知っているから、きっと強子とかから揶揄われるんだろう。山本は困った様子だ。
昼は山本の手作りの弁当を食べる。努力して作ってくれたことが伝わる味だ。ケチャップでハートマークが描かれている。山本を褒め頭を撫でる。卵焼きが少し焦げてるけど気にしない。嫌そうにしているが、まんざらでもない様子だ。・・・え?うちの中学は給食だから弁当はありえないだって?良いじゃん妄想なんだから。
部活が終わると、山本もちょうど終わっていた。で、一緒に下校し、公園のベンチでたわいもない会話をしている。次第に会話の内容がエロいことに変わっていく。エロいことを嫌がっていることを示すが、本当はエッチなことに興味がある山本はソワソワしだし、それに気づいた私はあいつを抱き寄せ、そして・・・・
(きゃーーーー!!!)
もう自分の気持ちを隠せない。
山本のことを好きになってしまった。
山本と話したい。
山本のことを知りたい。
しかし・・・
(きっと私は山本から嫌われているんだろうな・・・)
私は今まで、山本に対して敵対心を示す行動をしてきた。
直接悪口を言ったことはないが、あいつを徹底的に避け続けた。
莉央君と会話しているあいつを遠くから睨みつけてやったこともあった。
それに、今日のバスでの出来事。
もしも私が山本の立場だとすると、絶対私に好印象は抱かないだろうな。
いや、それか無関心かもしれない。嫌われるよりかはマシだろうか?
味噌汁を飲みながら考えた。
「・・・あ、あの・・・ねぇ、ちょっと・・・」
・・・ん?考えに耽っていたせいで気づかなかった。
喋りかけられた?誰から?
「あ、あの!」
「んへぇっぼ!?」
驚くべきことに、私に話しかけていたのは山本だった。
やべっ、変な声と一緒に豆腐が口から飛び出た。
(どうすればいいんだろう)
村上さんからエロい目で見られた。股間を見られることはあるが、ここまで露骨に性的な目を向けられるのは初めてだ。しかも同級生の村上さんから。
俺の視線に気づいた村上さんは、慌てて視線を逸らしていた。何でもなかったかのように振る舞っているが、耳が赤くなっており動揺が隠せていない。
(まぁ、気持ちは分かるよ村上さん・・・)
前世で例えるなら、同級生の女の子のブラを覗いていたらそれがばれ、笑われるわけでも怒られるわけでもなく気まずい空気になってしまったようなもんだからな。まあ、見られたのは何の価値もない俺の胸なんだけど。
この世界の男はブラを着ける。前世の記憶がある俺からするとブラをつけることに抵抗があったし、つける必要なんてないと考えていた。だって女と違って膨らみはないわけだし。日常生活で困ることなんて一つもない。小5の時までそう思っていた。
状況が変わったのは6年生になってしばらく経った頃。
朝、股間に不快感を感じながら目を覚ました。恐る恐るパンツを捲ってみると・・・なんと射精していた。体は怠いし胸もヒリヒリする。
射精ことは前世から知っていたから何となく理解できたが、他の現象が理解できない。恥ずかしかったが父さんに聞いてみると、父さんは喜んでいた。
話を聞くと、やっぱり俺には精通が来たらしい。うん、それは理解した。理解し難いのは、この世界の精通は前世の生理と似た現象だということだ。意思に反して射精することが定期的に起こるようになるらしく、体が怠いのもこれが原因だそうだ。また、胸がヒリヒリするようになったのは、父乳を作ることが出来るようになったかららしい。そんな馬鹿な話があるかよ。
俺は父さんに連れられブラを買いに行った。試着室でブラを着用する俺は変態になった気分だ。
夕飯はとろろご飯だった。この世界は赤飯じゃなくてとろろご飯になるらしい。事情を察したのか、母さんは涙を流していた。父さんの得体の知れないものを見るような目は忘れられない。
(気持ちは分かるけど、気まず過ぎるよ村上さん・・・)
分かりやすく動揺している。気の毒なくらいに。
正直、俺は全く気にしていない。むしろ村上さんのような子が、こんな俺を異性として見てくれていることに喜びを感じている。
男らしく、もっと可愛く生まれてきたかった。
莉央君が羨ましい。小動物のように愛らしい彼に惚れる女子の気持ちがすごく分かるし、俺も彼のようになりたいと何度思ったことか。前世の記憶力がある俺が可愛くなりたいとか言ったら気持ち悪く感じるかもしれないが、この世界で長く暮らすことで俺の価値観は変わった。俺も莉央君みたいに可愛いと言われたい。しかし、女子からは「巨男」だったり「白馬の王女様」と言われ、全く異性として意識してくれなかった。
結果、同性から慕われ異性からは敵視される状況になってしまった。
(でも、この気まずい雰囲気はなんとかしたい・・・!)
喋りかけてみる?
拒否されたり変な目で見られたりしたらどうしよう・・・
自分の勘違いだったら?
・・・いや、完全に見てたよな。
「あ、あの!ねぇ、ちょっといい?」
勇気を出して村上さんに喋りかけてみた。しかし反応がない。聞こえていないっぽいな。
「あの!」
「んへぇっぼ!?」
2コール目で気づいたっぽい。驚いたのか、村上さんが変な声を出した。
同時に、口から豆腐が飛んできた。
(人間ってこんな声が出るんだ)
「ぷっ!くく・・・」
思わず吹き出してしまった。
村上さんの顔はさっきよりも面白くなっている。やばい、笑いを抑えられない。
「あはははっ!ごめ、・・くくっ!いや、はーー・・・ひひ」
「え、え?や、山本・・・君?」
村上さんは呆気にとられた様子で次第に理解してきたのか、少し顔を赤くして俯いてしまった。
しばらくして顔を上げると、村上さんは笑顔だった。
「ふふっ!何よ『んへぇっ!?』って!あーあ、カッコ悪っ!しかも豆腐が飛び出たし!」
俺と村上さんはしばらく笑い続けた。なぜだか笑いが止まらない。
「・・・!?あ、あの山本君が村上と笑っている・・・?」
「は、初めてみた・・・!山本が爆笑しているとこ・・・!しかも女と・・・」
この日、山本伊月の仮面が剥がれた。
「山本は笑うとかっこいいじゃなくて可愛くなる」
山本伊月を見た女子たちの感想である。
後に【山本伊月オス堕ち事件】として語り継がれていくのであった。
男の子の日は大変です。