真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス-   作:名無しの骸骨

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顛末と契約

 事の顛末を話そう。異界脱出から数分経たずに異界は崩壊。異界に囚われた犠牲者は優に数百人を超え、他2チームで何とか確保できたのは辛うじて息があった覚醒者、十数名のみ

 

 その生存者も屍鬼化の症状、肉体の壊死、精神崩壊等の問題を抱えており、それぞれの病状状態や漂流者であるかそうではないかにより状態に合った回復施設に送られる手筈となった

 

 ネルガルは完全消滅、そのサマナーであるベリーニは今回の依頼主である四国ヤタガラスに預けられた

 そういう訳で僕が受けた依頼に関してはこれにて一件落着となったのだが……

 

「やっぱ、そっちは大変?」

 

『大変も大変よ。バイオハザードかって位、異界跡地に死霊が湧いてるわ』

 

 四国ヤタガラスはそうもいかなかったらしく電話で話しているヤタガラスの巫女、神城 真澄も苦言を零していた。

 

『あのダークサマナーはただ、四国がそういう冥界と近しい場所という事で異界作ったんでしょうけど、後処理するこっちの立場からしてみれば溜まったもんじゃない。それに異界深度の影響で四国と魔界が近づき過ぎてる』

 

「GPは?」

 

『上がってない。というか元が高すぎるから結果的に変わってないだけかも。数自体はさっき言った通りね』

 

「………やっぱり僕達も残ったほうが良かったんじゃ」

 

 異界の主が冥府の神であると想定した時点で今回の惨事はある程度予想が出来ていた。だから四国に残り、ヤタガラスの後処理に付き合うという申し出もしたが問題はないと言われてしまったが為に僕と由奈はそのまま自分達の拠点がある東京に戻っていた。

 

『時間は掛かるけど、本当に大丈夫よ。

 四国がこんなことになるってのは昔よくあったみたいだから対策はしてあるみたい。後は須田さんだったり宮本さん辺りは率先して残るって言ってたから、これ以上キリギリスの人達に頼むのは色々とヤタガラスの沽券に関わっちゃうし、ここだけに集中させるほど人材に余裕がある訳じゃないしね。

 1カ月は様子見て……また、それでも収まらなかったらまた御願いはするかもしれないけど、当分は問題ないから安心して』

 

「ならいいんだけど…」

 

『何?心配してくれるの?』

 

「心配はいつもしてるよ。世話になってるし、今回の件を除いても色々とまだ借りがあるからね」

 

 彼女との付き合いはかなり長くなるが、色々と訳アリな僕達がヤタガラスの依頼を受けられるのも凡そ彼女のお陰である。また、僕らが使っている符*1も彼女との取引で手に入れている関係で正直色んな意味で頭が上がらない

 それでも僕が敬語を使ってないのは彼女に普段通りに話してほしいと頼まれたからだ

 

『んふふっ……じゃあ、そうね。

 もし貴方がヤタガラス……私の元に来てくれるなら、それも全部ちゃらにしてあげるわよ?』

 

 …彼女は偶にこういう困った事を聞いてくる。

 だから少しだけ気まずい。嫌いではないけれど

 

「……前も言ったけど、それだけはやっぱ出来ないかな。

 由奈は置いていけないし」

 

『私なら置いていって良いの?』

 

「………」

 

『冗談よ、意地悪言ってごめんなさい。話を戻しましょうか……さっきの通り、こっちは大丈夫。

 貴方は貴方の仕事に専念すればいいわ。

 私もこっちの案件が片付いたら東京に行く手筈になってるから、その時にまた会ってくれると嬉しいわね。出来れば二人きりで』

 

「それ位ならいいよ」

 

『ありがとう。それじゃ、元気で……ああ、それとこっちに来てほしいのは本当だから。もしその気ならいつでも連絡してね』

 

 その言葉を最後にぷつりと電話が切れた。ふぅーっと息を吐いて、少しだけ溜息も零す。

 世話になっているのは事実だし、好意を持ってくれているのは間違いない。間違いないのだが……正直ちょっと怖い、主に目が

 

「んーまぁ、それは今は良いとして……そろそろいこっかな」

 

 背伸びをして、自室を退室しながら拠点に備え付けられた地下室を目指す。僕達の拠点は東京内に幾つかあるが、現在いる拠点は普段使いの拠点であり施設も最も充実している。

 とはいえ個人で用意しているものである為に地下室の増設に最低限の検査・医療装置を設置とかそんなものである。

 

