戦国♰ランブル!   作:ミヤビコウ

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初投稿です。楽しんでいただけたのなら幸いです


出会い

 その日、剣丞は詩乃を連れ立って、ある街道沿いの村に向かっていた。その村では最近、鬼を目撃したとの報告があった。だが、その鬼の規模が正確にわからないので、先行偵察としてこの二人が向かうことになったのだ。

「しかし何も剣丞様まで同行する必要はなかったのでは?」

「確かにそうなんだけど、例のことも気になるしね。何もなければ偵察だけして帰ればいいし」

「例のことと言うと……あの噂話ですか?」

 ここ最近、城下町や剣丞隊行きつけの一発屋でも広がっている噂話。

 

『近隣の村々を鬼の脅威から救ってくれる陰陽師がいる』

 

 その陰陽師は四人組で行動しており、村が鬼に襲われていたのなら、勇猛果敢に鬼と戦い、村の人々を助けるのだそうだ。この程度ならばただの噂話ですむのだが、この話には続きがある。

 

『その四人のうち二人は、獣の耳と尻尾がついていた』

 

「まぁ確かに陰陽師が使役するという式神には、様々な姿形があると聞いたことはありますが……」

「でも鬼なんて存在がいるんだし、もしかしたら本当にいるかもよ?」

「仮にその陰陽師がいたとして、剣丞様はどうなさるおつもりで?」

「一先ず話し合いかな。噂通り鬼を退治しているのなら、協力関係を築けるかもしれないしね」

「そうですね。ですが……その件の陰陽師が女性だった場合、剣丞様の奥がまた増える可能性も念頭に置かなければなりません」

「……俺ってそんなに節操無し?」

「……ご自分の胸に手を当てて考えてみては?」

「あはは……お、見えてきた。あの村だね」

 剣丞の言う通り、視界に建物の影がぽつりぽつりと見えてくる。視覚では毎日を平和に過ごしている村なのだが、聴覚ではその逆だった。

 悲鳴。怒号。建物の破壊音。獣の咆哮。しかもその獣の咆哮には聞き覚えがある。これは―――

「っ!!詩乃!先に行く!あれは鬼の声だ!!」

「剣丞様!!」

 詩乃の心配する声を聴きながら、剣丞は弾けるように村に向かって走り出す。偵察どころの話ではない。目の前で村が鬼に襲撃されている。

 数人でも隊から連れてくれば。

 ひよやころ、小梅やエーリカにもついてくるよう言っておけば。

 他にも、他にも、他にも、

 後悔の念がいくらでも湧き出てくる。しかし今は少しでも早く辿り着かねば。そう思った瞬間だった。

 

「おっさき~~~~~~っス!!」

 

 剣丞の隣を、とても元気な女の子の声が、ものすごいスピードで土煙を上げながら鬼の襲撃を受けている村に向かって走っていった。

 一瞬剣丞も驚いたが、すぐさま頭を切り替えて村に向かって走っていく。

 今のが誰かはわからない。だが走っていった先が村なのならば、もしかしたら一緒に戦ってくれるかもしれない。希望的観測なのは分かっている。だがそれでも―――!

 さっきの元気な声に遅れること数分、ようやく村に辿り着いた剣丞が見たものは、驚くべきものだった。

「おりゃーっス!!」

「グギャァァァァァァ!!!」

「そこっス!!」

「グォォォォォォォォ!!!」

 その声の主である女の子が、たった一人で鬼の群れを蹂躙していたのだ。

 鬼の攻撃を飛んだり跳ねたり巧みに躱し、時には両の手に片方づつ持つ刀で受け止めはじき返す。さらに、鬼がよろけたり僅かに隙が出来ようものなら、たとえ防御の上からでも一刀のもとに倒してしまう。

 だがまぁ単身で鬼を倒す妻が複数人いるためか、すぐに頭が冷えて今自分が何をするべきかがハッキリと思い浮かぶ。

「助太刀する!後ろは任せろ!!」

「ん?あ、さっき追い抜いた人っスか?それならお願いするっス!」

「おう!」

 こうして、剣丞と元気な声の女の子とのタッグで鬼を倒していく戦闘が始まった。……のだが、ほとんどの鬼の相手を元気な声の女の子がこなして、剣丞は元気な声の女の子の邪魔にならないように動くことに専念するしかなかった。

