戦国♰ランブル!   作:ミヤビコウ

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お久しぶりです。
ネット環境がない場所への出張&体調不良が重なってしまいました。
まぁそういうわけで、楽しんでいただけたなら幸いです。


裁きを下す者

 どうも皆さんお元気でしょうか?新田剣丞でございます。

 え?いつもと違ってなんだか畏まっている?

 だってそれはそうでしょう。俺が今いる場所というのが。

「それではあなた方に裁きを下します」

 ―――『地獄』なのだから。

 

「おーい剣丞ー!」

「やあやあ剣丞くん、元気してるー?」

「わーい!剣丞さまー!」

 この日、織田家の三若、佐々和奏成正、滝川雛一益、前田犬子利家が剣丞の元へ遊びに来た。来た理由は単純。剣丞に会いに来た。ただそれだけ。自分が好いている人の元へ行くのには十分な理由だろう。

「あり?ねぇ剣丞くん、アスカちんとイズナちゃんは?」

「あの二人ならついさっき、セイとナギと一緒に城下町に買い出しに行ったよ」

「ありゃーちょ~っと機会がズレちゃったね~」

「今朝から和奏が、二人の尻尾触りた~いって言ってたもんね~」

「ボクはそんな事言ってないぞ犬子!」

 この三人、初めてアスカとイズナを見た時、思い切り腰を抜かして驚いていたのだが、剣丞が信用していたことと、話をしてみていいヤツだと判断したようだ。まぁ最後の決定打はやはりケモ耳と尻尾を触ったことだろう。三人とも目をキラキラさせて触っていたのは、今でも鮮明に覚えている。

「にしても剣丞が初めてセイの事連れて来たって報告もらった時、みんな驚いてたよな」

「え、そうなの?」

「それはそうでしょ。遂に男にまで手を出したんじゃないか~って久遠さまが叫んでたんだよ?」

「何それ初耳なんだけど」

「まぁ今までの剣丞さまのことを考えれば自然とそうなるよね~」

「セイを連れてきてから俺のこと久遠と結菜達がよそよそしく見てたのってそういうことだったのか……」

 衝撃の事実を知ってしまった剣丞を慰める三若。実はそうやって慰めている時に思い切り剣丞の事を撫でたり触ったり抱きしめたり出来る事が嬉しいのは剣丞には内緒だ。好きな人の温もりをこうして感じられる機会も中々少ないのだから。

 そうして四人でリア充爆発しろな空間を作り出しているときに『その子』はやって来た。

「ん?ねぇ和奏ちん、犬子、あの子誰かな?」

「どうしたんだよ雛?あの子って誰だよ」

「あ、和奏あの子の事じゃない?」

 そうして犬子が指差す方向へ全員が視線を向けると、確かに誰かいた。その子はフリフリな服を着た女の子で、例えるなら魔法少女のようだった。そこまでならいいのだが、その少女がここまでやって来た事が問題だった。

 何せ今現在この四人がいるのは剣丞隊隊舎の屋敷で、当然門番もいる。そしてその門番も見たこともない少女をすんなりと入れるだろうか?

 そんなことを考えていると、その少女は可愛らしい声で、

「そこの方々に尋ねます。噓偽りなく答えなさい」

 若干上から目線で剣丞達に話しかけてきた。

「?おい誰なんだよお前」

「ここに、蘆屋清明はいますか?」

「ボクのこと無視するな!」

「もう一度尋ねます。蘆屋清明はいますか?」

 セイのことを知っている?ということはまさかセイの式神?でも何の確証もない。もしセイのことを狙った刺客なのだとしたら。そう考えながら剣丞はこう答えた。

「いやそんな人はいない。君の勘違いじゃないかな?」

 こう答えるのが無難だろう。

 一先ず今日は帰ってもらって、今のうちに覚えた少女の見た目と話し方などをセイに報告して確認するのがベストだろうと思ったのが『不正解』だった。

「セイの霊力を辿って来たのですから間違いありません。ですが今は出かけている様子。素直に話せば言いものを。噓を付く必要はないはずです」

「初対面の相手にすんなり教えると思うのか!?」

「そーだそーだ」

「和奏の言う通りだー!それに知らない人の言うことなんか信用出来ないわんっ!」

 抗議の声を上げる三若。だがこれも『不正解』だった。

「……反省の色は無し、ですか。ならば……」

 少女がそう言った瞬間だった。その少女の背後に『巨大な門』が現れたのだ。

「なっ!?」

「なんだあれ!?」

「うわわわわわ!?」

「わふうぅぅぅぅ!?」

 そして現れた門の扉がギギギと音を立てながらゆっくりと開いていき、もの凄い勢いで四人のことを飲み込んでいく。その場にはつかまる場所も踏ん張れる場所もなかったため、悲鳴を上げる間もなく門の向こうへと飲まれ、今度は勢い良く門の扉が閉まっていくのだった。

