真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
厚い層積雲を突き抜け、疎らな数々の雲が漂う太陽の元で戦いは始まっていた。
『吹き飛びなさい!』【ハイ・アクセラレート】*1【銃撃貫通】*2
弱体・強化解除から始まり、ばら撒かれる銃弾と光弾の嵐。
「散開!」
箒に跨るフェイが叫び、
『やりづらいわね。ちゃんと
「ぶっつけ本番って訳にはいかないからね。但し、こっちも練習不足だ」
頬に伝う汗が風に揺られ飛ばさながら、フェイは仲魔に指示を飛ばす。
高速飛行による散開からの再結集。弱体・強化から始まり、アイテムにてダメージを回復する。最後に二種の状態異常攻撃を行う物の前者は
「(何とか彼女の機動に喰いつけてはいる。戦闘の形は保てている)」
此処まで行きつくまでの攻防を振り返り、フェイは眼前の敵の対処をすべく思索する。
\カカカッ/
| 魔人 | サンダルフォン | Lv99 | 物理・銃撃反射。火炎・氷結・電撃 衝撃・破魔・呪殺・精神・魔力に非常に強い*14 |
アンナは極めて強固な戦闘機に近い。エデンの優れた技術力によって構成された純機械の身体に亜音速戦闘すら可能にする空戦用デモニカ、そしてそれらを極まったPKによる<サイコシールド>*15で支えている。
度重なる肉体改造によって得られた<感覚暴走>*16は
高速で空を飛び、防御も隙がなく強固で、火力も多彩で範囲を焼き払える。限りなく兵器の完成系に近い彼女に対抗する為にフェイ達もまた幾つかの対抗策を練ってきた。その一つがアンナのマシンであり、もう1つがフェイの飛行性能の向上に当たる。
| 神鳥の翼 | NINE出典(プラグインソフト) |
| スキルを『疾風(通常の2倍の速度で移動できる)』に変更する。ジャターユがドロップする |
フェイの箒による飛行術はダイテング相手であれば通用したが亜音速戦闘を熟す上に超音速にまで瞬間的に加速できる相手に対して到底その速度は及ばない。その速度を補強するべく妖鳥が落とす翼を加工した上で箒に編み込んで、それによって力の一部を封印する事と引き換えに速力を向上*22させていた。
\カカカッ/\カカカッ/\カカカッ/
| Lv83 | 女神 | ラクシュミ | 破魔反射・衝撃無効・バッドステータス無効*23 |
| Lv81 | 破壊神 | カルティケーヤ | 銃反射。物理・破魔無効。呪殺耐性*24 |
| Lv82 | 凶鳥 | フレスベルグ | 火炎無効。氷結吸収。破魔・呪殺・緊縛・一部の物理に強い。*25 |
| Lv81 | 邪龍 | セト | 銃・投具・氷結・電撃に強く、破魔・呪殺・精神・神経・魔力無効*26 |
その上で召喚している悪魔もその速度に追随できる悪魔に限定している。ラクシュミはセトの背の上に跨っているもののセトは<疾風>によって、カルティケーヤは元の速度と<スピードスター>*27によって、フレスベルグは元の速度と<虚空の眼界>*28による索敵機能を以て、この戦闘に介入する権利を得ている。
アンナとの戦闘においては飛行が出来てもその速度が足りていないのであれば足の遅い者から順に的のように撃ち貫かれるだけ。故に戦闘に介入できる悪魔そのものが限定されるが、その条件さえクリアしてしまえば手数を確保した上で散開して戦える。
此処までの高速飛行における戦闘はアンナにとっても早々経験があるものではない。飛行によって横ではなく上下という縦による機動が可能で、その機動も素早い。一部の例外を除き数m或いは数十mという間合いで行われる戦闘射程は数百mにまで引き延ばされて、だからこそお互いに攻撃が避け易く届かない事もしばしばあった。
「(ただ、このままやり合ったらジリ貧なのはこっちだ。せめて全体回復持ちもっといれば良かったんだけど)」