 そして現在此方で身柄を確保しているエリヤ……先の異界の戦いでガンスリンガーとして立ち塞がった彼女はその医務室の一室にて安置。

 現在は由奈が彼女の監視をしている

 

「由奈、彼女1度でも起きた?」

 

「起きてないですね。まだ一度も」

 

「そっか」

 

 由奈に返事をして、エリヤが寝ているベッドに近づく。

 エリヤはあの戦いの後、僕達が懇意にしている魔界医師の元に預けられ、僕と共同でその容態の確認及び回復を執り行った

 その上ではっきりしたことが幾つかある。

 

 一つはこのエリヤという女性は何度か人体改造をされていた

 

 最も古い物は肉体が大きく変化している物のようで魂・精神の状態から判断するに彼女は元は男だった、という可能性が高い

 

 加えて、その変化が起こった原因は人と悪魔を合体させる……この場合は天使合体の結果といった方がいいかもしれない

 半天使或いは天使人、穏健派のメシアも使うような術でありこれは主に戦力の増強を目的として行われる。

 

 しかし、彼女の合体は不完全な形で終了しており、スキルは得ているが羽根も生えておらず人間のままであった

 半魔擬き……僕或いは由奈もそのような状態であるから、直感でそういう存在であるとある程度理解は出来た

 

 そして、その次に行われたと思われるのが……あまり言いたくはないが母胎の強度を高める改造

 腹部及び陰部、皮膚の状態から数えきれない程の出産の跡が検出された

 生み出されたのも恐らく人ではなく天使擬き、それらを何体も生み出せば幾ら半魔であるとしてもただでは済まないが、半端な天使化がプラスに働いてしまったのか人間としての人体改造する余地が残ってしまっていた

 

 子宮を含む内臓及び骨組織の強度を底上げし、胸は牛のように膨らんでいる。その他の部位もより女性らしく凹凸が整って、それでいて筋肉だけは削ぎ落されていた

 

 ここまでは彼女が所属或いは捕えられていたとされるメシア教によるものなのだろうが、真の問題は次にあった。

 

感覚鋭敏化オリジナル。常に『体験の香(IMAGINE出典。経験値獲得率+20%)』を得る。

死亡時のレベルペナルティの効果が2倍になり、即時効果を持つスキルを取得しやすくなる。

 

 香を使う事でしか取得できない筈のソウル活性化の術。それを恒常化させた上で感覚鋭敏化の効果をさらに増幅させ、疑似的な幻視の力すら与えてしまう人体改造(スキル)

 

 何故そういう施術が出来るかまでは解明できなかったが脳から続く神経系が弄り回されており、痛覚も含む肉体のあらゆる感度も恐らく数十倍では収まりきらない

 

 ただ、それに耐え得る肉体を彼女は過去に得てしまっていた。

 

「戦闘時の記録を確認しましたが……戦闘方式も含めて、クウガのペガサスフォーム*2のようなものですね」

 

「一番分かり易いのはそれかな。あそこまでの物かは分からないけど……戦闘時のあの興奮状態は事前に興奮剤か何か渡されてアドレナリンで誤魔化してたんだと思う」

 

「成程……これ、治す事は?」

 

「この施術事態をどうにかするというのはカドゥケウスでも難しいとファウスト先生は言っていた。現代医術じゃ無理に手を出せば、死ぬ可能性が高いとね……ただ、出来る事はしたつもりだよ」

 

 この施術も含めてそれらの改造を治す事はもうできない。ただ、緩和させコントロールさせる事は出来る

 彼女自身に鋭敏化のオンオフ及びMAGコントロールによる感度の鎮静化、それを覚えてもらうのが手っ取り早いがそれだけでは足りないし、そもそもできるかが分からない。故に外付けでそういう操作を行う必要性が出てきた

 

「昔からそういうMAGの調律みたいな事は得意だったからね。睡眠化でならMAGの鎮静化は行えたし、彼女が覚醒した後の施術をどうすればいいかも分かった。問題はあるけど、其処に書いてある方法が一番確実性は高いと思う」

 

 諸々書いてある書類を渡し、由奈は黙々と1枚ずつそれを確認していった。ページが進む毎に表情が移り変わり、心中穏やかではなさそうな百面相を見せながら最後に書類をテーブルの上に置く

 

「……この方法、やっぱり貴方しか出来ないんですか?」

 

「うん。知り合いにそういう事できる人も居ないし、知り合いの伝手を辿る時間も惜しいしね」

 

「はぁー……分かりましたよ。後日、埋め合わせしてください」

 

