真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
マインド。それは
かつての世界で巻き起こった終末戦争により人々の身体も心も荒んで、結果として新たに生まれてくる子供達に心が生じないという異常が発生していた
心は人が人である証明であり、心を持たない彼らは獣か或いは人形に過ぎない。だからこそ研究者達はその代替を探し、マインドが生まれた
曰く、生命の治療。子供に埋め込まれたマインドは子供達の記憶を喰らい、吐き出す形で心を生じさせた。一先ずの成功を収めたマインド治療は以後も続けられるものの、研究者の一人がマインド技術を持ち出す形で離反。他組織にマインド技術が流出しながら、救世主とも謳われた研究者達は各々の道に進む事となる
一人は異端と言われようと、罪悪を抱えながら子供達のマインド医療を続けた
一人はマインド技術を用いて自らの権威を高めながら、偽りの救世主として君臨した
一人は真の意味での人類救済を目指し、自らの娘すら用いながら凄惨な実験を始めた
一人は自身の娘すら利用する所業に憤り、それを食い止められる者を探した
かくして、かつての世界は救われぬまま
そのように発展したマインドやこれの使い手は幾つかの分類に分けられる
ESP等の超能力の発露として自然にマインドに目覚めた者や人体実験の結果としてマインド適性を得て、注入された者。元よりマインド適性があって、ブレイン・フラッシャー*1によってマインドを自らに宿している者や精神状態が通常のそれとあまりにかけ離れた結果としてマインドを自ら産み出してしまった者
他にも種類はあるもののフェイは二番目と四番目の複合型。記憶溶剤であるスピリアを幾度となく自らに注がれて、注がれた思念がマインドと化した後天的・偶発的なマインド使いだ
正式なマインド使いとは言えず、マインドダイブ*2は行えない。撃針*3や人工線虫*4といった装備品も所持していない丸腰の状態。其方は自前のステータスで補る部分ではあるものの一番の問題は未知の領域での戦いにおける知識・慣れの不足であった
| デスピリア出典 |
| SPD(速)を基準にそれぞれの行動順を決定。行動が回ってきた際に手番の行動選択を行う |
| SHIELD | デスピリア出典 |
| マインド使いは召喚しているマインドの数に応じて自身の受けるダメージを軽減させる |
「(保持するマインドの性能は分かる。マインドの数と比例して防壁が展開される事や戦い方も大まかに……だけど通常の悪魔戦闘とあまりに異なるし、アイテムに制限もあるか)」
マインドを通じてスキルやそれがどのような効果を持つか、思念戦闘というのが一体どういった物なのかは辛うじて理解できる。だがそれは穴だらけの知識で、不足している部分が多すぎる。なにせ思念の放出の仕方もよく分からない程だ
一方、アルヴはマインドダイブを能動的に行った事からもフェイより数段上のマインド使いであるのは疑いようもない。戦い方もより洗練されているだろうし、マインドも強力な物が多いだろう
さらにこの心の奥底においては悪魔戦闘でも使える様なアイテムにも制限*5が掛かっている。思念戦闘において使えるアイテムもフェイは持っているには持っているが確保している数に限りはある
「(<クリスナイフ>*6は持っていないが、有用なアイテムは幾つかある。アルヴは此方の身体に入り込む時にほぼ思念体の状態で来た。アイテムは使えない筈と考えて良いと思うけど……希望的観測だろうか)」
啖呵を切ってからのごく僅かな思考で自身の状態から最低限の闘法は理解した。後は戦いながら判断していくしかない。昔の自分なら臆して混乱しただろうが、今は相応に死線は超えてきた
負ければ、今は生き永らえても最終的にオベロンの妖精郷にて眠る様に死ぬ事になるだろう。運命に囚われたまま、また何処にも辿り着けない袋小路へと至る
「嫌だな。それは」
何で嫌なのか。それはまだ言語化できない。アルヴが言ったようにフェイは不確かな何かに縋っている。光を探し、飛ぶ蛾のように願望と諦観の中で揺れている。だが諦めたくないのは紛れもない真実だ
戦って、戦って、いずれ答えを見つける。だから確かな意志を以て生きなければならない。自分を信じて、着いてきてくれる愛する人達の為にも
『諦めれば、楽なのに』
「言ったでしょ。嫌だってさぁ!」