それでもそれらは飽く迄、高速飛行するアンナと戦えるようになっただけで純粋なまでに高められたスペックに押されているのが現状である。高速飛行による戦闘の恩恵やこの高度にまで行きつくまでの雲による視界不良によって致命は避けてはいるもののバフ・デバフをばら撒いた上でアンナにデカジャ・デクンダを強要しなければ火力を受け切る事は不可能に近い。
耐性がある全体属性魔法や銃弾という形であるが故に射程不足や回避の余地がある銃撃系ではまだマシだがメギドラオンを連打されれば仲魔は耐え切れないし、どういう訳か
試行回数を重ねれば其処から攻撃に転じる事も可能かもしれないがそれによる持久戦は明確にフェイ側が不利だ。現状回復はラクシュミの回復に依存しており、魔法に対する防御もまたラクシュミが行わなければならない。両者共に必要であるから必然的にフェイの
対してアンナ側はPKによるバリアとスキル込みの回避・機動力によってまともにダメージを受けておらず、前回の戦い*29の時のようなMAG不足による戦闘不能も期待は出来ない。彼女の内より満ち溢れるMAGは新たな人体改造によって施された物であり、継戦能力は大幅に上昇している。それは彼女の残り僅かな寿命すら削っているもののこの戦いに限って言えばそれは最早関係のない事だ。
これらの事によりフェイ側もアンナ側も行動は戦闘開始時よりあまり変わらず、アンナのHPを削るよりもフェイ側のMP・アイテムの消耗が激しい。視界を塞ぐ雲もこの空域にはあまり存在しない為に此処からは真っ向勝負を強いられ、場所を移そうとしても状況が何か変わる訳ではない。
ともすればこの空中戦に挑んだ事が間違いだったと現状は示しているかのように思えたがフェイ達が全員揃ったとしてもアンナとウリックの両方を同時に相手取るのはかなりリスキーだ。全員の総火力をぶつければ片方を落とせる可能性もあるが、同時に片方が防御に徹していればもう片方の攻勢によってPTが潰される可能性も高い。
互いの速度と状況、噛み合い方次第で一気に戦況が決まり兼ねない。瞬間的な出力はともかく純粋な総合力で言えばフェイ側はやはり不利で、その性質が故に他の仲魔と同時召喚が難しいテスカトリポカの存在もまたアンナとウリックを分断して戦う方針を後押ししている。
ウリック相手の地上戦はメタが出揃っている以上、既存のウリックなら撃破は現実的。対して此方は敵の土俵に乗っかかっている訳であるから劣勢なのは当然だった。だからこそアンナはウリックと共闘するよりもフェイとアンナを空で潰すのが確実と判断し、此処まで追撃を繰り返している。
「エリヤ」
「分かってる。もう少しで
この現状を打破できる切り札はやはり
\カカカッ/\カカカッ/
| Lv89 | ウィッチ(♂) | 久遠 フェイ | 全てに強く、破魔吸収。 技・火炎・氷結・呪殺反射。BS無効*30 |
| Lv85 | ガンスリンガー | 久遠 エリヤ | 全てに強く、火炎・氷結・破魔・呪殺 精神・神経・魔力・緊縛反射*31 |
箒に跨るウィッカの魔女と鋼鉄の翼を広げる機械天使が仲魔と共に肩を並べ、澄み渡る青空の下で敵を見据える。降り注ぐ太陽光により、その身を陽炎のように揺らしながら
先程同様の補助解除、其処から繋ぐように必中の祈りがアンナの身に刻まれる。その瞳がフェイ達を捉え、放たれたメギドラオンは拡散する光弾ではなく無数の自動追尾弾となってミサイルの如くその焔を以てダメージを与える。
「ついに使って来たね」
放たれた攻撃は1度のみだった為に仲魔も含めて健在。しかし、次弾以降眼力に行動を割く必要がなくなって必中のメギドラオンが放たれるのは明白だった。万能を防ぐ防具を着ているフェイとエリヤならばある程度問題ないが仲魔に関しては2発が死ぬかギリギリ生きるかで、3発受ければ確実に死ぬ。
エリヤと目配せしながらフェイは先程と同様に
『どれだけ強力でも魅了ならねぇ!』【神片結晶】*35【BOSS特性】*36
合算100%のスキルも魅了を防ぐ神の欠片によって防がれ、続け様に放たれたフレスベルグの<色即是空>は即座に離脱していくアンナに追いつけずに届いていない。
