GATE〜自衛官 斯くして彼の地にて、ASで駆けり   作:とりマヨつくね

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AS馬鹿、異世界に行く

八月十七日土曜日 11:30

 

 ソレは銀座に出現した。

 突如出現した異世界につながる門の向こうから謎の軍勢の侵攻を受けるが、自衛隊によってこれを鎮圧。

 その後門の向こう側、通称『特地』に自衛隊の派遣を決定。

 その中には下村克人の名前が記されていた。

 

23:20 アルヌスの丘

 

(来たか……)

 

 日本の第二世代型のAS、96式改の狭苦しいコックピットの中で克人はゴクリと固唾を飲んだ。

 それもそのはず、彼がモニター越しで広がっているのは現代ではありえない光景なのだから。

 中世ヨーロッパを思わせる鎧に身を包んだ兵士、ゴブリンやオークといった怪物、それらが隊列を組んでこちらに向かってきていた。

 マスター・スーツに固定された体が震える。

 この光景ももう二回目だが、やはり慣れないものである。

 

「こちらライダー3。敵軍勢を目視で確認、指示をこう」

『こちらセイバー。こちらでも確認した。四十三秒後に一斉射撃を行う』

「ライダー3、了解」

 

 通信を切り、克人は戦闘補助AIのアストルフォに呼びかける。

 

「アストルフォ、サスペンドモードからアクティブ。モードは3、バイラテラル角は2・8に設定」

『了解』

 

 可愛らしい中性的な音声が聞こえると、次々と制限されていた機能が解放されていく。

 そして軽く腕を動かすと、その動きに合わせるように96式改は腰にマウントされていたアサルトライフルを手に取り構える。

 やがて打ち上げられた照明弾によって、漆黒の闇が切り裂かれ辺りを照らす。

 あまりにも突然のことに敵は混乱し、日本帝国軍よろしくバンザイアタックを仕掛けて来た。

 慌てることなく、FCSから送られてくるデータから慎重に狙いを定める。

 モニターに映されたロックオンマーカーが、射程圏内に入ったことを示したと同時に克人はトリガーを引いた。

 ガガガガガガッ! と轟音と共にアサルトライフルから弾丸が射出される。

 放たれた30ミリの弾丸の雨は敵軍の盾を容易に貫き、。

 夜が明けるまで絶え間なく、銃声と爆発音が耳に響いた。

 

 それから何日か経過した頃

 

 異世界軍は何度かの襲撃はあったものの、円滑な火器の使用によって無事に殲滅した。

 克人は機体を駐機状態にさせコックピットから出た。

 ヘットギアを外すと、穏やかに吹くそよ風が火照った体を涼ませる。

 小腹が空きポケットからレーションを取り出そうとした時、克人はようやく自分の異変に気づいた。

 右手を見やると、プルプルと小刻みに震えていた。

 

「は、はは……今さら何だよ。ASに乗るってことはどういうことがぐらい分かっていただろうに」

 

 操縦桿越しに伝わってくる感触、この目で確かに見た無数の屍、耳を擘く悲鳴と銃声。

 ASは兵器だ。兵器はより早く、より多くの敵を屠るのが目的の道具だ。

 それを操るということは、その手で尊い命を奪うことだ。

 自分が想像していた夢物語なんて、存在しない。

 

 ──────わかっていた、わかっていたはずだ、わかっていたはずなのに……

 

 克人は震える手を掴んで、何とかして早くなりつつある心臓の鼓動を落ち着かせようと努める。

 すると誰かが来るのを感じ取った。

 慌てて拳銃を引き抜き構えるが、その人物には覚えがあり慌てて銃を下ろして敬礼する。

 

「す、すすす、すいません! 小村二尉〜!!」

「はははは、驚かせてすまなかったな」

 

 笑い飛ばして謝罪を受けてくれた男性の名は小村昌幸、コードネームは『ライダー1』。

第四戦闘団のAS中隊、その中でも克人が所属する第一小隊の隊長であり、直属の上司である。

 ちなみに克人の父親とは旧知の仲らしく、色々と世話になっていたりする。

ようやく落ち着きポケットからレーションを取り出し、96式改の手の甲に座った。

 黙々とレーションを食していると、小村は隣に座った。

 

「……やはり堪えるか」

 

 先ほどとは打って変わって真面目な口調で小村は問う。

 核心を突かれ反射的に誤魔化そうとするが、すぐにその思考は捨て素直に頷いた。

 あまりにも真っ直ぐな目を見て、嘘はつけないと判断したからだ。

 

「そう……ですね。正直、かなり参っているんだと思います」

「まあ……なんだ。お前が相当な覚悟を持ってこの業界に入ったのは知ってる。だけど罪悪感を抱きすぎると、今度は自分を滅ぼしちまう。だから……だから……」

 

 小村は何かを堪えるかのような表情を浮かべた。

 最後のほうは聞こえなかった。でも、何を言いたいかはよくわかった。

 

「ありがとうございます。おかげで少し落ち着きました。ちょっと歩いていきます」

「わかった。報告は任しておけ」

 

 克人は礼で感謝を示し、自分の96式改に乗り込んだ。

 森を抜け、茂みを超えて、荒れ果てた荒野に出た。

 密閉されたコックピットからでも鼻を突き刺す刺激臭に思わず顔をしかめる。だが、そこで足を止めず彼は大地を踏みしめた。

 自分なりのケジメをつけるために。

 

 

 




次回『異世界探求』
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