真・女神転生オタクくんサマナー外伝 -ロストキリギリス- 作:名無しの骸骨
夢を見た
僕と母さん、そして父さんが何事もなく平和に生きる夢だった
文明が崩壊して箱庭戦争も起きず、羅刹による襲撃もない
呆れる程に平和で穏やかな……今更あり得ない幻想を、単なる夢として見ていた
懐かしみ、寂しさを覚え、僕の意識は夢から遠ざかる様に離れていく
此処には僕を愛してくれた人々は居ても、僕が愛すべき彼女達が居ないから
手を伸ばさず、手を振って……ただ別れて意識を浮上させる
「ここは……」
目が覚めれば白いジプトーンの天井が視界を満たした
身に纏うのは患者衣でベッドに横たわり、腕には点滴が刺さっていた
ラーヴァナにしがみつきながら死んで、後どうなるかは本当に賭けではあったものの
あの場は乗り切れたと考えて良さそうだ
取り敢えずの安堵と……幾つもの不安
羅刹の脅威だとか、由奈を取り戻す手段だとか、まず浮かんで
僕と同様に羅刹に殺されたエリヤと真澄の安否が最優先で脳裏を過る
「フェイ! 起きたんだな、良かったぁ……!」
ぎゅっと柔らかい何かが身体を覆った
エリヤが椅子に座りながら、涙目で僕を抱き締めていた
「君も無事でよかった。真澄は……?」
「問題ないよ。俺達の中で一番早く起きて、各組織に情報伝達を行ってくれてる」
「じゃ、僕も動かな……っ!」
「無理に動こうとするな! あれだけ戦って、一番無理したのもお前なんだぞ!」
身体を起こそうとすれば全身に酷い激痛が走った
目に見える傷は塞がれているが僕はあの戦いで三度全力を越えて戦い、死を無理矢理超えたのも複数
食いしばり多様による後遺症
魂の破損を覚醒による思念融合で誤魔化した負荷
機械式アナライズで100以上の強敵との三連戦
まぁ改めて考えれば僕のレベルでも五体満足で生きてるのが不思議な位である
実際、パーティー単位で三度全滅もしている
戦闘中による緊張感さえ解ければ、寝たきり同然になるのは頷ける
が、僕にも動かねばならない理由がある
最低限の現状把握は済ませなければならない
「戦いが終わってから、どのくらい? でもって、此処は?」
「ヤタガラス系列の病院だ。経過は約8時間」
「妖精郷の現状は?」
「ギリギリ崩壊せずにいるらしい
ヤヒロノヒモロギ……だったか、あれが完全に消失したからか状態も安定している
比較的軽傷の<黄金の花園>の面々とシロエやラスキン老、ヤタガラスが事後処理中だ」
「なら最低限の猶予はあるかな」
妖精郷は多分オベロンが頑張ってくれて何とか健在
重傷者は病院に運ばれて、数時間が経過
オベロンが行った羅刹の封印、不明点は多いが制限時間があるような口振りだった
流石にそれが数時間や1日ではないと思うけれど
「っ、フェイ! 目を覚ましたのね!」
「うん、何とかね。報告とか先してくれてたんだよね? ありがとう」
「良いのよ、貴方が一番消耗してるんだから……」
考え込んでるうちに取り乱した様子で病室に入ってきた真澄が、傍に居たエリヤ諸共に僕を力強く抱擁する
あの盤面を乗り越える上でエリヤにも真澄にも相当な無茶をさせてしまった
一早く起きただろう真澄の顔には疲労と焦燥が根強く残っている
事後処理の初動を任せてしまった事に感謝を告げながらも、真澄は何処か僕に伝えたい事がある様子だった
「フェイ、こんな状態の貴方に言うべきではないかもしれないけど単刀直入に言うわね
由奈の事、諦めてほしいの」
「……それはどういう事?」
「言葉通りよ、由奈を取り戻すのを諦めてほしいの
これは私が由奈から託された願いでもある
もし自らが羅刹に堕ち切れば……殺してほしいって
でも貴方がそうすれば大きな疵を残してしまうから
貴方にはそうして欲しくないと」
「由奈が……」
真澄の言葉に僕は驚く事もなく、一種の納得すら抱いていた
真澄の表情から助けてほしくない、というのは本心でないのは伺える
どちらかといえばこれは由奈からの遺言の節が強いのだろう
由奈はラーヴァナの同位体であり、羅刹だ
その血は呪われていて、生存の為には食人を強いられている
ただの喰奴であるならMAGを介した体液摂取で事足りるが、羅刹はラクシャーサ族の伝承・本能を極限まで経高めた結果として喰奴化した存在
悪魔化する手段として不安定な基盤である喰奴に、より不安定な悪鬼羅刹が織り交ぜられれば最早純粋な悪魔より危険な在り方だ
極限まで殺傷性が高める<羅刹状態>*1を得る代償として、生きた人間を常に喰らわなければいけない生態系は人類と何処までも相いれない
故にこの世界ではヤタガラスが滅ぼして、残党もまた僕達が討伐した
由奈は其処から抜け出そうとして、抜け出せないまま僕と生き続けた
彼女も羅刹で、食人は必要だから……性行為というクッションを挟みつつ
僕は彼女に肉体の一部を喰らわせている
食肉としてあっても必要とされ、求められるのは嬉しかったけれど由奈はそうじゃない
本能として僕を喰らう事に多大な幸福と興奮を覚えながら、その本能を何処までも軽蔑して自らを罰しようと責めていた
本来なら僕の傍に居るべきでないと、そう思っていた程に自罰的
だからこそ過去に何度も衝突し、戦友ともライバルとも言える真澄に由奈は託したのだろう
「理由はそれだけじゃないわ
ヨヨギ公園での一件で貴方は傷つきすぎている。今は立つ事すら容易じゃないでしょう?