| フェイ陣営 | 魔攻・魔防2倍(3ターン持続) |
| アンナ陣営 | 全能力低下(物攻・魔攻のみ3段階低下)。DSJ仕様 |
そうしてまた打撃を与えられないままにアンナの手番がまた始まる。
『いい加減うんざりよ。これで削り取ってあげる!』
加速するアンナの動きに連動する様に
『これでぇ!』【デカジャ】【メギドラオン×3】【栄光の祈り】*38
<天上の舞>による魔防強化を取り払い、先程の追尾弾が続け様に三連射させる。青白く燃える自動追尾弾が三倍にまで膨れ上がりながら弾幕となってフェイ達に迫り、必中であるが故に射程の外に逃げる事も回避する事も出来ない。攻撃低下は適用されている為に2発までなら許容内だが3発受ければ仲魔は確実に壊滅する。リソースを切れば生存はできるもののそれも継続的には行えない。
加えてメギドラオンのダメージはアンナの得た新たな力によって確率で膨れ上がる。転生によって各種能力値が伸びている事でクリティカル率そのものも上昇し、其処に神欠結晶*39によるブーストが入ればそれなりの確率で致命は発生させられた。
何より少なくともアンナはこの行動を継続的に行える。それこそフェイ達の防御札が尽きるまで何度でも行える動作であり―――
だからこそ、それを防ぐ事が攻勢に至る第一歩に繋がる。青空が眩い死の光の一部がぶつかり合う事で相殺され、その結果として仲魔も含むフェイのPTは誰一人欠ける事なく生存できていた。
『メギドラオン!?……まさか、そのマシン』
原理としてはアンナの攻撃をエリヤが貫通相殺してその威力を減衰させたというだけであり、アンナと同存在に近づいてきているエリヤが速度面において相殺の条件を満たしている事はこの場の全員が理解している。アンナが驚愕しているのは其処ではなく、何故エリヤがメギドラオンを発動できたかという点であった。
「そうだよ、アンナ。
エリヤ自身が持つ能力はESPによる超感覚とそれに伴う幻視、ガンスリンガーとしての銃適性にエンジェルとしての悪魔の力の三種である。メギドラオンを覚えるピクシーは居るがエンジェルは当然存在しておらず、エリヤもまた本来であればメギドラオンを発動させる事などできない。
だがアンナが纏うマシンには悪魔としての力としてサンダルフォンが込められている。これを疑似的な魂と捉え、エリヤが持つエンジェルの力をサンダルフォンの力に上書きした。そんな強引な行いは本来行える筈もないがエリヤという存在自体がそもそもとしてアンナの代替品、詰まる所はサンダルフォンの器として適している。
其処にアンナとの戦闘によってサンダルフォンの力をリンクさせて、戦闘の中でその同調率は加速的に上昇。結果、今のエリヤはアンナと同様にサンダルフォンのスキルを一時的に使えるようになっていた。
『皮肉な話ね。兄さんの身体を利用する為に求めている私が、先に私の力を兄さんに利用されるなんて』
「それでもお前には及ばない……だが何処までも追い縋ってはみせるさ」
二機の
『……ッ』【SLEEP】
どれだけ通りづらくとも無効でさえなければ状態異常は回数を重ねれば通る。幾度となく放った状態異常がアンナの身に確かに睡眠の効果を与えて、その姿が落下していく。
『だけ、どぉ!』【ゴッドハンド】*41
手番が回り、奇跡的とも言えるタイミングで発動したのは状態異常解除のシステム効果。墜落するアンナの意識が戻り、その身が急上昇しながら即座に攻撃に移った。
『万能が防がれるなら邪魔な奴から順に片付けるだけよ!』
一度初見で防がれたのであればメギドラオンは互いに確実に相殺される。そして、解除系2つを除くもう1発のメギドラオンでは殺し切るのに与ダメに不足がある。ならばと一転して属性を変えての追尾弾とPKによる極大の火炎球による攻勢にアンナは踏み入った。
過去のフェイとウリックの戦闘記録によりフェイの仲魔のデータは割れている。その中でも警戒すべきラクシュミとセトは火炎耐性を保持していないが故に射出された二度の火炎はメギドラオンと同様に必ず当たり、ラクシュミを庇う形で自ら火炎球を受け切ったセトの肉体が燃え尽きて消えていく。
