キヴォトス中に謎の力場が現れ始めた。それは目に見えず、しかし確かにそこに存在すると計器は示す。
ついに始まる。僕が糞BBAを早く倒せなかったがために、別次元の先生とシロコテラーがこの世界に訪れる。彼らが僕を知る人たちなのかは分からないけれど、でもそれはやりたいことを変えるものではない。
混乱をきっかけとして連邦生徒会とシャーレは対応のために各学校を招集し始めており、それに伴って先生も行くことになっている。
記憶が確かであれば先生がカイザーに拉致されることがあったはずなので、兎小隊とヴァルキューレの三人と共に護衛することになった。
先生と共に行動するのが僕で周辺を広く警戒するのが兎小隊、いつでも駆け付けられる程度の位置関係で見ているのがヴァルキューレという形での護衛になっている。
“それにしてもさ”
「どうしました?」
普段通り連邦生徒会の白を基調とした制服に身を包む先生が書類を整理しながら思いついたように僕を見てくる。
最初は壁に立てかけている
“武器の方はまあ、聞いたからわかるけど……その状態はいったいどうなってるの?”
「えっと……場所を激しく変える守勢側には向かないっていう話はしましたよね」
“うん”
“ゲリラ的な攻勢をかける*3・拠点を構えて押し合い圧し合いする*4・徹底的に籠り切る*5”
“大雑把に分けてこれらが得意ではあるけどその分動きながら守るには向いてないんだったね”
「今回ばかりは得意に引き摺り込むのも厳しいということで既に作ってた範囲内でどうにかできないかとやった結果がこれですね」
「これなら、柔軟に動けて先生を守りながら自分の身も守れるので」
今回どうやって先生と行動を共にしながらカイザーによる先生誘拐を防ぐかが滅茶苦茶悩んだ。
先生と別行動できれば選択肢は広がったとは思うが、ユメ先輩やホシノさんの顔が浮かんできて、どうしてもその択は取れなかった。
で、悩んだ結果何が来ても返り討ちに出来る装備を整えて時間稼ぎしといて本格的な守りは本職の人たちに任せればよくない? という結論に至ったわけで。
一応そのことは先生にも伝えたからこそ兎小隊の四人やヴァルキューレの三人がいるんだけど、この格好は予想できなかったらしい。
そうやって話をしていると、ヘリのローター音が聞こえてくる。
先生と目を合わせる。それと同時に先生は机を短く2回、長く1回、短く2回と叩いた。
シャーレのオフィス、そのドアを開けヴァルキューレ警察学校の制服を着た二人が入ってくる。
先頭から入ってきた方は僕を見てギョッと顔を変えそうになっていたが、咄嗟に顔を伏せ、何事も無かったようにした。
「お迎えに上がりました先生」
「ここからは私たちが警護いたします」
やってきた二人のうち一人が僕と先生を分断するように立とうとするがそれとなく動くと不自然になるほど分断したかったわけではなかったようで、すぐに身を引いた。
“ヴァルキューレが?”
先生が如何にも不思議そうな顔で疑問を投げかける。
普段の先生を知っていればいるほど違和感が出るな。こういういざというときに生徒を不安にさせるような顔はしない。そういう大人だ、先生は。
だが、ヴァルキューレの二人はどちらもその違和感に気付いていないようで何ら引っかかった様子も無くシャーレ非常ヘリポートに案内しようとしている。
「じゃあ先生、お見送りしますね」
「良いですよね?」
「……ああ、問題ない」
“ありがとうね、ユウジ”
じっとヴァルキューレ制服を着た少女を見据え、許可を取る。
よかった、ここで断られたらオフィス内でドンパチしなくちゃいけなくなってたから。
シャーレに併設されたヘリポートには大型のヘリが一台停まっていた。
あの中に、カイザーPMCの兵士がたっぷり詰まっている……バレない程度に小さく深呼吸をする。
“それにしても、わざわざ大型ヘリを使うなんて、随分と大盤振る舞いしてるね”
乗ってしまったらおしまい。故に乗る前にピタリと足を止め、時間を稼ぐように話しかける。
「いえ、それほどでもありません。これでも警察学校ですから」
“それはおかしいね。ヴァルキューレの財政は厳しかったと、直に聞いたんだけど”
「……シャーレの先生の護送でもあります。万全を期すのは当たり前では?」
“へぇ……なのに実働できるのは二人だけなのかい?”
「……あまり多すぎてもお互いに邪魔になるだけですので」
隠そうとしてはいるが、あからさまにイラつきが表に出始めている。
当然だろう。本来であれば
そう思っていると、数キロ先のビルの屋上がチカチカと短く光った。準備完了の合図だ。
「先生、あんまり困らせては駄目じゃないですか」
僕がそう声をかけるともう隠す気も無いほどに安堵の雰囲気を出す。
でも、そうやって油断するには早すぎると思うよ。
オフィスに置いてきた剣二振りが飛んできてヴァルキューレ生徒の足を取り倒れさせ、そのまま首に添えるように横たえる。
「はい、動かないでね」
銃ではないギラリと輝く鈍色の輝きに、ヒッと短く悲鳴を漏らす。
何が起こったのか理解が回っていない内に怒涛の勢いで畳みかけよう。
「君たちにとっては残念なことに、全部分かってるんだ」
「君たちの行動理由にカイザーがいること」
「ヘリの中にカイザーPMCの連中がうじゃうじゃいること」
「なのにどうしてこの剣を動かさないかわかるかい?」
ヘリポートの死角からヴァルキューレ警察学校公安局局長
同時に戦闘ヘリが現れ、異常行動を取り次第撃墜できるような態勢を取る。
「君たちも、一応は生徒だからね。先生が守る相手だ」
「学園青春物に血みどろな異物はいらないだろう?」