評価ありがとうございます。
個人的に日間ランキングを漁っていたら一瞬だけですがランクインしてました。
応援ありがとうございます。
ゲームガールズアドバンスSPの画面がしばし明滅した。
あからさまに様子のおかしいゲーム機にこの場の全員の視線が集まる。
明滅を十数秒ほどしていたかと思えば画面が真っ暗になり、文字が描き出される。
『なぜ?』
「君の存在に関しては知っていたからとしか言いようがないよ、Key……すまないが、個人的な事情で名称を付けてもいいか?」
『……承諾』
「
仮にも大学生だったわけで、その年齢であれば当然そういうゲームの知識が流れてくるわけで。
そういうゲームの中でも有名なレーベルは当然耳に入ってくる……完全に自業自得というか、まあ、そういうことだ。
ユズさんとアリスさんに関しては名前として違和感ないからあまり意識せずに言えるのだが、英語でそのままの名前だとどうあがいてもそっちに引っ張られるのだ。
ゲーム機の画面はしばらく黙り込む。
まあ安直すぎる名前にもほどがあるから不満があるんだろう。
『わたしをどうするつもりですか』
「ひとまず、躯体に移ってもらおうかなと」
「ちょ、ちょっと待って!」
話を進めようとするとモモイさんから待ったが入る。
ゲーム開発部は頭から煙が出ていると錯覚するほどに混乱しており、おそらく考えを整理する時間が欲しいということだろうか。
実際そうだった。あまりにも話は急に進めすぎたことは反省点の一つだろうな。
いったん休憩ということで、ゲーム機に充電器を差しながら関係のない話しをすることになった。
先の時間に遊戯王のおおよそのルールは説明し終えていたから、初心者用デッキを取り出して、実際にやってみようということになった。
アリスさんはHEROデッキ、モモイさんはブラマジデッキ、ミドリさんはサイレントデッキ、ユズさんはティンダングルデッキ。ヒマリさんはGゴーレムデッキ、リオさんは斬機デッキといった形にストラク*1風にパワーバランスを調整しながら渡した。
僕自身はジャッジとして質問に答える程度にして交流を促した。
大方の予想通り、地頭の良さでアリスさんヒマリさんリオさんの三人が勝利数も多く、今ではこの三人でデュエルを回している。
ユズさんミドリさんの二人はそこそこ苦労しつつも召喚とまくり合いが楽しいらしく、小学生のようなデュエルを繰り返してほほえましく思える。
で、モモイさんは基礎ルールすら曖昧で今は実際に動かしながらルールを教え、今回のブラマジデッキの理想的な動きを見せている。
頭を使いつつも無名の王女関連からは離れていたわけで。休憩の終わりを宣言し、ゲーム機の前に立つ。
さて、痛いけどやるか。
前腕の外側にナイフを当てる。
切れ味が衰えないように毎日研いでいるナイフの刃は容易くボクの皮膚を切り裂き、下にある血管をすぐに傷つける。
焼けるような痛みは正しく、傷をつけた場所から血が噴き出る。
その血を右手で受け止め、力を行使する。
しばらくすると血は収まり、何事もなかったように腕は元通りになっていた。
そして、右手には本来色とりどりな遊戯王カードとは対照的に、色の無い灰色のカードがあった。
「トークンを特殊召喚。このカードはレベル7・機械族・通常モンスターとして扱う」
「待たせたね、ケイさん。この体なら君も入れると思うけど?」
言いながら、アリスさんに似た、しかしサイドテールの位置が逆などアリスさんではないとわかる程度に違う見た目のトークンにとあるモンスターカードを仕込む。
もしもの時にケイさんを止められるようにバックドア、ファイアウォールを設置する。
……? 反応が薄い? 困惑してる? なん、あ、説明もせずに血液ブシャるのはやりすぎか。
『疑問。あなたはいつもそうなのですか』
「そうだね。さて、入るかい?」
僕の質問ともいえぬ問いにしばらく沈黙し、ゲーム機の画面は暗転する。
