あの後ハナコさんによって透き通る事案になりかけたが他3人と一緒に抑え込んだおかげで何とかピンクアーカイブにならずに済んだ。
たとえ偉大なる統括Pの逆鱗に触れこの身が清渓川に沈みピラニアに蝕まれようとも区分を変えるわけには……なんか変な電波拾ったな。まあ、とにかく目の前で先生が淫行教師にならなくてよかった。
想定よりも早くベアトリーチェへの対処が終わったからティーパーティーの始末もしなくてはいけないな。
セイアさんはもともと友人かつ未来予知があったから簡単に元に戻れそうだが、未だ疑心暗鬼の虜になっている桐藤ナギサを解決しつつ、聖園ミカのあのお花畑をどうにかしないといけない。
ゲヘナでも万魔殿という爆弾はあるがあれは後でもどうにかなるというか実働役であるアリウスが機能停止したことで必要以上に悪名を広めたくない羽沼マコトが短時間でトリニティに対する嫌がらせは起こせない、と聞いている。
ああ、そうだ。アリウススクワッドとの面識も済まさないと。というかアリウス分校の処遇を決めないとでもあるか。
“はあ、はあ……あ、そうだユウジ”
「はい? どうしたんですか先生」
“アリウスのことについては私が処理したいと思ってるんだけど、ユウジはそれでも大丈夫かい?”
「ああ、むしろお願いしたいくらいです。連邦生徒会直属のシャーレとして公式に動いたほうが良いこともありますから。僕が動こうとするとどうしても個人なので」
先生は細いツルの眼鏡の鼻当ての位置を調節しながらシッテムの箱であろうタブレットを操作している。
ベアトリーチェという個人を潰すには組織立っていたり生徒の要請によって動く大人としての先生の性質よりも心配してくれる友達という存在こそあれど自分勝手に動く子供の要素を持っている僕がほぼ独断専行に近い形で動く方が早く解決して結果的に良くなるという状況だった。
しかし後始末に関してはそうもいかない。
好き勝手動いて場を荒らしまくった特定個人が周りとの緩衝など出来るはずもなく、先生という大人が僕に対して罰を与えたということを示しつつ実際に問題の残るアリウス分校の件を引き継いだという形で収めるのは理想とも言っていい。
先生が日々激務に追われていることは知っているからできるだけ手は借りない方が良いのは重々承知の上だが、なまじ中途半端な知恵を持っているばかりにそれで解決できないと結論を出してしまった。
押し付ける事になって本当にゴメン先生。この件が終わったらお仕事手伝いに行くから許して。
しかし今日はあっちへ行ってこっちへ行ってと忙しいな、なんて他人事みたいに考える。
セイアさんとのお茶会から4日でアリウス襲撃。ベアトリーチェ討伐を1日がかりで終わらせてから休息に1日置いて補習授業部との顔合わせ。そしてそのままティーパーティーの会談に至る、と。
出席者はティーパーティー3人は勿論として僕、先生、アリウス代表代理として錠前サオリ。この6人で始まった。
サオリさんの顔を見た時の聖園ミカの顔はまさしく驚天動地といったところ。サオリさんが僕を見る顔もなんとも微妙なものだった。
「まず、先生がこの場にいらっしゃるのはまだ分かりますが、他にお二人も呼んだ理由をお聞かせ願えますかセイアさん」
「ふむ。アリウス分校の存在は知っているだろう? そこを実効支配していた大人が私達が取り組んでいたエデン条約を壊す計画を練っていた。しかし根拠はいつもの夢でしかなくてね。それでも動いてくれる友人としてそこに座っている彼に依頼。無事解決したためその説明を当事者たちにしてもらおうということだね」
「あー、見たことあると思ったらセイアちゃんのオキニじゃんね。それにしても、報告だけなら私いるかなー?」
「いや、君も関係者だからいて貰わないと困るよ、ミカ」
