ブルーアーカイブ‐迷い込んだYP‐   作:七時の権兵衛

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14話 二重の意味で失敗

「なあ、少しいいか」

 

 

 あの後、生徒二人とカイザーPMCの拘束を改めてきつく縛っていると、尾刃カンナ局長が話しかけてきた。

 最初僕に話しかけているとは思わず周りを見回していたが、僕のことだと手で示された。

 

 

「僕でよければ。何でしょうか……えー、なんとお呼びすればいいですかね?」

 

「……同い年だと聞いている、普通に名前で良い」

 

「じゃあカンナさん。改めて、なんでしょう」

 

 

 僕の少しズレた発言で張っていた気が霧散したようでカンナさんは溜息を吐いてから目を伏せ、ギザ歯の見える口をもごもごしながら言いにくそうに言葉を紡いだ。

 

 

「先生から、今回の護衛に私を推薦したのはお前だと聞いた」

「ヴァルキューレ公安局の汚職事件は有名なはずだ。なのになぜ私を推薦したんだ?」

 

「あー、そんなことですか」

 

「そっ?!」

 

「自分の私腹を肥やすための汚職であれば問答無用ですが、貴女は違うでしょう?」

「自分の正義を為す、そのために動きたい。なのにそうはいかない現実という壁が聳え立つ」

「それを何とかしようとした人を更生の余地なく見放すなんてできませんよ」

 

 

 あれこれ好きに言ってはいるけれど、こう思えるのもかつてブルーアーカイブをプレイしていてカンナさんがどんな人物なのかわかっているからこの気持ちを持てる部分があるし、それを隠す自分に反吐が出る。

 何が見放すなんてできないだ。上から目線で言えるほどいい人間か僕は、違うだろうがという黒い感情が胸中に渦巻く。

 

 それでも話すのを止めない。先生というある種上位存在からの言葉じゃない同位の生徒からの言葉も時には必要だと思っているから。

 普段はきつく吊り上がっているはずの目は大きく見開かれ、唖然としているカンナさんの顔を真っ直ぐに見据えながら続きを話す。

 

 

「あなたの中にはまだ轟々と燃え盛っている正義がある」

「じゃあ今回の件をきっかけにして変わっていけばいいじゃないですか」

 

 

 全部の言いたいことを吐き出して、これ以上は無いと示すためにへにゃりと顔を崩す。

 唖然としていたカンナさんは目尻に涙を浮かべるほど笑った。

 

 ……え? わ、笑われるほど変なこと言ったかな……

 

 

「ククッ、ああ、いや、すまない。お前も先生と同じようなことを言うのだと思ってな」

 

「カンナ局ちょーう、おしゃべりもいいですけど、ほんとの移動はじめますよー」

 

「ああ。分かった。それじゃあな、ユウジ」

 

 

 そう言って呼んできたフブキさんと一緒にサキさんが乗っている方のヘリに乗り込んでいく後ろ姿を、何も言えずに見ているしかなかった。

 余計な気を回した挙句、それを察知されて笑い飛ばされたという、ものすごいダサい状況だったわけだ、今のは。

 やっぱり、真面目な時の先生みたいにカッコよく決めるのは無理なんだなぁ……まぁ、別人なんだからそうもなるかと短く息を吐くとニコニコとした先生が僕の頭を撫でてきた。

 

 これがもし低身長だったり、女の子だったりしたら絵になるんだろうが生憎上背自体は先生と変わらない僕が撫でられても、ただ僕が情けないだけだ。

 

 

「ッ――ッハァ……」

 

“私の生徒、頼もしいだろう?”

 

「えぇ、こっちが格好悪く見えるくらいには」

 

“そんなことないさ”

“そうやってお互いに気を使いながらぶつかり合うのも、正しく生徒のそれだよ”

 

“ユウジも、私の大切な生徒の一人だからね”

 

 

 最後の科白(セリフ)の後には軽くウインクをするその姿も妙に様になっていて、勝手にウジウジと黒いものを溜め込んでいた自分が馬鹿らしくなってそんな僕を一新するために、軽く両頬を自分で張る。

 頬を張った音に先生も少しびっくりしたけれど意図を簡単に読み取れたからか、また先程のようにニコニコと嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 


 

 ……気まずい。

 RABITT小隊とはそんなに交流が無かったからこれがほぼ初対面で、先生がいるとはいえヘリっていう密室で一緒にいるのってこんな息苦しいものだったんだ。

 このヘリの操縦席側の右に先生左に月雪(つきゆき)ミヤコさん。反対側の右に霞沢(かすみざわ)ミユさん左に僕と言う席順で座っている。

 結果必然的に真正面にミヤコさんがいることになり、しかもこちらを見てくるせいで気まずい事この上ない。

 

 かといってミユさんの方に目を向けたらそれはそれで気まずいのでヘリの外に視線を向けているとミヤコさんが口を開いた。

 

 

「原尾ユウジさん、アビドス高等学校に所属しているというが入学の形跡はなし」

 

「え、うん。最悪死ぬだろうなと思ってたから最初から入学手続きはしなかったよ」

 

 

 死ぬという単語を出すと先生があからさまに落ち込み、ミユさんが小さく悲鳴を上げ縮こまった。

 一方ミヤコさんは軽く眉を(ひそ)めるだけで続ける。

 

 

「あなたに、先生は渡しませんから」

 

「……ごめんなんて?」

 

“ミ、ミヤコ……?”

 

 

 唐突な言葉に思わず思考停止して脊髄反射で砕けた物言いになってしまった。

 先生も明らかにびっくりしていてミヤコさんの顔を見ている。

 

 正直、怪しい人物を信用できないとかそういった小言の一つや二つ、三つ四つ飛んでくることも予想して身構えていただけに一気に肩の力が抜けた。

 

 

「あー……同性同士かつ僕たちどっちもそういった嗜好は持ち合わせてないんだけど……」

 

「それはそうですがもしもという」

 

「あとそもそも先生って生徒っていうだけでそういう対象に見ない人だし」

「ですよね?」

 

“もちろん”

“仮にも先生と呼び慕われている存在が生徒をそう言った目で見るのは論外だからね!”

 

 

 あっ、ヤバミスった。この言い方だと僕だけじゃなくてミヤコさんも論外な対象に含まれ

 

 

「そう、ですよね……」

 

 

 oh...

 ご、ごめんなさいミヤコさん。言葉選び間違えました……

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