真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
天魔衆はかつて存在した仏教系ガイア組織であり、今は特殊な喰奴である羅刹で構成された人食い集団である。約1年前まではその存在の危険性から凡その勢力から袋叩きにされており、生き残りが居るのかどうかも定かではなかった。
その存在が再び世に知られるようになったのは数か月前からであり、僕達が現首領であるラーヴァナと相対した事によってその存在の復活は決定的となった。以後はキリギリス・ヤタガラス・悪対等によってその存在は追われ続けていた物のその痕跡すら掴む事が出来ずに奴らはその身を隠し続けていた。
「だが、再び奴らは現れた訳だな」
車の助手席に居るエリヤは窓の外を見ながら呟いた。運転席には由奈が、僕と真澄は後部座席に座っている。車に乗って、今回の仕事を熟すべく指定の場所まで向かう僕達が纏う装備に変わりはなく、しかし纏う雰囲気は普段のそれより数段険しい物だった。
事のきっかけは数日前に僕が持つPCのフリーアドレスの一つに送られてきた匿名の天魔衆の行方を示唆するようなメールだった。最近近畿地方にて活発化している悪魔関係者が行方不明になる事案、それらは天魔衆の手による物だとそういう内容だった訳だが、その時点では匿名という事もあって信憑性に欠けたし、動くがどうか悩んでいた所で知り合いのDBからも近畿地方において天魔衆の動きが確認されたとの連絡が入った。
其処からは実際にその事案が天魔衆による物なのかを確かめるべく近畿地方に居る知り合いとやり取りを交わしながら情報収集に勤しんでいた。しかし悪魔関係者が行方不明になるという事案自体は超人失踪事件等からも珍しい事ではなく、天魔衆が持つ特性はその犯人の特定をより困難にさせていた。
| 喰奴 | 羅刹天 | Lv75 | 打撃・斬撃反射・呪殺無効・破魔耐性*1 |
| 【習得スキル】 脳天割り*2・血祭り*3・反撃*4・食いしばり*5・破魔ストロンガ*6 【捜査用・思い出スキル】 無明の闇*10 【思念融合】 1,物理命中率が5%増加する。 2,クリティカル率が10%増加する 3,物理属性で与えるダメージが10%増加する。*11 【その他効果】 羅刹モード*12 |
天魔衆の羅刹、彼らの強さは純粋なパワーと隠密と速度に依存している。<スピードスター>による速度上昇、<無明の闇>による隠密からの<豪傑の転心><羅刹モード>を用いた約2倍~8倍の物理貫通を以って一撃で敵を葬るやられる前にやる構成で、その身に抱える物理に対する脆弱性も不意打ちのみに運用を置くならばある程度無視する事が出来る。
羅刹のレベルも基本60以上で、同レベル帯で複数の羅刹に不意打ちされた場合に生き残るのは非常に困難だ。奴らは襲撃の証拠も残さないし、失敗の事例も無し。それが天魔衆の存在を追うのが難しい理由の要因になっていた。
そんな状況下で天魔衆の存在を確定させるには状況から消去法で範囲を狭めていくしかない。幸い天魔衆のやり口に詳しい由奈が居た事から行方不明者が発生したと思われる現場を警察関係者や調査・探知に特化した異能者と共に調べ尽くして、其処から徐々に範囲を絞っていった。その果てに天魔衆の本拠地と思われる異界の特定に成功した訳である。
「ただ、天魔衆の本拠地が真澄の実家にあるとは思わなかったけど」
「嘘なら良かったんだけれどね」
僕の呟きに顔を俯かせながら真澄が言葉を返した。
天魔衆の本拠地とされる異界には奈良県に存在する山岳の神社が存在していた。其処は真澄が幼少期を家族と共に過ごした場所であり、思い出したくもない忌まわしい場所でもある。真澄の過去のあれこれ*13は詳しくは知らないが、概ねクソみたいな実家に堪え兼ねて家出したといった感じだ。頭京都な上に力も左程なく、男尊女卑も京都ヤタガラスよりもきつい場所であったという事も付け加えておく。
でもって京都ヤタガラスにとってもほぼ身内というか傘下であった彼らは京都ヤタガラスと東京ヤタガラスの衝突においても強制的に参陣させられた。結果としては一族の半数が戦死、もう半分が行方不明という形となり、一族は実質的に消滅。神社に関してももぬけの殻であり、祀るべき神さえも居なくなったその場所は最早異界でも何でもなく、管理する余裕もなく放置。
