水星の魔女 異聞 / 月の悪魔 −或いはとある射手のミス− 作:システマチック発光ネズミ
と、その前に用語解説をば。
・ミノフスキー・インダストリーズ
略称はMI社。
ベネリットグループには珍しい、モビルスーツのビーム兵器を専門に取り扱っている会社。元は地球のロシア系工業会社であったが、モビルスーツという兵器の登場、パーメットの発見に伴い本社を月に移した。
本作の設定上の話ではあるが、世界で初めて“粒子ビームの制御技術”を開発した会社であり、今現在もこの分野ではグループ内外問わず負け無しの超老舗企業。
また地球の各勢力とも仲が良く、支社を複数設置。地球向けのモビルクラフト…もといモビルワーカーを開発・販売しており、復興中の各地で活躍している。
数年前、とあるモビルスーツを鹵か…サルベージしたらしい…??
「おいアンタ、ミノフスキー・インダストリーズから推薦受けてるんだってな。俺もパイロットの端くれだからよ、あの企業のパーツは喉から手が出るほど欲しいんだ。だが俺らはたかが学生。トーゼン他企業の高額なパーツなんて手に入りやしねぇ。だからさー…決闘しようぜ?」
入学早々、アルニカ・アルトランドが自身に向かって放たれた第一声はそれだった。
同じパイロット科とはいえ、方やのベテランの三年生、方や入学したての一年生。しかしこの一言から始まった
それは、さながら悪魔であった。
胸は仄かに紅く染まり、まるで返り血を浴びたかのように悍ましく。
人のように柔軟に跳ね回り、歓声の如く発せられる悲鳴に応えるかのように無慈悲に機体を痛めつけていく。
脚は焼き融かされた。液体と化した関節部が繋がり合い、歩くための機構はもはやまともに動かない棒となった。
背は光に削がれた。充填された燃料が荷電粒子の塊に晒され、機体は前に吹き飛ばされた。
肩は仕込み刃に貫かれた。肩と腕とを繋ぐ関節に赤熱した杭が叩き込まれ、肩から下は力無く融け落ちた。
果てには“もう飽きた”と言わんばかりに強靱な腕で頭を掴み上げ、その鋭い爪で握り潰した。
故に、畏怖と敬意を以って彼女を、アルニカ・アルトランドを、皆はこう呼ぶ…。“月の悪魔”、と。
地球寮に住まわせてもらうために
いやまぁ、いいんだけどね?ウチは戦闘それなりに好きだし。何故か実家の
あ、そうそう。このアーカイブを観てる人は初めましてだね。
ウチはアルニカ・アルトランド。アスティカシア高等専門学園、パイロット科の一年生だよ。学籍番号は…まぁいっか。後々分かる時も来るでしょ。
あと座右の銘は「奪えば全部」だよ。
乗ってる機体は「Sol/G-01X サタナキア」。
全高18.5メートル、機体重量は39.4トン。ウチの大事な相棒だよ。付き合いは…確かもうそろ4年くらいになるかな?
そんなこんなで決闘受けたんだけど…弱かった。とんでもなく弱かった。
下手すれば実家製の初期型演習用AIより弱かった。おかげでらくらく勝てたけどさ。
そして今、眼の前には地球寮が!…え、なんでここなのかって?
詳しいことはよくわからないけど、ミノフスキー・インダストリーズが最近モビルスーツ開発を始めたのさ。その影響で、今までモビルスーツ産業のシェアの大部分を占めてた御三家と仲が拗れて〜、って話だったかな?多分そんな感じ。
というわけで、地球寮に突撃〜!ガチャリ。
「こんちわー、今日からお世話ンなるアルニカ・アルトランドでー…す?」
「え?」
「へ?」
「む?」
「あ?」
おっと…これはー…さては歓迎されてないな?
