GATE〜自衛官 斯くして彼の地にて、ASで駆けり   作:とりマヨつくね

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一難去ってまた一難

 なんとも呆気なく戦いは終わった。

 城門が燃え上がったかと思えば、空には鉄の天馬が群をなして空を舞い、堅牢な鎧を身に 纏った巨人が戦場を駆け抜ける。

 あまりにも一瞬で、どうしようもないほど理不尽だった。だがそれは決して喜ばしいものではなかった。

 

「ハミルトン……」

「は、はっ!」

 

 隣で呆けていた騎士ハミルトンが姿勢を正し、慌ててピニャの呼びかけに答える。

 

「そなたに問う。我々は勝ったと思うか」

「はい、我々の勝利です」

「違うな……」

 

 最早戦いにすらなっておらず、ただ純粋な暴力に鏖殺された。

 今回勝てたのは、ロゥリィや伊丹達が自称するジエイタイによるところが大きかった。

 今、その暴力がピニャ、もっと言えばイタリカに向けば彼女に抵抗する手段はない。

 帝国の皇女とフォルマル伯爵公女が虜囚となり、帝都を支えるこの穀倉地帯が敵の物となる。

 住民達は、きっと抵抗すらしないだろう。

 それどころかきっと歓喜の声と共に、彼らを歓迎する。

 なにしろ、今回の勝利はジエイタイのおかげであり、廉潔な人間達であることはコダ村の生き残りに口々に語られている。

 政治を介さない住民達のことだ。目先の利益のためなら、正体が定かではない者に簡単に心を許してしまうだろう。

 

「もしジエイタイに開城を要求されたのなら、妾は彼らの膝をつき足の甲にキスしてしまうかもしれない」

「姫様……」

 

 ピニャはギリッと奥歯を噛みしめるが、すぐにあることに気づく。

 城門の外で複数の巨人達が、ガラスのように透き通っている翡翠の瞳で、まるで刃のように鋭い視線でこちらを見つめていた。

 

 

──────次はお前達だ

 

 そう告げるかのように、後ろを振り向いて天馬へ担がれ朝焼けの空へと消えていった。

 この時ばかりは、自分の矮小さと無力さをただ呪った。

 

 

 そんなお姫様の苦悩を知りもしない(バカ)がここにいた。

 

「FOOOOOOOOOOOOOOO! 第三世代なめるなよFOOOOOOOOOOO!?」

『なんかお前、キャラ違くね!?』

 

 やはり最新型はいい。

 居住性はともかく、第二世代より明らかに操縦が快適だ。

 ラグが少なく、柔軟で、武器の切り替えも早いし、M9に装備されているテイマー・システムのサポートで格段に動ける。

 これぞ第三世代、これぞAS、これこそ<レイヴン>!

 なんか出ちゃいけない麻薬物質が、脳内でドバドバと出ているが気にしないでおこう。

 そんな愉悦感に浸っていると、絹田がいつになく真剣な口調で話しかけてきた。

 

『ところでかつの字よ……』

「なんだ! 言いたいことはさっさと言え! でなければ◯ね!」

『だからなんだよそのキャラ!? なんかやり辛くて仕方がないんだよ! 落ち着け!』

「おちつきました〜」

 

 この男、もうダメかもしれない。

 情緒不安定な相方に呆れながら、絹田は咳を一回挟んだ後本題に戻る。

 

『さっきさ、なんかやけに身なりが綺麗な赤髪の女いたよな?』

「ああ……多分あれ、総大将だよな。それにしてもかなりザルな防衛戦だったけどな」

『そんなことはどうでもいい。俺らのことをあの豚を見るような眼差しに、なんかなんとも言えない気持ちが……』

「健軍一佐、ここにゴミがあるのですが」

『投棄を許可する』

『ちょちょ、冗談ですよ! だから下ろそうとしないでええええええええ!』

 

 まったく……聞いて損した。

 絹田は悪い奴ではないが、こういうところがあるから戦友以上の関係には絶対になりたくない。

 ん? コミケに一緒に行っているじゃないかって?

 コミケは戦場だぞ。

 とまあ、かくしてアルヌスへの帰り道は賑やかでありながら平和だった。

 

 

 

ロシア 某基地

 

 一人の男がカツカツと軍靴と音を鳴らしながら、基地内を歩いていた。

 その歩みには迷いはなく、一切の乱れのない動きからは彼が只者ではないことがわかる。

 彼の名はアルノルト・パシャエフ。

 ソ連時代から従軍し、いくつもの死線を潜り抜けた正真正銘の歴戦の戦士である。

 そんな彼がとある一室の扉を音を立てながら開け中に入ると、部屋は鼻孔をくすぐる刺激臭と紫煙が充満していた。

 そこには数人の男がカードゲームに勤しんでいた。

どいつもこいつも柄が悪く、首元にはチョーカー状の装置が嵌められていた。

 

「お前達、仕事の時間だ」

 

 アルノルトが言うと、男達の目がギラついた。

 それはまるで獲物を見つけた猟犬のようであった。

 

「へえ……目的地はどこで?」

「日本だ」

 

 一番手前に座っていた若干ロン毛気味の男の問いに、アルノルトはただ淡々と事実を述べる。

 

「日本って……あの噂の『特地』が出現したって言う……?」

「ああ、その通りだ。俺たちの目的は、異世界人の奪取だ」

「それはなんとも俺たち向けな仕事が来たな」

 

 

 左側に座っていた熊のように大きな男がカードをぶち撒け、歓喜に震える。

 この男ではないにしろ、他の部下達も似たような反応だった。

 アルノルトは軽く息を吐き、手に持っていたクリップボードを投げ渡す。

 

「そこに乗っているのがターゲットだ。しっかり頭に叩き込んでおけ」

 

 そう言い残して部屋を後にした。

 クリップボードに載せられていたのは、テュカ・ルナ・マルソー、レレイ・ラ・レレーナ、ロゥリィ・マーキュリー、ピニャ・コ・ラーダ、以下四名。




次回『ただいま、東京』
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