NNAB 様。
rinn 様。
評価ありがとうございます。
僕はスラっとした線の細い男性の前で正座している。
“アリウスの人たちのために動いたのはとても偉い事”
“取り返しのつかないことになる前に動いたのもありがとう”
“でもそれで勝手に動いて心配かけていいことにはならないよね?”
「はい……はい……ごもっともです……はい……申し訳ございません」
これが頭ごなしに僕のやった事を全否定するような叱り方であれば反発のしようもあるのだろうけれど、先生のする怒り方はまさしく
結果として成人男性に叱られる成人近くの青年の図が出来上がったわけである。
役目を終えた三邪神たちは満足げにカードの中に戻り、何事もなかったように絵柄として鎮座しているし、ふわんだりぃずたちは久々に羽根を伸ばせたとばかりにツヤツヤと光のエフェクトが出ていると錯覚するほどに満足していて僕の頭や肩や膝の上にいる。
一方では除外の地獄を見てきたレイと三賢者が身を寄せ合って震えている。閃刀姫は魔法が使えない事には何もできないからおそらく勅命で散々やられたんだと思う。
“それじゃ、これで
“アズサが君と話したいらしいんだ。もちろんできるよね?”
「はい、喜んで。って、アズサさん? なんで?」
そういうと先生は額に手を当てて深い溜息を吐く。眉間に皺も寄せていて、頭を痛そうにしている。
“ユウジ、君は人の心配に鈍感になるのが唯一の欠点だね”
“詳しくは本人から聞くと良いけど、アズサはユウジを心配してたんだ”
「……むしろ危険に曝した側なのに?」
僕の言葉に先生はこれ以上話しても言葉じゃ伝わらないとばかりに僕の手を引き立ち上がらせて現在補習授業部で使われている教室に引っ張っていく。
あの、案内は助かるんですけどまだ足が痺れて痛たたたたた! なんで! 罰の一環って、そんなー! この泣き顔が見えないのか―!
あっ、待って本当に痛い! 僕は肉体だけだったら唯のインドア大学生なんだぞー! アヒンッ!*1
補習授業部の部室とも言っていい教室の中にはアズサさんだけではなく
アズサさんは僕の姿を
その姿に僕の中で膨らんでいた感覚が溢れ出す。
「どうしてだ?」
感情が抑えられない。こういうところが子供だと友人に揶揄されていた。
いつもは賢しらに振る舞っていても、一皮剥いたお前は幼稚園の頃から変わってないと。
自分をいつも一段下に置く癖がある。それは裏切られても傷つかないようにというお前なりの自衛手段なんだろうが、お前に好感情を抱いてる相手からしたら不愉快極まりない。好ましい部分を他の誰でもないお前自身に否定されることが非常に悔しい。
なぜ今そんな友人の言葉を思い出したのだろう。
「僕は君を脅すようなやり方でいうことを聞かせて」
「挙句の果てには危ない目に遭わせたというのに」
心の中では色々なものが溢れ出ているのに口から出るのはアズサさんへの疑問ばかり。
悲しさではない、でも理解できない感情に胸の中を支配される。
「なのになんでそんな顔が出来るんだ?」
僕の疑問ともいえない言葉にアズサさんは僕から一切目を逸らすことなく、顔を真正面に捉えて答える。
「私はアリウススクワッドの皆をベアトリーチェから助けたかった。でも、私にそんな力も勇気も無くて結局この世は虚しいままなのかって思っていた」
「でもそれは足を止める理由にならないと証明してくれたんだ、ユウジは」
アズサさんはそう言って力なく垂れ下がるだけの腕を取る。
僕の手は決して綺麗なものではない。カード精製の為の自傷でささくれ立ち、LP超過による再生すら追いつかないほどの精製や戦闘の痕でいくつもの傷跡が残ってぼこぼことしている。
そんな手を握っては不愉快になるだろうと手を引こうとするが、彼女が手を放そうとすることはなく、それどころかより強く握ってくる。
「この手を、ユウジは醜いものと思っているのかもしれないけれど、私にとっては家族を救ってくれた尊いものなんだ」
『「それ以上恩人を侮辱されたら、怒らなくちゃいけない」』
容姿なんて全然違う。アズサさんは美少女だけど、あいつはただのピザデブで髪なんか適当に切ってウザったくなるまで無造作に伸ばす無関心さだし、性別だって何の捻りもなく男だ。
なのに、小さい頃の友人の言葉とアズサさんの言葉が重なって聞こえた。
そうか、そんなお互い小さい頃から根っこの部分が変わってなかったのか。反省だ。
アズサさんに改めて謝罪し、後ろの3人に視線をやる。
ヒフミさんは入ってきた時と変わらず薄く笑みを浮かべて自分からアクションを起こさないようにいしている。