| フェイ:マインド | ダムドスフィア・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | アルマド・シュトロモニク |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→シュトロモニク→ナイトブレイダ→ダムドスフィア→アルマド |
初手でフェイとアルヴの剥き出しの思念がぶつかり合う。一種の同族嫌悪にも近く、同時に互いの違いを拒否しながら戦いの火蓋は切って落とされた
| フェイ陣営 | なし |
| アルヴ陣営 | 攻-1(アルヴ、攻+1・防+2・速+2) |
その後に飛び交うのはマインド達の度重なる補助。悪魔戦闘と同様に思念戦闘においても補助は重要視される。強化と妨害が打ち消し合い、出力の差としてアルヴ側がやや優勢を得ながら
| フェイ陣営 | なし |
| アルヴ陣営 | 攻-2・防+1(アルヴ、攻+2・防+5・速+4) |
『……流石に戦い慣れてるね』
「勝手も少し分かって来たよ」
テンポは変わらず互いに補助と攻撃を飛ばしながらフェイは攻防の中で戦い方を理解していく。感覚としては中レベル帯の悪魔戦闘に近く、派手さはない。補助を積み、ダメージを重ねて、一撃で全てを変え得る手は少ない。だが、悪魔戦闘との違いは明確に示されていた
| マインド属性 | デスピリア出典 |
| マインドに耐性は存在しない。代わりにそれぞれ愛・怨・死・絶という属性が設定されている。愛>死>怨>愛(絶は中立)といった形で攻撃属性毎に特攻が入る |
| 強化・弱体仕様 | デスピリア出典 |
| デスピリアの強化・弱体はステータスそのものに干渉し、攻撃力(POW)・防御力(DEF)・速度(SPD)を数値で減少させる。この数値は固定値ではなく、対象の元のステータス・付与効果等によって上下する。また単体効果は全体効果より数値が大きい傾向にある(単体を+-2、全体を+-1というように裁定)(強化・弱体の限界はステータスの個人差により変動するものの今回の戦い限定でどちらも8段階として裁定) |
「(強化・弱体の上昇量は加算式*14。解除方法が此方にはない、相手は不明。ダメージ量も悪魔戦闘に比べると低い*15がマインドの属性次第で特攻がある。少しだけ分かって来たな)」
ナイトブレイダの業火もダメージ量としては三桁届くか届かないかだが、特攻が入る
「(思考を読む暇はもうないだろうから行動が読まれる事はもうないだろうけど、このままだと思念強化で普通に押し切られる。アルヴにダメージが入らない以上はマインドから切り崩していくしかないか)」
『絶属性はこれだから、嫌なんだよ……!』
「そういうのもある訳ね」
思念を放たれ続け擦り減った自らとマインドの
| フェイ陣営 | なし |
| アルヴ陣営 | 攻-3・防+2(アルヴ、攻+1・防+6・速+4) |
アルヴ側の行動が変わる。ナイトブレイダの火力を抑制する様に石化*22を施し、フェイに対処を強制。シュトロモニクはダムドスフィアに根源たる怨念の力を放ち、半身を吹き飛ばした
「(デバフを積んでいて一撃でダムドスフィアが残り半分。でもってナイトブレイダの火力でアルマドが落とせないという事はやっぱり能力値そのものに差があるか)」
二人のマインドは格においてはほぼ同格である。だが、ステータスそのものにはかなりの差があった。それはアルヴがどれだけの記憶を喰らい、その力をマインドに変換してきたかに由来している
| 記憶素子 | デスピリア出典 |
| ボスやイベントエネミー、一部の敵を倒した時にドロップするアイテム。また、マインドを分解した際にも発生する。これを用いてマインドの作成やステータスを強化及びレベルチェンジによる成長を行う事が出来る |
マインドを形成しているのは人の記憶そのものであり、マインドの強さは注がれた記憶に比例する。故にマインド使いの強さとはどれだけの心を喰らって記憶を奪ってきたかとなり、その点においてフェイはアルヴに及ぶ事はない
『差は理解した? 今なら痛くしなくてすむよ』
「現実を理解しただけさ。後は其処を踏まえてお前に勝てばいい」
『物分かりが悪いんだね』
「君の言う物分かりは只の諦めだ。僕はそうじゃない」
| フェイ陣営 | なし |
| アルヴ陣営 | 攻-4・防+3(アルヴ、攻±0・防+7・速+4) |
特攻を発揮しないまま叩き付けられた呪詛は核を砕き、断末魔のような音を響かせながらダムドスフィアを破壊*24させ、消失させていく
