真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス-   作:名無しの骸骨

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ヨコハマ事変 邂逅

「ふむ、想定より数が多い……悪対とそれに準ずる勢力及び協力者程度ならばと思っていたが、彼らの人脈を見誤ってしまったな」

 

 培養槽が立ち並ぶ、薄暗い研究室。部屋の壁面に設置された無数のモニターのみが光源であり、錆びついたパイプ椅子に座ってそれを眺める男がまるで指揮をするかのように宙を指でなぞる。

 

「研究所外及び研究所内の異界(Drive)化は完了。四神やアートマ兵・悪魔・生物兵器の配置も問題あるまい……が、これは時間稼ぎにしか多分ならんだろうな。各個撃破を狙いたいがどうにも奴ら単体でも強い故、難しい。はてさて、これはどうするべきか」

 

\カカカッ/

魔道師石 亜南Lv80

 

 男……石 亜南の口から思わず溜息が出た。己の役割は悪魔化ウィルスの研究とその情報を自らの主に届ける事でこんな戦争紛いの事柄ではない。少なくとも研究自体は良い所までは行った。藤堂 奈津子をマフィア共に飼わせて、生物兵器という玩具から此方がどうにも手を拱いていた“覚醒者でない人間を悪魔化させる手段”の研究を行わせ、様々な研究方法を模索・失敗しながらもあの女は太陽の光の波長を弄るという方法で此方が概ね望んでいた悪魔化促進パルス、通称<悪魔化ウィルス>を生み出してくれた。

 

 其処からは個体を確保する為に長年育ててきたこの箱庭(ヨコハマ裏中華街)をレルムとして、入っていく悪魔関係者やドリフターをサンプルとして確保し、只管研究と実験を繰り返して悪魔化ウィルスの精度を高めていった。そして、その実験・研究データは己の脳から()()()()()()()()()()()()へと魔術的な繋がりで送信されて、其処に過不足はない。故に己の役目自体は最低限果たせている。

 

「三業会の幹部様にしてはどうにも弱気な発言じゃないか」

 

「おや」

 

 椅子の錆びつきが耳障りな音を鳴らしながら亜南が振り返る。

 

\カカカッ/

剣士ウリック・ヤードLv85

 

\カカカッ/

超能力者アンナLv90

 

 ウリックにアンナ、共にあのレルムにてレイド参加者の様子を観察していた二人である。そして現在はどういう意図か不明だが、石 亜南に雇われた上でこのヨコハマレルムの用心棒をしていた。

 

「貴方達が此処に来る事はもうないと思っていたのですが」

 

「それでもよかったんだがね。ちょいと動かなきゃいかん理由が出来ちまったのさ」

 

「ふむ?」

 

 かつて、石 亜南は足りない戦力を補う為に裏ルートにて戦力増員の取引を行った過去を持っている。その取引相手こそ、彼ら二人の所属する組織の()()()()()()()。ガイアはこの二人をレルム防衛の護衛として派遣する見返りとして生物兵器のデータを求め、亜南もこれを承諾。契約は結ばれ、二人は此処に居るという訳である。

 

 もっとも悪魔化ウィルスの情報も幾らか抜き取られいるが、そこはもう互いの暗黙の了解という奴だ。此方も三業会にガイア……いやエデンという組織の構成員、その情報を送っている。ウリックにアンナもそれは暗黙の了解という形で了承はしているだろう、さもなくば自身は生きてはいない。

 

 そんな環境下で護衛としてヨコハマレルムに滞在する事になった二人だが、本人達にやる気があるとは言い難かった。敵が出てくれば容赦はしないだろうが任務だから仕方なくといった様子で、此方の与えたVIPルームにて基本過ごして顔を出す事は滅多になかった。精々ガイアからの命令が来て外出する際に此方に一声掛ける時位だっただろうか。

 

「今回の襲撃者に何かお目当ての人物でも?」

 

「概ねそういう感じだ。まぁ俺というかこいつなんだが」

 

 後ろに居る一言も言葉を発さないアンナにウリックが親指で指差す。彼女の様子もあまり変わったようには見えないが、彼女は眼帯の女が映るある一つのモニターを見上げてそれを見るアンナの瞳はいつものそれとは異なっているように亜南には感じられた。何も考えていないような無気力な目から愛や憎悪、怒りや喜び、それらの感情が混ざり合った執着の念が目に宿っている。

 