「此処で賭けにでるしかないね」
アンナの手番は終わり、被害は全体への火炎のダメージとセトの死亡。ラクシュミは飛行は無理でも浮遊してその場に留まっている。4体召喚から3体召喚へと移行した事でフェイの出力*44は戻っていた。
セトが倒れた以上、先程のような攻防は行えない。再度召喚しても先程の攻防が繰り返され、それも再召喚の手間を考えればワンテンポ遅れる形で其処からさらに不利になっていくだろう。それらを鑑みた上で最も火力が出るフェイの出力が戻った事は好機を意味しており、現状のダメージ状況やこれまでアイテムの消耗も踏まえれば攻めに乗じられるチャンスを逃す事は出来ない。故に消極的な対応より積極的な攻勢にフェイ達の行動は移り変わる。
『マタコレガ通レバ!』【色即是空】
『それしか能がないのはバレバレなのよ! 攻めに入ろうとしても切っ掛けは全部潰してやるわ!』【RESIST】
「なら幾らでも打ち込んでやるさ!」
最早何度放ったか分からない<色即是空>はアンナに注がれるもやはり弾かれる。先程のアンナの<ゴッドハンド>の発動と同じ位に状態異常が通る確率は低く、だからといってそれを諦めれば勝算は0になるだろう。状態異常は受けなかったもののフレスベルグのそれを抵抗する際の硬直の間にエリヤはアンナへと接近する。銃の射程よりも短いソレを確実に当てる為に
『な、に゛っ!?!?』【混乱状態】*46
レールガンに搭載されたもう1つの大型銃口より射出されたのはナイフのような形状をした巨大な弾丸だった。それはかつて裏社会の一部にて使われていた暗器であり、製造元も知れずに流出した数が少なすぎる事から時の流れと共にその存在すら忘れ去られてしまった物。
さながら漂流物のように残存したそれの効果はマインドへの特攻による混乱の付与であった。精神そのものを揺らすそれはあまりに高確率で覚醒者の心も揺らし、一時的に動きも儘ならなくさせる。クリスナイフの存在を知っていたフェイはそれを幾つか確保した上で今回の戦いの切り札として転用。文字通りの銀の弾丸のようにそれはアンナの脳を混乱させるに至った。
「通った! 後は頼む!」【隙ありⅡ】*47
「分かった」
此処までの攻防においての唯一の勝機。それを掴むべくエリヤはアンナに対する銃撃を続け、混乱している最中に穿たれた弾丸によってバリアや機械装甲は完全に無力化された。同時にカルティケーヤがラクシュミを回収しつつ<ランダマイザ>が入れ、ラクシュミの<天上の舞>によってフェイ達の魔攻が2倍にまで増大する。
『ぐ、ぎぃ……ッ!』【CRITICAL】【CRITICAL】
そして、バフによって膨れ上がったメギドラオンと同様の光の奔流が今度はアンナに襲い掛かった。サンダルフォンの力を同調させたエリヤとその力を後押しするカルティケーヤによって二度の<ワイルドハント>は確かに
『だけど、まだッ……!』
「いや、君はもう詰んだよ」
<BOSS特性>で生命力を増大させた身体はその二撃であっても終わらせられる物ではない。それでもそのダメージだけでアンナは終わりだとフェイは通告する。
『うる、さい……!』【マハザンダイン】*53【マハラギダイン】【メシアライザー】*54【デカジャ】
それを遮るようにアンナは動く。混乱状態の中で放たれた衝撃によって自傷して、続けて放たれた火炎の渦はフェイ達を捉えるも高められた魔防によって殺す事は出来ずに終わる。混乱の中でやっと自発的に回復を行うものの明らかに疲弊した彼女はそれ以上動く事も儘ならず
「そのダメージは君にはもう癒せない。何せ、君は死にかけて此処に居るんだから」
| サイコ・シールド | 誕生篇(PK) |
| 割込効果。物理・魔法両面で威力分、防御力を上昇させるバリアを創る。 有効時間は1ターンでターン終了時にMPを支払う。継続したい場合はMP4を払うだけで継続できる。威力はPK技能値を参照し、その出力は大幅に弱まっている。本来アンナが使えるPK。 |
