絶対匿名さん 様。
深く感謝申し上げます。
1話 新たなる人々
あの出来事から約2年。
あの事件以降、僕は一切アビドス近辺に行っていない。
一度目の前で死んだ人物が会ってはいけないから。死人は死人のままでなくてはいけない。それは頑丈さが桁外れのキヴォトスでも変わらない当たり前の事象だ。
一応僕が干渉したことによって手紙を出さない可能性を考慮して手は打ってあるけど。
そうやっていろんな学校を旅していれば当然様々な生徒とかかわりが出来るわけで、結果として
「ユウジ、仕事だ手伝え」
「ネルさぁん?!」
メイド服を着崩してスカジャンを羽織る小さい人影。
鋭い瞳をさらに釣り上げてこちらに近づいてくるのはミレニアムのエージェント集団
最初はただゲヘナの不良に絡まれていたネルさんをネルさんとわからずに助けに入ってしまって多少気に入られてしまったことから仲良くなっただけだった。
なのになぜかC&Cの任務に付き合わされるようになってしまった。どこの学校にも所属してないから遠慮なく使えるのとカードのおかげでそこそこ戦えるっていうのが評価されたらしい。
「手伝えって、
「シャーレへの出向だ。それで頭数足りないからユウジを招集することになった」
横から補足を入れてきたのは褐色肌が輝く少女、
C&Cにいて珍しく一般的感性*1を持っている常識人であり、対物ライフルを用いて後方支援をこなしてくれる。
左手に
ネルさんは剣を持ってる僕よりもさらに前に出て銃なのに僕以上のインファイトを行っている。
わー、なんか洋画で見たような動き方だー。いやいや、なんでワイヤーで釣られたように軽い挙動をシラフで出来るのさ。
相手のスナイパーだったり盾持ちの生徒はカリンさんがボルトアクションライフルとは思えないほどの間隙で息つく間もなく倒していく。
さっすがC&Cの狙撃手担当。
「ユウジィッ!」
「言われずともっ!」
ネルさんが僕の名前を言い始める前に自分の手にある剣を投げつけ、ネルさんの後ろから近付いていた生徒を気絶させ、
後ろの方から驚いたような悲鳴が一瞬聞こえたがすぐに真正面にいるネルさんのツインドラゴンの片方が火を噴き、かき消される。
おそらく今の状況を外から見たら剣を投げて体勢の崩れた僕に襲い掛かるように来た生徒が自分の方を向いたラプテノスで一瞬ビビッてその隙にネルさんに撃たれた、みたいな感じなんだろう。
ひとまず不良生徒全員の制圧を終えたため、ネルさんとカリンさん三人で集合して縛り上げた生徒をヴァルキューレに引き渡す。
「それにしても、ヴァルキューレに引き渡すような生徒がC&Cに回ってくるなんて珍しいな」
「ネル先輩とユウジの二人だからこんなに早く終われただけで、本来はもっと手強い相手。自惚れろとは言わないけれど、自覚はすべきだと思う」
「あっはは、いやまあ、なんせ最初の基準がぶっ壊れてたから。味方にも敵にも飛び抜けた生徒がいたもんでね」
そう言って思い出すのはホシノさんとヒナさん。
黒服の契約上ホシノさんには会いに行けていないけれど、まあ、今では僕程度の死なんて乗り越えてるんじゃない?なんて感覚だから先生がシャーレに着任はすでにしているのはしているが、アビドスの心配はしてない。
編纂事象の最終章を考えたらアビドスとの面識は必須だろうから仕掛けは施したし、あんまり負担を負わせたくなかったから借金自体もこの数年で返せる程度の少額に減らしたけどそれでも苦労していないか心配になってしまうのは、やはり僕も何か月も過ごした影響で大きい友愛を抱えていたってことなんだろう。
ヒナさんの方は今でも交流が続いている。
アビドスの時は情報収集のための威力偵察程度だったから僕以外のアビドス生の二人には会わなかったけどその分直接会った僕と激しい戦いが起こってた。
今は敵対する理由が双方ともに無いからほどほどに仲良くやらせてもらってるけど。
でも戦ってるときは大変だった。あの時は精製コスト考えて低レベルメインモンスター縛りみたいになってたから、
*ワイトベイキングの効果レベル3以下アンデットモンスター、ワイト夫人が戦闘で破壊されるときこのカードを捨てて、その破壊を無効化する
ってやってワイト夫人の壁を何ターンか続けて十分に墓地が肥えた*5ところにワイトキングを通常召喚して、
*只人貴人死ねば皆骨。ならばただの骨を付き従える王の一撃は死者を束ねる死神の一撃!
