真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
奈良のとある山岳の廃神社に根付いた天魔衆の殲滅は異界の崩壊と共に終了した。異界崩壊と共に廃神社もまた倒壊してその場に残るべき物は瓦礫のみ。異界を包囲する様に展開されたヤタガラス・悪対・DBチームによって逃げ出そうとする羅刹達も残らず殲滅され、内部に居たであろう羅刹も突入チームによって討ち取られている。その数は数百にも並び、その身元は元々天魔衆所属だった者から誘拐されたであろう適性のある一般人や異能者だったりと様々だ。
突入メンバーには羅刹が相手という事もあり、死傷者は多少出たがロストはなし。結果で言えば天魔衆の本拠地と数百体の羅刹の討伐というこれ以上ない終わりにはなっている、が
「ラーヴァナに、オベロン=ティターニアか」
生きて逃げ伸びた可能性があるラーヴァナに、由奈の前に現れてそれと戦ったオベロン=ティターニアと呼ばれる合一神の存在。これで終わりじゃないかもしれないという予感は抱えていたはものの、せめて事件解決直後位は気を休めさせてほしい。そう思いたくなる頭痛の種が二つも出来てしまった。
ラーヴァナに関しては正直討ち取れなかった事自体はしょうがない。あのクラスの化物が逃げの一手、しかも死んだ時の保険も用意していたとなれば殺すのは至難の業だ。むしろ分断されたあの開始状況から僕ら全員が生き延びれた事が奇跡だろう。あの戦いにおいて一番死に近かったのは紛れもない僕らなのだから。
「殺せている可能性はある、とオベロンは言っていましたがそう考えるのは危険過ぎますからね」
隣で報告書を書きながら由奈が言葉を発して、僕もまたそれに強く頷く。生き延びた場合、傷で動けないだろう事を鑑みて暫く闇に潜み続けるのは間違いないだろうが天魔衆という手駒を失ったラーヴァナがどう動くかは分からない。また羅刹を増やすかもしれないし或いは別の勢力に自身を売り込むかもしれない。
今後もラーヴァナ及び天魔衆残党の足取りを追い続ける必要はあり、その対策も講じていく。可能であればラーヴァナの対処は僕達で行う。方針として前と程変わりはないが、そんな所に落ち着いた。
「妖精文字、このタイプのは本来僕は知らないから読めない筈なんだけど」
オベロンから由奈に渡された羊毛紙。其処に書いてある妖精文字と呼ばれる物は人ならざる妖精が用いる暗号のようなものだ。ルーン文字のように武器や魔道具に刻まれる事があるそれらはその文字の形体自体が妖精ごとに異なる。
ピクシー、エルフ、ゴブリン、種族ごとに決められた妖精文字の幾つかを僕は覚えていたが羊毛紙に刻まれた文字はオベロン・ティターニア間でのみやり取りされる妖精文字の中でも特殊な物だった。
妖精文字として拡散される筈もない二者間でのみ完結する筈のそれは本来僕に読める物ではない筈だったが、不思議とそれを読み解く事が今は出来た。
「伝令の妖精を召喚して、それによるやり取りか。情報交換の場所も複数個から周期的に変更、ね。これほんとに僕しか分からないし、出来ないじゃん」
どうして僕にこれが読み解けたのか、何故オベロンがこれを読み解ける物として紙を託したのか、そもそもオベロン=ティターニアとは何者なのか。その全てはあの時に垣間見た全く覚えのない存在しない記憶にあった。
「僕の記憶の中にオベロンとティターニアが居た。僕はあの二人を両親として扱い、彼らも僕の事を子供として扱っていた。そして僕の死と共にあの二人はオベロン=ティターニアとなった」
オベロンとは違う、この世界のおける僕の
| ■■の光 | D2出典(欠落)。全ての状態異常にかからなくなる。 |
状態異常に対する絶対的な加護と呼べるべき物が僕に刻まれていた。それは本来あり得ざる力で、刻まれる筈のなかった物。刻まれる筈はなかった力と有り得る筈もない存在の記憶、それら二つに確かな繋がりがあるなら推測は出来る。
「この記憶は多分その妖精の、正確に言うなら記憶に居たフェイの物なんだろうね」
「あのオベロンが貴方を知っていたかのように、まるで知古であるかのように言っていたのは」
