ブルーアーカイブ‐迷い込んだYP‐   作:七時の権兵衛

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名称不明ですが☆9評価してくださった方。
夢龍 様。
ありがとうございます。


4話 勇者

 ネルさんのツイン・ドラゴンが火を噴く。

 目にも止まらぬ速さで天童アリスへの距離を詰め、光の剣の照準を付けさせないようにしている。

 

 ああ、ここまでは確かに知っていたものだ。

 だけど、先生が指揮できるのは聞いてないなぁ? さっきから本来着けていないはずのインカムがピカピカ光ってそのたびに動きが良くなるなと思って観察したら先生がシッテムの箱を操作してる。アロナ経由で指示送ってますってかぁ?

 

 

「ユウジィ! どういうつもり、だぁっ?!」

 

「あまりにも不公平だから、少しばかり助力をば」

 

 

 言葉を出しながら手に持つカードを翻し、召喚を行う。

 これぞファンタジーと言わんばかりの巨大な混合獣とそれに乗る獣人(流離のグリフォンライダー)と水色の髪で魔女らしいとんがり帽子をかぶった女性(聖殿の水遣い)煌々と燃え盛る体の戦士(遺跡の魔鉱戦士)が現れ、僕の隣に騎乗に特化したドラゴン(騎竜ドラコバック)が顕現して乗せてくれる。そして豪奢な装飾が施された光輝く剣(光の聖剣ダンネル)を取り出し左手に手綱、右手に剣を携えて彼女に向かう。

 

 ネルさんの動きを阻害しない程度に天童アリスを妨害しドラコバックで駆け回る。

 3体のうち、グリフォンライダーは運命の旅路で見える幻影でしかないが、聖殿の水遣いは着々と術式を組みこちらに有利となるフィールドを展開しようとして魔鉱戦士は適宜その荒々しい斧でもって天童アリスに痛打を与えつつ、もしもの時に備えた蘇生儀式(リザレクション・ブレス)を組んでいる。

 

 

「! 異常、デバフを受けました!」

 

「おや、想像以上に把握が早い。さすがの性能といったところだ。でも遅いよ」

 

 

 筋力を衰えさせる魔法の蝶(星空蝶)の鱗粉が宙を舞い、AL-1Sの躯体が軋みを上げる。スーパーノヴァの重さに耐えられなくなってきているんだろう。

 だが、持ち上げにくくなったスーパーノヴァを地面に向け、チャージを開始する。うん、これでおおよそ流れは同一になったかな。

 

 はーあ、ブルアカがハピエンしか示されないマシな世界ならともかく、バッドエンドスチルが公開されるような綱渡りの世界だと、細々とした被害を少なくするしかできないな、やっぱ。

 ま、でもアビドスに帰って、日常を送るためにも、もうしばらく頑張りますか。

 

 ネルさんもひとしきり暴れられたことである程度満足してあちら側の事情も理解できたのか戦闘を中止した。

 

 

「いやーそれにしてもさすがユウジ君だね! リーダーの戦闘についていけるんだもん」

 

「それにしてもなぜ不公平だと?」

 

「あの子とネルさんのタイマンなら手は出さないよ、野暮だし。でも先生が指示飛ばしてたからじゃあ指示が関係ない程度にかき回そうかなと」

 

「ユウジ」

 

 

 僕の思惑をC&Cのメンバーに説明しているとネルさんに呼ばれる。

 とはいえネルさんも青筋を浮かべていたりといった明らかに怒りを抱えているように見えるわけではないので特に気負うことなく顔を向ける。

 

 曰く、手を出したこと自体は気に食わないが先程の説明通りあくまでちょっかい程度だったからいいけど今度あのチビと戦うときは手を出すな、らしい。

 ネルさんって結構戦闘狂の嫌いあるよね。まあ、だからここまで強くなれたのかもしれないけど。

 


 

 リオさんとヒマリさんが非公式の会合を行うであろう当日。

 

 さて、後はパヴァーヌの2章を終わらせて……モモトーク?

 リオさんだ……えぇ?

 

 一時的にヒマリさんと組んでAL-1Sの制御手段を探る、期限は1か月……?

 何が、どうなってるんだ? リオさんはこの会合でヒマリさんを誘拐して幽閉するはずでは?

 まさかバタフライエフェクト? リオさんの考えが何かしらの要因で変わったのか?

 

 駄目だ。頭の中が疑問で埋め尽くされる。

 取り敢えずリオさんの元に向かおう。

 

 

「つまり、リオさんは危険な力を持った大事な生徒。ヒマリさんは可愛い後輩としたことである程度は妥協点を探したと」

 

「ええ。どのみちヒマリの力を借りたかったのはあるから。それにアリスが大事な生徒でもあるのは事実だもの」

 

「この超天才清楚系病弱美少女ハッカーの私もリオがここまで軟化しているのは予測できませんでしたわ。ユウジさん、ありがとうございます」

 

 

 ヒマリさんがあばらの浮くような細い胸を反らしながら定番の自己紹介をしつつ、まったくもって健康的ではない白い肌に覆われた身体をこちらに向ける。

 リオさんがこんなに考えを変えることは僕にとっても予想外極まりないんだけど……

 

 部屋の端ではゲーム開発部の面々が若干怯えながらもこちらを睨んでくる。

 彼女たちからすればC&C以上に訳の分からない存在だからな、僕は。お礼参りという理由があったネルさんはともかく僕が手を出したのが理解できないだろうし戦った場合の厄介さもそれに輪をかけるだろう。

