GATE〜自衛官 斯くして彼の地にて、ASで駆けり 作:とりマヨつくね
唯一生存者であるエルフの少女を、井戸から引き上げた第3偵察部隊の面々は無事に救出することに成功した。
今は看護師資格を持つ黒川二曹と女性である栗林が看病している。
一方、オタク組かと言うと。
「「いやったああああぁ! エルフだああああぁ!」」
倉田と絹田は喜びを全身で表現していた。
正直、側から見ているとキモいとしか感じられない。
現に、同じオタクであるはずの伊丹と克人は我関せずといった表情を浮かべていた。
「ところで隊長。あの娘、どうします?」
そう言う克人の問いに、伊丹は少し考えるそぶりをした後、
「普通に考えれば保護でしょ」
と答えた。
それに関しては克人も大方賛成だ。
いくら無闇に現地人と関わるなと言われているとはいえ、こんなところに女の子を一人置いていくわけには行かない。
「人道的ですね」
「でしょ」
そして偵察部隊は、一旦コダ村に戻ることにした。
◇
村長にドラゴンのことを説明すると、村全体が騒ぎ始めた。
なんでも克人たちが遭遇したドラゴンは炎龍といい、人の味を覚えた炎龍は何度も集落を襲うようになるらしい。
そのため村を投棄し、安全なところまで逃げるとのことだ。
無論、自衛隊も同行することになった。
度々トラブルこそあったが、逃避行はつつがなく進んでいた。
とはいえもう数日ずっと歩いているせいか、流石に疲れが出てきた。
『なあ……これ、いつまで続くんだよ』
「そんなん、俺が聞きたいよ」
『というかこれだけの人数、俺らだけじゃ絶対に管理しきれないって。応援は呼べないのかよ?』
「無理に決まってるだろ。ここ、フロントラインを超えてるんだぞ。ただでさえASを持ってくのさえ、かなり揉めたみたいだから応援なんて夢のまた夢だぞ」
「世知辛いねぇ……ん? あれは何だ?』
絹田が何かに気づき、克人はモニターをズームアップさせると、前方に不自然なカラスの集団がいた。
その中心には、巨大なハルバードを抱えるゴスロリ少女が歩いてきた。
その少女の姿を見た村人達が、馬車から次々と出てきて祈りを捧げているようだった。
「どこかの宗教関連の人か?」
『ああ、そう見えるがゴスロリって……っておい! あれなんだよ!』
絹田が急に叫び、克人は思わずビクリと体を震わせる。
何事かと思っていると、伊丹たちが乗る七三式トラックに勝手に乗り込んでいた。
すると七三式トラックが、サザエさんの家のようにジッタンバッタンと揺れていた。
『隊長、羨ましいぃ……!』
「男の嫉妬は見苦しいぞ。とはいえ多少なり羨ましいと思ってしまうあたり、俺も人のこと言えないよな……」
やがて移動は再開し、迎えた昼下がり。
あたりは岩肌が見える丘となり、燦々と輝く太陽が照りつける。
閉塞的なコックピットは蒸し暑く、額から汗がだらだらと流れてくる。
「あっついなぁ、もう! こっちの太陽、日本より暑くn『警告、上空より熱源反応を確認』!?」
アストルフォからの警告に、克人は96式改を振り向かせる。
視線の先には村人達を襲う炎龍の姿があった。
第三世代型のASの何倍もある赤い巨体が空飛ぶ姿は、アニメで見た<ベへモス>より脅威だろう。
「隊長! 炎龍が出現しました。俺たちで対処しますので、隊長たちは村人たちの避難を!」
『わかった、そっちは任せた。村人たちの避難を終えたら、こっちも援護する』
「了解! 行くぞ、絹田。援護頼んだ」
『おうよ! ロッケンロール!!』
克人機が前衛、絹田機が後衛で炎龍に気を向かせようと、アサルトライフルによる牽制射撃を行う。
しかしその身に纏う外殻は想像以上に硬く、炎龍に効いているとは到底思えなかった。
炎龍は96式の方に目をくれず、逃げ惑う家族に狙いを定め、ブレスを吐こうと口を開いた。
それにいち早く気づいた克人機は、自らを盾として火を遮る。
『機体内部の冷却システムに異常が発生。左脚部のダメージレベルがCからB移行』
「うるせぇ! 何でもいいから持ちこたえろ!!」
やがてブレスは止み、一家が無事であることを確認しホッとしたのも束の間、ドラゴンが尻尾でなぎ払われる。
克人機は高く舞い、崖に叩きつけられる。
「グッ……!」
衝撃で数秒ほど気を失ったが、すぐに目を覚ました。
意識はまだ朦朧とし、ぼとぼと額から血が流れる。
頭部を半分潰されたせいで、ノイズが掛かったモニターから見るドラゴンはズシンズシンと地響きを鳴らしながら近づいてくる。
それから爪で腕を引き裂かれ、牙で脚をもがれ、もう満身創痍だった。
コックピットは、ビッービッーとなり続ける警告音と赤く点滅する。
機体のレバーを動かしてみるが、96式改は指一本さえ動かせない。
歪んだマスタースーツに固定され、脱出すらも不可能になってしまった。
「はは……ここまでか」
自分はここで焼き殺されることになるだろう。
そういえば、フルメタの外伝で火に焼かれる弟を楽にしてやるため、姉が銃で撃ち殺すシーンがあったような気がする。
残念ながら、克人にはそういった優しさはもらえないようだが。
全てを諦め、ゆっくりと目を閉じる。
だが予測していた痛みも、暑さも襲ってこなかった。
『おい、大丈夫か!?』
伊丹の声が聞こえると同時に、炎龍が叫びをあげる。
炎龍が顔を守るようにして、一歩、また一歩とあとずさる。
「動きが止まった! 勝本!パンツァーファウスト!」
「了解! ……っとと、後方の安全確認っと」
「「「「「「遅いよ!」」」」」
全員の総ツッコミを受けながらも、勝本はパンツァーファウストの引き金に指をかける。
だが、放つ直前でガク引きを起こして見当違いの方向へ飛んでいく。
「外れるぞ!」
伊丹が叫び、各々が衝撃に備える。
すると伊丹の近くにいたゴスロリ少女が扉を蹴破りハルバードを投擲する。
ハルバードは炎龍の足元の地面に当たり、衝撃で炎龍がバランスを崩す。
それによりパンツァーファウストの弾頭は炎龍の左腕の付け根に着弾し吹き飛び、左腕は落ちた。
炎龍は再び雄叫びを上げると伊丹達を睨みつけ、空へ飛び立った。
「い、生き延びたのか……?」
生きていることが信じられず、ただ呆然と呟くしかなかった。
太陽はすっかり落ち、あたりは暗くなっていた。
次回『異世界人との交流』