「……察するに執着している相手はあの眼帯をつけた女ですか。此方で何かすべきことは?」

 

「エリヤ……あの眼帯を付けた女の位置はアンナが何となく分かるから必要ない。それにそっちの作戦なら襲撃者が落ちる位置はランダムになるんだろう?それを変えられんのだから、そっちに出来る事もない。俺達は襲撃者の迎撃という任務を果たしながら好きにさせてもらうさ」

 

「そうですか、では少しだけ此方で手を貸しましょう。それでやり易くはなるでしょうから後はご自由にどうぞ」

 

「あいよ」

 

 そう言い残して、ウリックとアンナは研究室を後にした。正直あまり当てにしていなかった彼らがやる気となっているのは亜南にとっては僥倖だった。特にあの場において厄介な特にLVの高い連中を相手取ってくれそうなのが良い、懸念点が一つ減った。

 

「後は我らが筆頭研究者様の動向次第だな」

 

 亜南にとっての最大の懸念点、それは敵ではなく味方である筈の藤堂 奈津子だ。あれは恐怖や畏怖、ましてや忠誠や忠義等の感情で存在を縛れる手合いではない。自らの知性を武威のように高めんが為に知識を得て、知恵を絞り、研究そのものが生きる目的の典型的な狂った科学者(マッドサイエンティスト)。実利を示せば素直に此方に従うが、それが足りなければ容易に裏切りに走る。現に<組織>は裏切られているし、背水の陣を敷く己は次に切り捨てられる対象なのだろう。

 

 研究者として奴を飼う事になった時に幾つか首輪はした。裏切れば死ぬような呪いも掛けたし、裏切りの兆候を見せた時は彼女の行動を予測して先んじてそれを潰して回った。それでもまだ彼女を斬り捨てられないのは奴が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それにあれには切り札がある為に暗殺は難しい。覚醒者でもない愚者の癖に此処まで面倒な手合いだったとは、と亜南は過去から現在に至るまでずっと彼女の存在に頭を悩ませている。

 

 とはいえ、まだ完全な詰みには達していない。己が迎撃に成功するにせよ失敗するにせよ、最早このヨコハマは戦いによって確実に崩壊するだろう。故に重要なのは自身にとって、()()()()()()()()()()()()より良い終わり方。それをこの戦いで模索しなければならない。例え此処で我が身が尽きるとしても、その忠誠を示す為に。

 

「計算通りにはやはりいかんが、此方もまだ切れるカードがある。最期まで足掻いてみるとしよう。我が三業会、そして天尊流星が作るその未来の為に」

 


 

「潜入完了っと……」

 

 今僕が居るのはヨコハマ裏中華街の小さなビル、その一室の大窓付近。もうヨコハマレルムと呼称した方が良い気はしてきたが、何にせよその内部に潜入する事には成功した。そして潜入してから<悪対>及び藤堂さんが前潜入した時と比べると幾らか変化が生じている事も分かった。

 

 まず歓楽街から人気が消えている。厳密に言えば人より悪魔の気配が増えていると言っても良い。建物に隠れている一般住民も或いはマフィアでさえ、何かに怯えて隠れるようにして各々の住居に閉じこもっている。気配を追って路地裏を見れば、人の死肉を喰らう低位の悪魔とその死体の中から半漁人のような生物兵器<エルフ>が殺し合っていた。要するにこの街はもう手遅れに近い。

 

 加えて言うならヨコハマレルム全体に結界のような物が張られていた。術式から判断するに恐らく魔道の応用であり、この結界は外から入る者を弾く物ではなく中に入った者を出さない為の物。その結界を補強する様にレルム全体の異界化が進行しており、それに応じて内部の悪魔の力も上がっていくし外部への通信も難しくなるだろう。

 

 此方の襲撃計画は1週間という短い間で整えられた物だ。迅速にして性急、情報が漏れたとしても意味がない程の速さだ。ただ、そんな状況でここまでの……此方の進行を見越したかのような陣を敵は敷いている。敵への警戒レベルをまたさらに上げる必要がある。

 

「フェイ」

 

「戻ったみたいだね」

 

\カカカッ/

剣士久遠 由奈Lv88

 

\カカカッ/

巫女神城 真澄Lv84*1

 

\カカカッ/

ガンスリンガー久遠 エリヤLv74

 

 それと同時に偵察に行っていた三人が戻って来た。

 