『まずは一体』
「いや」
「こっちは二体連れていく。焼き払え、ナイトブレイダ」
ダムドスフィアが砕かれ、怨念を高めながらナイトブレイダは呪火を放つ。特攻を持つアルマドを破壊しながら、フェイがダメージを重ね続けたシュトロモニクも砕け散る
『あはは、やるぅ』
「(このままとはいかないだろうな)」
| フェイ陣営 | ナイトブレイダ、攻+2 |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
『じゃあ第二ラウンドね』【入れ替え:フグラオン】*26
「来て、リングリンガ!」【入れ替え:リングリンガ】
\カカカッ/
| 死属性 | フグラオン | Lv13 |
\カカカッ/
| 愛属性 | リングリンガ | Lv11 |
アルヴもフェイも新たなマインドを召喚。ナイトブレイダは紅蓮を放つ
| フェイ:マインド | リングリンガ・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | フグラオン |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→フグラオン→ナイトブレイダ→リングリンガ |
\カカカッ/
| 怨属性 | ハーケナイ | Lv13 |
『分からせてあげな、フグラオン』
「この状態異常は……ッ!」
『誤射っちゃったねぇ』
フグラオンより放たれた
リングリンガが全体回復を施し、また
| フェイ:マインド | リングリンガ・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | フグラオン・ハーケナイ |
| フェイ陣営 | ナイトブレイダ、攻+2(混乱) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→フグラオン→ハーケナイ→ナイトブレイダ→リングリンガ |
『厄介なものを!』
「生憎こっちしか用意がなくてね」
放置すれば敗北に繋がるであろうフグラオンを
| フェイ陣営 | ナイトブレイダ、攻+2(混乱) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4。フグラオン(石化) |
『ならこっちも止めれば良いだけ事!』
依然としてナイトブレイダは混乱し、リングリンガもまた石化にて行動不能へと移行。幾らフグラオンを止めていようとフェイ達も止まっていれば関係はない。効果は永続ではないし、猶予があるこのターンに対処しなければ混乱はまたばら撒かれる。
「(幸運にも持ってた<暁星の小太刀>はもうない。後は回復アイテムだけで、それだけじゃジリ貧だ)」
フェイのワイルドハントは封じられている。単独で用いられる攻撃は通常攻撃の他にない
「だけど此処に居るのは僕だけじゃない!」
だからこそ、悪魔ではないナカマにフェイは頼る。自らの心に眠る記憶を握り締め、思うがままに思念を解き放った
| 開放 | デスピリア出典 |
| メモリ(ストック)にあるマインドを1体破壊(死亡)させる事で発動できる効果。マインド毎に固有の効果を持つ。ダメージ及び効果は必中。この効果で与えるダメージはマインド使いのレベルを参照し、フェイの場合は高いレベルにより大ダメージ規模と裁定。マインド使いにとっての必殺技であり、諸刃の剣 |
自らの破壊と引き換えに開放されたロリンガの思念の渦は敵全体、特にフグラオンに多大なダメージ*34を与える
『そんな、足掻かないで、さぁ!』
「やっと不愉快な薄ら笑いが消えてきた」
続け様に叩き付けられた怨念の渦はどちらも焼きながら、致命傷を受けたフグラオンが叫びを上げて破壊されていく。実に3体目のマインドの破壊にアルヴもまた焦りを見せるも、フェイも一瞬でも気を抜いたら持っていかれる状況に違いはない
| フェイ:マインド | リングリンガ・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | フグラオン・ハーケナイ |
| フェイ陣営 | ナイトブレイダ、攻+4・防+2・速+2 |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→ナイトブレイダ*36→ハーケナイ→リングリンガ |
