GATE〜自衛官 斯くして彼の地にて、ASで駆けり 作:とりマヨつくね
機体の背部からバシュッ、とカートリッジが排出される。
『これで……二つ』
黒いASから、パイロットの感情のこもっていない声を溢れた。
「くそッ……なんでラムダ・ドライバがここに!? それにあれは全部なくなったはずじゃ……」
ラムダ・ドライバ。
主にASに搭載される特殊装置で、
ブラックテクノロジーの知識を持つ人間《ウィスパード》によって生み出され、その特性は搭乗者の意思を斥力として作用されるというものだ。
そこで生み出された力は、あらゆる攻撃を弾き、あらゆる防御を貫く。
正確には全然違う目的で開発されたものではあるが……ここではその説明を省かせてもらう。
要するに、超カチコチバリアを展開しながら不可視の即死攻撃をされるということだ。
『ほう……知っているのか。一応、最高機密であったはずなのだが、どこで情報が漏れた? まあいい、<バルバトス>を見た者は殺さねばならん』
「……!?」
<バルバトス>と名乗った機体は、再度、小村を吹き飛ばした衝撃波を放つ。
両肩のアジャイル・スラスタも使って、回避に徹するが回避するのに手一杯で反撃をする暇はない。
(ギリギリだけど躱せる! でもアジャイル・スラスタが焼ききれたら終わりだ、どうにかしないと……!)
対処法は主に二つ。
まず一つ目、同じラムダ・ドライバ同士でのごり押し戦法。
論外、そもそもラムダ・ドライバがここにあるのならどれだけ良かっただろうか。
それにラムダ・ドライバがあったとしても、克人に起動させることができるかは別だ。
では二つ目、相手の意識を逸らし、その隙に高火力を叩き込む。
これは実現可能ではあるものの、この状況ではとてもできる状態ではない。
一体どうすれば……
『─────────』
突如、通信にノイズが掛かった音声が流れる。
何かの攻撃かと訝しむが、今は気にしてる場合ではないと断じ、すぐさま行動に移す。
小村機が投げ捨てたボクサーを拾い、<バルバトス>に向けて放った。
「これでも喰らえ!」
迫り来る弾丸。
だが<バルバトス>のパイロット、アルノルトは至って冷静だった。
「ふん!」
<バルバトス>は瞬時に障壁を形成し、散弾砲の爆破からその身を守る。
爆煙を払いのけて、その赤い一つ目には<レイヴン>の姿は映らなかった。
「なるほど森に逃げたか……いい判断だ。そうだな、増援を呼ばれたら面倒だ」
倒れている<レイヴン>からライフルを拝借すると、逃げた獲物を追跡する。
森へ入ると、月の明かりが薄く照らされているだけで、視認性はあまり良くない。
レーダーを確認をしてみるが、ECSの影響で機影は隠されている。
動きは悪くない。あと数年もすれば、優秀なAS乗りになれただろう。
しかしあのパイロットの性格上、万が一でも仲間を切り捨てる考えはない。
少しでも生きている可能性があるのならば、確実に救出しようと動くはずだ。
「カートリッジはまだ二つあるな」
<バルバトス>はアサルトライフルを構え、森の中へと歩みを進める。
足音は聞こえず、周囲には微かに視線を全身を刺してくる。
なるほど……この場での決着を望むか。
勝つ算段があるのか、それともただの蛮勇かはわからないが、どのみち好都合だ。
「さて、どこからか来るのか……」
久々に興奮していることに気づきながらも、相手の出方を待つ。
数秒が過ぎ、一向に何かのアクションをしてくる様子もなく、気のせいかと断じた時に肩部に何が軽くぶつかった。
落ちてきたものへと視線を向けると、
「む? これは……枝、か?」
そう、枝。
ただ折れたというわけではなく、どちらかというと『切られた』かのように綺麗な断面だったからだ。
「なるほど、そういうことか!」
上を見上げると、巨木が<バルバトス>を押し潰さんと倒れようとしていた。
回避は不可能。障壁を展開し大木を粉々に粉砕した。
そしてその影は背後に回っていた。
次回『悪魔狩り』