真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス-   作:名無しの骸骨

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今回はエリヤ視点の話になります。


天魔衆

 この世界は間違いなく地獄である。それが数週間をこの世界で過ごした俺の率直な感想だった。

 

 文明や生活レベルで言うなら間違いなく元居た世界よりこの世界の方が余程発達しているし、転移前の世界の最上級の生活はこの世界の底辺の生活に及ぶか及ばないか。とはいえ、そこまで充実しているのは日本或いはアメリカ等の一部の先進国のみ

 

 他の国は何らかの形で悪魔やそれに類似する存在によって凡そ地獄のような状況になっている事だろう。それでも生活面は幾分かマシではあるが……問題はこの世界に現れる悪魔、厳密に言えばその種類の多さ。

 

 同名悪魔のレベル、種族、耐性、スキル違い。同名スキル、状態異常の効果違い。かつての世界では存在しなかった属性相性多数。足切りライン50という驚異的なまでのGP

 

 加えて、セプテントリオンと呼ばれる怪物の存在。世界を何らかの形で滅亡に近い状況に追い込もうとしている組織

 

 最近では進化する理想郷(エデン)新しき神話(テオゴニア)の存在も確認されており、より情勢は悪化している。記録を確認する限り、日本で発生した戦いだけでも日本或いは世界滅亡を引き起こしても不思議ではない物は複数あった。

 

 当然、その戦いに追随しなければならない俺を含む漂流者の負担も相応の物となる。政府や各組織は支援を用意はしてはいるもののそれだけで環境に追いつける訳ではない。そも、最低限の基準であるlv50でさえ世界によっては到達し得ない超人の領域

 

 俺はガイア再生機構によって改造、それによってそのラインを辛うじて超えてはいた。それに加え、由奈とフェイに拾われた事も大きいだろう。今使っている銃も市販では間違いなく最上位の物で、防具に関しては<双鬼冠>*1、<カラミティスーツ>*2、<ガネーシャリング>*3、に<ミラージュブーツ>*4で固めている

 

 ガイア再生機構のエリート部隊や上層部は知らないが、元の世界を踏まえれば破格ともいえる装備を渡されている。レベリングや知識面でもサポートは受けているし、強くなるならこれ以上の環境は早々ないのは明らかだろう。

 

 まぁここまでサポートが手厚い、という事はそれ程ヤバい何かと相対する羽目になるという裏返しでもある。フェイのレベルは82、由奈のレベルは88。共に大組織のトップか?といってやりたいレベルだが、この世界ではこれでもトップではなく最上位程度。そんな彼らが相対する敵の中には80レベルから90レベル、下手すればそれ以上の化物も存在している

 

 あのベリーニのネルガル*5も最終的にはそのクラスに達しており、特定状況化という前提はあるものの個人でそのクラスの悪魔を使役できるという現実がこの世界のイカれ具合を物語っている。

 

「とはいえ、流石にあのクラスは早々居ませんよ。フェイも死にかけましたし、80オーバーとの相対はそれこそ大組織の幹部・トップクラス或いは巨大な異界における異界の主(ボス悪魔)との戦いに限定される。」

 

「だが、そういった奴らと戦い続けてきたからそのレベルになってるんだろ?」

 

「……まぁ、そうですね。色々事が起きる前は私も60レベル程度でしたし、フェイは30前後といった所でした。私達が強くなったのもそれらの危機の強大さ、それを乗り越えた時のソウルの研鑽によるものなのは間違いないです」

 

 俺とテーブルを挟んで反対側に座っている由奈がカラカラとアイスコーヒーを混ぜながらそう答えた。今日の異界攻略もとい俺のレベリングを終えて、拠点にて寛ぎながら今回の異界攻略の書類をPCで記入している。

 

「それにしても、やはりレベルが上がるのが早いですね貴方は。あのスキルの影響もあるのでしょうが、レベル限界もまだ見えませんしこの分なら戦力としての働いてもらうのは問題なさそうですね」