『これまで出さないといけないなんてね』【入れ替え:フィロトーマ】
\カカカッ/
| 絶属性 | フィロトーマ | Lv13 |
「(こいつだけまるで圧が違う。最上位の悪魔と相対しているような感覚。これが奴の切り札なのか)」
新たに展開されたマインド、フィロトーマ。かつての世界における究極のマインドであり、力もそれ相応に莫大*37である。此処に
故にフェイは次の衝突に備える為に盤面整理を優先した。アイテムによる全体回復にナイトブレイダで敵全体を焼きながらハーケナイを破壊。リングリンガの思念強化で強化を重ねながら淡々と
| フェイ:マインド | リングリンガ・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | フィロトーマ |
| フェイ陣営 | マインド2体、攻+2・防+2・速+2(ナイトブレイダは攻+4) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
| 行動順 | アルヴ→フィロトーマ→フェイ→ナイトブレイダ→リングリンガ |
『来て、終わらせよう』【入れ替え:ネクロマティク】
\カカカッ/
| 死属性 | ネクロマティク | Lv13 |
アルヴが繰り出す6体目のマインド。死を表わす属性を体現するような
アルヴもまた笑みを浮かべながら、先程のようなおちょくる様な態度は見られない。故に此処からが真の正念場。フェイにとっての死線である
その間にも戦いは続く。フィロトーマのプレッシャーでナイトブレイダが停止しながら、凍てつく氷が吹き荒れた。リソース確保と強化を挟みながら、
| フェイ:マインド | リングリンガ・ナイトブレイダ |
| アルヴ:マインド | フィロトーマ・ネクロマティック |
| フェイ陣営 | 攻+2・防+2・速+2(ナイトブレイダは攻+4) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→ネクロマティック→フィロトーマ→ナイトブレイダ→リングリンガ |
幾度も放たれた思念がフェイ達を削り、数少ないアイテムでの全体回復が施される
『運ゲーの時間だよ?』
『あはっ!』
「嫌な予感はしてたけど、きっついなぁ!」
ネクロマティックより繰り出されたのは確率こそ低いものの、当たれば
「(本当にジリ貧だ。プレッシャーから鑑みて、あの髑髏も相当に
アルヴのマインドは既に6体目。これ以上のマインドは恐らく出せないが盤面は強固。対してフェイは3体のマインドを消耗した上で盤面に1体、
まだアイテムも幾つかある事からリソースの面では此方が上回っているものの正面からまともにやるのであれば勝機はないだろう
アルヴは思念集合体としての耐久力と補助による防御で崩せず、フィロトーマは全てが高水準で属性も思うがままである故に付け入る隙は皆無で、ネクロマティックは嵌れば即死級の技を持ちながら他にも手札を持っている
フェイが新たなマインドを繰り出したとして一蹴されるだけの戦力差はある。思念戦闘にも使えるアイテムもかなり減った。しかし、それでも勝機はある
「(検証は行えていない。だけど理論上は出来る可能性はある。だが不確定要素が多いのも事実で、むずがゆい。久し振りだな。一つ動くのに此処まで考えたのは)」
初めての戦闘方式、仕様、仲魔、敵。悪魔戦闘に幾ら慣れていようと、根本からして違う戦いにフェイはついていくのにやっとだった。一つ一つを使って確かめて考えて、手探りで攻略を目指している
敵が何を繰り出してくるか分からないから生存補助から優先し、生かしておけば敗北に繋がる敵を優先的に排除する。それまでに消費したリソース、これから消費していくリソースを踏まえて適切なアイテムを使う事。味方を維持して、敵を崩すという事
そうして思い返して幾つもの仕様・効果は違っても、根本は悪魔戦闘と何も変わらないという事も理解した。故にこれからもアドバンテージを確保し続ける。主導権は必ず奪い返す
| フェイ:マインド | リングリンガ |
| アルヴ:マインド | フィロトーマ・ネクロマティック |
| フェイ陣営 | フェイ、全+2・リングリンガ、全+4 |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→ネクロマティック→フィロトーマ→リングリンガ |
『何か狙ってるのは分かってるよ。絶対に潰すけどね』