| アクセラレート | SH2出典。行動回数を1回増やす。 出力の低下により<ハイ・アクセラレート>より効果がダウンしている |
アンナの身に起こっている異常はまず全体の出力の低下。PKによるバリアはその強度を格段に落とし、機動力もそれによる複数回行動も衰えている。その他戦闘能力も弱まり、アンナは格段に弱体化していた。
弱体化の原因は二度の大ダメージを装甲を貫通して受けてしまっているという事に起因している。かつてアンナが由奈の攻撃を耐え続けられたのは自前の鋼鉄の装甲の上に強固なバリアを張っていたからに他ならない。幾ら火力が高くとも防御がそれを相殺してしまえば大したダメージにはならない。逆を言えばその防御を無くしてしまえばアンナの身を守るものは何もなく、どうしようもない脆さが露呈する。
複数の素材が織り交ぜられた合金を、数多の人体改造によって高められた力を剥がしてしまえばアンナは機械に繋がれなければ生きていけない死に掛けの女に過ぎない。元より今回の戦いは彼女の死が近づいていた事によって起こった物であるし、エデンにも解決できないその事案はどれだけ補強しようとしても補強できない彼女のアキレス腱である。
機械によって構成されている為に再生が効きづらいという点もあって、ダメージを受けた事によって破壊された予備
様々な条件が重なった事で発生したアンナの弱体化によってセトを欠いている現状においてもフェイ達はアンナの攻撃に耐えて、そのまま反撃を繰り返す事が出来ていた。先程までと移り変わりのないバフ・デバフに回復、変わった点と言えば状態異常攻撃が万能による攻撃に変化している事だろう。エリヤによる補助がなくともダメージは通せている。
防御面においても必中であろうとも耐えていける事は先の攻防より証明済みで、セトが死んだ事によって失った一手よりアンナが減速して失った一手の方が影響が大きい。
全体を叩こうとすれば単純に火力が足りず、単体を倒したとしても直ぐに復帰される。アイテム・MP消費もフェイが攻撃に入った事によって激しくなるがアンナのHP消耗よりもそれは緩やかだ。
一手でもミスをすればまだ分からないがフェイや仲魔達の連携は乱れず、エリヤもまた駒の一つとして役割に準じている。自らと仲間達の手によって削られ、傷つくアンナを見てもエリヤはもう揺らぐことはない。
故に極めて優れた兵器であっても戦士でも英雄でもないアンナは可能性を見つけられずにこの攻防の果てに潰されていく。
『(終わり、これが終わり、ね)』
自らの死を以て完結する削り合いを繰り返しながら、アンナは走馬灯のようにかつての日々が頭をよぎった。
メシア教の下でエリヤとウリックと過ごした小さくて平和な日々と、今日に至るまでエデンに実験体として使われる地獄のような日々が交互に浮かび上がっては消えていく。
陽だまりにあった日常を懐旧しながら、地獄の様な実験に耐えてきた。大天使と成り果てた身体に数多の改造を施されて、脆弱な肉体は自然と強固な肉体へと置き換わる。白い肌は錆色の鋼鉄へ、物を考えるのが苦手だった頭には沢山の脳みそが埋め込まれて超高性能なコンピューターにも匹敵する程になった。手には銃を、背には翼とブースターを、眼鏡を掛けなければぼやけてしまう視界は改造を重ねる度に数千m先まで鮮明に見えるようになった。
強く、堅く、速く……異常なまでの力を抱えながらアンナの心は時間が流れる度に擦り減っていった。最早人間と呼称するのも烏滸がましい姿になってしまって、幸せであってほしかった男は自身を救う為に心体をすり潰しながら同じ末路を辿っていき、愛してくれた兄は自身と同様に肉体を弄られて凌辱されて行方も知れない。
そうして長い月日を掛けて兄を見つけるも自分の命の為に殺す選択を迫られた。必死に憎もうと、殺意を抱こうとしても結局中途半端で苦しみ喘いで、今ここでその全てが終わろうとしている。