 

「色々複雑だがな。それにまだ60レベル程度だ、これでは足りないのだろう?」

 

「ええ、我々の戦闘に追随するには70は欲しい所です」

 

「冗談ならよかったんだがな、それ」

 

 溜息をつきながら、頼んでいたショートケーキを頬張り思わず笑みを浮かべる。悪魔由来ではない肉類、野菜類、魚類、甘味、それらは文明が崩壊した世界では最早幻想に等しい物だ

 

 現にそういった食事がこの世界のメインであると聞かされた時は目を疑ったし、食事を出された時は一心不乱に食べて、胃もたれもした。それだけではなく衣服や住居、安全な水源、娯楽……文明がなければ凡そ存在できない物達

 

 この世界にやってきた漂流者がこの環境で挫けずに戦っていられるのはそういった文明を享受したいというのもやはり大きいのだろう

 

 仮に環境についていけずに裏方やアルバイト等に従事したとしても元の世界と比べれば楽園のような生活を続けていけるこのような余裕のある生活が今あるのも、ひとえにキリギリスが行動し続けた結果であるのは疑いようもない。

 

「それに一度知ってしまったら、ここから抜け出すのはまぁ難しいだろうからな。結果的に大半の漂流者は生活の為に戦い続ける選択を選ぶ訳だ、どういう形であれ」

 

「私も今の生活レベルを下げたくありませんからね……さてと、異界攻略の報告書はこんなもんでいいとして、次の仕事の話をしましょう」

 

「レベリングはもういいのか?」

 

「ええ、ちょっと緊急で依頼された物でして既にフェイには動いてもらってます。貴方の力も恐らく必要になる」

 

 そうして机に置かれた一冊の焼き焦れた書物。それは由奈が使うというカルトマジック、マントラで用いられる事がある経典*6と呼ばれる物と似ていた。

 

「依頼主はヤタガラス。依頼内容はレルム内で失踪している悪魔関係者、その犯人の足取りの調査と可能であればこれの討伐」

 

「その書物は?」

 

「被害者が失踪したと思われる場所付近にあったとされる経典の一種です。使用済みなのでもう効力は発揮しませんが」

 

「……マントラ使うって事はバラモン或いは仏教関係者が狙われてるのか」

 

 由奈はその言葉に頷き、詳細を語る。被害者はそれなりのレベルの悪魔関係者、特にヤタガラス或いはガイア系組織に所属する仏教系列の覚醒者が多い

 

 彼らが襲撃されたと思われる場所は異界内部やそれに類する異界に近い不安定な場所、人通りの少ない路地裏や夜の大通りで狙われるケースもあったとの事。襲撃地点に死体はなく、残存するマグネタイト及び戦闘痕、引き千切られたと思われる防具や武器、肉片や血痕が襲撃地点に残されており、それにより身元の特定や襲撃時刻の推定が行われたらしい。

 

「異界内部やそれに類する場所は監視カメラ等も当然置かれてません。路地裏もそうですね。大通りに関しては……どうも姿が映っていません、一方的に被害者が殺害された映像が残っています。並みの覚醒者では感知できないドロンパ*7に似た透明になる術を持っているのでしょう」

 

「じゃあ犯人の目星はついてない訳だな」

 

「いえ、襲撃現場に居合わせたデビルバスターが襲撃者と交戦。姿も写真に収める事に成功はしているようです。ただ、交戦したデビルバスターも重傷を負っているようで手掛かりとなる写真も1枚だけですが」

 

 提示された写真に写っていたのは鬼のような仮面を被った三つの黒い影。刀剣を装備し、認識阻害が掛かっているのかそれ以上の情報は写真からは読み取れない。

 

「鬼面でこの風貌ならガイア系が近いな。俺にも覚えがある……確か」

 