行方不明となった一族関係者は今も捜索が続けられているが、神社は廃れて最早時代から取り残された物として扱われていた。それが天魔衆の本拠地として利用されていると判明したのが現状となる。
天魔衆がどういう動機で其処を本拠地に選んだかは真澄からの情報を元にある程度の推測は立てられた。まず一族の生き残りが天魔衆と通じており、その縁から本拠地を其処にしたという線だが、これはほぼ黒だろう。
真澄の証言から天魔衆にも脅されるないし、与するメリットがあれば仲間に入るような奴らなのは間違いないし、あの場に異界を構築するとなると龍脈の関係でその土地に詳しい人間が居なければ作り出す事は不可能。加えて異界そのものが隠蔽されている事からも一人や二人ではなく、それこそ真澄の父のような一族の幹部が関わっている可能性も高い。一族の生き残りの殆どが天魔衆に組しているというのが状況証拠から推察できる最も可能性が高い現実だった。
それらが判明した時点で僕達もまた出動となった訳だが、こうした現状であるが故に真澄の表情は目に見えて暗い。身内が人食い集団の仲間入り、さらに加入している者もまたその人食いになっている可能性が高いのだから気落ちしない理由がない。さらに言えば一族には真澄自身が唯一慕っていたという母を残してしまっていたという。メンタルコンディションは最悪で、それでもケジメの為に真澄は今回の事件に参加するのを拒まなかった。本当は僕も何かしら言葉を掛けたいのだが、うまい言葉が見当たらない。
「まぁ貴方が其処まで責任に感じる理由はないと思いますがね、私は」
と、そんな事を考えているとバックミラー越しに真澄の様子を見た由奈が淡々と告げた。
「天魔衆云々に関しては私の方が遥かに責任は重いですし、心配している母親とやらも未覚醒者であるのならば少なくとも羅刹には成り果てていないでしょう。なら精々他の身内が羅刹となっている程度の筈だ」
「なにそれ、慰めてんの?」
「辛気臭い顔のまま戦われても私達が困る。迷いがあって勝てる相手ではないのですから。特にラーヴァナは私達フルメンバーでなければ太刀打ちするのも難しいでしょう。フェイの切り札もまだ未完成ですしね。そういう訳なので……空元気でもいいですから、もっとしゃんとしなさい」
「発破の掛け方、下手くそ過ぎて笑っちゃうけど……うん、分かったわ。私だけの問題じゃないものね。エリヤやフェイには迷惑掛けられないし、落ち込むのはもう終わり。あんたは別にどうでもいいけど」
「私も別に貴様の事はどうでもいいですが、その台詞が吐けるなら問題はありませんね」
「ふふっ」
「……何かおかしいですか、フェイ」
「いや、珍しいなって思ってさ」
「まぁ、気まぐれですよ気まぐれ。忘れてください」
「そういう事にしとく」
歓談の中、車が止まる。異界のある山岳付近まで到着し、其処からは徒歩で目的地を目指す。既に幾つかのDBチーム或いは地元ヤタガラスや対悪魔警察組織が配置についており、人払いも完了済み。異界にまず一番乗りで侵入するのは僕達4名。其処から段階的に包囲を維持しつつ平均レベル60以上のDBチームが異界に突入する手筈となっている。
僕達が最初に突入する理由は現状集めた面子で僕達が一番対応力があるからであり、その為囮も兼ねている。前回のヨコハマもそうだが、異界に突入する時が一番危ない。羅刹との戦闘経験があり尚且つ突発的にラーヴァナと相対してもある程度拮抗出来るとなると僕達しか居なかった訳だ。一応トチった時の為に幾つか対応策はチーム毎に練っては貰っているが、僕達が初手で沈むのは宜しくない。
「この先が問題だな」
エリヤが先を見つめながら注意を促した。
此方も悪魔を展開して、フレスベルグの瞳で周囲の状況は二重に確認を行っている。特に異常もない山の上り坂に、高く生い茂る木々。それらの葉によって空から降り注ぐ光は隠され、薄暗い獣道が先へと続いていた。
現時点で罠と呼べるものもなく、不気味な程静かな森の中を歩いているだけ。悪魔も居ないその場所の節々には龍脈を弄る仕掛けが施されており、これによって今に至るまで天魔衆の根城は隠されていた。
「見つけた。いや、戻ってきたというべきなのかしらね」
真澄の淡々とした、乾いた呟きが小さく響く。