兄に殺される、そんな末路を望んでいた訳ではないけれど自身がエデンの兵器として数多の世界を滅ぼしてきた罪に比べれば軽すぎる罰だ。だから、自然と心もそれを受け入れようとしている。
『(でも、貴方はまだ戦ってくれてるのよね)』
その中の唯一の気掛かりは兄であるエリヤでもない、この場に至るまでずっと傍で戦ってくれたウリックの事だった。地上において由奈と真澄を相手取る彼もまた自身と同様に窮地に陥っているとそうアンナの直感が告げている。
戦い倒れ、それでも自身と共に生きる為に無茶をし続ける。これまで辿ってきた人生と変わらずに彼は命を燃やしている。か細い魂の絆から、大地より天に羽ばたこうとする燃えるウリックを知覚した。
なら他ならぬ自分が諦めてはいけない。意味はないかもしれないがどれだけ苦しくても生きてきたのがアンナの人生だったから。
他者の世界を対価に自身の命を繋いでいくのは罪深い事かもしれない。大切に思っているウリックを一緒に居たいという私欲の為に終わりのない戦いに誘うのは間違っている事だろう。そもそもこんな戦いを始めるまでもなくウリックと共に安らかに二人で死ぬ事を選んでさえいればエリヤ達を巻き込む事すらなかった。
それでも過去は変えられない。動き出した時計の針は戻らないし、進み続けるとアンナとウリックは決めた。そしてどちらかが死ねばそれも破綻すると確信しているから迷いも惑いも意味はない。
一人で生き残るのではなく、二人で生き抜いていく為にアンナは覚悟と共に太陽を背に飛翔する。
『堕ち、ろぉオォおおおぉッ!』
己に降り掛かる1段階の
『ぁ、っ……ぐっぉ……!』
青空や太陽の光さえも遮り、空間全域を青白く染め上げながらアンナは今にも弾けて飛んでしまいそうな心を繋ぎ止める。無茶に無茶を重ねて発揮したその性能はアンナの残り少ない寿命をどうしようもなく消耗させていた。
冷却装置は完全に停止して身体の内側から炎が漏れ、全身が黒く焼け焦げている。何よりこの行動によって脳が焼き付いてしまっていた。生命維持装置に損傷がないからこそ束の間の命を繋げてはいるものの超能力はもう二度と発揮できない程に脳は壊れ、もう殆どの魔法は使えない。
本来の目的であるエリヤの肉体を用いた人体修復も恐らく間に合わないだろう。この手に踏み込んだ時点でアンナはもう終わっている。その様は炎に向かう蛾の如くであるが、結果としてフェイ達をこの刹那に打倒できる程に動けた筈だった。
『はっ、あれで生きてるか。しぶといったらありゃしないわ』
光が晴れた先、周囲にあった微かな雲も残らず消え去って日の光と空だけが存在するべきアンナの視界にはボロボロになりながらも飛び続ける二人の姿があった。
「そうか、そういう手段を取っちゃったか。エリヤ、マシンの調子は?」
「1分は保たせてみせるさ……だがもうアンナは」
「最後まで向き合おう。彼女はまだ終わり切っていない」
纏うマシンより火花が散りながらも銃を向けるエリヤ、箒が折れかけて血塗れのフェイ。二人は6発の<メギドラオン>を凌ぎ切る為に多くのリソースを費やしながらも生存に成功していた。
万能に対する軽減*59によって2発を受け切り、1発はエリヤによる相殺。二度ダメージが
耐久リソースはまだ残っているものの召喚していた仲魔は全滅。蘇生と召喚による立て直しの間に何処までアンナに対応できるか、勝敗は其処に掛かっている。
「ケリをつけよう、アンナ。どちらかが堕ちるまで」【宝玉輪】【悪魔召喚】*62
『ええ、でも先に堕ちるのはあんた達だから!』
フェイにより回復と事前に蘇生していたセトの再召喚を挟み、アンナは動き出す。
オーバーヒートによって身体は融解しかけているもののシステムは落ち切っていない。その翼を後押しするようにシステムによる補助が入り、さらに其処に最高倍率の
「カバーに入る!」【カバー(手番放棄)】【幸運Ⅲ】
『なら孤立した方を狙う!』【ヘヴィソニックトリガー】*64