次の瞬間、トークンカードの表面に0と1の羅列が並ぶ青い文字がベールのように現れた。
ロードはほぼすぐに完了し、目を閉じていたケイさんはゆっくりその瞼を開ける。
その瞳の色はかつて見たことあるように真っ赤な色に染まり、アリスさんとはまるで異なる雰囲気を纏った人物。
「……同期完了。不本意ながら、破壊されるわけにはいかないので」
「うん? 別に入らないだけで破壊するつもりはなかったけど……まあいいか」
「皆さん何か言いたげだね? 血の事ならコストで必要な出血、すぐ直るのはLP超過しているからで8000以下になったら直らないよ」
「そうだけどそうじゃないわ。せめて一言欲しかった。目の前で知り合いがいきなり自傷するのに慣れてるわけないでしょう」
「それもそうだ。突然のことで驚かせてごめんなさい」
リオさんにツッコミを入れられ、頭を下げる。ユズさんに至っては気絶してる。明らかにやりすぎた。
とりあえず話を進めよう。
「アリスさん、君はとある機械に触れると無名の王女として動くようになっている。これは変えようのない事実で、そのまま破壊衝動のままに動けば君は魔王に落ちぶれる」
「勿論そうならない容易に安全な環境を整えはするけど、乗り越えられるかどうかだ。君以外に出来る事はほぼない」
言い終わると同時に、ドローンによってとある機械が運び込まれる。
それは無名の司祭の遺産。
これに触れればアリスさんのデータは一時的に無名の王女に上書きされる。
「これがその機械だ。勇者アリス。暴走するのが怖いなら触らないという選択肢もある」
「いいえ。アリスは触ります。乗り越えて見せます!」
アリスさんは意志の強い瞳と共に、遺産に手を伸ばす。
アリスさんの白魚のような指が遺産に触れた瞬間、アリスさんとケイさんの意識が落ちる。
少しの待機時間と共にケイさんの意識が落ちたまま、アリスさんの体が動き出す。
「言うまでもないけれど、Divi:Sionシステム対策は万全だ。ケセドはこの防壁においてハッキングは無意味であり、細々と来る兵隊もレモン*2軍団で迎え撃つからね」
「さ、じゃあ戦おうか」
場にレッド・デーモンズ・ドラゴンがいることで、手札からクリエイト・リゾネーターとシンクローン・リゾネーターを特殊召喚。
召喚条件は、チューナーモンスター2体とチューナー以外のドラゴン族・闇属性シンクロモンスター1体。
「レベル8レッド・デーモンズ・ドラゴンにレベル3クリエイトリゾネーターとレベル1シンクローンリゾネーターをダブルチューニング!」
「孤高の絶対破壊神よ! 神域より舞い降り終焉をもたらせ!
「孤高の魔王いる限り、小細工は効かぬと知れ!」
人型でありながら四つ腕を持つ異形の王、王を超えた王。破壊神はその身に放つ威圧感によってあらゆる効果を無意味にし、ただひとり場に顕現する。
魔王は口から蒼炎を吐き出しこの場に来ようとしていたDivi:Sionの兵隊は炎に巻き込まれ、チーズのようにドロドロに熔けていく。
アリスさんの前に立つ。
「理解できません。なぜ自分の身を傷つけてまで私に構うのですか」
「なぜ敵対しているのに、そんなに優しい目を向けるのですか」
「どうして、か。僕の尊敬する人物の言葉の一つ……デュエルをすればみんな友達だ*3」
「友達を恐れる理由があるか? いや無い! バカやる友達には喝を入れて、またデュエルをする程度でいいんだよ。ケイさん、君も例外じゃない。さあ、楽しく喧嘩しよう!」
「違います。私はキヴォトスを滅ぼすための、プロトコルATRAHASISを起動するための人格で、そんな非合理的な事は」
光の剣をゆるゆると持ち上げるケイさんが主導権を握るアリスさんの体。
僕の言葉を突き放そうとする声を出すが、その行動には迷いが見られる。
当然だ。Key自体にも感情というものはあるのだから。
彼女は自分を放置してデュエルに夢中になっていた僕にどんな感情を向けていただろうか。呆れ? 怒り? 困惑? それとも、寂しさ?