「僕の中にフェイが居るのを知っていたか或いは僕自身がフェイであると認識していたかって所かな」
どちらが正しいのかという話なら多分どっちも合っていると僕は認識している。あの記憶は確かに
「僕は
違う自分なのに、遠くから見ているだけなのにあのフェイの喜怒哀楽を感じ取って、顔すら知らないオベロンに対して胡散臭さ・疑念以上の懐旧の念を僕は抱いていた。自分という存在が少しだけ、よく分からなくなる。
「私とラーヴァナも同じ、でしょうね」
「由奈?」
そんな不安を感じ取ったのか、気づけば僕の手を由奈が両手で包んでいた。
「貴方のような、一緒に居れる存在と出会わなければああなっていたという本来の可能性がラーヴァナです。あれに喰われた私の同位体もラーヴァナとさして変わらない存在だったでしょう。私とラーヴァナの違いは本当にそこだけです。奴と話して戦って、其処はよく分かりましたから」
「それは」
「それでも私は貴方と出会ったからラーヴァナではありません。貴方のお陰で今私は此処に居るんです。私にとって必要なのは他の誰でもない此処に居る貴方という事を忘れないで」
「……やっぱ、君には敵わないな」
其処まで言われて何も言えなくなった僕はそのまま抱き着いてきた由奈にされるがままにしがみつくようにぎゅっとされた。
ああいった由奈も何処となく不安そうにして、自分に言い聞かせるようにしている。最近になってお互いに死に掛ける事が多すぎたからだ。僕達個人に限定しても明確に此方の命を狙いに来ているラーヴァナ、ウリックとアンナ。目的が分からないオベロン。世界規模で言うならトライアド、メシア教、ヤクザ、セプテントリオンetcとあまりに危険な存在が多すぎる。
僕達もそれらに対してこの数カ月、戦い続けてきた訳だがどれだけ戦っても終わりは見えないし、いつ死ぬかも分からない。戦いの時は多少ハイになっているから誤魔化せるが、僕も由奈もそもそも戦いに向いたメンタルではない。
戦う事も傷つく事も自分が死ぬ事も怖いし、何より大切な人が死ぬのが怖い。それでも縋って抱き締め合って、お互いが生きる日常を守る為という理由を元に何とか立ち上がって僕達は戦っている。
「ありがとう、もう落ち着いたから大丈夫……そんな名残惜しそうな顔しないでってば」
僕を離さないように抱き締める由奈の手を解いて、身体を離す。本当に名残惜しかったのは僕かもしれないけど、今回の戦いで最も傷ついたのは僕達じゃないから。
「真澄の所に行くんですか?」
「傷は治ってるんだけどね。でも、なるべく一人にはさせたくないんだ」
帰って来てからの真澄は表面上は平静を保っているが、何処となく考え込んでぼぅっとしている事が多い。アクシャとの戦いの傷は魔界医師のファウスト先生にも確認して貰って完治してるのは分かっている。問題は心の傷、その整理の方だろう。
「真澄はさ、色々失い過ぎてるんだよね。好きな人もそうだし、今回は母親だ。それがあんな終わりを遂げて、それを成したのが実の父だった。それらの原因に自分が関わってるかもしれないなら、気落ちしない方が不思議だよ」
「それでも悪いのは彼女ではないですよ」
「理屈では分かってるとは思うよ。でもそう簡単には納得してくれないんだよね、自分の心って奴はさ」
自分は正しい、間違っていない。客観的に見て、それが正しかったとしても自身に少しでも非があるのではないかという考えが過ってしまえばそれは呪いのようについて離れない。これで良かったという思いともう少し何かできたかもしれないという思いは両立する物で、そういった思いはどのような人物であれ大なり小なり抱えてしまう。
「真澄が抱えた心の憂いを全て払う事は出来ない。それでもやっぱり傍には居るべきかなって」
「……分かりました。ですが埋め合わせはしてくださいね。最近はあまり二人で過ごせる時間がありませんから」
「んっ」
由奈の言葉に笑顔で頷いて、その場を離れる。そのまま装備の整備をしているエリヤの様子を見た後に真澄の部屋へと辿り着いた。
「真澄、入るよー」
ノックと声掛けをして、部屋に入る。それなりに大きな一人部屋には符製作の為の道具と作業場、そしてベッドと本棚といった家具がある。真澄はベッドに横たわって、窓から外を眺めていた。その視線は何処か虚ろに感じられた。