「第二陣、第三陣共に配置完了しました。研究所の位置や入口なんかも前と同様のようで潜入ルート事態に変化はありません」

 

「何も知らない住民や悪魔関係者の保護に関してはヤタガラスが担当するそうよ。一応こういう事を危惧して戦力多めで連れてきた節はあるけど、それでも手が回らないからマフィア共は見捨てる形になるけど」

 

「他の第一陣のメンバーも準備は完了している。後はお前の合図次第だ」

 

「りょーかい」

 

 そんな状況下だが、此方の行動や配置に変化がある訳でもなく作戦通り第一陣と第二陣による襲撃は行われる。ただ、この窓の先の中華系マフィア本部周辺の土地には二重の結界が張られておりこれは侵入者を感知するセンサーのようなものと分かっている。解除・破壊しようとしたらそれはそれで発動条件を満たして感知されるという厄介な物だ。時間を掛ける訳にもいかない為に強行突破しか選択肢はない。

 

 第一陣は僕達4人が取り敢えず突貫し、それに続くように他箇所に3~4人単位で散り散りとなっている第一陣のメンバーが続くように突入。その後に第二陣はそれぞれ<悪対>と東堂、<シャドウワーカー>とルシエルが分かれて第一陣の用いたルートとは逆の裏口を用いて侵入を行う。第三陣の一部はヨコハマレルムの一般住民や非マフィア関係者を優先的に確保・救出する。プランとしては現状穴は見られない。後は僕達の行動次第だ。

 

「じゃ、賽を投げようか。本部へ、第一陣の行動を開始する」

 

 異界化の影響で真っ赤になりつつある空を見上げながら、意を決して大窓を打ち壊して外へと飛び出す。飛び散るガラスの欠片と飛び落ちていく自分の身体。そのまま真っ直ぐに結界を突き抜けて

 

\カカカッ/

生物兵器幼体エルフの群れLv20

\カカカッ/

生物兵器幼体エルフの群れLv20

\カカカッ/

生物兵器幼体エルフの群れLv20

 

\カカカッ/       \カカカッ/

龍族ナーガLv32
   
魔族ジンLv27

\カカカッ/          \カカカッ/

鬼神族ヴァルキリーLv20
   
獣族モスマンLv37

\カカカッ/            \カカカッ/

鬼族ラフィン・スカルLv33
   
飛天族ホウオウLv35

 

 それと同時に建物の影や中から溢れ出したのは魑魅魍魎。それらの正体は生物兵器である幼体エルフの群れと悪魔化ウィルスによって悪魔となった人間達で恐らく悪魔化ウィルスに適性のない人間は軒並みエルフの養殖の為の宿主として使わている。だからこそ、これ程の群れを形成する事が出来ているのだ。

 

「<ワイルドハント>」

 

 胸糞悪い話ではあるが僕達にとってもまたそれも想定通りであり、即座に万能による魔力の放出による殲滅を敢行。速やかに進路を確保しつつ向かってくる悪魔を由奈と真澄で薙ぎ払い、不意打ちをエリヤに警戒させながらここから最短で研究所に到達できる中華系マフィア本部を目指す。

 

 各地で轟音が鳴り響く。他の第一陣も同様に問題なく研究所を目指しながら疾走している。それを確認して、中華系マフィアの本部の扉を破壊する。

 

「殺せぇ!ころせぇえええええっ!!!」

 

 ホール内全域から向けられる多数のマフィア達の銃口。それを指示する恐らくマフィアの重鎮の言葉は仰々しいその発言とは反比例に恐怖に満ちており、それは他のマフィア達も同様で半狂乱になりながら各々引き金を引こうとして

 

エレメンタル・スラッシュ
200X出典。このターン、使用者が次に行う格闘攻撃の1回の対象を前列1体から1体に変更し、判定値に+30%の補正を与える(後列に居る対象にも格闘攻撃が可能に)。

ランクⅢである為に前列2体を2体に対象変更。対象:前列を1列に変更する事が出来る。

雲耀の剣200X出典。敵前列に万能相性物理ダメージを与える。消費MP・HPは存在しない

 

徹し覚醒篇・骨法出典。

敵前列1体に相性:-(万能相性裁定)で防御点を一切無効した格闘攻撃を行う。

この攻撃は拡散して、敵前列の他の対象には相性・防御点無視は同様にダメージ事態は半減した物を与える。威力は骨法の技能値×4を参照。真澄は60以上の技能値を持っている為に威力は240程度(特大ダメージ)となる

