トリニティにおける一件で、情報共有を行わないままに動くと周りにとんでもない量の迷惑をかけてしまうということが分かった以上、僕の今は既に掠れ始めている知識を抱え落ちするわけにはいかないと反省することになった。
結果として先生と情報の擦り合わせを行うことにした。
他の誰でもない先生に一番迷惑をかけてしまったというのもあるし、もし僕が死んでしまった場合でも先生さえ生き残っていれば修正はある程度効くことになり、その時に知識を持っているかいないかで被害の程度も変わるだろうと判断したためだ。
僕が死んだ場合でも、悲しむ人は多分相応にいるだろうが世界の運行自体が停止するわけじゃない。プレナパテス先生という存在がいて、先生が重篤になった場合の末路が漏れなくバッドエンドに導かれてしまうことを知っている以上は僕に拘るよりも先生に気を遣うべきだ。
という旨と共に僕の知っている限りのこれからの情報、カル
それに伴って僕と言う存在についても明かすことになった。とはいっても細かいところは僕も知ることではなく、いつの間にかこの地に降り立っていた観測者。元々カード精製やモンスターの使役等を行えるような力など無いただの一般男性であったこと。それぐらいしかいうことはないのだ。隠そうとしているわけでもなく、自分自身ですら己のことが分からない以上そう説明する他なく、しかし先生はそれで納得してくれた。
“なるほど……随分行動が早いとは思ってたけどそういうことだったんだね”
「すみません、もっと早く言うべきでした……」
“問題ない、訳じゃないけど隠してた理由もわかるから。あんまり気にしすぎないで?”
先生は眉尻を下げながら微笑み、タブレット、おそらくシッテムの箱に僕が言った知識をメモっていく。
その後、先生の方からも情報共有として今どんなことをしているのかという現状確認を行う。
すると驚いたことにRABBIT小隊とヴァルキューレの出来事、いわゆるカルノバグの兎編第1章は終わっていたという。
いつの間に終わっていたのかと疑問に思っていることが分かりやすかったのか、エデン条約が私の手が必要としない程度に落ち着いていたからその間にね、と教えてくれた。
そうなると万魔殿を締め上げた後は受動的にならざるを得ない。
カイザーと防衛室長も問題を起こす前にどうにかしたいが片やキヴォトス中のインフラを担っていて下手に手を出せないメガコーポ、片や連邦生徒会員であるが故に何の証拠もなしに捕まえると大問題に発展しかねないため結果出来ない。
「取り敢えず僕が把握している事象としては色彩による襲撃と防衛室長のクーデターまででそれ以降も問題は多々残ってはいそうでしたがそれ以上は僕も知る以前にこっちに来たので……」
「それと、いわゆる超大型モンスターを色彩に対する防衛として待機させているのはお伝えしましたが、実験できないので確定はしてはいない事ではあるものの多数の超大型モンスターを一斉に戦闘態勢に移行させると体にダメージを受ける可能性があります」
「ベアトリーチェとの戦いでは三邪神*1を主として運用していましたが、防衛寄りの能力ですら軽く鼻血が出たので攻撃的な能力を持っているあの子たちの場合どうなるか……なので、先生と一緒に行動したいと考えています」
“そうなの?今は……大丈夫なんだね。そっか。うん。分かった。でも、無理だけはしないでね”
ずっと、僕がこの世界に来た意味を考えていた。
ルートを間違えれば簡単にバッドエンドになるこの世界。
でも先生の様子を見る限りそうなってた可能性は限りなく低くて、じゃあなんで僕はこの世界に来たのだろうって。
僕が異物であることと同時に心を苛んでくるのが嫌で、逃避するようにデッキを作り続けてた。
血を失って無駄なことを考える余裕がなくなって、残された思考リソースもデッキを作ることに一杯になって、デッキを構築してるときだけはとても透明な状態だった。
でも、ユメ先輩が生き残ることが出来た。
それは僕のいる理由に成れるんじゃないのかって。
もし、先生の手だけでは届かないもう一つの奇跡を引き起こす撃針になれるのであれば、
そんなネガティブなことを考えて、手の内に握るカードを見る。水色のアンクと呼ばれるエジプト十字が描かれたカード。このカードが僕の想定した通りに動くのであればプレ先も……
自身の頬を挟むように叩く。異物がいて良いと世界に証明するために、僕はやる。やってやる。