真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
「さて、と」
あれから依頼人である藤堂晴香を招き入れ、応接間に移動。先程の合図や魔術道具に引っ掛からなかった点を含めて本人である事は間違いない。対面のソファーに由奈に茶菓子とお茶を持って来させた上で彼女を見る。
\カカカッ/
| ガンスリンガー | 藤堂 晴香 | Lv56 |
藤堂晴香、彼女に関しては現在彼女を実質保護している警視庁、厳密に言えば特別悪魔対策本部<悪対>より経歴に関する報告書を事前に受け取っている。これは最近どうにも偽の依頼だったり、身元もよく分からない依頼主から依頼が出たりと、依頼を受諾する側も依頼人に疑いの目を持たなければいけない事案が増えている為にその辺の手間を省く処理だ。この情報を渡してきた人も警視庁における知り合いなので信用は概ねできるし、此方の裏取りでも報告書の内容と合致した。
で、報告書によれば彼女は異能者ではなく一般家庭の出身であり、4~5歳の時に両親が他界。妹が一人居たが、別々の養親によって引き取られてそれ以降は所在が不明。そして引き取られた先にて当時ファントムソサリティと提携していたとある<組織>によって教育を受け、その組織の構成員として強制的に任務を熟し続ける日常を数年前まで続けていたらしい。組織内での評価は至って平凡や平均以下であり、銃器やナイフ戦闘は熟せて最低限覚醒はしていたもののそれ以外に持ち得る物は何もなし。サマナー、潜入員、バスター、魔界魔法等の何らかの一芸を身につけようとはしたもののその努力も報われずに結局は組織内でも存在を持て余して、雑多な任務に投入しつつも後は首輪をつけて放置といった具合だった。もっとも、彼女を引き取った養親だけは妙に彼女に目を付けていたようだが。
そんな彼女にある任務が組織から下された。任務の内容は存在が異様に不明瞭な<キリギリス>の調査。掲示板の存在までは組織は特定したものの掲示板に入る為の様々な意味不明な、サブカルチャー的なオタク質問を持て余して、同レベルも低く与えられる任務もない藤堂晴香にその掲示板の調査を命じた。
組織の雑多な任務によって割と雑に死に掛ける事が多い彼女にとっては匿名掲示板の調査という事もあって取り敢えずこの任務受けてる間は死なないと、ある程度のモチベを保ったまま任務に臨めたらしい。1週間程、オタクとは何か、彼らが用いる知識の正体とは、アニメ・漫画・ゲームとはetcとオタクについて真剣に考えて、その甲斐もあって掲示板に正攻法で入る事に成功した。
まぁ単純に彼女もオタクになっただけなんだけどね。特にFPSとかサバゲーが好きらしい。報告書にその情報いるか?
掲示板に入り浸ってオタクになった結果として知見が広がったのか、あれ?これ組織抜けてもここの人達を最悪頼れば何とかなるんじゃね?と思い至ったらしく<組織>にはキリギリスの内情及びメンバーを明らかにすると豪語しながらいざという時の伝手をキリギリス内に作ったり、地道にレベル上げをしたりしていたとの事。
そんなこんなで棚から牡丹餅的な感じで起こったのが例の空港における九頭竜の発生、それに伴うファントムソサリティの滅亡。そこから勢いよく、彼女は<組織>から脱走を果たしたらしい。追手はない事もなかったが伝手の中に警察関係者が居たので転がり込む様に其処に保護され、<組織>を告発。
ファントムソサリティという後ろ盾を失い、告発もされた<組織>はその名前の全貌が明らかになる前に速やかにヤタガラスや悪対、キリギリス等の手によって討滅された。
「それでその後は警視庁に保護されつつ、その協力者に。今も大学生活を送っている、そういう解釈であってるかな」
「概ねは大丈夫だと、思います」
目の前にいる彼女は妙に挙動不審で僕の方をチラチラ見ている。
「何か?」
