「すみません、オールマイトの授業について聞かせて貰えませんか?」
№1ヒーローオールマイトの雄英高校教師就任が発表されてから、雄英高校の校門前で連日行われている、テレビ局や雑誌社の取材。かくいう私も、初めての雄英取材を経験してこいと上司に言われて、同業他社が声をかけてなくて、テレビ映えしそうな子にマイクを向ける。
腰まで伸びた艶のある濡羽色のストレート、170cm位ある腰高長身にボンキュッボンな胸腰お尻、高嶺の花を思わせるクールビューティな顔立ち。同じ女として、こうまで違うと嫉妬心も起きない美人な子、この子が映るだけでそれなりな話題を作る事が出来るだろう。
「オールマイト先生ですか。やはり、第一線で長年活躍されておられた経験は、ヒーローを目指す者の一人として、とても勉強になっています。これ位でいいですか?色々忙しいので」
「あ、もうちょっと詳しく・・・」
もう二三事コメントが欲しかったけど、その子はさっさと校門を潜ってしまった。名前、聞きそびれちゃった。
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「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績を見させてもらった」
その言葉で始まった朝のHR。登校時に取材を受けた事で、ちょっと浮ついていた空気がビシッとなる。
昨日の訓練で一番やらかした二人、爆豪君と緑谷君が口頭で注意を受けたけど、相澤先生が教卓に置いたプリントにそれぞれの事が書いてあるんだろう。
緑谷君の個性制御、一日でも早く出来る様に皆で協力した方がいいかな。
「さて、HRの本題だ・・・急で悪いが今日は君らに・・・学級委員長を決めてもらう」
「「「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」」」
緊張から一転、テンション爆上がりする皆。
普通であれば、一部の意欲的な人に押し付けるか、なし崩し的に決まるかの不人気職だけど、雄英においては誰もがやりたがる超人気職。クラスメートと言えど、多くを率い統率したという経験は、ヒーロになった時にとてつもないアドバンテージになるから。
という訳で、クラスの大半が自分がやると声を上げ手を上げ大合唱となる。そんな中、
「待ってくれ皆!!」
飯田君が大声を上げ、投票によって決める事を提案してきた。まぁ、このままじゃ誰も譲らず一向に決まらなかっただろうけど、その聳え立つ右手なんなん?そうして、皆が自分に投票したらどうするんだろうと思いながら始まった学級委員長決めの投票。
八百万に作ってもらった投票用紙に、皆が思い思いの名前を記入して教卓に集める。
「じゃあ委員長 緑谷、副委員長 八百万だ」
投票の結果は、緑谷君が三票、私と八百万が二票、透・麗日・飯田君・轟君の6人以外が一票。同票だった私と八百万でじゃんけんして普通に負けた。悔しい。
「・・・本当に、よく食べるんだな」
「まぁ、個性の関係で貯め込む必要があるから。透は、普通に痩せの大食い」
「しっかり食べないと、筋肉付かないからね」
食堂で、透と障子君と一緒に食事をとる私。昨日言った通り、障子君にご飯(とんかつ定食大盛り+杏仁豆腐)をごちそうになる透。因みに、今日の私は油淋鶏定食大盛り+餡まん二個です。
「障子君、そこから食べれるんだね。凄い個性というか人体の神秘を見てる気分。顔にあるお口からも食事出来るんだよね?」
「ああ、出来る。ただ、こういう場でマスクの下を晒すのは少々難があるから、家以外じゃ基本こっちだな」
複製腕の一つを口にして、そこからおにぎりを頬張る障子君の姿に興味深そうな声色で尋ねる透。複製腕の口で返答した事から、食道とか気管が増設されるというより、そっちに管が切り替わるって感じなのかな。
「こっちからは、宙に浮いた箸がトンカツ摘まんで、いきなり消えるのは手品でも見ている気分だけどな」
「うん、よく言われる」
そうして、また一つ姿を消すトンカツ。二人にそんな気はないんだろうけども、親友の青春の為に、後は若いお二人でって言って席を外した方がいいのだろうか。
和気藹々としている二人を見ながら、そんな事を思っていると、平穏を打ち砕く様に警報音が鳴り響いた。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは、速やかに屋外へ避難してください』
「警報!!急いで出なきゃ!!」
「いったい何が・・・」
「セキュリティ3って、校舎に侵入者が?」
事態を把握して動き始めた上級生についていく感じで、私達も出口に向かおうと席を立ち列に並ぶ。
侵入という事は、何らかの方法であの雄英バリアを越えて来た輩がいるという事。先輩方も、こんなの初めてだと口々に溢しているし、ニュースでも聞いたことがない。まさか、朝校門前に居たマスコミ連中?でも、どうやって。
「ん···不味い!!障子君!!」
「んきゃっ!!!」
「兵壮!?くっ!葉隠、すまん!!」
透を障子君の胸に押し付ける。障子君も、私の視線の先にある光景に気付き、私の行動の意図を察して、透を全ての腕で覆い尽くすように抱きしめてくれた。
次の瞬間、パニック状態で食堂に雪崩れ込んできた学生の波に飲まれ、身動きが取れなくなる程の押しくら饅頭状態になってしまう。
「だ、大丈夫か、兵壮」
「ありがとう、何とか、透は?」
「なんとかー」
波に流され転けそうになった所を、障子君が複製腕の一本を伸ばして腰を支えてくれた事で体勢を立て直せた。透に声をかけると、障子君の腕の中からくぐもった声が返ってきた。
「間に合って良かった。障子君も気付いてくれて、ありがとう」
「危ない所だった、いったい何故こんなことに」
避難訓練はしていて、避難時にやってはいけないおはし(押さない、走らない、喋らない)も指導されている筈なのに、このパニックぶり。まるで、ヴィランでも攻めてきたみたいだ。
「と、とにかくこの混乱を静めないと」
「しかし、どうやって。こうもまともに動けない状態では···飯田!?」
私達の頭上を、縦回転しながら出口方面に飛んでいく飯田君。恐らく、麗日の個性で無重力になってるんだろう。彼が、他人の個性を使ってまで我先に逃げる様な人間じゃない事は、会って数日だけども分かる。何かしらの策があってした行動の筈。ここは、彼に託すしかない。
「だいじょーーぶ!!!」
出口の上で非常口ポーズをとった飯田君の口から、大きく発せられた言葉は、パニックになる皆の注目を集め、続く短く端的な説明が皆の心を落ち着かせた。
飯田君の活躍によって、何とか怪我人を出すことなく私達は避難する事が出来たのでした。
そして、緑谷君に代わって、飯田君が一年A組の学級委員長を務める事になったのでした。
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