「いてて……みんな無事か?」

「ああ、大丈夫だ剣丞」

「雛も大丈夫だよ」

「犬子も大丈夫……って、みんな上見て上!!」

 犬子の声の通り上に視線を向けると、そこにあったのは赤紫色の空が広がっていた。

 その空にも驚くが、その周囲はさらに驚くべき光景が広がっていた。

 荒涼とした大地。

 どことなく澱んだ空気。

 そして何より、生き物の気配を全く感じることが出来ないのだ。まるで命そのものが存在していないかのように。

「一体ここはどこなんだ……」

「地獄です」

「あぁー!お前さっきの!」

 そこにはさっきの魔法少女が立っていた。おそらく彼女がこの現象の原因であることは間違いないのだろう。だがそれよりも、さっき聞き捨てならない言葉を言っていた。

「ね、ねぇ?ここが地獄ってどういうことなの?」

「そ、そうだよ!犬子たち本当に地獄に来ちゃったの!?」

「正確には地獄に近い世界です。あなた方が地獄に対する想像が寄り集まって出来た世界。ですが、それでも地獄に変わりはありません。さぁ、それでは行きますよ?」

「行くって何処に行くんだよ!」

「……ここにいたら、獄卒に捕まってしまうかもしれませんよ?」

 その少女が指差すその先にいたのは、城門を超える大きさの筋骨隆々な『鬼』が何体もウロウロしていたのだ。

 四人は口をあんぐりと開き、身体を震わせながら驚く。当然、この全員は鬼の討伐に出ているため鬼は見慣れているのだが、この『鬼』は違う。雰囲気も存在感もまるで違う。どうしてセイたちが鬼を『マガツヒモドキ』と呼んでいる理由も納得がいく。彼らにとっての『鬼』とはこっちの『鬼』なのだから。

「け、けんすけぇ……」

「けんすけく~ん……」

「けんすけさまぁ……」

「だ、大丈夫だ。何があっても俺が三人を守って見せるから」

 本当は自分だって怖い。それでも、この三人だけでも自分が守らねば。それに、これだけのことが起こっているのだからセイが気付かないわけがない。だったら少しでも時間を稼がなければ。

「早く行きますよ?獄卒に食べられてもいいのですか?」

「「「「は、はい!!」」」」

 こうして、魔法少女に先導される地獄巡りツアーが始まった。

 一行は、ひたすら荒涼とした大地を歩いて行く。

 その光景はまるで、看守に先導される囚人のようにも見えた。

「お、おいなんだよあれ!!」

「お馴染みの針山地獄です」

「え、え~とあそこにいる犬とか猫はなんなのかな~?」

「囚人を生きたまま襲って喰らう獄卒です」

「ひぃぃぃぃ!!おたすけー!!」

「あなた方のことはまだ襲いませんので安心してください。それに、地獄で死んだとしてもすぐに復活します。そうして刑期を全うするまで苦しみ続けるのです」

「「「やだぁぁぁぁぁ!!!」」」

 三若のメンタルは既にゼロ。最早オーバーキルだ。そんな三人を剣丞はしっかりと抱きしめて励ます。もうこんなことしか自分には出来ないが、それでも彼女達の恐怖心が少しでも和らいでくれるのなら、いくらでもこうする。

 そして、そんな恐怖の時間も終わりを告げる。

「お疲れ様です。到着いたしました」

「「「「ひぃっ!!」」」」

 到着したその目的地は、まさに地獄の一丁目とも言える様な場所だった。

 円形に獄卒である『鬼』が、ひしめき合って大きな金棒を持って立っていたのだ。最早逃げることかなわず。一歩でも逃げ出せば、その巨岩を簡単に砕けるであろう手で握りしめられることだろう。

 そしてそんな『鬼』達の視線の先には、大きくて不気味な椅子が鎮座しており、今まで自分たちをここまで案内してきた魔法少女が、その椅子に腰掛けこう言った。

「それでは、あなた方に裁きを下します」

「「「「裁き?」」」」

「ええ。そのためにここまで来てもらったのですよ?」

「ち、ちょっと待ってくれ!キミは一体誰なんだ!それに裁きって一体なんだんだ!?」

「あぁ、そう言えば名乗っておりませんでしたね」

 そう言って、魔法少女は荘厳に自らの名前を名乗った。だが、その名前を聞かなければよかった。そうしなければ、更なる恐怖を味わうことはなかっただろう。

 

「我が名は『閻魔天』。この世界の主にして、十二天が一柱である」

 

閻魔天(えんまてん)

 正確には焔魔天と書く。インド神話の『マヤ』が仏教に取り入れられ、『天部』となった存在。運命、死、冥界を司る存在である。まぁざっくり閻魔様みたいなものである。気になる方はwebでcheck!