「うん」

 

 確実性はあるが色々と問題がある方法を取らざるを得なかった為に由奈は項垂れてしまったが、何とか承諾は得れた。最近こういう事ばっかだな

 

 ともあれ、これで確認すべき事項は以上でありエリヤのバイタルも安定している。この部屋の隣、マジックミラー越しという形だが読心術*3のスキルを持ったランダを待機させている。準備は整った

 

「起こすよ」

 

 彼女が寝ている間に外部からの能動的なMAGのコントロールはある程度行えるようになっていた

 沈静化は当然としてその逆も可能であり、感覚の鋭敏化をなるべく抑える為に此方でコントロールをしながらその眠りを解いた

 

 彼女はゆっくりと瞼を開き、少しの間ぼーっと天井を見て、その後に此方の存在に気付き視線を向ける。

 

「ぁー……みず……」

 

「ゆっくり飲みなよ」

 

 一気飲みしても問題ないように少量の水が入ったコップを差し出して、彼女はそれを一息の飲み終わる。

 

「ぁ、あっ…ふぅーっ……お前達は……あの時の、か」

 

「うん」

 

 彼女の第一印象は僕と似ていると思った。金糸を編んだような長い金髪に、澄んだ蒼い両眼

 身長は約160前後、僕は150あるかないか位だから丁度並び立てば姉弟*4のように見えるかもしれない。由奈も驚いている。

 

「……俺に聞きたい事があるなら何でも話そう。身体の調子もいい」

 

「まだ何も説明してないけど……随分協力的だね」

 

「少し考えれば分かる事だ」

 

 見た目通りの少女のような声の高さ、それに反比例したかのようなぶっきらぼうな男口調で彼女は上半身を起こす

 

「理屈はよく分からないが、これだけ身体を動かしても脳に杭が撃ち込まれたかのような痛みは発生していない。俺にとってはその行為だけでも腹割って話す価値はある。痛みを抑えているのがお前達という事なら猶更な」

 

 バイタル面も安定して、彼女もこちらに対して好意的。恐らく余程今まで人扱いされなかったのだろう。

 

「貴方の身体状態に関しては後程説明させて貰う。幾つか質問があるから答えてほしい」

 

「構わない」

 

 そうして暫くの間、質問とその回答が繰り返される。

 彼女が居た世界は<東京大破壊>*5と呼ばれるICBMがアメリカの手により東京に投下された事をきっかけとした、簡潔に言ってしまえば世紀末ヒャッハーな所だった。そこで彼女……この時点では男だったらしいがメシア教によって孤児からクレリックに育て上げられて、戦い続けていたという

 

 しかし、激化する資源の奪い合い・ガイア教との衝突やそれらに属さないレジスタンスの出現。メシア教はさらなる戦力を求めて、テンプルナイト達の天使人化を計画。彼女もそれを受けたようだが、結果は失敗

 

 レベルは大幅に下がり、身体は女体へと変貌。メシア上層部はこの事を他のメシアンに知らせない為に彼女の存在を隠蔽。加えて戦力に活かせないならばと、さらに人体改造を重ねた上に天使を生み出す為の生体部品にされていた

 

「それで、俺もそう時が経たずに死ぬと思ってたんだが……奴らが現れた」

 

 荒廃した世界、ガイア教を文字通り壊滅させた上でその世界に姿を現したのは<ガイア再生機構>という組織。かの組織は人類再建を謳って弱者救済を掲げた上で落ち目となっていたメシア教を吸収

 

 レジスタンスに関しても内部分裂が起こった後に残存した幾つかのメンバーも吸収され、東京の大勢力はガイア再生機構のみとなった

 

 肝心のエリヤはメシア教が吸収される際に再生機構に提供され、不完全な天使化とそれによる生命力に目を付けられ引き続き実験体として利用され続けたらしい

 

 その結果があの感覚鋭敏化であり、実験のデータを取り終わった後に戦闘力を確認する為に彼女は悪魔との戦いに一兵卒として駆り出された

 

「ま、データを取り終えれば所詮は捨て駒。あいつらは気づけば完全にいなくなって、その直後に超高レベルの悪魔が出てきて東京は吹っ飛んだ。俺は核シェルターに逃げ込んで、何とか生き延びようとして……目を覚ましてみたらベリーニに囚われていた訳だ」

 

「ガイア再生機構の情報……何でも構わない。他に何かない?」

 

「さっきの通り、俺はただの実験体で一兵卒だったからあまり情報は持っていない」

 