「あのぉ……男性だとお聞きしていたものですから、その貴女のような小さい子が出てくるとは思わなくて……本当にYO☆さんですか?知り合いからの紹介で来たんですが」
「僕の容姿に関しては結構有名だと思うけど、この服に関しては……その、なに……男物全部処分されちゃったから」
「は?」
「横の人に全部さ、捨てられちゃったの僕。もう服、女物しかないんだよね」
素知らぬ顔で椅子に座りながら、もしゃもしゃと客人用のお茶請けに手を出す
「しょうがないじゃありませんか。もうほぼ装備は着用したままで外に出るのが必須な状況なんですから、それ以外の服は必要ないでしょう」
「それでもスーツとかは残しておくべきじゃない?フォーマルな格好あれしかないよ?」
「ドレスで行けばいいんじゃないですか?あれ防具の上に着れますよ?」
この
「ああその、服装はどうでも良くてその長い金髪で女の子みたいな顔した上に140ちょっと位しか身長がないなこの子、と思って気になっただけなので別にYO☆さん本人なら問題ないですよ」
こ、この
「まぁそれで本人確認できたなら結構。そんな事より依頼についてです。ついでに敬語も必要ないですよ、慣れてなさそうですし」
「あ、っはい……じゃなくて、そういう事なら。うん、普通に話すよ」
「雑に流された……僕はどうでもいい存在なんだ……」
渾身の泣き落としもスルーされて、依頼の話に。お互いの存在についても把握が出来た。これ以上、探り合いのような真似は必要ないだろう。
「じゃ、説明宜しくね。僕も事前にちょっとだけ情報貰ったから知ってる部分はあるけど」
こくりと、藤堂さんは頷いてその詳細を話す。
「私が貴方達に依頼するのは神奈川県に存在する非合法レルム……関係者の間では<ヨコハマ裏中華街>と呼ばれている場所で行われている生物兵器の開発、そして彼らが新しく開発したとされる<悪魔化ウィルス>の実験を阻止する事」
「生物兵器は兎も角……悪魔化ウィルス、ですか。具体的にどのような物かお聞きはしたいですが……」
「順を追って整理しよう。まずはその非合法レルムとそれらの兵器・ウィルスを作っている組織に関してから」
僕は藤堂さんが持ってきた資料、<悪対>による事前調査記録を見る。まずは非合法レルムに関しては<ヨコハマ裏中華街>という一種の通り名はあるが横浜には存在せず、政府も迂闊に手を出せない“存在しない筈の場所”とされている。
その場所が生まれたのは戦後であり、その混乱に乗じて進出してきた中華系マフィアを中心に荒れ果てた廃墟群を占拠。日本政府はこれの排除に乗り出そうとするも戦後間もない政府に力はそこまでなく、GHQの監視の目もあった為に最低限の包囲を固めた上で静観という形しか取ることが出来なかった。
日本政府が手を出せるような状況になるまでに複数の中華系マフィアがさらに進出し、三業会という後ろ盾もいつの間にかに確保。そこに漬け込むような形で中国人の不法滞在者が鼠のようにその場所に群がった結果として不法滞在者の受け皿という面でも或いは複数の中華系マフィアによる盤石な支配体制という面でも一切の手出しが出せない中華系のみで構成された歓楽街が完成してまった。横浜と隣接したその場所を人々は<ヨコハマ裏中華街>と皮肉を込めて呼んでいる。
が、ここ1年におけるGP上昇で中華系マフィアの脅威度が相対的に下がり、彼らが提携していたファントムソサリティが潰れた事によってこの街の支配は薄氷の上の物になった。ヨコハマの支配者達にとっては唯一の脅威で魔人の手によってほぼ壊滅状態になっていたヤタガラスもいつの間にか息を吹き返し、後ろ盾の三業会はうんともすんとも言わない。彼らはそんな現状を打破する為に<ヨコハマ裏中華街>をレルムにして、街にやってきた戦力を取り込もうとこの終末に近い世界で何とか生き残る為に足掻いていたらしい。
ここまでが今回のヨコハマレルム成立までの約数カ月前の情勢。そこから非合法レルムになった事により人の出入りが活発となり、悪対の潜入捜査官も入り込みやすくはなっていた。