フェイが攻勢に転じようとするのを妨害する様にアルヴは石縛を放つ。リングリンガには通らず失敗したものの、二体の最強マインドがアルヴの傍には控えている。この二体が好きに動ける限り、優位が覆る事はない
「まずは押し返す!」
故に狙ったのはまずマインド二体の無力化。控えのマインドをまた犠牲にしつつ動かれる前に思念を石と化した
リングリンガは補助を積み、これ以降の行動を安定させながらまた
| フェイ陣営 | フェイ、全+2。リングリンガ、全+6 |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4(マインド2体、石化) |
\カカカッ/
| 愛属性 | メリス | Lv12 |
『一回止めたとして、後が続かないなら意味がないよねぇ!』
「わかってるさ」
盤面のマインドは石となって固着し、フェイは新たなマインドを繰り出す。正真正銘の最後のマインドであり、フェイにとっての切り札。多くの思念を喰らい、幾つもの怨念、死と絶望を味わいながらフェイが根本は愛だった。それを示すように
| フェイ:マインド | リングリンガ・メリス |
| アルヴ:マインド | フィロトーマ・ネクロマティック |
| フェイ陣営 | フェイ、全+2。リングリンガ、全+6(石化) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4。マインド2体(石化。このターンで解除) |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→ネクロマティック→フィロトーマ→リングリンガ→メリス |
『石化はもう終わる。君の命運も其処までだ』
「……」
アルヴの二体のマインドは今も固着しながら、しかし揺れ動いている。石化による束縛は長くは続かず、この
フェイの開放も死属性故に
二体が行ったのは順当なまでの全体ダメージ連打。ネクロマティックの手札には<石化冥滅>*46があるもののリングリンガは既に石化で効果は薄く、<深淵の墓標>は確率そのものが高くない
そもそもの話としてリングリンガにはかなりの打撃が与えられている。ネクロマティックの氷舞で削り、愛属性に特攻を持つフィロトーマの業火にて焼き尽くすのがフェイの盤面に最もダメージを与え得る最適解
「良かった。不安定な即死じゃなくて、確実なダメージを優先してくれて」
そして、そんな思考を見透かしたようにフェイは業火よりリングリンガをカバーした。氷舞は防げないもののリングリンガに
『なんでダークエッグを……まさか!?』
「気付くのが遅かったね。通るかひやひやしたけど」
回復、次いでマインドの再生。フェイがそうした行動の理由をアルヴは悟りながら
『ぅっ……!』
「まだまだ、付き合ってもらうよ」
フェイが狙っていたのはメリスの蘇生によってダークエッグの開放を継続発動させる事。確定での石化は限度があるものの連発できれば話は別。効果の切れ目に開放を続けられればダメージとマインドの行動停止を両方行える
勿論、MPという制限がある以上は無限に行える事ではない。だが回復手段を持たないアルヴが耐え切れるのにも限度はある
そうして
| フェイ陣営 | フェイ、全+2。リングリンガ、全+6(石化。このターンで解除) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4。マインド2体(石化) |
| 行動順 | アルヴ→フェイ→ネクロマティック→フィロトーマ→メリス→リングリンガ |
再生を利用した開放のループには他にも穴はある。一つは石縛による行動妨害。確率ではあるもののこれによってメリスの動きを止められた場合、ループは途切れる。フェイが状態異常回復アイテムも左程持っていない以上、アルヴが取れる最も効果的な手がそれにあたる
| フェイ陣営 | リングリンガ、全+6。それ以外、全+2。メリス(石化) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4。マインド2体(石化。このターンで解除) |
二つ目が絶属性フィロトーマの特性による行動停止。此方も不確定ではあるもののフェイ達の動きは間違いなく失速する
「(不確定だけど妨害は多い。加えてMPにもアイテムにも限度はある。リソースが枯渇すれば、負ける。最後の最後で運頼みとはね)」