 ただ、と彼女は呟いて自身の手を開きながらそこに視線を移した

 

「……俺はプロトタイプだった

 その実験データを利用・改良して奴らは俺のような兵士を抱えていたらしい。それこそ、俺が持っている疑似的なESPではなく本当の超能力に目覚めた奴も居るという噂はあった

 確定した情報ではないが、これはどうだ?」

 

「レベルも上がり易く、超能力も使えるような兵士の量産……本当だったら厄介だね」

 

 この情報は信頼できる知り合いに教えて、情報の拡散に関しても掲示板に流すのは暫く止した方がいいだろう。まだそういう時期じゃない。僕の知りたい情報も凡そ入手できたし

 

「じゃ、質問は以上で……今後の話をしようか。由奈」

 

「はい」

 

 由奈の手によってエリヤに渡されたのは労働契約書。雇い主は勿論僕で、戦力としての雇用となる。とはいえ純粋な労働契約書という訳ではなく、漂流者という立場からの戸籍やその他役所手続きの手配、鋭敏化の鎮静化と治療etc。その対価として求めるのがデビルバスターとして働いてもらう事で要するに衣食住の手配をする代わりに戦力になってくれと、そう御願いする契約書になっている

 

 一応文字が読めなければ口頭で伝えようかと思っていたが彼女はすらすらと読んでいき、文字を丁寧に一つ一つ追っていきながら、契約書を読み終わる。

 

「幾つか質問がある。まず何で俺にここまでする? 俺にそこまでの価値があるとは思えない」

 

「それに関してはこっちとそっちの社会・文明の差も大きいと思うけど、何より戦力が足りてないんだよこの世界は

 それにその感覚の鋭敏化、緩和させられる人は多くないからさ、僕が勧誘した方が手っ取り早いというか都合がいいんだよ」

 

 彼女を勧誘する理由は戦力目的というのもやはり大きい。現在の彼女のレベルは56。異界での戦闘が原因でレベルは下がっているが、それでも足切りラインを超えた貴重な漂流者

 

 さらに言えば彼女は疑似的な幻視者であり、恐らく目も良い(見鬼の才能がある)。高速戦闘に強引に割り込む事が出来るあの能力は僕達にも合っていると言える。彼女が頷くかどうかは別として戦力としては是が非でも欲しかった。

 

「仮にこの契約、蹴ったとしたら俺はどうなる?」

 

「……多分ヤタガラスとかの管轄の病院預かりになるんじゃないかな。でも恐らく他でその身体状況の緩和を目指すとなると暫く寝たきりになると思うよ」

 

 彼女のような性質……ガイア再生機構に何かしら実験体として利用されていた漂流者はハッキリ言って多くない。彼女は滅びる世界に置き去りにされて、核シェルター内で偶然この世界に現れた訳であり、それ自体は漂流者では類似した移動方法ではある

 

 しかしガイア再生機構の実験体と限定すれば途端に数は少なくなってしまう。その為に少数であるガイア再生機構の実験情報を欲しがる者も多く、彼女もまた治療を名目にした症状の緩和や実験内容の詳細な調査が行われる事になるだろう

 

 そして、そういった扱いを受けるのであれば絶対安静が必須であり、加えてエリヤの場合はMAGの鎮静化の為にも睡眠状態で居るのが大半とならざるを得なくなる

 

「詰まるところ、ある程度の自由を引き換えに戦うか、完全な保護を引き換えに身動きが取れなくなるか。そういう事か」

 

「ごめん、もうちょっと良い案を提示できれば良かったんだけど、君の状態も含めるとそうなってしまうんだ」

 

「いや、いい。俺が居た組織の中でも比べる事が烏滸がましい位には人道的な2択だよ」

 

 クソメシアやイカレガイアに比べれば、とやや自嘲気味に彼女は笑って、僕を見た。

 

「……外部からの症状緩和、MAGコントロールといった方がいいか。これをやるのはお前か?」

 

「そうだよ」

 

「なら問題ない。男なら、色々と問題があったんだが」

 

「僕、男だけど」

 

「……?」

 

 首を傾げるエリヤ。同じように首を傾げる僕。気まずそうな顔をする由奈。

 

「おい、由奈……であってたか。こいつ女だろ」

 

「男ですよ。アナライズするとウィッチ*6表記されますけど」

 

「うそだろ……」

 

「由奈、後任せていい? ちょっと横になってくるからさ……」

 

「駄目です。というか初対面の人に女扱いされるのは貴方の常なんですから、いい加減慣れましょうよ」

 