「天魔衆。もう古臭い、カビの生えたガイア組織ですが装備と風貌、雰囲気がそれと酷似している」

 

 天魔衆、その名の通り天魔を信仰するガイア組織。天魔とは即ち第六天魔王波旬、仏法における悪魔を本来指すが悪魔業界においては少々違った物を指す。アスラ、シヴァ、インドラジット、ヤマ、ラーヴァナ等、インド神話における破壊神や魔神の派生でありこれらが天魔に該当するとされている

 

 由奈が言うには仏教系ガイア、その過激派の集合体のような組織であり、百年以上前から存在する古いガイア組織であったらしいが分派が多くなりすぎて空中分解、本家である天魔衆もその流れで衰退したとされている。

 

「ここまでならガイア組織ではよくある事です。ただ、衰退した天魔衆に残った……厳密に言えば乗っ取った連中が厄介な連中でしてね」

 

「具体的には?」

 

「……天魔衆に残った者達はラクシャーサの末裔であるとされ、羅刹(ラクシャーサ)の王であるラーヴァナを信仰していました。彼らは組織の中でも特に過激派で異端であり、カニバリズムを特に重視していたようです」

 

「ガイアが人食いを重視するのは珍しい事ではないが……それだけじゃないか、その感じだと」

 

 少し強張った表情を浮かべ、こくりと頷いた由奈は俺に話を続ける

 奴らは天魔衆を名乗り、日本各地の秘境や仏教組織を乗っ取る形で潜伏。足がつきにくい裏の人間や自殺志願者等の陰のある人間を攫っては喰らい、子孫に関しても近親相姦を繰り返して出来の悪い子は家畜として育て上げた上に喰らうような悪鬼と言っても憚らないような連中だった

 

 その人食いが功を奏したのか、天魔衆は少数ながら強力な悪魔人間の集団として再び名を轟かせたらしい。しかし組織として知れ渡りすぎたのかヤタガラスとガイア組織に目を付けられて袋叩きに、由奈もヤタガラスの殲滅作戦に参加し、天魔衆は壊滅と相成った。

 

「だが、そうはならなかったんだな」

 

「模倣しているだけ、という可能性は捨てきれません」

 

 あの作戦で天魔衆を皆殺しにしたのは間違いないのですから、と言って由奈は押し黙る様に俯いた

 

 加えて人を喰らうという点、ラーヴァナを信仰している点、何より能力面で酷似する点が多い事から選ばれし天道界(デヴァローガ)との関連性も疑われたが天魔衆自体がこの世界発祥の組織であるというのは間違いないらしくこれらが同一の物であるという線は消え、あくまで酷似した別の存在として由奈は捉えているらしい

 

 俺も過去の世界で奴らと相対した事はなく、あったとしても新しき神話(テオゴニア)の手駒程度。関係がもしかしたらあるかもしれない程度の情報として頭に入れておく位が限界だった。

 

「にしても随分詳しいんだな、そいつらについて」

 

「……昔の話ですが私は彼らと関わった事がありましたからね、それだけと言えばそれだけです。それと、彼らの前では防具もあまり意味を成さないかもしれません。躱せればそれが一番ですが此方が渡した符やアイテムで防御面は対処を御願いします。調査に関してはまた明後日からになるのでその間に欲しい物があればまた言ってください」

 

「一つ質問がある。透明化を行うというのはこいつらなのか?」

 

「恐らく違うでしょうね。彼らが行えたならやってたでしょうし、ドロンパとは性質が異なるようでしたから……魔法による付与ではない可能性が高い。とはいえ情報がないのでそれも調査対象です。警戒はしておきましょう」

 

「了解した……しかし、明後日からか。こういうのは早い方が良いとは思うんだが」

 

