GATE〜自衛官 斯くして彼の地にて、ASで駆けり   作:とりマヨつくね

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嵐の前の静けさ

 

 

 

 

 

 避難民を受け入れてから、しばらく時間が経過した。

 村人達の満足度はかなりもので、何も不便がないということだ。

 特地でアンテナが付けられ、ネット環境が使えるようになったおかげでより円滑な運営が可能となった。

 それはそれとして。

 

 

「おぉ......! 繋がったぁ! 特地にアンテナ設置されたって本当だったんだ。うあ更新されてるチェックチェックぅ」

 

 

 伊丹は朝からネット小説を読み漁っていた。

 

 

「あのー?」

「うおぁ! これは保存せねば、やべえ危うく見逃すところだったぜぇ」

「あのー」

「ったくweb小説はいつ消えるか分からないからなあ」

「隊長」

「隊長!!」

「隊長さん呼ばれてますよぉ?」

 

 志乃は伊丹の下腿をつま先で蹴りつけた。伊丹は唸り声をあげた。

 振り返ると志乃と黒川がジト目で見ていた。

 

 

「く、栗林いたなら早く言ってよ!?」

「ずっといました」

「隊長、話を聞いて下さいませんか? テュカの様子がおかしいんです」

「テュカが……?」

 

 

 テュカとは、炎龍に襲われたエルフの集落の生き残りの少女のことだ。

 レレイと同様、この世界について色々と教えてくれる。

 一見なんともなさそうであったが、一体どうしたというだろうか。

 

 

「食事、衣類、居室全て二人分要求します。ですが一人分は全く手を着けないんです」

「個人的に欲張りなだけじゃないの? エルフが食欲魔神っていう設定とか?」

「違います。食事だって二人分というのは二人分の量ではなく、食器2セットの二人分なんです」

「誰かに食べさせてるとか、ペットを隠れて飼っているとかは?」

「1セット分は手をつけずに必ず廃棄しています。衣類だって余分に要求するのは男物です」

「念のため、居住地の周辺を探させましたがペットなどはいなかったそうです。他の住民にも聞きましたがペットなどは見てないそうです」

 

伊丹はしばし黙って思案する。

 

「ふーん。で、理由は聞いたのか?」

「一番言葉の分かるレレイちゃんと下村三曹に同席してもらったのですが、要領を得なくて」

「もしかして脳内彼氏でも飼っているとか?」

 

伊丹は茶化すように言った。しかし、伊丹の期待した反応は帰ってこなかった。彼女らもそれに近いものを疑っていたのだ。

 

「はっきり言って、それならいいのですが」

「レレイの師匠・・・・カトー先生に尋ねてみてはどうだ?」

「尋ねてみました。カトー先生も同じような見解だそうです。テュカはエルフの中でも稀少な存在だそうで良く分からないと。わたくしとしては正直判断に困っています。あまり打ち解けてくれないので」

「わ、わたしはそんな感じはないです。第一、わたしにはカウンセリングとか出来ませんし。心理学とかよくわからなくて」

 

 伊丹は確かに志乃では無理だなと思い、素直に頷いた。

 

「分かった。あとで俺からも話してみよう」

 

 会話がここまで進んだところで、廊下から桑原曹長の声が聞こえてきた。

 

「隊長、そろそろお時間です。黒川、栗林、お前らも早く来い」

 

 いそいそと伊丹たちは廊下へ出ていった。

 

 

 

 

 栗林と伊丹が話している間、克人は<ダイダラ>に乗り込み先日の戦闘でそのままにされたドラゴンの遺体を運搬していた。

 なぜこんなことをしているかというと、テュカが仕事をしたいと言ったことがきっかけだ。

 自衛隊からしたら異世界人の自発的行動は、大変歓迎すべきことだ。

 よって処理に困っていたドラゴンの遺体を、レレイを中心とした異世界人に一任することにした。

 ゆっくりとドラゴンの体を置くと、鱗を一枚一枚丁寧に剥ぐレレイ達に話しかける。

 

 

「ここら辺に置いとけばいいか?」

「そこで構わない」

 

 

 あらかた作業が終わり<ダイダラ>を降りる。

 

「ドラゴンの鱗ってどのくらいの相場なんだ?」

「飛龍ならこの鱗、一枚でデナリ銀貨三十~七十枚くらいなる、らしい」

 

 まだ完璧ではないがレレイの日本語は十分なほどであった。

 

「らしいっていうのは?」

「私、商人じゃない。だから値段、分からない」

「なるほどねぇ」

 

 デナリ銀貨一枚は節制すれば一人で五日は食べられるらしい。レレイ達は計二百枚ほど集めていたため、相当な額になるだろう。

 

「なあ……売れない鱗とかもらえないか」

「傷ついているけど、それでもいいか?」

「十分十分、そういうので構わないから」

「わかった。後で取りに来て欲しい」

「サンキューな。じゃ、そろそろ時間だからまたな」

 

 

 レレイ達と別れ、その場を後にした克人は格納庫へと向かった。

 

 翌日、第三偵察部隊がレレイと助けたエルフの少女テュカ、そしてゴスロリ少女改め、神エムロイの神官ロウリィを連れて二度目の偵察へと向かっていくのを見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回「イタリカ救援」
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