 

「じゃ、じゃあお前閻魔大王様なのか!?」

「和奏ちん無礼だよ!!」

「ひえ~~~!!おたすけ~~~!!!」

「うそ、だろ……!」

 誰しも一度は聞くだろう。「噓をついたら閻魔様に舌を抜かれる」

 その存在が、今まさに自分達の目の前に存在しているのだ。

 確かにセイは以前、「神様と買い物をしたことがある」と言ってはいたが、まさにその話が現実だという証拠が提示された。

 驚愕している剣丞と、泣きながら剣丞に震えながらしがみついている三若をよそに、閻魔天は獄卒から渡された巻物を開いて目を通し、手にしていた笏をパシンと自らの手のひらに当て音を鳴らす。

「その方らは無間地獄へと送りましょう。喜びなさい。そこは地獄の最下層。永遠にありとあらゆる苦痛が与えられます」

「待ってくれ!!何でそうなるんだよ!!確かにセイはいないって噓はついた!!でもそれだけで地獄の最下層送りだなんて……!!」

 

『黙りなさい』

 

 地の底から出したような低い声で閻魔天は説明する。

「あなた方の主だった罪は、殺人と殺人強要、ついでに偽証罪。ああ新田剣丞には女性関連の犯罪も付け加えておりますが」

「女性関連って……」

「まぁ剣丞だしな」

「剣丞くんだもんね~」

「剣丞さまだしね~」

「そこで納得しないでくれ……」

 それでも何も言えないのは思いつくことが様々あるからなのだろう。だがそれでも。

「頼む閻魔天様、俺はどうなったっていい!!だからこの三人のことを許してくれないか!?」

「殺人を許せと?人に殺人を強要することを容認せよと?」

「それは……!」

 何も言うことが出来ない。

 有史以来、人は戦を繰り返してきた。

 人が人を殺す。それは本来あってはならないこと。誰しもがわかりきったこと。だがそれでも。

「確かにそれはそうかもしれない!!だがそうしなければこっちだって殺される!!」

「そうならないよう話し合いの場を設け、無用な血を流さぬよう努めることこそが当たり前なのでは?いくら時間が掛かろうと、互いの条件を摺り合わせ妥協点を探し出す。これが最善なのでは?」

「じゃあボクらはどうやって手柄を上げればいいんだ!!さっきから聞いてたけど、閻魔様だからって!!」

「ちょっと和奏ちん!!」

 あわてて和奏を止めに入る雛と剣丞だったが、閻魔天は静かに言った。

 

「それはただの『逃げ』でしょう。武功以外の手柄の立て方を考えようともせず、一番手っ取り早い道へ逃げただけのこと。この裁きは、あなた方の浅慮が招いた当然の結果なのです」

 

 自分の部隊の人間に、どれ程相手を攻め立てろと命じたことか。

 自分の部隊の人間が、どれ程相手に殺されたことだろうか。

 そして自分の手で、どれほどの命を奪ったことだろうか。

 何も言えない。言うことが出来ない。後悔ばかりが次々と沸きあがり、心を飲み込んでいく。

「反論は無し、ですか」

 そう言った閻魔天の背後には、自分達をこの地獄へと飲み込んだあの巨大な門が現れた。裁きは下った。自分達はもう二度と帰ってこれない地獄へと堕とされるのだと。

 そしてギギギと音を立てながら、ゆっくりとその門が開いてゆく。その時剣丞はぎゅっと誰かに抱き着かれる。

 見れば和奏に雛、犬子だった。

 最後まで愛する人と一緒にいたい。その気持ちの表れなのだろう。

 そしてついに、門が完全に開ききるその時だった。

 

「閻魔天!その裁き、異議を申し立てる!!」

 

 その声に、全員が後ろを振り返る。そしてそこにいたのは。

 

「「「「セイ(くん)(さま)!!!」」」」

 

 我らが陰陽師、蘆屋清明だったのだ。

 

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