くるくるくる。何度も同じように手番が回る。蘇生と開放を繰り返し、リングリンガは防御しながら強化と回復を積み重ねる。アルヴ側は石縛とフィロトーマによって何度もフェイ達を停止させてはいるがループの完全停止には至っていない
『止めきれない……!』
「運頼みでも差があるって事さ」
アルヴは不確実にフェイ達の行動を妨害する。しかし、フェイは確実な行動停止を構える事が出来る。その差は大きく、このループ状況においてはダメージレースは圧倒的にフェイが有利だ。これを覆すには開放しようとするフェイ本人を食い止める他なく
幾度となく回る戦いの時の中で唐突にそれは現れた
ネクロマティックの息吹がフェイのマインド2体の動きを留めさせ、フィロトーマの怨たる業火が愛を象徴とするマインド達を燃やす
『ふ、ふっ……幸運なのは私の方だったみたい!』
「土壇場でこうなっちゃうか」
| フェイ陣営 | フェイ、全+2。メリス、リングリンガ:全+6(石化) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4 |
「(ネクロマティックを送還させた。あれが死属性で石化も用いるとなると……開放狙いで確定石化か混乱狙いか。別の何かだったとしても盤面を覆せる手だろうな)」
アルヴは手負いとなったネクロマティックを送還させた。狙いはアルヴにしか分からないもののある程度の予測を立てながら、他に選択肢のないフェイは開放してマインド2体を拘束する。また
| フェイ陣営 | フェイ、全+2。メリス、リングリンガ:全+6(石化。このターンで解除) |
| アルヴ陣営 | アルヴ、攻±0・防+7・速+4。マインド2体(石化) |
砕け散るネクロマティックの思念。放たれたそれはダークエッグと同様にフェイ達にダメージを与えながらマインドの動きを止める。蘇生がない故にネクロマティックは戻らない一度限りの切り札であるものの、アルヴにはまだフィロトーマが居る
開放とフィロトーマの攻撃が加わればマインド2体は排除できる。ループさえなくなれば状況は打開可能。そう信じながらアルヴは声も出さないまま必死にフィロトーマに命令を下す
最早言葉に出すのも陳腐になる程に放たれた炎は確かにフェイ達を捉えた。フェイが受けてきた愛を否定する様にアルヴの怨念が呪詛と共にその身を朽ち果てさせる
『どうして、どうして? なんで、まだ立ってるの? これだけ痛めつけたのに、なんで?』
されども、フェイ達は全員健在。確かなダメージは喰らっている。だが命にまでは届かない。あまりに不可解な現状にアルヴは狂ったように叫ぶ
「最悪こうなる予測はしてた。だから補助と回復優先で、攻撃は最低限の開放だけに留めた。どれだけ状況が良くてもループが頓挫したらどうなるか分からなかったからね」
淡々と手番を回しながらアルヴの叫びをフェイは受け流す
重視したのはマインド2体の生存とMP管理。どちらもループを継続していくのに必須で不可欠。それ以外の物を切り捨てる様にダメージはダークエッグの開放だけに留めた
死なない様に只管リングリンガが<思念強化>を積んで、メリスは<輝ける呼び声>を行う。MPは<防御>にて回復して、HPが削れたらリングリンガが回復を挟む。フェイはアルヴの行動妨害に対処しながら開放して、時々アイテムを使う
結果としてフィロトーマの攻撃であっても耐え、MPにもスキル2回程度の余裕はある。アイテムに関しては枯渇しかけているが其処はそれ。盤面が維持できれば問題ない
「ネクロマティックを開放したのは失策だったね。
『……なんか思考が荒み過ぎじゃない? 怖いよ、君』
「何もかんも環境が悪い」
会話の中で手番が続く。ネクロマティックを欠いた以上、アルヴ側に能動的に取れる手立てはない。そして、フェイ側ももう付け入る隙もミスもない
其処から代り映えもしない戦いが続き、呆気なくフィロトーマは極まった力を封じられながら砕かれ散った。過程でアイテムは尽きたもののアルヴ単体でどうにかなる状況ではない
「まだ続けるの?」
『選択肢は私にもないよ。君も私を倒して喰らわなきゃ、此処からは出れない』
「……そっか。なら此処からも容赦はしない」
故にこれにて勝敗は決まった。マインドが回復と補助を重ねながら、フェイが只管にアルヴの精神核を思念で嬲る。思念集合体であるアルヴはこれまでの攻撃に問題なく耐えてきたように、少しずつ手傷を負いながらも倒れない