そして、最近の調査で発覚した幾つかのヨコハマレルム内における情勢変化。藤堂さんは再び資料を持ち出して僕らに提示した。
「その際の調査を行ったのはまず私を含む3人の警察協力者、<悪対>に所属する杉本さん、劉鳳さんに斎藤さんになるかな。」
調査自体が行われたのは今から数日前であり、最新の調査記録なのは疑いようがない。前に行われた調査は1カ月程前になり、1か月間におけるレルム内の変化が書かれている。
「1つ目はヨコハマレルム内に立ち入った悪魔関係者の一部が失踪している点。この悪魔関係者も所謂ダークサマナーとかが多いんだけど、事情を知らないドリフターなんかもヨコハマレルムに紛れ込んでちゃったみたいで後者の失踪件数が多い」
「ヨコハマレルム等の非合法レルムでも特にヤバい場所では人攫い自体は元から起こってるかと思いますが件数が明らかに増えたりとかですか?」
「うん。こう、レルム全体でそういう噂が蔓延して住民も明らかに怖がってる位、人攫いがされてる」
それと、と藤堂さんが付け足して分厚い資料の頁をめくる。
「二つ目がレルム内に人喰いの悪魔が放たれてるって噂。1つ目の人攫いをしている連中も住民の言葉や状況証拠からそいつらな可能性が高い」
「そいつらの種族・特徴は?」
「あまり深くは踏み込めなかったけど、悪魔達はそれぞれ2系統の行動を取ってる。まず逃げ惑う悪魔。これは基本的に人を見ると逃げる傾向があるらしいんだけど、理性を失ったと思われる個体は狂暴になって人を喰らおうとしている。次に能動的に人攫いをしていると思われる悪魔で、前者の逃げ惑う悪魔を襲って喰らってもいるみたい。種族は夜叉鬼、鬼神族、飛天族……詳しいデータはそっちの資料に乗ってるけど通常の悪魔とは少し違った。様子もまるで人間が悪魔になったみたいで……」
「人間から悪魔に変する、だから悪魔化ウィルスか……名前まで特定してるんなら推測ではない確かな情報も掴んでる訳だね。とはいえ、今は話しを進めるべきか」
僕も由奈も適性はあったにせよ他者による実験・儀式による影響で悪魔の力を手に入れている。僕に関して言えば母の死と引き換えに生み出されたピクシーの力を持つ悪魔の子であるし、由奈に関して言えば彼女が持つ人間性・肉体機能を代償に羅刹の血を順応させてラクシャーサの力を持ち合わせてしまった限りなく喰奴に似た存在だ。そういう経緯がある為、お互いに色々と思う所がある。
「うん。それで……3つ目の噂、これは複数の中華系マフィアから確認が取れてる事なんだけど彼らが<生物兵器>を飼っているという噂が立ってるの」
「あれを生み出しているのはそれこそ君が居た<組織>だけだった筈だけど……生き残りが居た、そういう事だね」
「ええ」
彼女がかつて居て、今は滅び去った<組織>。名前は複数存在したようだが正式名称はない、恐らく秘匿性を高める為だと思われる。裏社会においても居場所がなくなった或いは危険すぎる研究を行う者達を集めて、悪魔の生態の研究および実験を行う為にファントムソサリティの出資によって作られた<組織>、その研究産物の一つに<生物兵器>が存在していた。僕と由奈は<組織>を対象とした討伐の依頼を受諾・遂行した事があり、<生物兵器>がどういうものなのか大まかに知っていた。
<生物兵器>とはその名の通り、人間や動物を対象として構築された兵器。兵器としてもかなり古い歴史を持つそれに最新の技術で開発を進めていくというのがコンセプトだ。小さな寄生体を人体に埋め込んで、胎児のように大きくなり、最終的には人体を食い破って誕生する<エルフ>。陸上に適応した大型ピラニアの<ファニグス>や巨大化した毒ウニである<スウィンボール>。とにかく生物を巨大化させて、狂暴性を付与する事で約数か月前まではファントムソサリティによる生物兵器運用部隊も存在した程度には有用性はあると判断されていた。