 

 その弾丸が発射される事はなく、ある者は飛来する万象を断ち切る刃にて散滅され、ある者は万物を打ち砕く空間を揺るがす拳にて絶命した。それに怯え惑い、這いずり回る者達はエリヤの弾丸にて撃ち抜かれた。

 

「防衛にやる気が感じられない。本命はやっぱ研究所の方だね」

 

 出現した悪魔や生物兵器こそ数こそ多い物の今更僕達の脅威になる敵ではない。今ここに居たマフィア達も低くてlv10高くてLv30程度であり、捨て駒に過ぎないのだろう。マフィアの重鎮の姿も見えない。レベルの高い者、ヨコハマの支配者達は研究所にて匿われている或いは戦力とされていると考えるのが妥当かもしれない。

 

 第一陣の他のメンバーもそれぞれ中華系マフィア本部を強襲している。第二陣も裏ルートより潜入を開始し、僕達もまた研究所へ続く地下水路を発見した。

 

 ネルガルが居た異界と同様に光を飲み込みそうな程の真っ暗闇(ダークゾーン)。水路の脇に設置された歩道は整備されているようだが、水路からは鼻を摘まみたくなる程の酷い死臭が漂ってきて、ふとそれが何かを確かめれば真っ黒いタールのような何かが水路に垂れ流されていた。概ね何が流れているかを察しながら探索用魔法を只管継ぎ込んだ仲魔、スレイプニルに<ライトマ>*2、<リフトマ>*3、<エストマ>*4を唱えさせた後にラクシュミ・バロン・フレスベルグを召喚し、水路の先を目指して歩き出す。

 

 <エストマ>を展開しているとはいえ、あまりに悪魔の気配がなくどれだけ歩いても先が見えない。他の第一陣も各々水路を辿って侵入を開始しているらしいが同様の状況らしい。リソースが有限である以上は無限に続く道はそれこそ認知世界等でなければ作るのは難しい。研究所が異界となっている事は確定しているが、これも異界化を利用した足止め用の細工なのだろう。

 

「とはいえ、不気味だな」

 

 フレスベルグとエリヤがその瞳を以て異界内の綻びを探している。緻密に練られた異界故に暫く時間は掛かるだろうが、幾つか突破できそうなポイントは発見できた。後は候補を絞れば問題ない……といった所でCOMPに反応が入った。ソナーに引っ掛かったのは敵ではなく友軍信号で

 

\カカカッ/

ガンスリンガー藤堂 晴香Lv56

 

「あれ、フェイさん達」

 

\カカカッ/

ファイターアナンタLv63

 

「ほんとだ。ルート別だった筈だよね?」

 

\カカカッ/

トリックスターベネットLv57

 

「アナライズと反応を見る限り本物で間違いはなさそうね。色々妙な点とかあるけど……」

 

 そうして現れたのは藤堂さんを含む第一陣メンバー。アナライズでも照合を行うが本人達で間違いなし。彼女達が此処に転移のように現れたのはやはりそういうループ的な構造になっているからだろうか。

 

「立ち話はあまりできません。この異界の状態に関しては解析中ですので取り敢えず移動を続けましょう」

 

 由奈が声を掛け、三人もそれに頷いて僕達と合流を果たす。とはいえ、それからもやる事は変わらない。進んで、解析して、この状況を打破する何かを探す。暗闇の中だからなのか、それがいつもより長く感じられながらフレスベルグとエリヤの手によって解析が終わる。

 

 どうやらこの異界はマトリョーシカのようになっているらしい。異界の中に異界を内包している。外の異界が第一、今ここにいる異界が第二と仮定して、恐らく研究所の異界が第三。次の異界に行くにはどうやら専用の入り口を潜らなければならないらしく、各マフィア本部に設置された地下水路が第一と第二を繋ぐ門に該当していた。そして、第二と第三を繋ぐ入口に関しては恐らく存在しているがこれも巧妙に隠されている、探す時間が惜しい。

 

「ちょっとリスキーだけど時短を優先しよう。バロンを戻して……召喚、アラハバキ」

 

『入口が隠されているなら此方で作れば確かに手っ取り早いがな。時間はそれなりに掛かるぞ』

 

客神の門NINE出典。任意のエリア間にパスを作成できる。作成速度は構築速度の1/8となる

 