「情報が錯綜していますからね。先程の写真が出る前までは超人失踪事件*8の一つにしかカウントされていませんでしたし、ミイラ取りがミイラになる可能性もある

 根本的にこの事件に割ける人員も少ないので、慎重にならざるを得ないんですよ

 フェイが先んじて動いているのも何かあった時の根回しと情報共有の為です、それも今日で終わって夕方頃には帰ってくるでしょう

 明日を開けているのは明日しか休める日がなかったからです」

 

 最近休めていなかったのは俺の強化を優先してくれていたという事でもある為か、罪悪感は結構ある。由奈とフェイ、どちらかが不在の時は必ず異界攻略かどこかのデビルバスターチームのヘルプに行っているようで巨大な悪魔が現れたとされるレルムの件によってそれは加速した

 

 異界探索のついでに契約悪魔のソウルリンクと信頼度上げを死んだ目で繰り返すフェイの姿は記憶に新しい。なんか新しい悪魔連れてたし

 

「専用のモニターやPS5も人数分買いましたし、今日と明日で何とか区切りの良い所まで進めたい所ですね。貴方の分も用意してありますよ」

 

「えっ、何するんだ」

 

「少々話題に乗り遅れた感じはありますが……ルビコンに行きます。チャンスは明日しかありません、この為に情報も自主的に遮断してきましたからね」

 

「るび……こん?待て、何のはな「やれば分かりますから」ちょっ、引っ張って行くな!わぁーっ!」

*1
デビサマ出典。魔性防具と呼ばれる防具相性を持つ。防御が高い

*2
デビサマ出典。凡そ全ての耐性を強化する。ガネーシャリングの耐性低下をこれで上書きしている

*3
デビサマ出典。ガネーシャが魔晶変化した腕防具であり、諸々他の耐性が落ちる代わりにこれ一つで破魔・呪殺・精神・魔力・神経・緊縛を反射する。

*4
ソルハカ出典。耐性付与はないが防御面優秀で、回避が特に高い。速+2の補正もある

*5
ロストキリギリス『人狩りと冥府の神』参照

*6
覚醒篇出典。魔界魔法の魔法石に相当する、MP消費・判定なしでマントラを使う事が出来る消費アイテム

*7
ペルソナ1出典。透明状態になる覚醒魔法

*8
本家様参照。デビルシフターや悪魔人間等を狙った誘拐或いは襲撃事件




・キャラ紹介
<天魔衆>
大体ガイア組織の皮を被った人食い集団。
元ネタは200Xに記載されていた真1時空における都庁のラーヴァナを信仰する集団だが、詳細が載っているサプリは例によって絶版で作者がお金使い過ぎた為に確認ができておらず、実質的に名前だけ同じのオリジナル設定の集団となっている。本家様におけるデヴァローガとの関係性は不明(本家様の設定見てから判断。現状は無関係予定)

<久遠 フェイ>
異界マラソンか救援に大体追われてる人。
双鬼冠やガネーシャリング等の魔晶変化は装備は悪魔にアイテム貢いで予備も含めて作っている。ルビコンではスタッガーを取るのが苦手なのか中量EN特化でやっている。何とか2周目までクリアした。

<久遠 由奈>
前回異界疾走してた人。天魔衆とは何かと因縁がある様子。
ブレオンで何とか頑張ろうと思ったが普通にきつかったので断念。避けながら接近する軽量機より当たる事前提の重量機使用からのOB急接近の方が戦いやすい事に気付いたのか、最終的に近接武器は1個だけで後は大体爆発武器で固める事になった。キックだけは上手い。ちなみに1周目ラスボスで詰まってる。

<久遠 エリヤ>
環境にビビりながら何とか学習を続けている人。
ゲーム初挑戦ながら持ち前の反射神経と天性のセンスでRTA並みの進行速度でゲームを進めている。使用機体は軽量機で滅茶苦茶避けるし、大体当ててくる。武器は実弾系でリニアかショットガン、肩はスタッガー用の武器を担いで現在3周目のラスボスまでクリアして、対戦に繰り出している。
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