しかし、今の情勢で考えると話は変わってきてしまう。<生物兵器>達のレベルは精々一桁~30、大型の物で40行くかいかないか程度で現在の足切りラインを考えるとこれを運用していく厳しく、開発元の<組織>の壊滅によって新規での生産も出来ていない。その結果としてここ数カ月で<生物兵器>は急速に数を減らし、もうほぼ確認例も0となっていた。そんな状況の中で新たに<生物兵器>の存在が確認された訳である。
「<生物兵器>の目撃例もあるの?」
「エルフとかの他にリッパー、オークスターにモルゲンなんかも目撃されてるみたい。写真も確保したし、居るのはほぼ確定と言ってもいいかも」
「はぁ、何というかとんでもない状況になってますねヨコハマ。中華系マフィアが群雄割拠する街に悪魔化したと思われる人間に生物兵器。とんだ魔境ですよ」
「巨大怪獣が度々現れて厄ネタも多い東京よりはマシなんだろうけどね……まぁでも<生物兵器>に新たな変化が現れてないなら、僕達にとっても其処まで脅威じゃない。問題はやはり<悪魔化ウィルス>とやらになりそうだね。今掴んでる限りの情報の詳細を御願い」
「……こっちはあんまり情報掴めなかったから、これが正しいという確証はないって事は言っておくわ。」
彼女が掴んでいる<悪魔化ウィルス>の情報は潜入時における1つの中華系マフィアの支部から発見されたものであり、それによれば<悪魔化ウィルス>の開発自体は数か月前の凡そファントムソサリティが壊滅してから数週間が経った時期から始まっていたらしい。
実験・開発目的は記載がなく、淡々と記録が書かれた実験報告書。実験体の多くは行方不明となっているドリフターが多く、それらの報告書には幾つかの方法で人間を悪魔化させる方法が記載してあった。
まず人体適合性の高い悪魔部品を人間に移植するという方法。移植後は人間の肉体・精神を悪魔の力で侵食し、人間性を喪失させた上で悪魔化を目指す。これは由奈、正確に言えば天魔衆が用いるラクシャーサの血を用いた羅刹化に酷似しており、特に悪魔部品も鬼由来の物が多い為にそれを模した物である可能性が非常に高い。ただ、この方法による悪魔化は合体と同様にリスクが大きい手段の為か成功事例が多くない。
二つ目に人間と交配記録のある悪魔による交配という物。所謂悪魔の子を宿す事で人間の悪魔化を行うものだが、これは僕がピクシーの力を宿すに至った経緯に近い。とはいえこの実験方法による記録はもっと別のシステム開発のデータに使われている可能性が高い。
三つ目に催眠誘導、自害破壊による意図的な悪魔への魂の売買契約。精神的に負荷を掛けて判断能力を鈍らせた状態で<組織>内におけるダークサマナーの契約悪魔を用いて実験体の魂を差し出させ、その悪魔の眷属等にした上で悪魔化させるという方法だ。この方法は上記の2つに比べると時間は掛かるもののある移植や交配という強引な手段ではなく、意味正規の手段の悪魔化である為に実験体の精神力に多少左右される所はあるものの再現性はあったらしい。やはり時間が掛かるのが難点となっている。
そして、最後に記載があった<悪魔化ウィルス>、厳密には太陽光線の波長を弄った事による悪魔化促進パルスによる実験。詳しい情報は書かれておらずを人間に浴びさせる事で人間の肉体変化、それによる悪魔化を発生させるという実験記録がずらずらと並んでいる。記録が一番新しい物である為にこれが最新の方法で尚且つ成功率も抜群に高い。
「……最後だけ何というか異質ですね。上記の3つはまだ理解は出来ますが、太陽の光を弄る事で悪魔化を引き起こす……?聞いたことがない」
「うん、私も<悪対>の人達も凄い不審に思ったけどこれが一番高いのは間違いないみたい。これの詳細を一番知りたかったんだけど、その実験報告書にはそれ以上の記載がなかった」
