戦国♰ランブル!   作:ミヤビコウ

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本当にお久しぶりです。
楽しんでいただけたなら幸いです


日常は平穏無事が一番である

 さて、ここらで突然ではあるが、普段セイがどのように一日を過ごしているのか覗いてみることにしよう。ん?なんでそんな事をするか?そんな事いいからさっさと話進めろ?まぁ『箸休め』ってことでお付き合い下さい。

 セイの一日の始まりは、大体日の出二時間前から始まる。

 セイは基本、アスカ、イズナ、ナギと一緒の部屋で布団を並べて眠っており、そんな三人を起こさないように静かに布団から出て、静かに布団をたたみ、陰陽寮の制服を持って部屋から抜け出す。

 寝間着である浴衣のまま、井戸で水を汲み上げ顔を洗った後に、武器庫に行って制服に着替える。なぜそんなところで着替えをしているかと言えば、ここならあまり人も来ないし、仮に誰かが来たとしても、武器庫の番をしている兵が教えてくれるからだ。ついでにいえば、ラッキースケベ防止の意味合いも兼ねている。

 そうして着替え終えると、縁側で座禅を組んで日の出を迎えるギリギリまで瞑想を行う。

 何も考えず、頭を空っぽにし、瞼を閉じて、自身という存在を森羅万象に溶かし込むように。それでいて、丹田に意識を集中させ自身の霊力を全身に行き渡らせる。

 やがて瞼の裏に日の光を感じ始めたころに瞑想を終え、今度は柔軟体操を始める。元々セイは身体が柔らかいのだが、鬼一法眼との修行によりさらに身体が柔らかくなっている。何度か剣丞の前でやって見せたことがあるが、関節が外れているんじゃないかと驚かれた。

 柔軟が終わるとランニング。疲れない程度の距離を疲れない程度の速度で走る。本人曰く、『距離や時間を先に決めるとやる気がなくなる』からだそうだ。

 そうしてランニングから戻ってくると、大体アスカ、イズナ、ナギの三人が起きて身支度を終えている。互いにおはようを言い合って、ランニングで疲れた身体を解しつつ、手拭いで汗を拭いたあと、四人そろって朝食の時間となる。

 朝食を食べ終えると、自分達でも出来るような剣丞隊の仕事の手伝いを探してそれをやる。

 剣丞隊は万年人材不足の隊であるからして、毎日のようにやることがある。

 掃除洗濯当たり前。武具の手入れに馬の世話。物資の調達、報告書の作成、稽古の相手、城下町の見回り、上げていったらキリがない。

 そしてその様な手伝いをこなしながら、空いた時間に呪符を作ったり、『この世界』での陰陽師としての仕事をしたりしている。

「ふんふん、なるほどなるほど」

「な、何がなるほどなんですかセイさん!?」

「ひよ、ちょっとは落ち着きなって」

「落ち着けないよ~セイさんの占いってすっごく当たるって有名なんだよころちゃん!」

 そう、占いだ。

 以前にも説明したが、陰陽師は国家資格を持った占い師。人の運勢だけでなく、建物の建設時期や場所、その年の作物の収穫量まで、とにかく何でもかんでも占っていた。

 そんな占い師、いや陰陽師がいれば誰しも占ってほしいのは当たり前。そしていつの間にか希望者はセイが占うようになっていたのだ。

「じゃあまず結論。ひよさんはこのままの道を進んでいけばいいと思うよ」

「このままですか?えっとなんかこうした方がいいとかってないんですか?」

「ないよ。だって今のひよさんが選んでる事が適任すぎて何も言う事ないんだから」

「そうなんですか……?」

「うん。でもまぁ、あまり他人に気を使いすぎず、自分の主張を押し通した方がいいかな?旦那さんと一日二人きりでいたいとか」

「いやいやいやいや無理ですってば!久遠様や結菜様達を差し置いてそんな恐れ多いこと出来ませんよ~!」

 ただここだけの話、実はセイ、占いは苦手な部類なのだ。もちろん出来ないことはないがその精度は陰陽寮で下から数えた方が名前が見つかるぐらいだ。ぐらいなのだが、どういうわけだか『この世界』ではよく当たる。