回避不可の銃弾の嵐はミサイルのような挙動でフェイ達に襲い掛かり、その機動を物ともせずに肉体を撃ち抜く。防御無視と
被害を最小限にする為にセトと機動を被せたエリヤが超感覚を用いての瞬間的な銃撃相殺で攻撃を防ぎ、フェイはもろに喰らうも生存。その中で単独で飛ぶフェイを落とすべく、アンナはレールガンの集中射撃を用いて落としにいった。
「援護射撃だけじゃ追いつかないか!」【煌天の幻視】*66
『まだまだ本調子で羨ましいわねぇ!』【レールガン】
「馬鹿いうなよ、必死も必死に決まってるだろ」【援護射撃Ⅲ】*67
フェイに襲い掛かろうとする弾幕はエリヤの幻視による妨害射撃によって始まりを抑えられて、続く全体銃撃はダメージを与えた物のフェイはエリヤの<援護射撃>によって生き延びる。
「セト、デカジャの石で解除を」【宝玉輪】
「俺の超感覚もほぼ限界だ。次は凌げないだろう。どうする?」
「神にでも祈っておくかな。僕達は打てる手をうつしかない。何もかもを対処は出来ない」
カバーをした以上はエリヤは動けず、セトは<デカジャの石>でアンナの強化を解除して<宝玉輪>による回復が入る。再び
『この世界にアクマじゃない神様なんて居ないでしょうに!』
「祈れないならならやれるだけ自力で何とかしてみせるよ」
攻撃強化、銃撃、続いて銃撃、また銃撃。眼力を利用した必中メギドラオンは封じられた物の強化や防御無視の性質を含めれば一発の火力はやや此方に分がある。上振れが1回でも発生さえしてしまえば全員仕留めきれる範疇であり、運任せだが確実性も高かった。
「気合いで耐えるか避けて!」【運特化】*68
『ウォーッ!』【龍の反応】*71
しかし、その運任せこそフェイの本領に他ならない。機動を見切られて三度攻撃が当たってもクリティカルはなく、フェイは幾度も銃弾を浴びながらも生存。エリヤは優れた回避運動によって1撃は何とか振り切って、セトはエリヤの最後の<援護射撃>によって2撃を回避しながら攻撃を凌ぎ切れた。
「来い!」【高速詠唱】【サバトマ】【サバトマ】
\カカカッ/
| Lv80 | 天使 | ケルプ | 魔法に特に強い。物理無効・銃撃耐性*72 |
\カカカッ/
| Lv75 | 鬼女 | ランダ | 物理・銃・火炎反射。地変・電撃・即死無効。バットステータスに強い*73 |
セトの弱体によりアンナの攻撃強化が打ち消された上にさらに1段階下がり、すかさずエリヤの全体回復が入る。アンナによって引っ繰り返された盤面は再びフラットに、そしてフェイ達の優勢へと傾き始めていた。
「……アンナ」
『もう少しよ、兄さん。それで、終わるから』
その中でエリヤはアンナを見て、か細く喉を震わせた。エリヤ自身が壊して、さらにアンナが自壊させていく無惨な黒い翼に彼女の死が目の前に迫ってきている事を痛感したから。
「最後まで付き合うよ。あんまりわがまま聞けなかったもんな」
『ありがとう』
積み重なる攻撃強化、次に放たれるレールガンは1撃だけで回避の是非に関わらず全員が生存する。そして次の行動を指し示すように必中の祈りをアンナは紡いだ。
「最後は、俺が行く」【メシアライザー】
「うん」【招来石】*74
| フェイ陣営 | 攻撃強化+1。真3仕様 |
| アンナ陣営 | 全能力低下+1。攻撃低下+3 |
そして、長く続いた戦いを終わらせる
言葉もなく、互いが補助だけを積み上げていく。勝敗で言うのであれば過剰暴走によるメギドラオン連打とその立ち上がりを防げずにアンナが疲弊してしまった時点でついている。後はどう終わらせるか、決着をつけるか。此処まで続いた因縁を昇華させる為の一撃が求められた。
| 至高の魔弾 | 真VV出典。敵単体に力依存の万能属性の特大ダメージを与える。 クリティカル率が高い。サンダルフォンが覚える |
太陽の日を浴びながら二体の
拮抗はしない。覚悟や躊躇、思いを無視して積み上げた力の差だけで決着はついた。撃ち勝ったエリヤの弾丸がアンナの翼を貫いて、その身体の大部分が同時に崩壊していく。