「なんでスペーシアンが…って、てめぇ昼の決闘のヤツか!」
「え、昼のっていったらミノフスキー・インダストリーズから推薦受けてる人!?」
「なるほど?しかしそんな人間が何故ここに?」
「あー…っと、そうですね、昼のです。ここに来たのは単純に御三家とかと仲拗れてるんで、入るんならここかなと。ウチ地球とも仲良いですし」
「はぁ…まぁいい。他の奴らはもう中で部屋作ってる。さっさと来いよ」
…嵐だぁ。柄悪い人と無口な人とビクビクしてる人とどこかの民族っぽい人だぁ。キャラ強いなぁ。
とりあえず中入ろう。荷物重いし。
「よし、揃ったな。んじゃ自己紹介だ。パイロット科3年、アダム・スミロフスキー。ここの寮長やってる。欲しいものがあったら言え、予算と相談しながら買ってやる。じゃ次、2年共。マルタン!」
「あっ、はい!まま、マルタン・アップモントです!経営戦略科2年です!よ、よろしく!」
「メカニック科2年、ティル・ネイス。よろしく」
「同じくメカニック科2年、アリヤ・マフヴァージュだ。向こうにいる家畜たちの管理をしてる。よろしく」
…2、3年生の自己紹介はあっさり終わった。まぁ、そりゃそうだ。4人しか居ねぇんだから、スムーズもクソも有りはしねぇ。
そして次は1年共だが…今年は4人。しかも一人はスペーシアンだ。地球寮にスペーシアンが居ていいのかはさておき、推薦企業がかのミノフスキー・インダストリーズ。上手いこと利用できりゃ良いが…。
「えーと、メカニック科1年、オジェロ・ギャベルっす!好きなことはギャンブル!よろしく!」
…またキャラ濃いやつが来たな。金庫のコード変えとくか。というかギャベルっつったら確かメキシコ辺りの金持ちの名前だった気が…?
「メカニック科1年のヌーノ・カルガンっす。ソフトウェア系は得意っす。よろしく」
こっちはギークか。まぁ役には立つな。
「メカニック科1年、ニカ・ナナウラです!趣味は機械工作で、小さい頃から色々いじってたので手先は器用です!よろしくお願いします!」
こっちはこっちで珍しいな。ナナウラ、ってことはジャパン出身か。
さて、最後の問題児はどうなるかね?
「パイロット科1年、アルニカ・アルトランドでーす。月からきました!趣味はMS操縦、座右の銘は“奪えば全部”!よろしく〜」
…うっわ。アイツなんも遠慮せずにスペーシアンだって言いやがった。つーか奪えば全部ってなんだそれ。
「…え、なんでスペーシアンがここに!?ここ地球寮だよな!?」
「あー、それについてはコイツに喋らせる。そら、言え」
「え、ここで?ま、いいけど…えーと、ミノフスキー・インダストリーズがモビルスーツ開発始めたら他企業との仲が拗れてここしか無くなった。それとここだけウチのパーツを安価で買えるカタログあるんだけど…いる?」
『いる!!!』
入寮後から数ヶ月。とんでもない量の決闘をこなした。
あるときはバツ型のスラスターを持った脚のない変態*2が飛んできて__すれ違い様にスラスターを吹っ飛ばした。脚がないからそうなる__、あるときは旧世代の戦車をそのまま拡大したみたいな変態*3が突っ込んできて__砲身がブレードアンテナ判定になってたので叩き折って即退場__、何故かホバーを積んだ黒い三人組の変態*4が真っ直ぐ来て__マジで避けなかったからビームライフルで
あぁ、ちなみに。決闘にかけたものはお互いの会社のパーツね。相手はミノフスキー・インダストリーズの部品、こっちは挑戦者側の保有するMS資材全部。今のところ全勝してるから、あちこちから『パーツがねぇーー!!!』って悲鳴がよく聞こえるのがまた…そして奪い返すために決闘を挑んでくるループよ。
しかも後が無い人たちはなりふり構わず全力で来てくれるからまぁ愉しい!!そしたらー…
「アルニカ・アルトランド。ジェターク寮寮長としてお前に決闘を申し込む!」
あっはぁ…!最っ高なのきたぁ!!
どーも。第一話どうでしょう。中々いい感じにできました。
さて、皆さんも気づいている通り主人公…アルニカちゃんは戦闘狂です。そして彼女の乗る機体、サタナキア。多分皆さんが予想できないだろうシステムを積んでいます。というかこれだけの記述でわかったら文学家とか小説家とかになることをおすすめします。
はてさて。
ジェターク寮の寮長として挑んだグエルくん17歳。相対するは我が寮の資材をほとんど奪い尽くした戦闘狂。ここで負けたらホルダーの立場はどうやっちゃうの!?頑張れグエルくん、負けるなグエルくん。
次回!「アルニカちゃん、本気出す」 アリーヴェ・デルチ!!
※偽予告にございます。本編とは関係ありませぬぞ。ええ、ありませぬとも。