「波長を弄るのだってどんな風に太陽光を弄るんだよって所だよね。太陽光の紫外線はオゾン層に吸収されて、僕達の生存に問題のない光が今も降り注いでいる訳だけど……うーん、僕も専門じゃないからこれ以上はわかんないや。この情報はもう上の方に投げてるんだよね?」
「<悪対>の研究所や他の協力者の方で改めて解析は行うって話は聞いた。私からは話せるのはこれ位になるかな」
「おっけー。ありがとう」
情報は一通り揃ったが、色々と疑問・懸念点は多い。生物兵器が関連している以上は<組織>の生き残りが中華系マフィアによって飼われているのは間違いない。中華系マフィアに実験を行うノウハウがある訳もなく、実験や開発もその生き残りが行っているのも同様に間違いないだろう、其処まではいい。問題はその奥に潜む黒幕、本命は三業会だがその目的。
中華系マフィアにわざわざ匿うのにリスクのある<組織>の生き残りを回収させて、レルムとなった事で外の住民の往来も増えた状況の中で生物兵器をマフィアに配置して悪魔化した人間を徘徊させている。恐らく<悪対>によって情報が抜き出される所も既定路線で黒幕は目的を達成しているかその直前まで来ているから急いでいるのか或いはやむを得ない理由でリスキーな方法しか取るしかなかったか、色々考えられるが兎にも角にも<悪魔化ウィルス>に<生物兵器>、これらを野放しにしておく訳にはいかない。
「依頼を受けるかどうかの返答はまずYESだ。こんなの放り出しておく訳にはいかないからね。最善は尽くす。僕達以外でヨコハマレルムに行くであろう面子は決まってる?」
「ありがとう……で、ヨコハマレルムに行く面子はまず私を含む三人の協力者と<悪対>、<シャドウワーカー>も来るって話は聞いてる」
「それに僕達が追加される訳だけど……それだけじゃ多分手が足りない。報酬はそっち持ちになりそうだけどこっちで声掛けしてみよっか」
敵の規模を考えると戦力は多い程いい。ヨコハマレルム内に存在する住民も敵になる可能性が高く、多数の生物兵器と悪魔を相手どらないといけない事は容易に想像がつく。<悪対>が参加している以上はヤタガラスも恐らく動いてくれるから、真澄にちょっとヤタガラスに声掛けを行わせて、エリヤと由奈には前のレルムで共同戦線を張った剣士達や他のデビルバスターに声掛けを御願いしよう。僕は戦いに必要になるであろう知り合いに協力を依頼を行うのが良いかな。
「声掛け次第だけどヨコハマレルムに行く日程は決まってる?」
「情報が割れてるのは相手も分かってるだろうから、今から1週間後位までには…?」
「わかった。1週間で面子を集めて、情報も伝えておく。恐らくレルムでの戦い並みの大規模な戦いになると思うから覚悟はしておいてほしい。これ連絡先ね」
「えっ、りょ、了解。それまでの間にこっちも引き続き情報収集を進めておく」
「面子が決まったら全員集合して情報共有をする場所も決めておいた方が良いかと。そのままヨコハマレルムに向かえばいいですしね」
「場所は<悪対>が指定してくれるだろうし、それも藤堂さんに任せていいかな?」
「うぇっ!?い、いちおうそれも話しておくけど……」
「じゃあ今日は質問とかなければ解散って事で。お互い忙しくなるだろうしね。ちょっと外出る方法がうち特殊だから外まで送るよ」
「質問……特にないから、いったん帰るわ、うん」
とんとん拍子に話が進んで困惑する藤堂さんを外まで送って、待っていた<悪対>の人達に預けてから帰らせて僕達もまた真澄やエリヤに協力して貰いながら準備を進める。期限は1週間。それまでの間にどれ程の戦力を確保できるかに鍵は掛かっているだろう。
後、声を掛けたい面子として……<漫画好き>さんが居れば強いし、顔も広いし、知識面でも頼りになりそうだがどうもそれどころではないと風の噂で聞いたのでやめておいた方が賢明だろうか。大体いっつも何かしらの事件に巻き込まれてる人らしいし、事件が無事に解決したら何か適当に使えそうな情報投げとけばいいな、うん。
「よし。んじゃま、頑張っていこっかー」