*神をも超え、補助*6を受けない場合の実用上*7最高打点だ! ワイトロォードッ!*8
と、15000打点の単体攻撃を当時ヒナさんの持ってたアサルトライフルに叩き込んでシワシワにして継戦不可能にして終わったわけだ。
あの時の今よりもさらに幼いヒナさんの驚きっぷりは凄かった。
一瞬何が起こったのか理解が追い付かずに既にただの鉄の塊になってる銃を見て僕を見てを5回ぐらい繰り返しててその隙に僕が逃げ出した結果、再会したときに激詰めされるんだけど……これは後で良いか。
そんな感じで昔のことを回想しているとネル先輩が缶コーヒーを投げ渡してきた。
お礼を言ってプルタブを引いて飲む。
うん、どこぞの美食も良しとするくらいには缶コーヒーながらうまい。
約定通り報酬は受け取ったし、これからどうしようかなー。
トリニティに言ってセイアとお茶するのもいいし、ゲヘナに行って……あ、便利屋たちに色々やりたいことあったのに忘れてた。
あー、もうアビドス編入ってるかな? そこら辺の確認したいしシャーレに行くのもありか?
「あ、ネルさん」
「ンだよ」
「コユキさんはあれからどう?」
「楽しそうに仕事やってるよ。つーか気になるなら直接見に行けよ。いつ来るのかって五月蠅ンだよ」
「んー、
以前色々あったコユキさんについて思い付きで聞くとおおむね良好なようだ。
いや、僕自身が何かしたというよりはファイアウォール・ドラゴン*9とI:Pマスカレーナさんと@イグニスター*10達にお灸を据えて貰っただけなんだけど、結果としてそこそこ懐かれてしまっている。
リオさんはぁ……編纂時空においての出来事があるから最初は関わりはしたくなかったんだけどアビドスの借金ほぼ帳消しにしたことに加えてコユキさんにお灸を据えたのが決定打になってあっちの方から接触されたんだよなぁ。
彼女のやりたいこと自体は理解できるし、僕がリオさんの立場で出来る事ってなったら同じような感じになるだろうから、今はメンタルケア程度だけして静観かなって思って諸々やってる。
キヴォトス三大高の一角、ミレニアムサイエンススクールの生徒会『セミナー』
そこで無料奉仕しているのが黒崎コユキさん。なんで無料かって?僕が知り合った時にはセミナークビにされててじゃあ反省の為に無料奉仕ねってことになった、らしい。
「にははは! やっと会えましたね! ユウジさん!」
「うん、嬉しいのは分かったから僕のスマホハッキングしようとしないでね。セキュア・ガードナーが怒るから」
「いらっしゃい、ユウジくん」
取り出した武骨なスマホの画面の中では機械的な青い人形が怒りのマークを出しながら闇のデッキ破壊ウイルスの見た目をした攻撃と戦っている。
そこは死のデッキ破壊ウイルスじゃないんだねセキュア。今回のハッキングはデータ吸い取りが目的だからこっちの方が正確? そうなんだ。
コユキと一緒に僕に気づいたのは
疲れに疲れまくってた時はノアさんに先のセリフを言ってもらおうなんて血迷ったことを言いそうになって、辛うじて喉のあたりで止めた。
現実のノアさんとは普通に良い友人関係を築けているとは思うけどね。こうやって突然来ても邪険にされない程度には。
「ユウジさん、私昨日はセミナーのセキュリティ強化をしたんです。私が記憶無くしてやったら小一時間かかるくらいに」
「そっか。お疲れさま、コユキさん。よく頑張ったね」
そう言ってコユキさんの頭を撫でる。
嬉しそうににははと笑いながらそれでも僕の手を振り払うことはなく、気持ち良さそうに目を細める。こうしてると猫みたいだなコユキさん。
しばらく撫でているとカツカツと靴の音が近づいてくる。
手を止めずに音の鳴る方を向くとセミナーの会長、
ホシノがいなくてもユウジ君は十分幸せそうだねどうしたのホシノそんな脳破壊食らったような顔して
ユメ先輩とはまるっきり属性が違うネルパイセンと仲良くやってるねどうしたのユメ先輩そんな苦虫を百匹くらい嚙み潰した顔して
まあこのこと知った二人の目はひどく澱むでしょうし澱みますけどね!
ユウジ君は早よ責任取ってもろて…