 そうすること約十分。村を襲撃した鬼の殲滅に成功したのだった。

「いやー終わったっスね。そこのお兄さん、助太刀感謝っス!」

「いやこっちこそ。君が早くこの村に着いたから犠牲者も出ずに済んだんだ。本当にありがとう」

「あはは。なんか照れるっスね~」

 他愛のない会話をする剣丞。だが会話をしていく内に戦いで興奮していた頭がまた冷えてくる。そうすると女の子を含めて今まで見えていなかったものが見えてくる。

「?お兄さんどうかしたっスか?」

「……あのさ、これから変なこと聞いてもいいか?」

「なんスか?」

「その耳と尻尾ってどうなってるんだ!?」

「耳と尻尾?」

 そう。元気な声の女の子にはケモ耳と尻尾があったのだ。おまけにそのケモ耳と尻尾はさっきからピコピコ動いている。まるで自分の意志で動かしているかのように

「なに言ってんスか。自前の耳と尻尾に決まってるっスよ~」

「自前!?じゃあその耳と尻尾はつけ耳とかつけ尻尾じゃなくて本物!?」

「そうっスよ。なにせ私は犬神っスからね」

 さも当たり前のように話す彼女を前に、剣丞はあることを思い出す。

 例の噂話。鬼を倒す陰陽師。その陰陽師は四人組で、その内二人は……『獣の耳と尻尾がついていた』

「コラ~~~~~!!!アスカ~~~~~!!!」

「うひゃぁ!?ってイズナちゃんじゃないっスか。随分遅かったっスね」

「遅かったではない!急に走り出しおって!こっちは途中で人一人おぶってここまで来たのだぞ!」

 目の前の女の子とは違う女の子がやってきて、今まで一緒に戦った女の子をガミガミと りだす。普通ならばそれで構わないのだが、その光景は剣丞にとっては異常な光景だ。何故ならば、もう一方の女の子にもケモ耳と尻尾があったのだから。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!君たちは一体何なんだ?それにそっちの子の耳と尻尾は……」

「ん?耳と尻尾?私は妖狐なのだからこんなもの当り前だぞ?」

「妖狐!?」

 さすがの剣丞でもその単語は聞き覚えがある。妖狐。それ即ち狐の妖怪。とんでもない奴に至っては国を支配しようとした妖狐までいる。

「そういえばイズナちゃん、ご主人とナギちゃんは?」

「ああ、それなら……」

「アスカちゃ~ん、イズナちゃ~ん、おまたせ~!」

 剣丞の背後から、白い長髪に青い瞳の女の子が、詩乃をおんぶしながらゆっくりとこちらに歩いてきた。

「剣丞様ご無事ですか!ナギさん、もう大丈夫です。ありがとうございます」

「どういたしまして。それじゃあ詩乃ちゃん、降ろすから気を付けてね?んしょっと」

 ナギと呼ばれた少女は、詩乃がケガをしないようにゆっくりと自分の背中から詩乃を降ろす。

 冷えた頭がまた混乱していく。一体彼女たちは何者なのか?先ほど自らを犬神や妖狐と名乗ったケモ耳少女は?今さっき詩乃をおんぶしてきた彼女もそういった類の存在なのだろうか?

 そんな答えが出ない剣丞の耳に、また違う足音が聞こえてくる。

「ナギお疲れ様。本当は僕が背負った方が良かったんだけど……」

「まったくだ。だがまぁ男のお前が詩乃を背負うとなると、変な個所に触れる可能性もあったからな。致し方あるまい」

「イズナの言う通り。それにアスカに霊力を渡すのに集中しなきゃだったしね。アスカ、急に突っ込まないでって言っただろ?僕も準備しなくちゃならないし」

「すいませんご主人……」

「でもよくやったよ。流石僕の相棒」

「~~~ごっしゅじ~~~ん!!」

「わぷっ」

ケモ耳少女の一人が男性に思い切り抱きつく。

その男性は、剣丞と背格好がだいたい同じで、学ランを少し和風にしたような服を纏っている。顔立ちはやや童顔で髪は黒。そして何より彼の右手の人差し指と中指でお札のようなものを挟んでいる。

もしやと思い剣丞は尋ねる。

「あの……」

「うん?どうかした?」

「変なような事を聞くけれど……君は最近噂の陰陽師、なのか?」

「……自己紹介がまだだったね」

 

これは、

 

「僕の名前は蘆屋(あしや)清明(せいめい)」

 

新田剣丞とその妻たちが体験する、

 

「陰陽寮に所属する陰陽師」

ちょっと不思議な物語の、

 

「どうかよろしくね?」

 

始まりの出会いなのであった。

 

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