「フェイ、また来てくれたのね」
「僕が今の真澄みたいな状態だったら絶対来るでしょ」
「ふふっ、それはそうね……なら、もっと傍に来て頂戴。貴方をもっと近くで感じたいわ」
くすくすと微笑んでる真澄に力は感じられない。先程まで眠っていたのか少しだけ寝惚けた様子の真澄がベッドに座って手招きをして、傍に寄った僕の身体をぷらんと持ち上げる。
「はい、捕まえた。にしても軽すぎて不安になるわね。ちゃんとご飯食べてる?」
「ちゃんと食べてはいるよ。それ以上に動いてるのは君も分かってるでしょ?」
「まぁ、ね。でも細すぎるのは心配になるから、もっと肉を付けなさいな」
「むぅ」
持ち上げられたままにぺたぺたとまるで猫を扱うかのように触れられて、満足したのかそのまま正面を向くようにして膝抱きにされた。こういうのって大体男側が女側にする奴と思うんだけど、いつも抱き締められる側だな、僕。
「貴方は小っちゃいしやわっこいし、その見た目と服装ならこういう役回りになるのは当然でしょ」
「あ、あれ、見透かされてる?」
「気が抜けてる時の貴方は顔に出やすいの」
困惑しながら真澄の顔を見上げれば、こつんと額に指を押し当てられた。真澄はくりくりと指を回転させてはその手を僕の頬へとやってされるがままに頬をむにゅむにゅしている。
「ん、ふふっ。ほんと、邪魔が入らず貴方と一緒に居れるなんて何時振りかしら」
何処となく寂しげに笑って、真澄は僕の顔をただ見つめていた。真澄の濡羽色の長い髪が帳のように僕の顔を包み込んで、手空きになった手が僕の髪を指で解いて梳かしている。
「その割には顔が浮かないね。声も元気がない」
「……」
「だから話してほしいな。一つずつ」
「ええ」
真澄の口が揺れて、言葉を漏らす。いつもとは違う儚げな微笑みには明らかな悲哀と苦痛が込められていて、それは親を探す迷子のようにも感じられた。
「あの場所を捨てたのは私だった。母にあの目を向けられて、逃げだす様に捨てたのも私。それを間違いだとは、思わない。一族だって、あの場所諸共消えた筈なのに」
頬に雫が落ちる。真澄の瞳から流れた涙だった。
「消えないの、ずっと。心が痛くて、苦しくて、壊れてしまいそう」
落ちる雫は増えて、止めどなく溢れた。それは真澄の抱えた罪悪と後悔その物で、同時にそれは消して治せない疵でもある。
「その痛みを無くす事は僕には出来ない。分かち合う事も、出来ない。僕はまだその経験がない」
何かを失ったという経験。僕にはそれがない。厳密に言えば、失くしたという実感が僕には存在していない。由奈は自身が羅刹の力と引き換えに、人間であった自分と当たり前の愛を喪った。エリヤは超感覚と引き換えに、その身の尊厳を奪われて妹すらもその末路を辿っている。そして、真澄は自由と引き換えに過去の全てが消えていった。
僕は生まれてから何も変わっていない。手足を面白半分に千切られて、悪魔にも人間にも犯されいたあの頃と由奈達と過ごす今とで、失った物は何もない。
僕が生まれる為に失われた母さんも、その結果として悪魔人間となった身体も、父さんに連れられて行われた人体実験もその全てが僕にとっては当たり前だったから。肉体的な痛みはあっても、そうであると最初から認識をされてしまえば其処に心の疵は生まれない。
「けど、そうだね。僕に想像する事は出来る。それは消えないから痛いんじゃない。消えてしまって、想い出してしまうから辛いんだって、ね」
そんな僕にあったのは経験のない、失う事への恐怖。其処にあるべき物が無くなって、二度と触れる事が出来ない。それがたまらなく怖い。もし戦いの中で由奈を、真澄を、エリヤを失ってしまえばと想像が過るだけで、震えが止まらなくなる事もあった。
「失ってしまった物は二度と帰っては来ない。それでも触れられない過去だけが記憶に残留して、想い出す度にそれがもうこの世にはない事を実感してしまう。僕が一番怖くて、堪えがたい物を君は感じてしまってるんだね」
両手を伸ばして、流れる涙はそのままに真澄の頬に触れた。その手に擦り寄るようにして身体を捩らせた真澄の顔は酷く痛々しく、溢れる感情