 アラハバキの持つスキル、客神の門。それを用いての第二の異界と第三の異界を繋ぐ扉を無理矢理作成する。戦闘時や緊急事態においては不可能な芸当だが、MAGを集中させられる非戦闘時ならば構築は可能。第三の異界の場所も解析によって割り出した。後はこれが出来るのを待つだけだ

 

「いやー悪魔って便利なもんだなぁ。私もサマナーやればよかったのかな、ベネっち」

 

「外でベネっちはやめろ。アナンタにサマナーは無理でしょ、頭足りてないわ」

 

「なにをぅ」

 

「ベネっちって何処かで聞いた事あるなぁ……ベ〇ッセ?」

 

「ほら、またこんな事言われるだろ……!」

 

 いつの間にかに仲良くなったのかアナンタとベネットに藤堂さんが絡んでいる。何かと雰囲気も似てる*5からとかか?まぁ話してても警戒はエリヤにフレスベルグ、由奈、真澄がやってくれてるから問題はないが、どうにもまだ違和感が拭えない。

 

 何かを見落としているような漠然とした不安感。この違和はどうも他の幾つかのメンバーも感じているようで、何が起こっても良いように目配せをしておく。現状は扉創りの為に此処に留まらなければならないという制限がある以上は今は居なくとも奇襲される可能性が高く、<エストマ>ももうすぐ切れる。新月になった瞬間にアイテムにて再度<エストマ>を発動させれば凌げるかもしれないが……

 

「……左水路より多数の反応を感知!生物兵器だ!」

 

『右カラモアクマガクルゾ!』

 

「やっぱ来るよね」

 

 新月になった瞬間にエリヤとフレスベルグが同時に敵性存在を感知した。話していたアナンタとベネット、藤堂さんも思考を切り替えて臨戦態勢へと移る。

 

「左は真澄、アナンタ、ベネット、藤堂さんで右は由奈、エリヤ、ラクシュミで迎撃を!フレスベルグと僕とで撃ち漏らしを潰す!」

 

\カカカッ/

生物兵器オークスターの群れLv35

\カカカッ/

生物兵器モルゲンの群れLv35

 

\カカカッ/         \カカカッ/          \カカカッ/

神族キクリヒメLv49
   
龍族ニーズホッグLv52
   
鬼族プルキシLv42

\カカカッ/         \カカカッ/         \カカカッ/

鬼神族ハヌマーンLv41
   
魔族フラウロスLv48
   
獣族ライジュウLv40

 

 返答もなく、即座に全員が指示通りに迎撃行動に移った。此方に襲い掛かってきている悪魔は外に居る悪魔達よりレベルが高く、また数も多い。生物兵器も幼体のエルフではなく、この狭い道に適合したオークスター*6とモルゲン*7で列を成しながら此方を引き潰そうとしている。

 

 とはいえ、迎撃の火力自体は足りていた。Lv60以上が複数居て、範囲火力もそれなりにある。レベル差で速度も上が取れる以上は現状のダメージレースで此方が負ける点はない。その上で警戒すべきことは一つ。

 

\カカカッ/

生物兵器ファニグスの大群Lv30

 

 此方が抑えていない左右、即ち水路からの奇襲である。底すら見えない真っ黒な水路から出現したのは巨大ピラニアであるファニグス。その数は優に数十体或いは百を超えており、その大群は此方に襲い掛かろうとする生物兵器や悪魔すらも纏めて飲み込もうとしていた。

 

「フレスベルグ!」

 

『スイロゴトコオラセル!』

 

マハブフダイン真3出典。敵全体に氷結属性の大ダメージ&FREEZE効果(15%)を与える。

 

 僕の指示と共にフレスベルグから迸る氷乱の嵐。その暴威に群れとなってlv30が精々の存在が抗える筈もなく、超低温にて凍らされて周辺の水路もまた氷の膜にて覆われた。

 

「これで……ッ!?」

 

 僕の言葉を遮る様に氷の膜を突き破って、僕の眼前に何かが飛び出てきた。大きな触手……いや、先端は槍のような形状をしているそれは複数本飛び出て、僕達が居る歩道に向かって振るわれた。

 

\カカカッ/

生物兵器トライデントLv45

 

「トライデント、大型の生物兵器か」

 