それから約1週間後、<悪対>の指定した集合場所にて藤堂さんも含めて僕達は集まっていた。此方が想定していたメンバーは概ね誘う事に成功し、他に真澄が要請した<ヤタガラス>に、<悪対>の面々と藤堂さん達。さらに<シャドウワーカー>の三人も居るそうそうたる顔ぶれだ。過剰戦力である、と言われれば否めない部分はあるものの実質的に街一つを相手取り、さらに危険なウィルスや兵器もある以上はこれでも油断は一切できない。
時間通りに全員集まった所で、今回の本来の依頼人とも言えるサングラスを掛けた男が口を開く。
\カカカッ/
| コマンダー | 白河 大輔 | Lv68 |
「警視庁・特別悪魔対策本部所属の白河 大輔だ。まず今回集まってくれた事に感謝を告げたい。とにかく戦力が足りなかったからな。ここまで集まれば不測の事態も考慮した上で万全といえるだろう」
白河 大輔。<悪対>の中でもファントムソサリティ及びそれに関わる組織を主に追っている捜査官で、藤堂さんを保護したのも彼であると聞いている。数か月前に<組織>が壊滅してからも、一部の人員が逮捕或いは死亡が確認できずに行方不明になっていた事からその生き残りの調査を続けて、今に至っているという訳だ。
「では本題に移ろう。作戦や情報に関しては各々に伝えた通りだ。概ねその通り動いてほしい。此方からは簡易的な確認として今回の作戦の最終目標とそれぞれの隊の役割だけ伝えさせて貰う」
「まず最終目標だがヨコハマレルムの地下に存在している<組織>の研究所の制圧とその研究を主導しているとされる藤堂 奈津子と呼ばれる女の確保。以上の2つだ。前者に関しては此方で大まかな位置と入口は特定している為、其処からそれぞれ別ルートで第一陣と第二陣による突入を行う予定だ。後者に関しては悪魔化ウィルス及び生物兵器の研究は凡そこの女によって進められている物だから、というのが理由となっている。他の研究者もなるべく確保して貰いたいが優先すべきはやはりこの女だな」
藤堂という名字の通り、彼女は藤堂さんを過去に引き取った人物であり彼女曰く研究の為ならあらゆる物を捧げるマッドサイエンティスト。既存の生物兵器は凡そ彼女一人の手で研究されたと言っても過言ではなく、<組織>があまりに呆気なく壊滅したのも彼女が色々と細工をした上で当時の一部の研究メンバーと共に<組織>から離脱したというのが主因となっていると藤堂さんは話していた。
「そして、作戦遂行における隊分けに関してだな。これについては話し合いの上で此方の方で指定させて貰った。警察の隊分けにしちゃ随分と大雑把だが、複数の組織に個人のデビルバスターが入り混じっている関係で分かり易い方が良いと判断した。俺は全体の指揮を担当する関係でこれ以降の説明は各隊のリーダーに一任する」
今回の依頼における班分けはそれぞれ第一陣、第二陣、第三陣と分かれている。第一陣は先遣部隊で初手で研究所に突入して暴れ散らかすのが目的で、恐らく一番それぞれ単独行動をする可能性が高い。そういう訳で此処に割り当てられたのは僕達と今回誘った<キリギリス>のメンバー達となる。アクが強いからね
\カカカッ/
| ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | Lv83 |
「第一陣のリーダーの久遠 フェイだよ。メンバーに関しては僕に由奈、エリヤに真澄。藤堂 晴香、月鰐ギンコ、武田赤音、アナンタ、ベネット、花山薫、ジョン・スリーの11人でやっていく感じかな。まぁ指揮は最低限行うけどぶっちゃけ敵の数が多いから幾らか分散して戦う事になるだろうね。何かあった時だけ他人頼る感じの個人プレーで、後は何かあったら誰かに情報伝達だけ徹底して貰えればいいよ。僕からはいじょー」
次に第二陣。これは第一陣が突入した後に別ルートで研究者に侵入。第一陣を囮に研究所内に囚われているドリフター等を救出や研究者の確保を目的とする部隊で主に<悪対>の面子と一部の<キリギリス>メンバーが割り当てられている。