その状態であのラーヴァナと対峙するなんて、許せないわ」
「まぁ、それは何とかするしかないね
対ラーヴァナは暫く考えてた事だし……対応策も用意している
それに君が僕を止めている理由は、それじゃないでしょ」
ラーヴァナ並びに天魔衆の打倒は容易な事じゃない
オベロン達の助力があってこそ僕達は生き延びられたがあの質と量を兼ね備えた軍団に対抗するには多くの人々の手を借りなければならない
僕がラーヴァナを相手取るにせよ其処は決まりきった事だから疑問は持たない
今の僕が戦える状態ではなくラーヴァナに勝つ所ではないというのも正しいだろう
だけど、真澄が問いかけたい真の懸念はそこじゃない
もっと根本的で、どうしようもない問題が僕にはあった
「ラーヴァナから由奈を救えなかった場合、由奈をラーヴァナ諸共殺さなくちゃならない
それが僕に出来るか、だよね」
「由奈を救えるのは貴方だけなのは間違いない
けど、それに失敗したら……どうやったって殺すしかなくなる
貴方がやらなくとも、他の誰かがやらなくちゃならないの」
苦虫を嚙み潰したように、真澄はそう言った
ラーヴァナから由奈を切り離す方法は確かに存在する
直近のセプテントリオンとの戦いにて僕はアルヴ、過去周回の僕の成れの果てに取り込まれかけた
同様にオベロンとの戦いの際に僕は深層意識に堕ち、
僕にはそれらの経験が存在している
故にやるのはその逆で、マインドダイブによってラーヴァナの精神に侵入
由奈を救出しながらラーヴァナから分離し、成功してしまえば由奈を取り戻す事は叶うだろう
エリヤのESPも介せば成功率はより上昇する
しかし、これは必ず成功する訳じゃない
ラーヴァナがもし由奈の魂と完全なる融合を果たしてしまえば分離は行えない
由奈が現世への帰還を諦め、僕との対話を拒否してしまえばそれ以前の話であり
そもそもとしてラーヴァナを倒せなければマインドダイブすら出来やしない
理論上出来るとは言え、この通りネックは多い
きっと失敗する可能性の方が高いのも確かで、そうなれば由奈は失われる
そうなれば僕は……深く絶望するのは間違いない
「もし此処で由奈と戦わないまま他人任せにしても、誰も咎めやしないわ
むしろその選択をさせてしまった事を私は……一生賭けて償って、貴方の支えになり続けるから」
「エリヤはどう思う?」
「……由奈は大切な戦友で、恩人だ
戦いの中でどれだけ救われたか、分からない
だけど俺にとってフェイ、お前の方がもっと大切だ
お前が居なければ生きる勇気さえ、俺にはないんだ」
「僕にどうしてほしいかは言わないんだね」
「それはお前が決める事だからな
お前が行くというなら、何処までも付き従うさ
俺の命の使い方はそれだと決まっている」
真澄とエリヤの言葉は重く、何処までも僕を思いやったものだった
少し瞼を閉じ、思考を整理しながら吐き出す言葉を考える
ラーヴァナに挑み、敗れて全てを失うか
ラーヴァナに勝利しつつも、由奈を取り戻せずに絶望するか
ラーヴァナとの対峙から逃げ、由奈の事を忘却しようと目を逸らして生きるか
全てが上手くいくなんて楽観的な考えは出来ない
そうでなければオベロンがあんな絶望を抱く事なんてなかった
何かを選び、選ばない事で得るもの・失うものは必ずある
例え時を止めたとしても何かを変えたいと願うなら選択からは逃げられない
其処まで考えて……答えを決めた
或いは最初から決めていたのかもしれないが、全てを一度考えるのは大切だと思ったから
暫く、沈黙して
「僕は由奈に会いに行くよ
全てを失うかもしれないけど、由奈に救われ一緒に生きてきたのは僕だ
彼女に関する全ての責任は僕が取らなくちゃならない
激情でも義務感でもない。これは僕と由奈の
かつて僕は由奈に手を差し伸べられて救われた
単なる実験体から、食糧兼奴隷としてだけど人並みの生活を続いて
彼女の生きる糧となりながら僕は由奈を愛したし、由奈も僕を愛してくれた