眼前にはそれなりの長さの石段、その先に風化して薄汚れた紅の鳥居が見えた。鳥居或いはその周囲が異界の入り口だろう。空中からも確認したが本殿と思わしき建物から直線状に鳥居までを半径として、円を描くようにして異界は構築されている。空中からのそれは“そう見せている”だけであり、実際の内部構造は大きく異なる。
最後に装備の最終チェック並びに状況を各チームに伝達。このまま突入する旨も伝えた後に石段に向けて歩みを進めた。
「……これは」
石段を登っている最中、突如として周囲に濃霧が発生した。濃度は一寸先も見えない程で、フレスベルグやエリヤの知覚を以てしても反応できない速度或いは何かによって展開されている。
「由奈」
「もうやってます!」
由奈が<光明真言>*14を、僕が<デイル>*15を発動。他の面子は周囲を警戒し、そのまま後退を急ぐ。
僕と由奈の幻影・幻術を晴らす術でも霧は晴れず、霧は自身の身体すら見えない程に濃くなってきている。後退しても霧が無限に続いている事からもう術中に嵌っているのは間違いない。他のチームに関しては不明だが何とか現状に関してはCOMPにて情報伝達した。
「最近こういう状況多いから備えは結構してたんだけど、それでもまた分断されるのはちょっと勘弁してほしい」
発生した霧は恐らく神の権能によるものだと予測をつけた。それもかなりの高位の神であるのも間違いなく、天魔衆側も本気で迎撃してくるのは疑いようがない。声も届いていないか或いは既に霧によって分断されたのか由奈やエリヤ、真澄の声も聞こえずに気配も感じられない。幸い仲魔は無事だが、このまま各個撃破されるのは時間の問題だろう。故に最優先は自分達の再集合であり、恐らくもう突入しているであろう他のチームと合流しても良い。その辺りは状況によるだろう。
それからやや霧の濃度が薄れ、それでも見通しの悪い周囲をフレスベルグの視界によって確認する。床、壁の材質は木造で、所々の装飾から神社の建物内部のように見受けられた。部屋内部の歪さや空気感から異界というより認知世界、パレスと呼ばれるそれに酷似している。
『前方ヨリ悪魔ヲ感知。此方ニ気付イテイル』
「りょーかい。こりゃ他も似た感じかもね」
薄暗い古ぼけた木の廊下。最奥が見えない程に長く、そして何より鼻を塞ぎたくなる程の血生臭さがこの場所の不気味さを引き立てていた。壁や床を蹴りながら此方に向かう羅刹の集団を僕は知覚して、仲魔と共にその制圧へと向かった。
「来たか」
血に塗れた髑髏の山、それを玉座のように跨りながら天魔衆の現首領であり、簒奪者でもあるラーヴァナは口を歪めた。フェイとの戦いの後、身を潜めた天魔衆は東京より離れて地方においてその活動を広げていた。地方にも勿論強者は居るが、東京に常駐しているような特記戦力は間違いなく少ない。狙いもピンポイントに尚且つ場所も疎らにしながら覚醒者狩りをすれば自ずと正体が割れる可能性は低くなる。其処から徐々に部下である羅刹も揃えて、餌をやり続けて地方を周り、そうして乗っ取ったのがこの神社だった。
「アクシャ、迎撃の用意は出来ているな?」
「はい」
ラーヴァナの声と共に髑髏の下で跪いたのはアクシャと呼ばれた羅刹であり、それはかつてこの地を収めた神城と呼ばれる一族の首領でもあった。京都ヤタガラス壊滅時にその命を守る為に一族の残党と共に決戦から逃げ出した男は只管に逃げて、逃げ続けてその果てに天魔衆へと行きついた。自身の命以外の全てをラーヴァナに差し出した事によって男は羅刹となり、アクシャとなった。
ラーヴァナにとっては弱く、興味もない男ではあったが羅刹となる衝動は持ち得ていたし、この地に関する情報や男が持ち得ていた遺産や他裏組織の情報は有益であり、何より自身に対して従順だった。クムバの名を与えた法華が先の戦いで死亡した事によって繰り上がりで天魔衆の副将となったアクシャはこの地に拠点を置くように進言した上で細工を施した。
通常の異界化、それを成した後に稲羽市と呼ばれる場所にて発見されたある呪物を起点としてその異界を自身の
そして、本拠地の場所が割れた今はパレスと霧の権能を用いて侵入者を分断してから殺害。喰らうか捕獲かは別として、侵入者の迎撃に成功した後に定めていた別拠点へと離脱するそういうプランを立てていた。この拠点を放棄する事はしたくはなかったが、のこのことやってきた
霧に呑まれたのはその二人を含む4人だけ。残りの侵入者は逐次このパレスへと突入してきている。其方にはパレスで沸いた多数のシャドウと羅刹を送り込んでいるが恐らくそう長くは持たない。