どっちにしろ、思ったんじゃないかな? 気になるって。
遊戯王というカードゲームは正直、付随する問題が複雑怪奇で場合によってはそれが要因となってゲームで出禁*4になるものがある程度には入門が面倒臭いがやってることはただただシンプルだ。
モンスターを出して、魔法・罠で補助して、相手を封じ込めて、殴って勝つ。デッキによって何を重視するかが違うだけでやってることは結局これだ。
だからこそ、ケイさんは気になるしやってみたいと思えるんじゃないかな。
やることは単純、でもそれに至るまでの道筋は文字通り無限に存在する。それはとても興味を惹かれるもので、沼に引きずり込もうという
「どっちみち、アリスさんが自覚しなくちゃいけない問題だからね、これ」
「王女が何を自覚せねばならないというのですか」
「自分がどれだけ愛されているか。ああ、誤解されたくないから補足するけど、その相手は僕じゃない。答えなくてもいいよ、聞こえているのは知ってる」
「アリスさんはすでに知っているはずだ。自分がどんな力を持っているとしても、そんなの関係ないと吹き飛ばしてくれる存在がいることを」
「たとえ勇者じゃなかったとしても、君を心の底から愛してくれる存在がいることを」
後ろのドアから急いで走ってきた先生が入ってくる。
アリスさんとケイさんは先生を視界に入れた時、もしくは僕の言葉が届いた時、体が硬直する。
それと時を同じくして、アリスさんを見守っていたモモイさんたちが声を上げる。
「そうだよ! 機械がどうとか、危険とか関係ない! 私はアリスと居たいの!」
「お姉ちゃんの言葉に被せる様になって嫌だけど、私もそうだからね。力がどうこうじゃなくて、私たちはアリスと一緒が良いの!」
僕の血を見て一時的に気を失っていたユズさんも意識を取り戻して説得を続ける。
ん、カラミティが破壊されたか。効果封じはあくまで1ターンのみの限定効果だからな。
ではカラミティの効果発動。墓地のレモンを蘇生。
手札からシンクローン・リゾネーターをシンクロ素材として墓地に送った時に回収したチェーン・リゾネーターを召喚。
効果、デッキからバリア・リゾネーターを特殊召喚。レモンがいることで手札からヴィジョン・リゾネーターを特殊召喚。
「刮目せよ! これこそがバーニングソウルの極致! レベル8レッド・デーモンズ・ドラゴンにレベル2ヴィジョン・リゾネーター、レベル1バリア・リゾネータとチェーン・リゾネータをトリプルチューニング!」
「王を迎えるは三賢人。紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ! 荒ぶる魂よ天地開闢の時を刻め! シンクロ召喚! 出てよ新たな我が力。スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン!」
「超然たる覇王は賢人の知恵を己の糧として、何物にも倒されぬ!」
兵隊は数を増す。
だが、ビナー相手には試す余裕もなかったし、予感だが効かなかったことも、ただの量産品であるお前たちには効くだろう?
スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンは相手の攻撃宣言時、自身と相手フィールド上のモンスター全てを除外する。
古の遊戯王では、除外とは異次元への送還とされている。遊戯王的解釈であれば送還された先でも生き残ることはできるだろうが、僕が送る異次元は違う。
これはアビドスでの実験の日々の一日に、興味本位で次元の裂け目を覗いた時のことだ。
そこでは恐ろしい光景が広がっていた。
ホープ・ゼアル*5や
簡単に言ってしまえば禁止カード共の牢獄。なぜか禁止カード以外も居るので全力全開でだ。
こいつら相手にして生き残れるんならむしろそいつは仲間にしたいよ。
そんなわけで、地獄以上の地獄に逝ってこい、兵隊。
作中で地獄が描写されましたがストック切れそうでこちらも火の車です…