何時からか僕と由奈の立場が変わった
僕を捕食する事実を悔いて、僕に付き従うようになった
表社会でも生きる為に由奈の食肉は僕に限定させた
僕が彼女に救われてから変わっていない事だけど、それが彼女の心を追い詰めてしまった
愛した者を喰らわねば生きていけない事実は自罰へと繋がり、由奈は思ったのだろう
自分はフェイと一緒に生き続ける訳にはいかないと
ラーヴァナの存在もその心を後押しさせた
これまでの由奈が辿り着いたであろう末路、食人族を束ねる羅刹の王
事実としてラーヴァナは由奈を取り込んでしまったのだから
だけど、そうなったのは君だけの責任じゃない
僕だって君の業を知って尚、生かし続ける事を選んだんだ
君にだけその業を背負わせる訳にはいかない
向き合わなければいけないんだ
「由奈を殺す事になるかもしれないのよ?」
「そうなったら一生絶望して後悔して情けなく泣き続けるだろうね
だけど由奈から目を逸らして、向き合わない理由にはならない
他人に由奈の命をくれてやるのも癪だし……ま、これは勝手な独占欲かな」
殺し愛なんて、常軌を逸してるレベルじゃないが害獣のように彼女が殺されるのは許容できない
由奈を、羅刹を人として生かし続けたのが僕の罪であるのなら
彼女を人として向き合ってこの手で葬るのが罰だし、筋なのだと思う
「もし最悪の結果になっても、未練がましく由奈を想って僕は生きるよ
この命は僕一人の感情で絶っていいものじゃないから」
「……少し、いや結構妬ましいわね、由奈が」
「君やエリヤにだって僕はそうするよ。愛してるんだから」
「惚れた弱みかしらね。そんな言葉で私は呆気なく納得してしまう
それに義理を果たす為に提案はしたけど
貴方が由奈を諦めないなんて判り切ってた事よ
私も一度アイツを殴りに行かなくちゃ気が済まない
貴方がやる気なら、私も全力を尽くすだけ」
「決まりだな。だが、実際どうする?
対ラーヴァナや由奈の救出もそうだが天魔衆も何とかしなきゃならないだろ
それに奴らの行方だって……」
「まず行方に関してだけど……真澄、もう彼とは会ってるよね?」
「部屋の外で待ってるわ」
「オッケー。入って貰おう」
オベロンが為した封印は情報共有する時間がなかったが為に不明点が多い
詠唱から封印は一時的な物、羅刹を何処かへ飛ばした事は分かるがまぁその程度だ
だからそれをよりよく知っている人物から話は聞かなければならない
『失礼致します。目を覚まされたのですね、フェイ様』
騎士甲冑を纏った美青年が部屋へと姿を現す
オベロンの仲魔であったクーフーリン
気を失ってこそいたが彼が僕達を妖精郷より脱出させてくれたのは分かっている
「色々ありがとう、クーフーリン。お互い、複雑だとは思うけど」
『いえ、私から貴方様に思う事は御座いません
勝敗は決定付けられ、生き恥を晒す私はただ貴方の慈悲のままに
この身を委ねる所存です』
「うん、まぁそこまでは求めてないんだけど……じゃあ単刀直入に聞こう
オベロンが行った封印に関する全てを知りたい」
『王より託された物が御座います
それに触れれば全て分かると』
僕に向かって跪くクーフーリンは懐中時計を僕に渡した
刻刻と針を刻むそれには相当な魔力・マガツヒが籠っており、オベロンが魔法で細工したのは明らかだ
そうして僕が触れれば、懐中時計を起点に一気に情報が頭に流れ込んでくる
封印が如何なるものか、ラーヴァナ達が何処へ飛ばされたのか、その持続時間の全てを理解した
「封印を施したのは全ての羅刹・喰奴で、穴から溢れようとした追加軍勢も含まれる
でもって封印の持続時間は今から一週間程度
正確な時間はこの時計を持ってれば把握できる
此処まで間違いない?」
『はい、全て』
「了解。そして問題の場所だけど……そうか、羅刹国か」
最近情報提供によって把握できた事だが漂流勢力としての天魔衆に定住の地は存在しない