「ごめんなさい……私、強いのに。強いと思ってたのに、こんなにも私が脆くて弱かったなんて知らなかった」
「僕達は強くはないよ。ただ、力を持ってるだけで人間なんだ。その脆さや弱さを捨てて強くなろうとすれば、もうそれは悪魔なんだよ」
覚醒者・異能者もその力、容姿の相違はあれど人間である事には違いない。どれだけ肉体的に精神的に強くなろうと人間であるのなら、その心の痛みは平等に僕らに襲い掛かってくる。当たり前に死ぬのは怖いし、傷つくのは恐ろしい。その恐怖に打ち勝っても、大切な物を失ってしまえば喪失感と絶望感に包まれる。
元より死が近いこの業界においてその類の恐怖と喪失は遍在しているといっても良い。それらを超えられるのであれば前に進むことができ、受け入れられるのなら問題はない。だが耐え切れずに歪んでしまえば、辿る末路はあまりに悲惨だ。
歪んで手を伸ばすのはどのような物であれ、突き詰めれば悪魔の力。大切な存在を取り戻そうと悪魔の禁忌に手を染めれば待っているのはより最悪な終わりだけで、力を求めようともそれに溺れて自滅するのみ。それらから逃れて生き残ったとしても心も体も悪魔となるだけで、其処には本来あるべき人格は残っていない。
「神城一族だってそうだし、天魔衆だってそうだ。悪魔の力を求め続けて、人間性を捨ててしまえば人間の世界には居られなくなる」
「父さんは、きっとこれに堪え切れなかった。母さんも私が歪めてしまって、父さんに従ってしまった。けれどこの痛みを失くしては、捨ててはいけないのよね」
「強要は出来ない。忘れる事で前を向ける事だってあるし、強くなるのにそれは不必要な物だっている人もいる。だから最後は真澄に決めてほしい。どれだけ時間を掛けてもいいから」
「……ありがとう」
短くそう答えた真澄はそのまま口を閉ざす。少しだけ落ち着いた顔つきで僕をぎゅっと抱き締めながら、押し黙っている。それから数分か或いは数十分か、僕の髪を梳かしながら真澄が独り言を零す様に喋り出す。
「私の我儘だけど葬式でもしましょうか。形だけの、小さな奴。それには貴方と私、エリヤと由奈が居てくれればいいわ」
「んっ」
もぞもぞと真澄の胸の中で動きながら、瞳を合わせる。
「いいよ。それで君の中で区切りがつけられるなら」
「それで全て自分を納得させる事は出来ないし、貴方の言った通り時間は掛かると思うわ。それでも母さん達がこの世界に居たって事、忘れたくはないから」
「それが葬式ってものだからね。スケジュールは何とかこっちで調整しとく」
こくりと頷く真澄はその手に分厚い本を持っていた。装飾や質感から鑑みるに自作されたものでごく最近に作られた物だ。
「それは?」
「神城一族が継承していた骨法ならびに符術・結界術に関する自作の秘伝書よ。もっとも昔盗み見て覚えた奴に私の経験と知識を加えて大幅改変された奴だから、殆ど我流ね。これを2冊作ったから、何処かの信用できる組織に渡しちゃおうかなって」
「一応聞くけど、いいの?」
「私はあまり教えるの得意じゃないから弟子は取りたくないし、かといって何も残さないのもどうかと思ってね。だからまぁ継承或いは知識や技術として残してくれそうな然るべき場所に納める事にしたの。その2冊を渡す所はヤタガラスと技研の予定よ」
「ヤタガラスは聞くまでもないけど、技研は知らないなぁ」
名称的にアーマードでコアで六であれこれしていたあの組織がどうしても浮かび上がる。
「正式名称は秀英戦国技術研究所*1。ガイア系の組織で第二次の時のごたごたで焚書されかかった秘伝書なんかを集めてた組織よ。私も行った回数はそれ程ないのだけどトップの琴葉護藤さんとは何度か仕事一緒になった事あるから悪いようにはしないでしょう」
「成程ね。いいんじゃない?」
「後、其処の娘さんと手合わせした時に色々シンパシー感じちゃって」
「ちょっと不安になってきたな」
何処からかママ活という言葉が頭を過った。シンパシーというのも……いやこれ以上考えるのは止そう。真澄が前向きに色々考えてくれてるだけ、良い事の筈なのだから。
「取り敢えずそれに関しては了解したから良いとして、まだ何か言いたい事がありそうな顔だね」
「……私が貴方をヤタガラスに誘い続けてた事、覚えてる?」