 

 

「ところで、なぜネルの戦いに手を出したのかしら」

 

「あの場でAL-1Sが誰が見ても勝利という状況になっていた場合、リオさんはもっと強攻策をとる可能性があった。それは看過しきれないから自爆攻撃で損傷しつつも撤退、ネルさんが引くというのが理想だった」

 

 

 僕の言を聞いてヒマリさんとゲーム開発部は少し面食らったようになる。

 前でも嫌いじゃなかった、むしろ好き寄りだった子にこういう態度を取られるのは悲しい部分はあるけれど、キヴォトスを滅ぼされないように動くにはこうするしかないから後悔はない。

 

 ところで、僕はミレニアムだとそこそこ有名だそうで、C&Cと一緒にいる姿や仕事をしている姿を見られることが多いせいでメンバーの一人だと思われていたらしい。

 ミレニアム、というよりキヴォトスでも珍しい銃ではなく近接武器を使うことも注目されやすい原因だったのだろう。

 だから、アリスさんに目を輝かされながら質問を受けるのもそのせいなのだ。そうに違いない。

 

 

「あの剣は何ですか? すっごくカッコ良かったです!」

 

「あの時装備していたのは光の聖剣ダンネル。特定の仲間がいればいるほど鋭さが増す勇者の剣だよ」

 

「じゃあ、あの時いた戦士と魔法使いはユウジが呼んだってこと?」

 

「詳しい理論は長くなるから飛ばすけど、自身を別存在と定義して召喚したって感じだね」

 

 

 アリスさんだけではなくモモイさんからも質問が飛ぶけれど、それに一つ一つ答えていくと先ほどまでの警戒はどこに行ったのか普通に近づいて講義のようになってくる。

 モンスターカードの召喚ルール・魔法カードの種別と主となる使い方・罠カードの種別と役割等々、奇しくも遊戯王OCGの解説をしていた。

 

 

「便利な力ではなく、ゲームの力を顕現させている……? ならその基になったゲームが知られていないのは」

 

「つまりユウジは召喚士(サモナー)ですね! ユウジはアリスの仲間になりますか?」

 

「アリスが力を制御できたらね」

 

「ユウジさん、さっきから言ってる制御とか、アリスの中に何があるんですか」

 

 

 ヒマリさんが何やら考察する傍ら、アリスの勧誘を断っているとミドリさんが質問してくる。

 正直教えてもいいとは思うけれど、勝手に判断してはいけないだろうということでリオさんの方を見ると、大丈夫なようで頷く。

 なら完全に教えようか。ただ、リオさんも何か油断しているようだけど、何から何までぶちまけるから、リオさんのその余裕もなくなると思うけど。

 

 

「アリスさんのその体は無名の司祭の謹製。無名の王女。キヴォトスを滅ぼしえる力であり、現状のキヴォトスの技術は無名の王女の前では無意味」

「キヴォトスを真の意味で存続させるのであれば、アリスさんが自身の中に眠るその力と折り合いをつけて制御化に置くか、アリスさんをアリスさんの意識を保たせたまま殺すか、そのどちらかの二者択一だ」

「ああ、答えなくて結構だ。君たちであればアリスさんを殺すなんて選択肢なんて最初から選ぶ価値なんてないことは知っている」

「だからこそアリスさん。君が民衆に糾弾される魔王になるか、力なき民を救う救世の勇者になるかは君次第だ」

 

「僕個人の意見としては、アリスさんが勇者であることを望んでいる。だけど、その身に余る力を制御しきれなかったその時は、僕はこの世界を壊させないためにも君を殺さなくてはいけない」

「皮肉にも僕の力はキヴォトスに縁のある力ではなく、故に無名の遺産に特攻気味だからね」

 

 

 突如としてくる情報の洪水にモモイさんの方は目を回していたがアリスさんを殺す可能性を示した途端、決意に目を染める。

 ヒマリさんは最初の情報の段階では余裕を保っていたがキヴォトスの技術が無意味であることを話すと眉間に皺を寄せるようになった。

 リオさんはリオさんで当初の予定ではミレニアムの技術の粋である要塞で迎え撃つつもりであったはずなので、わかりにくいが顔を青くしている。

 

 そして、当の本人であるアリスさんは情報の一つ一つを嚙み砕いていき、自分の中に取り込むように目を閉じている。

 

 

「……変ですね。初めて聞く話で、突拍子もないのに、アリスはそれが真実だと知っています。でも、ヒマリ先輩とリオ会長が信じてくれたんです」

「ならアリスは勇者になります。この力を、誰かを傷つける為になんか使いたくありません!」

 

 

 真っ直ぐこちらを見てくる。

 その瞳は確かに勇者そのものであり、この意志のまま行けるのであれば大丈夫だろうと根拠もなく信じてしまえるような眼だ。

 

 一つ溜息を吐き、両手で自分の頬を張る。こんなところで迷ってどうする。やらねばならないんだ。動け。

 

 先程からコード・トーカーたちに探ってもらっていたKey入りのゲームガールアドバンスSPの場所が特定できたため、モモイさんのポケット手に手を突っ込む。『ちょおっ!』と声を上げるが無視をして取り出す。

 

 

「さて、話は聞いていただろう? Key」

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