彼らはデヴァローガとは敵対していながらも放置されており、遊牧民のようにCITY外部にて活動しながら喰奴やニンゲンを食料に生存しているとされている
元々行き場のない者達に関連ある場所は少なく、その中で選ばれたのはラーヴァナ及び由奈の故郷だった
久遠 由奈が誕生し、羅刹となった地。天魔衆の本拠が存在した場所
大陸において居場所を失った羅刹が最終的に流れ着いた日本南方に存在する孤島
名は羅刹国
西遊記にも言及された羅刹が暮らす島であり、禁足地
羅刹のみで国を作り、勢力を増した彼らは衰退しかけた日本の天魔衆*2を乗っ取りながら本土へ進出
度重なる食人事件で被害を出したが最終的にヤタガラスによって島に居た羅刹は討滅にされた
以降は天魔衆は生き残りを抱えつつも裏社会から姿を消し、後はラーヴァナやらが暗躍して今に至っている
元々羅刹とは因縁のある場所だが、ラーヴァナも由奈も羅刹国で生まれた存在だ
島に居る羅刹は種族を率いる王を欲し、作り出そうとしていた
より多くの血肉と、力と、呪詛を注ぎ込んで……蟲毒の果てに羅刹王の完成を目指した
それが久遠 由奈であり、
羅刹としてしか生れ落ち来ない彼女達は羅刹の王としての道を強制されていた
そんな彼女は羅刹の全てを嫌い、殺戮しながら島を抜け出したが因果はしっかり刻まれている
集約された因果は封印を経て、天魔衆を羅刹国という名の檻に捕えていた
『羅刹国には我々も赴きましたが、ヤタガラスによる作戦以降はただの無人島といった有様でした
しかし、天魔衆が囚われれば話は別です
文字通りの羅刹の国として異界が展開され、奴ら全てを収めても余りある広さとなるでしょう
今は封印されているので影異界のように接触・干渉は行えず
蜃気楼のように島の外観だけ朧気に見えるだけでしょう
ですが、封印が解ければ島諸共に奴らが実体化を果たすのは疑いようもありません』
「さながら神話のランカー島の再誕か」
神威による封印と退散は羅刹達を捕えた島はラーヴァナを異界の主として認識し、半強制的に拡張
信者・配下たる羅刹の存在を経て、異界と化した島はラーヴァナに相応しい場所へと変貌して
ラーマーヤナの如く、羅刹だけの国が創り出される
封印が解かれてしまえば彼らは其処を拠点に思うがまま動き出すだろう
実質的に強化されて奴らが戻ってくる、それは避けなければならない
「うーん、猶予少なくてしんどいけど
封印解かれて島出現した瞬間に叩き潰すのが一番だね」
『やはり戦うおつもりなのですね』
「さっきの会話は聞いてたでしょ? やるからには全力でやるさ
僕のコネとか全部使って戦力搔き集めて、決戦を挑む」
『宜しければお供します
妖精王の加護が外れ、この身の力は大きく削がれていますが
魔槍の冴えまでは失っておりません』
「勿論、当てにしてるさ
まぁ、今日は寝ながら情報共有と協力要請するだけにしとくかな
痛みに強い自負はあるんだけど、めっちゃ身体痛い!!!」
「本来なら一週間以上は安静にしとけってお医者さん言ってたぞ
休める時は絶対に休め。いいな?」
「外行きの用事あるなら可能な限り、私達に任せなさい
無理に動いたらベッドに身体縛り付けるから」
『このような状況ですがご無理は為さらずに……』
「は、はーい」
全員から強い、非常に強い圧を感じた
こっちも無理したくて無理してる訳じゃないけど肝に銘じておく
毎度毎度そこまでしないといけない現実が悪いんだけど……
「真澄はヤタガラスに情報伝えて協力要請。其処から他の関連組織も当たってほしい
エリヤは前の戦いに居た面子や面識あるキリギリス組に連絡してほしい
僕はシロエさんとラスキン老、東堂に情報共有するから
相談しつつどうするか決めていくよ
各自で動くけど報連相は徹底
三大勢力に狙われる可能性あるから単独行動は控え、協力者と一緒に行動して
以上、二人とも宜しく! 行動開始!」
二人にもあまり無理はさせられないがとにかく時間がない
猶予の約一週間で、どれだけ用意を整えられるかに全てが掛かっている