「初めて会った時から君がこっちに来るまで言われ続けていれば、頭から抜け落ちる事はないよ。けど君が此処に来てからは誘われた事ないね、そういや」
僕と真澄のファーストコンタクトは概ね最悪だった。僕の容姿を見て、僕を僕の母さんだと誤認して詰め寄ってくる真澄と僕に近づく真澄に切れ散らかして殺意を溢れ出していた由奈、そして何も知らずにぽけーっと立っていただけの僕。
其処からなんやかんや共に受けていた依頼をいざこざありつつ完了させて、お互いに事情を説明。其処から真澄の執拗なヤタガラス勧誘が始まった。
「貴方をヤタガラスに勧誘していたのは能力の希少性だとか、貴方が幼過ぎる事だったり、由奈への嫉妬だとか他にも色々あったわ。でも一番は貴方まで失いたくなかったから」
真澄の声色がまた沈んで、深く僕の身体を抱き締める。痛くはないががっしりと掴まれて身動きが取れない。
「ヤタガラスに行っても、結局僕がやる事は変わらなかったとは思うけどね。新城さんとか、弦一郎さんだとか今もほぼ休みなしで頑張ってくれてるし、僕もきっと今と同様に最前線で戦ってたと思う」
「それでも傍に居てほしかった。私の手が届く範囲に、守れる場所に、貴方を失わない為に。その為なら由奈が一緒に居ても良かった」
真澄が縋るような眼つきで僕を見ている。まるで此処に僕が居る事を確認するかのように、或いは僕を通して違う誰かを見ているようなそんな感触。その正体を僕もまた把握している。
昔、僕の母さんだった人は真澄と親友だったらしい。実際に見てきた訳ではないし、詳細には分からないが真澄にとって一番大切な人だったというのは間違いなかった。そして写真で確認した限り、僕と母さんの容姿は酷似している。
真澄が僕に執着するのもそれが原因なのは明白で、僕の姿に母さんの影を真澄は追っているのだろう。二度と会えない母さんの影を。
「由奈はヤタガラスには行けないよ。ファントムに居た頃にヤタガラスとかなり戦ってるし、相応に殺しもしちゃっただろう。それを身内認定する事は難しい。僕も由奈から離れる気はないから、当然僕もヤタガラスには行けない」
「それは、もう分かってるわ。駄目元だったし、もしかしたらって思って誘い続けたんだもの。けどそれももう終わりね」
不意に唇に感触を感じて、そのまま目を閉じて受け入れる。
「貴方が来てくれないなら、私が貴方の傍に行くわ。由奈やエリヤが居るのは関係ない。私が貴方を守る」
「いいの?僕にはメリットしかないけど、そっちにも立場とかあるだろうし」
「貴方には散々世話になったし、今度は私が支える番って事よ。後、なんか私のつまらないプライドで由奈に貴方取られ続けるのイライラしてきてたから」
「ふふっ、そういう事ならいいのかな?」
そうしていると特に疲れてもいないのに自然と睡魔が襲ってきた。抱かれていて、安心してしまったからだろうか。少しだけ気恥ずかしい
「ん、ぁ……これからもよろしくね、真澄」
「えぇ、これからずっと一緒に居ましょう、フェイ」
母親が子供に言い聞かせるように、うとうととした意識の中に柔らかな声だけが響いている。そのまま真澄に頭を抱き締められるままに、僕の意識は微睡の中に落ちていった。
<久遠 フェイ>
女の胸の中でシエスタを決める男(の娘)。しょうがねぇだろ、実年齢もショタなんだから。
<神城 真澄>
そのうちママ活の口実にヤタガラス勧誘を使ってはいけないで捕まりそうな人。
戦いの中ではハイになってたので振り切れたが日常に戻ってきてふと考えたら色々止まらなくなってきてしまった。感情の依存先が実の母親→フェイの母親→フェイと転々としているが、依存先が悲惨な末路を遂げてるので不安で仕方ない。某ケガレビトの某ロリアラサーグラップラーに親近感を感じているが、手を出してるのでシンパシーを感じる資格は特にない。
<久遠 由奈>
この後、信じて送り出した相棒が恨めしいライバルの胸の中で眠っているのを目撃する。
<久遠 エリヤ>
ずっと真面目に装備の整備しながらこの世界について勉強していた。
何だかんだで由奈と真澄と仲良くやっているし、二人の仲を取り次いだりしているが
時折しおらしい態度をフェイに見せるので警戒され始めている。