ミカさんの顔が僅かに硬直するが何事もなかったかのように戻る。
セイアさんは相変わらず飄々としているかのように振る舞っているが今回の件に関してはほぼ僕がやった事しかないので彼女の中でも不明な点が多く、僕から伝えられてる編纂事象の事と繋ぎ合わせて予想しているといったところだろう。
ナギサさんに至っては本当に何が起こっているのかわからないと一体感じだろうか。元々疑心暗鬼の状態だったのに情報の洪水を叩きこまれようというんだ、そうもなろう。
先生は説明をきちんとするようにと目で促してくる。
一言話し始める断りを入れてから事件について話し始める。
「事件の主犯はアリウス分校生徒会長の座に居座っていたゲマトリアの一員ベアトリーチェ。彼女はアリウスを私兵として動かすべく洗脳教育と軍事教練を行いエデン条約を締結する際に先生を含めたその場のトップ陣をテロで殺すつもりだった」
「現状ベアトリーチェが行っていたのは計画のみだが、詳しい所は実働役として動かされるはずだったアリウススクワッド、そのリーダーである彼女が良く知っているだろう」
そう言い切ってからサオリさんの顔を見る。
初登場時のように顔の下半分を硬質なマスクで覆っていて目からしか感情は読み取れないが苦しそうな
サオリさんは言葉を紡ぐ。
アリウス分校の敷地に生まれ、その場にいた仲間と共に生きていたがアリウスに入ってからはマダム……ベアトリーチェの指示の下で動くしかなかった。逆らえば家族が嬲られ、自分だけが傷つくよりも恐ろしい目に遭った。
だがそこの男がアリウスに攻め入ったという報告を受けて戻ったころにはすべて終わっていて、私たちを縛っていたベアトリーチェは消えていた。
ミカもすまない。あの時の言葉は本当に嬉しかったが、マダムの指示で私はそれを壊そうとしていた。
止める暇もなくサオリさんは内通者の存在をサラッとバラした。
既に事情を知っているセイアさんと先生は何ともないが、ミカさんは口に含んでいたロールケーキをのどに詰まらせそうになるし、ナギサさんに至っては白目を剥いて口の端から紅茶が垂れている。
「あー……落ち着いてもらえたかな。わざわざティーパーティーとして報告しようとしていたのは理解したと捉えてもいいか? うん結構」
「第0段階:ベアトリーチェというゲマトリアの悪い大人がアリウスに入り込み最低数年は支配。第1段階:聖園ミカさんがアリウスと接触。アリウスはミカさんを情報源としてエデン条約を壊そうとする。第2段階:それを百合園セイアさんと僕が察知し被害拡大前に元凶であるベアトリーチェを始末するよう動き始めた。番外:それはそれとして内通者がいるのは分かっていたが誰かは分からず怪しい人物を手当たり次第に補習授業部に入れるも肝心の内通者は別にいた桐藤ナギサさん」
「それぞれがトリニティの為に動いた結果バラバラな行動していたわけだ」
“アリウスについては、すぐに元に戻るのは無理だろうからティーパーティーが承認してくれるなら短期留学という体で少人数ずつ受け入れては元に戻してという動きをしてもらいたいかな”
「ミ、ミカさん、今のは、本当なんでしょうか……?」
「……うん。黙って動いてごめん」
「私もすまない。急ぎの案件であったという理屈はあるが、それは黙って動いて良いという事じゃない」
ティーパーティーの面々が互いに謝りながら3人で抱き合う。
まあお互いやってることが違うだけでトリニティの為を思って行動したということには偽りがないからな。
というか言葉として起こしたら僕の行動が些か性急すぎるだろう。実際間違いじゃないし。
まあ、セイアさんは凶弾に倒れることなく、ミカさんは魔女と罵られることなく、ナギサさんは「あはは」されて脳が破壊されることなく終わったわけで。
大団円とはいいがたいが、マシな結果になった……のかな?