 おかしい。髪は束ねてロングヘアの男性ならしてそうなポニテに、服装も医療用の服に白衣してきたのに、これで男に見られないのはおかしい。何かがあったに違いない

 

「え、じゃあ何……僕の服装見た時、どう思った……?」

 

「無駄に衣服だけ医者っぽい、服に着られてる綺麗な女子供」

 

「やっぱちょっと横になってくるね……」

 

「駄目って言っ……床に横になろうとしないでください!髪が汚れるでしょう!」

 

 椅子から転げ寝そうになった所を由奈にキャッチされて、伸びる猫のような態勢になる。解せない

 

 折角気合い入れて服装整えてきたのに、これはあんまりだ。由奈は呆れの視線、エリヤは呆れと興味が混ざった視線を僕に向けているが、そんな目で見られても僕は全然納得いっていない

 

「じゃあその長い金髪切ればマシになるんじゃないか?」

 

「そうだよ!エリヤがこう言ってるしさ!試しにばっさりベリーショートにしてみ「駄目です」……本当に駄「本当に駄目」そっかぁ」

 

 どうしてか分からないが由奈は僕の髪に異様に執着している。僕の髪の手入れをしているのも大体由奈だし、何なら服もそうだし妙に女物が多い

 

 あれ?これ全部由奈が原因なん「どうかしましたか?」いや、これ以上あんまり深く考えない方がいいね。うん、そうしよう!

 

「えーこほん。話を戻そっか……男性を忌避しているのは、そういう恐怖症とかって事?」

 

「情けない話ではあるが、そういう事だ。理由もお前達が想像している物で凡そ合っているだろう」

 

 そう語るエリヤは無表情ではあったが、確かな根強い恐怖の感情が彼女から垣間見えた。恐らく数年間に当たる母胎、肉袋としての扱い、それに加えて実験体としての経験

 

 ガイア再生機構の兵卒として駆り出された時も恐らくその見た目から手を出されて、身体を汚された経験があるだろう

 

 そこまでされれば男その物が無理になったとしても不思議ではないし、むしろ此処まで理性を保てているその精神力は驚嘆に値する。

 

「……ただ、お前からはあんまりそういう忌避感は湧いてこない、その見た目のせいかは分からないが」

 

「まぁこの見た目がプラスに働くなら僕も全然構わないよ。後はそうだね、暫くの間はもしエリヤが外に出る様な機会があったら必ず僕か由奈が同行するよ。慣れれるかも分からないから、ずっとそんな感じになるかもだけど」

 

「ありがとう……正直ここまでされて契約を交わさないという気はさらさらないが、可能ならもう一つ条件を付けたい」

 

「いいよ。聞かせて?」

 

「ガイア再生機構には俺の妹が居る筈なんだ」

 

 孤児であるエリヤにも一人、家族と呼べる存在が居たらしい。曰く、妹だったとの事でアンナとメシア教から名付けられた彼女は戦う才能自体は全く持ち合わせず単なる教会のシスターとして過ごしており、その生活を守る為にエリヤはクレリックになったという

 

 エリヤがメシア教の肉袋となった後は安否すら確かめる事が出来なかったが、ガイア再生機構に移動して暫く過ごしていたある時に一度だけアンナを見かけた事があったらしい、同じ実験体として

 

「見た目はあいつだった、それは間違いない。……そして可能なら、ガイア再生機構の手からアンナを取り戻したいと俺は思っている。その為のアンナの捜索の協力を条件に加えたい」

 

「……正直僕からすると今も生きているとは断言できないし、最低でもガイア再生機構によってマインドコントロール或いは従わざるを得ない状態にはなっていると思う。それでも、という事でいい?」

 

「死んでいるならそれで、いい。諦めきれる。ただ、生きているなら何とかしてやりたいんだ」

 

 たった一人の妹だから、と藁にも縋るようなそんな印象を今のエリヤからは感じた。実際無事である可能性は低い。もしエリヤのようにガイア再生機構から離された状態で生存できているなら、話は変わってくるがエリヤのようなレアケースが早々発生しているとは思えない。ハッキリ言って希望は薄い。

 

「捜索は協力できますが、もしそのアンナという女性が完全にあちら側だった場合は私は容赦なく切り捨てますよ。手加減できる相手でもないでしょうし」

 

「……分かった、そこが妥協点だな。だが、もし助けられそうだったら」

 

「その時は何とかしてみせるよ、これでも僕と由奈はちょっとだけ強いからね」

 