「まぁあくまで例え話ってことで。それよりも、二人はこの後何か用事があったんじゃなかったっけ?」

「え?あぁーーー!!ひよ!調練の準備!!」

「うわぁそうだった!あ、セイさん、占ってくれてありがとうございました!」

「はいは~い。調練頑張ってね~」

 

 時刻が昼になれば昼食。まとまって食べることもあれば、バラバラに食べることもある。

 そして昼食が済めば、また剣丞隊の仕事の手伝いをし、その合間に呪符を作る。

「これが陰陽師のお札なのです?綾那には何が書いてあるのか全く分からないのです」

「僕も最初はチンプンカンプンだったよ。ちなみに綾那さんが持っているのは目潰しの呪符でね。霊力を込めて投げると、強烈に光って相手の視界を奪うんだ」

「そんな面白い事が出来るってすごいですよ」

 相変わらず縁側で呪符を作っているセイのところに、たまたま近くを通った綾那が話しかける。最初の出会いこそ最悪だったが、今ではそんなことはなく、むしろ友達のように接するようになっていた。(酒吞童子ともしっかり仲直りをしている)

「このお札って綾那でも使えるですか?」

「一応使えるように細工して作ってあるよ。ただ、一回使うと凄く疲れるのが難点かな。壬月さんと麦穂さんだっけ?実験で結界符を使ってもらったんだけど、昼から夕方までフラフラしてたんだ」

「使い勝手が悪いですが、命にかかわるような場面なら、綾那は迷いなく使うのです。命あっての物種なのです」

「それは僕も賛成かな。よし、今日の分の呪符完成っと」

 そうして書き終わった呪符を、セイは縁側に並べて乾かす。なんて言ったって墨を使って書いているのだ。いきなり重ねてまとめてしまうと汚れてしまう。本来ならば乾燥用の簡単な温風の術で乾かすのがだ、今のセイではその術でも行使することも難しい。

 果たしてあと何人の式神と合流すれば、自分は見習い陰陽師から下級陰陽師へとランクアップするのだろうと視線を遠くへと飛ばすと、その視線の先には、素手の鬼一法眼がフル装備の歌夜と小波を相手に手合わせをしている最中だった。

「うむ。流石だな二人とも。洗練された動作、合図のない連携、素晴らしいの一言だ」

「鬼一法眼様にそう言ってもらえると嬉しい限りです!はぁっ!!」

 裂帛とともに歌夜は刀を袈裟斬りに振りぬく。が、その一撃は法眼が一歩後ろに下がることで躱される。

 だが、その一歩は想定済み。本命は歌夜の身体の後ろで既にクナイを投擲した小波だった。ギリギリまで小波のクナイの軌道を鬼一法眼に見せないようにする為の一手。

 だがしかし、その一手をも覆してしまうのが鬼一法眼。なんと法眼は向かってきたクナイをギリギリで躱すと同時に、右手でクナイの柄を握ってそのまま小波に、投げられた速度以上の速度で投げ返す。

 当然そんな芸当を目の当たりした二人は泡を食った。そのほんの僅かな隙があれば充分だ。

 投げ返されたクナイを、小波が所持しているもう一つのクナイで防いだ時には、歌夜は法眼の掌底を思い切り腹に受けてしゃがみ込んでいて、小波が次の最善の一手を思いつく前に、小波は法眼に背後から両腕で首を極めていた。

「小波、あのクナイの投擲の後に、さらに追撃をしていれば歌夜がああなることはなかったはずだ」

「は、はい……」

「歌夜、仲間のことを信じなさい。僅かに視線が小波の方へ向いていた。あれではバレてしまう」

「精進いたします……」

「それと、動揺するなとは言わないが、すぐに立て直せるようにしておくこと。瞬き一つで戦況がひっくり返ることだってあるのだから。以上で法眼先生との稽古は終了としよう。二人とも、身体をよく解しておくように」

