世界総人口の八割が、個性という特殊な力を持つ者で占められた超人社会。
力があれば、悪用する人が出てくるのも当然。そうやって、個性を悪用する人々を<ヴィラン>と名付けた。
悪があれば、それに対抗する善もまた生まれる。人々は希望を抱いて、彼らを<ヒーロー>と呼んだ。
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まだまだ寒さの残る二月半ば。
私、兵壮 纏(へいそう まとい)は、首が痛くなりそうなほど大きさを誇る校門を見上げていた。
「とうとう入試本番だね!!うわぁ、緊張する~~」
「緊張するのは良いけど、回答欄ミスったりしないでよ、透」
私の隣で、宙に浮いた毛糸中学校の制服がぴょんぴょん跳ねている。
この子は、葉隠 透(はがくれ とおる)、個性:透明。
共に、倍率300越えの超難関校にして、No.1ヒーロー<オールマイト>も卒業生に名を連ねる国内有数のヒーロー育成機関「雄英高等学校」の入学試験に臨む、同中で幼馴染な大親友。
この日の為に、二人で勉強も特訓も死ぬ気で頑張ってきた。合格祈願もしたし、お賽銭も奮発した。後は、自分の力を発揮するだけ。
「しないって!!遊ぶのも我慢して、纏ちゃんと今まで頑張ってきたんだもん」
「じゃあ、行こうか。私だけ合格しても、恨まない様に」
「もうっ!!絶対、一緒に合格するの!!」
ポカポカと背中を叩いてくる透に、ほどよく緊張もほぐれた。流石は、大親友。
そんな事を思いながら、私達は校門をくぐり、雄英の敷地内へと歩を進めた。
『今日は俺のライブにようこそ!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
大講堂に、雄英で教師を務めるヒーロー名:プレゼントマイクの声が響く。これが、入試の場でなければ、透と一緒にYEAHHと返した事だろう。
『こいつぁシヴィーーー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディ!?』
試験内容の説明によると、指定の演習場に分かれて、そこに配備された仮想敵を行動不能にして点数を稼いでいくというもの。得点持ち三種と、0点のお邪魔虫一種の計4種。とても、私の個性向き。反対に、透には多少不向き。
『俺からは以上だ!!最後にリスナーへわが校の"校訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!』
『"Plus Ultra"!!それでは皆、いい受験を!!』
「じゃあ、お互い頑張ろうね!!」
「うん、頑張ろう」
そう言って、透と別れたのが十分前。ストレッチをしつつ、同会場で争う相手の観察をする。
舐めている訳じゃないけど、対抗馬になりそうなのは、ツンツン頭のヴィランにしか見えない凶悪面の男子位。どんな個性か分からないけど、あの子との点の取り合いになるのは間違いない。あっちは、他の面子に興味ないみたいだけど。
「まぁ、それはそれでありがたいけどね」
柔軟もすんで、スタートの準備に入る。
ジャージを脱いで、タンクトップと短パン姿になると、周りにいる青少年の気配に邪なものが混じるが、個性を使う上では気にしていられない。透が羨ましがる程度には、顔もスタイルも良い事は自覚しているので、もう割り切れる。
冷たい空気が肌を刺す、集中力が増して良い。
眼を閉じて、イメージするのは鉄の城。お爺ちゃんが大好きなアニメに出てくる、神にも悪魔にもなる魔神。眼を開けた時、普通の人の手足だった物が、黒く光る金属へと変貌していた。
これが、私の個性"武装変換"。自分の肉体を、あらゆる武装に変換する能力。変換には、体内のタンパク質を消費、使い過ぎると貧血とかで倒れてしまう。ちなみに、個性の訓練で一番張り切ってたのは、お爺ちゃんだったりする。秘蔵だって言って何本の映像作品を見させられた事か。まぁ、それが役に立っているのだから、結果オーライではあるのだけど。
『ハイ、スタートー!』
唐突に、プレゼントマイクの声が響く。
殆ど反射だったけど、足はスタートラインを越えていた。他に動けていたのは、あの凶悪面ツンツンヘアーだけ。手の平が爆発してかっ跳んでいった。アイアンマンか?
『どうしたぁ!?実践じゃカウントなんざねえんだよ!!走れ走れ!!賽は投げられてんぞ!!?』
プレゼントマイクの発破で、残りの受験者も動き出したけど、この組において、その遅れは致命的。多分、君らの分は残らない。いや、残さない。
「標的補足!!ブッ殺す!!」
持ち点1の仮想敵が眼前に姿を現した。何やら、物騒な機械音声が聞こえた気がしたけど、ヴィランだから許容範囲か。
「これが、私の夢への第一歩だ!!」
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