「ア、ンナ……」
それと同時にエリヤを纏うマシンもまた最後の力を使い果たして、ボロボロに崩れていく。その身体をフェイが抱き留め、残った身体の殆どが焼け焦げたアンナをセトとランダが回収する。
「お疲れ様、エリヤ」
極度の疲労によって目を覚まさないエリヤをそのままにフェイは労りの言葉を告げて、アンナを見る。
生命維持装置が奇跡的に機能している事と戦闘が終わった事で脳への負担が和らいだ事、身体の大部分を失った事で逆にエネルギーを生命維持のみに回せている事。様々な幸運によってアンナは生きてはいるもののアイテムや魔法による回復をし続けなければ数分で命は尽きてしまう。
「由奈からも連絡はあったし、地上に帰ろう。皆は周囲警戒と回復を引き続き御願い」
仲魔の召喚&送還を繰り返して態勢を整えながらフェイは一刻も早く合流する為に迅速に地上へと降りていく。悔いのない終わり、なんてものは最早望めないが目的があるから戦って一方を殺して決着なんてのは嫌だったから。
死んでしまえば生者には死んだ人の分だけ心に空白が生まれてしまう。その穴は容易に埋められるものじゃないし、生涯残り続ける事だって多いだろう。
だから、死んでしまう人にも生きる人にもちゃんと思いを伝えあってほしいとフェイは思っている。
「じゃないと家族の死に別れなんて残酷すぎるでしょ。だから、頼むよ……」
そうは思うもののアンナの命は回復をし続けてもか細くなっていく。超能力が完全に死んだことで五感すら消失して、その瞳に光は宿っておらず言葉を発する様子も見られなかった。
自分の手ではどうにもならない無情な現実は戦いの様に覆せない。だから、せめてしっかりとしたお別れが言えるように居るのかも分からない本当の神にフェイはただ祈った。
・リザルト
久遠 フェイ:Lv89→食いしばりで諸々レベルダウン→Lv91
久遠 エリヤ:Lv85→Lv90
セト:Lv81→Lv86
フレスベルグ:Lv82→Lv86
ラクシュミ:Lv83→Lv87
<久遠 フェイ>
ヒィヒィ言いながら今回の戦いのセッティングをしてた人。
アンナ&ウリックの勝率安定しないし、勝てないだろうなと思い至ったので分断して戦う方針でテスカトリポカやら悪魔の素材使って高速化させた箒やらエリヤのスキルやマシンやら只管メタを用意して戦いに臨んだ。結果として出費がとんでもない事になって泡を吹いている(この後に第三次セプテンの事を聞いてさらに泡を吹く)
<久遠 エリヤ>
肉体をパクられる前に能力を先にパクった人。
色々こじつけや見立て込みでサンダルフォンが混ぜられたマシンでアンナの攻撃に対処していた。その結果、普段以上にパーミッションの鬼のような挙動となっている。
<アンナ>
戦闘機みたいな挙動してるが実際は高速飛行する爆撃機な人。残された想い人を思って覚醒して燃えたりするのでウリックとは似た物同士。強いし硬いし速いのでフェイやエリヤの手札だと打点があんまり与えられず、その結果としてエリヤの新スキルを用いる方針で状態異常を小Pみたいにかましながら只管守る戦い方になった。それも打点としては2、3割行けばいい方であり、弱体化しなかったら負けてたので死にかけでようやく勝てた相手とも言える。純粋な火力でバリアの上からダメージ通せる由奈や防御点無視でダメージ通せる真澄は火力面では相性良い物のそれだと近接無視して容赦なく引き撃ちされるので普通に相性が悪い。
・1回の手番で2アクションの行動が可能に
・最大HP5倍・最大MP2倍
・即死・石化・麻痺・毒・魔封(封技)無効
・HPを直接減少させる効果を無効化。
・BSを受ける確率半減
・バグ利用効果
この状態で魔法を使用すると必中となる(表記なし)。
さらに会心の効果が1度で消えずに継続する
本来のアンナならそもそも使用する事も、ハイ・アクセラレートとの併用も行えない。
その為、アンナは命を削りながらもこれを1シナリオ1回までしか使用できない