「「ありがとうございました!」」

 歌夜と小波は鬼一法眼に礼をすると、自らの装備を片付けに行った。それが終われば今度は柔軟。……流石に関節が外れるような柔軟はしないが。

「そういえば、セイはどのぐらい強いのです?」

「それが自分でも分からないんだ。ホラ、僕の周りの比較対象ってみんな強いから」

 そう言われると確かにそうだ。閻魔天に酒吞童子、目の前でしっかり柔軟をしている鬼一法眼。綾那をその身をもってその力を体験した身だから分かる。

「我が教え子はかなり強いと法眼先生は思うぞ」

「あれ?法眼先生もう柔軟終わったの?」

「キミの柔軟も一緒にしようと思ったのだが……」

「え、本当ですか?それではお願いします」

 そう言うと鬼一法眼はセイの背後に立つと、セイの身体を解して始める。さっきまで呪符を作っていたのだから身体中がバキバキだったので丁度いい。

「法眼さま。どういうことなのです?」

「彼は我が課した修行をこなした。素手でも充分強い」

「修行?」

「ああ。三日三晩滝行をしたり、山の外周を一万周したりだったか」

「よくそんな修行して死ななかったですねセイ」

「何度か死にかけたけどね。法眼先生、柔軟ありがとうございました」

「うん。さて、綾那。早速やろうか」

「何をですか?」

「我との稽古さ。気配で分かる。いい気迫を我にぶつけてきている」

 そう。実は綾那、さっきからとにかく鬼一法眼と稽古したくてしたくてしょうがない状態だったのだ。というか、武人として当たり前だろう。むしろ、二人の邪魔にならない程度に気迫を押さえつけていた綾那の精神力に感服する。

「……いいですか?」

「ああ。思い切り来るといい」

 押さえつけていた気迫が爆発する。もう、我慢する必要はないのだから。

 綾那はどこから取り出したのか、愛槍、蜻蛉切を構え鬼一法眼の正面に立つ。

「本多綾那忠勝、参る!!」

「あぁ。キミの全てを我にぶつけてこい!」

 

 日が傾いてくれば、今度は夕餉の支度の手伝いだ。

 人数が人数だけに下拵えだけでも大ごとだ。なのでセイ達も手伝っている。ちなみにその手際はよく、料理人達はたいそう助かっているそうだ。

 なんでそんなに料理の手際がいいのか剣丞が聞いてみたところ、任務で野宿は当たり前。ついでに式神の中にはわがままなヤツもいるから、その要望に応えていったらこうなった。と、セイは大根のかつら剥きをしながら答えてくれた。

「それじゃ剣丞さんってあったかい食事あんま食べられないんスね」

「剣丞君って連合の要だしね。毒味している内に料理冷めちゃうんだって」

「そうなんだね。ねぇセイ、どうにかならないかな?」

「う~ん、手っ取り早いのは僕が術を使うか、『彼女』の力を使ってもらうかかな?でも僕たちが帰ったら出来なくなっちゃうから厳しいかな」

 本日の夕食(玄米、味噌汁、ごま豆腐、白菜の漬物)ナギとアスカと一緒に食べながらそんな話をする。セイの立場はあくまで剣丞隊の一兵卒。剣丞たちと一緒に食事を食べる機会はほとんどない。

 剣丞は別に気にしてはいないようなのだが、ぽっと出の、しかも怪しげな陰陽師と一緒に食事など、流石に立場上問題がある。さらに言えば、奥さんと一緒に食事しなさいな。という気遣いでもある。

 食事が終わるころには、もうしっかりと夜が幅を利かせる。

 こうなったらもう顔を洗ったり、身体を拭いたり、歯を磨いたりして寝る支度。あてがわれた部屋で皆で雑魚寝。

 ただ時々三人で夜間の見回りをしている。あっちの世界でも夜にしか起きない現象の調査もやっていたから慣れたモノ。

 

 そしてその見回りの時には、浮遊霊を祓っていることは内緒にしている。

 

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