「アクシャ、貴様はその望みの通りにヤタガラスの巫女を殺せ。私は勝手にやって、さっさと離脱する。生きていれば離脱先でまた会うとしよう」
「く、キっ!ええ、ええ、この状況は私にとって満願成就ですから。好きに喰い散らかせて頂きますよォ」
ラーヴァナに媚びへつらいながら、その異形の顔に浮かんだ笑みは歪み切った物で、憎悪と怒りを明確に発露させていた。
「貴方様に与えて頂いたこの身体、そして我が身に刻まれたイマージュ、これさえあれば奴に負ける事は万が一にもありません」
「そんな事に私は興味はない。貴様は力を求めて、私はお前の全てを以てそれを叶えた。対価は確かな物で、役に立っている。それだけだ。さっさと行け」
「御意」
アクシャがその場から消え去り、ただ一人ラーヴァナは髑髏の山にて頬杖をつく。
「何故この場所がバレた?」
本拠地の場所が割れるのは時間の問題だった。しかしこれ程早く、この場所がバレるのはラーヴァナにとって想定外でもあった。襲撃の痕跡は確実に消していたし、
いざ離脱しようとした所で今のように包囲されて、挙句にそのメンバーに此方が狙っていた覚醒者が複数。まるで何者かが天魔衆とそれらをぶつけて潰し合わせようとしているかのような、嫌な予感があった。
「一応念には念を込めておくが……まぁ、やる事は変わらん」
例えアクシャや天魔衆が潰えたとしてもやる事に変わりはない。喰奴の亜種とも言える羅刹という存在は他者を屠り、喰らわなければ生きられない。羅刹の王であるラーヴァナとてそれは同様であり、喰らう為の力以外の全てを捨て去ったその身はよりその
その殺戮と捕食に終わりはなく、那由他の世界の果てまでそれは続く。最早自分が何者であったか、何故その力を手に入れたのか、何が欲しかったのかも最早何も分からぬままに
・後書き
他のやる夫スレ見てインプットしてたり、P3Rを1週間でクリアしてたり、仕事が修羅に入ってたり、文字が書けなくて頭抱えてたりしてたらいつの間にか1カ月経ってました。現状もややスランプ状態ですが今後も何とか書いていきたいです。
<久遠 フェイ>
匿名メールとか怪しいに決まってるだろと思いつつも調査続けたらあれよあれよという間に場所が割れてしまった。ラーヴァナはよ何とかしないと不味いよなとは思ってるがフルメンバーじゃないとぶっちゃけ勝てる気しないので戦うなら良い感じで殴り合いに突入したい。自分だけでやるなら取り敢えず専用の切り札は欲しい。
<久遠 由奈>
元天魔衆所属なので色々と責任感は感じているが、同時にクソめんどくせぇなぁとも思っているので左程重くは受け止めていない。フェイやら親しい他人が居ないと一気に思考が羅刹と同レベルまで落ちる。
<神城 真澄>
出奔したとはいえ実家がそういう状況になっていて割とショック。ぶっちゃけ母親以外はどうでもいいが母は死んでいるか死ぬより酷い目に合っているだろうと一種の諦めと怒りを抱いている。
<天魔衆>
羅刹なので常に羅刹状態で物理ぶん回してくる人食い集団。
命中不安を抱えてたり、物理に強い分滅茶苦茶物理に脆かったりする部分はあるものの耐性でそれを補って理、根本的に速いので先手取るのがむずかったり、隠密能力が高いので少数であれこれする分には非常に厄介。加えて喰らう事以外の全てを投げ打って行動できるので其処らへんの守るものがない故の手段の選ばなさも面倒ではある。
<ラーヴァナ>
狙ってた二人が侵入者で来てくれるのはいいけど、あまりに作為的に作られた状況に警戒状態に入っている。状況次第ではあるが天魔衆は此処で使い潰す予定。
<アクシャ>
神城一族の首領だった男。今はラーヴァナより羅刹化されて、媚びて自分の命以外全て差し出しながらあれこれやっている。とある人物に強烈な劣等感と憎悪を抱いており、それを晴らすべく今回迎撃に動く事となる。
リベリオン※D2:自身を会心状態にし、次の攻撃をクリティカルにする。
・物理貫通(D2式)を取得し、魔法を一切使えなくなる(物理スキル・アイテムは使用可能)
・物理攻撃時に通常の2倍のダメージを与える。但し、敵から物理攻撃を受けると通常の2.3倍のダメージを受ける。
・クリティカル率が大幅に上昇する(+90%)が、敵からの攻撃のクリティカル率も大幅に上昇する(+60%)
・回避率が大きく上昇するが、命中率が大きく下がる。