\カカカッ/
| シャドウ使い | 劉鳳 | Lv81 |
「第二陣のリーダーの劉鳳だ。此方は主に研究所内に囚われた人々の救出及び研究者・中華系マフィア主要人物の確保を目的としている。メンバーは<悪対>から俺、杉本佐一、斎藤一。<シャドウワーカー>から桐条美鶴・真田明彦・メティス。<キリギリス>より魔界医師としてルシエル、移動担当として東堂葵。以上、8人で作戦を遂行する。このメンバーなら俺から言う事も特にない。各自最適な行動を期待する」
最後に第三陣。所謂作戦本部及び何かヤバいのが出てきた時に対応する部隊であり、非合法レルムの一角に陣を置く場所は確保されている。
\カカカッ/
| サマナー | 新城直衛 | Lv78 |
「<ヤタガラス>所属の新城直衛だ。<悪対>所属の白河 大輔殿、<キリギリス>の城鐘 恵殿と共に全体の指揮を取らせて頂く。作戦本部では<悪対>が中心となって各隊の状況を確認し、非常時には川村ヒデオ殿とウィル子君が各隊に向けて情報伝達と共有を行う手筈となっている。また第参陣に対する襲撃及び第一陣・第二陣の救援に関しては葦名弦一郎を中心とした<ヤタガラス>の部隊が対応を行う。以上だ」
各リーダーからの伝達が終わり、そのまま作戦開始時間まで自由解散となった。ある者は作戦の精度を上げる為にメンバー達に話し掛けては相談を行い、ある者は作戦開始前までリラックスをしていたり、ある者は……なんか斬り合いを始めてたりするが、寸止めで止めてるのでいいか。もう僕は助けないからな、もう助けないぞ。
そんなこんなできょろきょろと周りを見渡せば藤堂さんの姿が目に入った。さっきまでは青い長髪の女性と同様に青い短髪の男性に話し掛けていたようだが、今はどうにも落ち着かない様子で近くにあるベンチに座っている。
「わっ!」
「わぁ!?……ってなんだ、フェイちゃ……くん……フェイさんじゃない」
「そんな言い直す必要ある?」
浮かない顔の彼女に対して真正面から近づいて驚かせた。彼女の此方に対する敬称に一抹の不満を覚えながらも、彼女の横に座る
「で、どうしたの。そんな浮かない顔して。やっぱ今回の作戦が心配?」
「まぁそんな感じ、かな。今回の作戦がここまで大規模になるとも思ってなかったし、何より<組織>のせいでこんな事になってるから……」
「責任感じちゃってるって事ね」
4~5歳という幼少期に彼女は藤堂 奈津子に養子として引き取られた。引き取った目的も<組織>の構成員として育て上げる為で、訓練の過程で藤堂さんの幼少期以前の家族との記憶はほぼ忘れ去られてしまっている。つまり、彼女は<組織>以外の過去を知らない。
「藤堂 奈津子……彼女に対して思う所はやっぱある?」
「親としてあの人を見た事は一度もないわ。けど妙に私の事を気に掛けてて<組織>における立場も便宜を図っててくれてたみたいだから、気にかけては居てくれてたんだなって……でも、それは私を体よく利用する為の好感度稼ぎみたいな物だったと思う」
「成程ね。一応白河さんの話によれば藤堂 奈津子は覚醒者ではない。だからこそ確保も可能だと判断してる訳だけど、何らかの事情でそうじゃなかった場合は恐らく殺す事になる可能性が高い。君がその引き金を引く事だってあるかもしれない。その覚悟はある?」
家族としての情は持っていないというのは本当だろう。<組織>という犯罪組織に強制的に引き取られ、過去を忘れ去られた挙句に自身の手駒・人形として扱われ続ける日々、それを与えたのが藤堂 奈津子だ。ただ、それでも藤堂さんの中には迷いのような物もあると僕は感じている
「撃てる、とは思う。あの人は殺される理由の方が多いし、私もそれに反論はない。ただ、あの人は私の過去を知っている人だし、なんで私を気に掛けていたのかっていう本心は知りたい。例えそれがどんなものでも」