 僕個人としてもエリヤに恩を売れるし、助けられた方が気持ちも楽だし、何より僕達はキリギリス。世界を救うなんて勝手なお題目を掲げている以上は目の前の人間位は助けてやらないといけない。

 

「なら、その契約条件を全て飲もう。何もできないまま過ごす位なら、死ぬ可能性がどれ程あったとしても俺は戦っていたい」

 

「ん、わかった。ありがとう……じゃあ改めて、僕の名前は久遠 フェイ。そっちは久遠 由奈。今後とも宜しく(コンゴトモヨロシク)

 

「分かった……エリヤだ。今後とも宜しく(コンゴトモヨロシク)

 

 お互いに契約の決まり文句を告げて、ここに契約は結ばれた。

 

「じゃあ早速だけど今後の予定詰めていかないとね。今日から一週間は身体の安定化の為に安静に過ごしてもらって、其処からは装備を整えた上で戦い方や連携の練習とレベル上げ、後お香マラソンもかな」

 

「それで一週間の間は……これで情勢の確認をしておいてください」

 

 由奈の手によってエリヤにタブレットが渡される。ネットには繋がらない仕様にはなってるが、一般社会における常識や諸々手続き内容・キリギリスの活動や現在の悪魔との戦い方・主な悪魔のデータや耐性、注意すべきスキルetc。知人からデータを渡されて、それを此方で手直しした物ではあるがこの世界に来たばかりの漂流者がこの世界で生きていく為の情報が全てこのタブレットには詰まっている

 

「もし、困った事があったら僕に言ってね。僕は基本的に居ると思うけど、居ない時は代わりに由奈がいるからそっちに頼んで」

 

「……これ1週間で全部確認するのか?とんでもない量の情報なんだが」

 

「これでも削った方だから、まぁその、頑張ってね。衣食住とかその他諸々の世話はその間全部するから」

 

「oh……」

 

 僕も正直ここまで一気に詰め込みたくはなかったが、恐らくもう時間がない。ウィッカに存在する水晶によって未来を予知する術*7

 

 多くの幻視者や未来を見る悪魔が弱体化したのようにこの魔法も凡そそこまでの精度ではなくなったが、何度もやっても水晶に浮かぶのは凶兆を示す言葉ばかりであり、それもここ最近さらに強まっているように感じている

 

 契約を結び、共に戦う事が決まったのなら一刻も早く、彼女に戦えるようになって貰わなければならない。僕達の為にも、彼女の為にも

 

*1
誕生篇・200X出典。割込・即時効果で使える消費アイテム

*2
仮面ライダークウガが変身する形態の一つ。五感が極限まで研ぎ澄まされる代わりに体力消耗が激しく、痛覚も大きく増幅されてしまう

*3
ライドウ出典。外法属限定の捜査スキル。捜査対象の心の中を読む

*4
残念ながら姉妹に見えます

*5
真1世界の類似周回

*6
ウィッカ技能を習得する者は女がウィッチ。男がウォーロックと表記される。ちなみに大半はウィッチである

*7
誕生篇出典の水晶の予知。これは正確には未来に起きる事柄ではなく、キーワードとなる事柄が水晶に浮かぶ




<キャラ紹介>
・エリヤ <ガンスリンガー><半天使擬き><幻視者擬き> LV56
前回フェイと相対したガンスリンガーであり、今回仲間になった漂流者。
身長160cm前後の金髪蒼瞳なTS娘。容姿がフェイに似ている。
元はクレリックな男で、メシアの手によって(ほぼ事故だけど)TS化。色々よく思わなかったメシア教の手によって天使擬き製造機にされる。その後もガイア再生機構ことエデンに感度数十倍にされた挙句に利用するだけ利用された後に一兵卒として切り捨てられている。色々あって保護され、鋭敏化に関してもフェイの手によってある程度コントロールが可能な状態となる。但し、今後のインフレの為に病み上がりにも関わらずアホみたいな量の資料を読み込む羽目に。頑張ってエリヤ!貴方にはまだ装備集めもお香マラソンも連携訓練もレベル上げもその他諸々一杯やるべきことが残ってるんだから!

・神城 真澄 <???><符術師> LV??
冒頭にフェイと電話をしていたヤタガラスの巫女。
過去に由奈やフェイとあれこれがあり、何かとつけてフェイだけをヤタガラスに勧誘しようとしている。現在は四国ヤタガラスに居るが特別何処か固定のヤタガラスに所属しているという訳ではなく、西日本を中心に各地を飛び回っている。
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