『あ、ははっ……うふふふふっ……そっかぁ、私って此処まで強くなれたんだ』
暫くの間、戦いは続いた。刹那にも満たない時間の中で、フェイの気が遠くなる程に
決着は唐突に、静かに訪れた
・
・
・
崩れ、壊れた妖精郷がピンボケた写真のようにぼやけていく。アルヴが展開した心象風景が崩壊し、徐々にだがフェイの意識が現世へ戻ろうとしている合図だった
『あーあ、まけちゃった。勝てる筈だったのに』
「君が初手フィロトーマ・ネクロマティックスタートでフグラオン辺り開放させたら僕は何も出来なかったよ。性質から考えてあれ多分混乱付与でしょ?。何もできない所を二体でボコボコにすればいい」
『畜生なのかな、君は』
「僕なんてマシなもんさ。もっとあくどい事を考える人は一杯いる。厄介な世界だよ、ほんとに」
憑き物が落ちたように自然な笑みを浮かべるアルヴを見下ろしながらフェイも軽口で返した
戦闘は終わり、勝者はフェイとなった。
精神体は端から順に塵となって、その塵がフェイに溶け込むように消えていっている
『じゃぁ、しょうがないね。後は他のわたしとおとうさんに任せよう。思念戦闘じゃ、もう君は無理そうだし』
「……まだ僕の同位体は来るのか」
『力はこのわたし程ないよ。一番可能性があった私が憑りつきにきて、今はこの様。でもお父さんには勝てないし、心配は要らないね』
ケラケラとアルヴは笑う。瞳に諦観と絶望が浮かんでいる
「僕は戦うよ、オベロンとも」
『勝てなくても?』
「勝ち負けの話じゃない」
『運命は変えられないよ』
「変えようと願わなければ、変える事はできない」
『私には君が分からない』
「僕には君が痛い程に理解できる。それでも行くんだ」
話は平行線で、交わる事はない。上半身だけになったアルヴは何処か羨望するようにフェイを見上げ、消えゆく手を伸ばした
『私はどうして、“僕”になれなかったんだろうね……』
伸ばす手は届かないまま、アルヴはその存在を消失した。妖精郷も真っ黒な空間へと置き換わり、フェイだけがこの世界に残っている
「……君は紛れもなく僕だったさ。さようなら、もう一人の僕」
アルヴの残滓が、方向性のない思念となってフェイに融合されていく。多くの諦観と絶望の中に変わりたかったという願いを託されながら、フェイは上空に浮かぶ光へと目を向ける
「感傷に浸ってる暇はないね」
時間経過はないというアルヴの言葉が真実かは分からない。戦いも長引き、外の状況がどうなっていてもおかしくはない。今も戦っている由奈達の事を考えれば焦燥感に支配されそうになる
「行こう」
迷わず光へ手を伸ばして、それに伴って急速に意識が浮上していく。あまりの急変化に視界が真っ白に染まりながら、フェイは光に身を委ねて現世を目指した
・リザルト
久遠 フェイ:Lv91→Lv92(思念融合の結果、運が上昇した)
<久遠 フェイ>
訳が分からないまま全く知らないTCGの全く知らないデッキ(中身は知ってる)を初見で回して何とか勝ったみたいな人。知ってるTCGとゲームルールがかなり似ていたので事なきを得た
戦闘前に面子を決めた結果、開放ループって実際出来るのかな……むりか? いやいけるか。いこうぜぇ!となったので突貫した。割となかったら勝てなかったので正解だった。今回使ったマインドはデスピリア本編でヨアヒムが使った奴を元にデスピリア本編の他の実験体が使った愛属性をちょこちょこ足した物。メリスだけ愛属性の特殊マインドとして切札枠で投入した。後、全スキル割と強くて開放が確定石化なダークエッグは神(アルーアさんの初期マインドは一味違うな!)
<デックアールヴ>
ククク、奴は闇堕ちフェイ四天王(四天王じゃない)の中でも現状最強。今後、私達どうしよう……みたいな枠。今回登場したアルヴは幾多のフェイの残滓の思念集合体ではあるもののその上で一個体でしかないので、アルヴと同様の存在はまだ複数いる。メタルクウラかな?。今後どうなるかは未来の私が考えます
マインドの面子は取り敢えず強かったのが欲しかった結果、デスピリア本編ラスボスから選出。その結果として面子が攻撃と妨害に特化しすぎた畜生集団となった。つまり、デスピリア本編のラスボスはやばいってコト。面子が強かったのに負けた理由としてフェイとアルヴの戦闘経験の差がある。変わろうとしてる者と変わる事を諦めてしまった者の差でもあった
マインド以外には1ダメージしか与えられない。ナイトブレイダに命中し、VP1に