「親との関係性の清算、か。確かに終わらせないとすっきりしないもんね、気持ちはよく分かる。じゃあ、そうだな」
ベンチから勢いをつけてばっと立ち上がり、藤堂さんに手を差し伸べる。
「第一陣のリーダーとしてメンバーの意見はなるべく汲む事はしてるんだ。白河さんの指示もあるし、なるべく生きたままの確保を僕達でも目指そう。第二陣が確保するならそれはそれでいいし……まぁ既に用済みになって殺されてた、みたいな事もあるかもだから気休めみたいなもんにしかならないかもしれないけどね」
「……ありがとう。私も頑張るわ」
藤堂さんが僕の手を取って立ち上がる。それと同時に作戦開始時刻が迫ってきているのか、バタバタと人々が慌ただしく動き回っていた。
ヨコハマレルムに突入すれば後はノンストップだ。レルムには生物兵器や悪魔、マフィア、それ以外にも色々と戦力を用意している可能性は高い。警察とヤタガラスが元々不可侵を貫いていた場所に強襲を掛ける以上はヨコハマレルムはどうあれここで御終いだ。背水の陣でヨコハマの支配者達は抵抗するだろう。
とはいえ、僕達も勝たなきゃ未来がない。この先やらなきゃいけない事もやりたい事も沢山ある。だから
「人事を尽くして天命を待つ、なんて言わない。用意するべきものは用意した。後は死ぬ気で僕達の勝ちを目指しにいこう」
そうして、戦端は開かれた。
・後書き
またほびーさんの方に許可を頂き、ラクシュミ攻略組やら悪対やらシャドウワーカーのキャラやらをお借りする事になりました。人数で察して頂けると思うんですが規模が大きいので暫くこの話が続くと思いますが読者の皆さん宜しくお願い致します(後キャラが多い都合で各キャラが分散してでの視点が多くなるかと思います。何か見づらいとかあったら感想まで宜しくお願いします)
・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
男物全部捨てられた人。依頼を聞いてみたら規模もでかいし、厄ネタハッピーセットって感じの情報しか出てこなかったのでレルムレイドのコネを使ったり、真澄のヤタガラスのコネを使ったり、個人的に親交のある東堂やシロエさんを誘ったりしてドリームチームを作っていた。漫画好きさんも出来れば誘おうとしたが面識ないし、何かそれ所じゃなさそうだしで断念。機会があれば会ってみようかなとは思っている
<久遠 由奈>
男物全部捨てた人。一部は由奈の私物となった。最初は捨てるか迷った物の真澄に話したらその件だけ肯定されたとの事。色々駄目な大人
<藤堂 晴香>
今回の依頼人。大体経歴は寄生ジョーカーと同じだが、寄生ジョーカー本編に入る前にキリギリスの掲示板に潜り込んだ結果、知見が広がって脱走を決意してそのまま成功してしまう。その為、寄生ジョーカー本編も起こらずにファントムソサリティ諸共<組織>は滅んで、今は普通の大学生兼警察の協力者として過ごしていた。が、過去は追いついてきたのである
<キリギリス組>
細かい話なんかはまた登場回にて。取り敢えずレルムレイドにおいて色々縁が出来たから誘った組ととある魔人にに何度も斬りかかって死んでは生き返って回復というおきあがりこぼしを繰り返した結果、切れ気味のフェイから多額の蘇生費を要求されてその肩代わりに依頼への参加を頼まれた組が居る。
<悪対>
実質的な今回の依頼人。白河大輔は寄生ジョーカーの登場人物であり、サングラスとイケメンな事が特徴である。今作では悪対所属となって陣頭での指揮を行う。また、他の悪対面子も環境の変化に応じてレベルアップを果たしている。
<シャドウワーカー>
タルンダ先輩が<悪対>所属だったのでその流れで介入。此方も悪対同様にレベルアップを果たしての参戦となる。
<ヤタガラス>
真澄の要請により派遣されたヤタガラス組。ネームドは基本新城さんと弦ちゃんの二人で此方も同様にレベルアップを果たしての参戦となっている。