 藤堂 奈津子が研究していたとされる大型生物兵器、その一つがこのトライデント。複数の三又の毒銛を乱雑に振り回し、左右に居るそれぞれのメンバーを狙うもののやはり当たる事はない。だが、その攻撃によって隊列に乱れが生じてしまっている。エリヤと由奈が悪魔に囲まれて孤立。僕もまたアラハバキを守る為に動けずにトライデントの触手に囲まれている。此処であれ(ワイルドハント)を放てば地形その物に影響が出兼ねないが、この状況なら最早猶予はない。MAGを隆起させてこの場に居るその全てを敵を薙ぎ払おうと魔力を迸らせた、その瞬間

 

『四神、起動』

 

 突如空間に発せられた男の声、それと共に感じられた浮遊感。周囲を見渡せば()()()()()()()()()()()()()()()()して其処に存在するのは僕達と悪魔・生物兵器だけ。その場にいた全ての存在が何も存在しない奈落へと堕ちていく。同時に発せられた<ワイルドハント>はトライデントや悪魔、生物兵器を吹き飛ばしたが、もう全てが遅い。視界に微かに映ったエリヤと由奈、そして真澄達と散り散り離れていく自分を知覚しながら落下して

 

「……っと」

 

 床に足がつく感触と共にそれは終わった。周囲の景色も急速に見える様になり、即座に悪魔を展開して周囲を警戒しながら移動を開始する。この場に居るのは僕一人と仲魔達だけだ

 

 まず此処は恐らく研究所内部である。どうにも余った資材で床や天井を増強したかのような鉄色が多い、ジャンクな場所だが少なくとも地下水路ではない。空間に満ちるMAGも水路の時より意図的に濃くされて、それは此方のセンサーにも作用している。お陰で他メンバーの位置が分からない。

 

「四神……それによる経路の抹消か」

 

 そして、その上であの時何が起こったのかはある程度把握できている。四神と奴は言っていた、それによって空間が実質的に消失したのは凡そ間違いではないだろう。

 

四神相応NINE出典。6カウントの間、エリアに繋がってる全てのパス(経路)を消去する。これの発動にはセイリュウ・ゲンブ・スザク・ビャッコの4体が必要

 

 四神相応、平安京等にも存在した四神を利用した結界で東京における四天王と同質の物。経路を一時的に消失させるそれは四神相応を利用した一種の防衛戦術であり、緊急時における通路の封鎖により時間稼ぎを行う為の術だった。それが作動した結果、地下水路という経路上に居た僕達は空間の消失によりその場に存在できなくなり、空間が存在しない為に飛ぶことも出来ないままに直下に存在した第三の異界に落下したという事である。

 

 これを確実に成功させる為にこれを仕込んだ存在は地下水路を利用したMAGのラインで、異界のリソースを経路の複雑&迷路化に注ぎ込んだ上に第三の異界である研究所への扉に関しては隠蔽とジャミングを施していた。そうすれば自ずと侵入者の取れる手はなくなっていき、最終的には僕達のように異界解析の上に扉を創ろうとするか、元々存在している筈の扉を探して解析&解錠を行うという2択になってしまう。

 

 そして其処まで誘導できるが故に事前に入念な対策も用意できる訳で、異界そのものに新しく門が作られると同時に反応する警報を設置。隠蔽した門を解析しようとした場合にも同様に警報がなるように細工を施せば侵入者が脱出しようとしている時に確実に位置が分かる。後は其処を起点に第二の異界を徘徊している悪魔や生物兵器を向わせるように仕向ければいい。

 

 そして、悪魔・生物兵器の襲撃で時間を稼いでる間に<四神相応>を発動させて僕達をどぼんと落下させて、終わり。第二から第三に落ちていく過程でそれぞれの距離が離れていた場合はどうも同じPTとして認識されないのか、個別にランダムに落ちていく仕様のようで恐らくそれで侵入者を分散させて各個撃破という流れが可能性としては一番有り得る。

 

 さっき起こった事はそんな所だろう。送信に時間は掛かるがCOMPにて情報共有の為のメッセージは送信している。奴が第二の異界で定めた経路は地下水路の全てだ。だから恐らく他の第一陣のメンバーの大半或いはその全てがこの第三の異界に落ちている、散り散りという形で。

 

 ただの一つ解せない事があるとすれば、敵の攻撃は僕とエリヤ、由奈のみ分断する様に攻撃を行っていた。エリヤに関しては由奈がカバーして守った為に一緒に居るだろうが、中央に居た僕は完全に孤立してこうして一人で異界を彷徨っている。

 

「で、それがその答えって訳ね。まさか此処にいるとは思わなかったけど」

 