天魔衆の規模を考えれば前の戦いと同じ、いやそれ以上の戦力は欲しい
金銭や権力だけでそんな戦力を用意する芸当は僕には行えない
今まで積み上げてきた行動の成果、キリギリスを筆頭としたコネクションに頼る以外に方法はないだろう
強くなる為、自力で生き延びていく為に多くの事をやってきた
色んな組織に関わったし、少なからずの何かを僕は救えたという自負はある
その恩を返して貰うなんて、そんな強情にはなれないけど
今この時だけは僕達に力を貸してほしい
貴方達にとっても天魔衆は、羅刹は放置しておけない存在だからと
あらゆる全てに呼びかけ、助力を乞う
そして、ラーヴァナへの対策も並行して用意しなければならない
前の戦いの通り、あの時の勝率は0%
今用意してる対ラーヴァナの戦法で挑んだとし勝てるかは怪しい所だ
1週間で出来る事なんてたかが知れてるが仲魔も含めて見直していこう
悪魔合体士カオス*3に任せた“切り札”も今なら完成しているかもしれない
「さて、君とも契約しないとねクーフーリン……いや、セタンタって呼ぼうかな」
『やはり覚えていらっしゃるのですね、私の事を』
「思い出っていうには遠すぎるけど、覚えてるよ
君が騎士見習いだった事も、いずれ僕の騎士になるって宣言してくれた事も」
辿られる
かつての僕はクーフーリンとなる以前のセタンタと共に妖精郷で育った
僕が王様になったら騎士になると言ってくれた幼馴染で、大切な友達
彼は記憶よりあらゆる意味で大きく成長し、扱い切れなかった魔槍も自在に使えるようになった
その力があればラーヴァナに対抗できる可能性は幾分か上昇するだろう
とはいえ僕と
見てきた物と感じてきた物がまるで違うし、彼も父さんのやってきた全てに追従した事実は消せない
動機はどうあれ僕はそれに反旗を翻した
羅刹の介入はあったにせよ妖精王を殺め、血に濡れた手で王冠を被っていた
「僕は父さん……オベロンを殺した。その事については?」
『先も述べましたが、何も
元より私達は貴方様を楽園に閉じ込め、安楽の中で殺してきました
それを私は間違っていると認識しながら
王に他の選択肢を提示できなかったのです
安楽ではない死を迎える貴方を見続けるのに私は耐えられなかった……』
「一つの事実として僕にそれが救いを齎していたのは疑いようもないよ
それを否定するつもりはないけど、僕は拒否した
あの日に見た幻想を実現させる為に
僕は永遠の楽園から抜け出したんだ」
剣を出現させ、引き抜き、跪くセタンタに突き付ける
思いを共有し、問い掛けるようにして僕は言葉を続ける
「その上で聞こう、王を失った騎士よ
君は僕に如何なる理由で仕えるのか」
『……これまでの贖罪とかつての夢の為に
あの日、私は貴方を守る事が出来なかった
だが、しかし! 今度こそ最期まで貴方を護る盾で為らん事を!』
突き付けた剣をセタンタの肩へ置く
王が騎士を認めるアコレードとして、僕とセタンタの間で契約が交わされる
「妖精王の後継として告げるよ
君には僕の騎士として今度こそ忠誠を全うして貰う
今後とも宜しく」
『今後とも宜しくお願い致します、我が王よ』
\カカカッ/
| 妖精 | セタンタ | Lv93 | 物理・銃撃・火炎・氷結・電撃耐性 衝撃・破魔・呪殺反射。猛毒・神経弱点*4 |
こうしてセタンタは僕の仲魔となった
彼の魔槍を羅刹王への矛として用いる事を決めながら、今後について考える
決戦日まで後一週間、全てを決めるにはあまりに短い猶予だが
戦力としては十二分に集まるだろう
少なくともシロエさんやヤタガラス、他の皆の手助けがあれば確実に
その上で足りないのはクンバカルナやインドラジット等の最高幹部に対する抑え
奴らにも対抗できる特級とも呼べる戦力を求めなければならない
「当代最強のデビルサマナー、パラダイムXを駆け抜けた電脳探偵、そして……」
声を掛ける彼らを脳裏に浮かべ、僕は静かに端末を手に取った