ハナコさんは途中剣呑な眼差しでこちらを見ていたがアズサさんの言葉で収めてくれていた。
コハルさんは……ハナコさんの後ろに隠れてこちらを見てくる。人見知りは僕にも適用されているようだ。
「コホン。本題だが、家族を、アリウスの皆を助けてくれてありがとう。そして、無事でよかった」
「……うん。自分の為に動いた結果だけど、それでも喜んでくれたら嬉しい。無事を願ってくれてありがとう」
僕の言葉を聞くとわずかに笑みを浮かべる。
こんな簡単なことにも気づけないとか、やっぱ僕は『
雰囲気がほぐれたところで、最初から持っていたトートバッグから目当ての物品を取り出す。
ローダーに入ったカードが二セット、参考書一式と音楽プレーヤー。
カードにはスカルマンとペロロが描かれており、プリズマティック加工を施された結果光り輝き通常モンスターながら豪華に見える事だろう。
スカルマンが描かれた方をアズサさんに、ペロロが描かれた方をヒフミさんに渡す。
「色々迷惑もかけたから、これお土産。世界に一枚しかない正真正銘のキミだけの遊戯王カード。版権元に許可取って作った奴だから大会に出しても問題は……」
「ペロロ様が! これまでにない加工です!」
「うん、出すつもりはなさそう。アズサさんはどう? 気に行ってくれた?」
スカルマンのカードを眺めながらコクコクと頷いてキラキラとした目を離さない。
アビドスの借金や土地を買い戻すための資金繰り。それに使ったのがこれだ。正真正銘ただの紙でできた呼び出す機能のない普通の遊戯王OCG。ヒマリさんには知られていなかったようなのが少し悔しいが、そこそこ競技人口はいる。
カードゲームの類はそれほど発展しておらず、しかし興味を引くものであったようで販売開始から期間を開けずに必要な資金はそろったものの、中途半端に止めるのは気味が悪いと思って続けた結果、キヴォトス企業とのタイアップも度々行い、その一環としてモモフレンズのコラボカードも作ってもしものためにプリズマ加工を確保していたんだけど、ここまで喜ばれるのは意外だった。
もちろんパラレルレアまではキヴォトスパックとして入ってたんだけど、ここまでか……
コハルさんには参考書セットを渡す。
「え、あの」
「基礎から勉強した方が良いと先生から聞いててね。コハルさんは真面目に問題を解く人だから変に捻るよりもしっかりとした出版社から出てる参考書に基礎部門と応用部門をそろえたよ」
「あとついでにレア度で言ったら二人には敵わないけどこれで遊べるっていうデッキ一式もどうぞ」
「ぁ、ありがとう……」
さすがに参考書だけだと味気なさすぎるからラビュリンスデッキを渡す。とはいえ、かつての世界でも本気でやると覇権が握れるようなガチな奴ではなく、テーマカード全部入れたうえで通常モンスターとかもいれたファンデッキ寄りの構築にしてある。
ルール知ってるだろうヒフミさんに駆けよって教えて貰ってる。可愛いですね、ナナゲフンゲフン。
音楽プレーヤーはハナコさんに渡す。
「中身は何でしょうかー?」
「先生のボイス125GB分 ~褒め言葉や甘やかしボイスを添えて~ だね。先生に頼んで撮らせてもらったものだ。結構恥ずかしがって照れた声を出すからリテイク数が思った以上にかかってしまって申し訳ないことをしたと思ってる」
それとは別に、他の人たちは形に残る物なのにハナコさんだけはどう足搔いてもデータでしかないのでストラクを二つ分用意した。
PSY・フレームデッキとDDデッキだ。なんでこの二つを選んだかといえば純構築のこいつらを何の問題もなく回せそうなのがハナコさんを始めとした優秀だと明言されてる人たちしかいないと思って他の人に渡すにも渡せないというものが理由の一つになる。
他にも回しにくいデッキはいくらでもあるが、その中からPSYフレームとDDを選んだのは相手ターンに展開する無法さ加減と
……イヤホンを耳に嵌めてから一切微動だにしなくなったんだけど大丈夫?
目が虚ろになって、目の前で手を振っても反応しないんだけど……劇薬作っちゃった?
「あの! 他にペロロ様は無いんでしょうか!」
「え? えーと、僕が渡せるのはこれだけだけど、近々モンスターの仮装をしたモモフレンズ人形が発売になるらしい、よ?」
「ユウジ、実はスカルマンを主体としたデッキを組んできたんだ。もしよかったら一緒に回してくれないか?」
“あはは、楽しそうで何よりだねハナコ……ハナコ? なんでじりじり近づいてくるの? ……ハナコ?”
少し後後響きそうな部分があったので加筆。