 一人になった時から限界まで服用をし続けていた<マッスルドリンコ>*8を投げ捨てて、戦闘用の悪魔に仲魔をセットし直す。

 

 目の前の通路を抜けた開けた場所、其処に映り込んだ男。男はバケツのようなヘルメットこそないがデモニカ―スーツを纏い、その背に大剣を背負っている。

 

「よっ」

 

 由奈がレルムにて遭遇したとされる二人組の片割れであり、エリヤの妹の幼馴染である男、ウリック・ヤード。その似姿や声の雰囲気、そしてアナライズの結果も彼が本物である事を指し示しながら彼は僕に快活な笑みを浮かべると共に大剣を振り抜き、僕の進路を塞いでいた。

*1
ネルガル討伐時にレベルアップ

*2
真3出典。ダークゾーンを明るく照らす。新月時に効果消滅する。御魂合体で習得

*3
真3出典。ダメージゾーンでダメージを受けなくなる。新月時に効果消滅する。御魂合体で習得

*4
PTリーダーより低レベルの悪魔が出現しないようになる。新月時に効果消滅する。御魂合体でry

*5
同じフリゲ勢でツクール製

*6
巨大なヒトデ。移動はそこそこだが原作だと触ると即死。

*7
巨大なハリセンボン。一定距離まで接近すると全身を硬い針で覆って突撃してくる

*8
上限を超えてHPを回復する。最大HPの2倍以上になると最大HPの50%となり、毒状態となる




・後書き
次回からはそれぞれ落下したメンバー達による戦闘の予定です。ちょっと戦闘数が膨大になりそうなので更新速度は落ちるかもしれません(予防線を張る)

・キャラ紹介
<久遠 フェイ>
色々と対抗策は練っていたが、今回は相手の策に嵌められて落下した人。
その結果として単独行動という死亡フラグを立てながら、エデン所属のウリックに遭遇してしまう。運が高い筈なのに色々と運がない。

<久遠 由奈&エリヤ>
優先的に狙われて落下していった人達。
その行方はまだ分からないが、ウリックがフェイに当てられたという事は……?

<藤堂晴香&アナンタ&ベネット>
アナンタとベネットはらんだむだんじょん出身。喋り方は大体こんな感じで合ってる筈……!。はっかっかとは偶然の割り当てとなったがPTとしてのバランスは割と取れている。強いて言うなら回復役が欲しい。尚、現在は真澄と共に第三の異界に落下している。

<ウリック&アンナ>
エデンがこの周回に来てから任務の時以外はヨコハマレルムに居た人達。
クソみたいな実験してるし、上は最低限情報収集さえしてくれれば自由との事だったのでやる気なしの状態で過ごしていたが、棚ぼたでターゲットがわざわざカモネギ背負って来たので狩りに行くことに

<石 亜南>
今回の黒幕。
三業会所属に幹部でそれ以外は魔道使えたり、魂の半分を天尊流星に捧げてたり以外あんま特徴はないが、何かと自身以外の上位者に振り回されがち。ヨコハマ裏中華街も頑張って一から作ったし、悪魔化ウィルスの研究も他力本願という形になってしまったが順調ではあった。が、今回の襲撃で大体のプランが崩壊したのでヤケクソ気味に悪魔&生物兵器大放出キャンペーン中。三業会にはもう大体の情報は送ったので後はどう綺麗に死ぬかという事でオリチャーを現在模索中。

<ヨコハマ中華系マフィア>
ヨコハマの支配者達。実際はスポンサーである石 亜南の実質的な操り人形で今まで生き残れてきたのも亜南のお陰である。1年前であれば大分イキれる位の勢力だったが特にジャイアントキリング等も熟していないので数カ月で一気に三業会がなければ存続も危うい勢力になってしまった。其処から石 亜南の口車に乗っていたらもう街が手遅れとなり、腕利きの用心棒等は引き抜かれて、残ったのは悪魔と生物兵器に満ちたバイオハザード或いはブラッドボーン状態の歓楽街のみ。大体屑しかいないのでインガオホー。

<藤堂 奈津子>
元ネタは寄生ジョーカー。経歴は大体寄生ジョーカーと一緒だが、悪魔化ウィルスの開発者でもある。本編もそうだが逃げ足が非常に速いし、しぶとい。こいつほんとしなねぇ。アートマ技術に関しても知識があるようだが……?
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