星と楓と電脳戦機~Maple of T.E.M.J.I.N~   作:提夢 刃

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明けましておめでとうございます。前回の投稿から3ヶ月………と2年…でしたか……大分間が空いてしまい申し訳ありません。理由は色々とありますがあとがきの方に詳しく書かさせて頂きたいと思います。投稿を待ち侘びていた方がいらっしゃるか解りませんが気ままに読んで頂ければ幸いです。


ROUND6 リス港口

 

「わぁ!綺麗ですね〜!」

 

 

 俺の横で感嘆の声を上げる椛を横目に俺は感動と若干の恐怖で複雑な心境を抱いていた。人生で飛行機なぞ往復で2回しか乗った事が無いにも関わらず飛行船の甲板でビクトリアアイランドを眺めているからだ。幸い、飛行機より速度や揺れは無く心地良い風が肌を撫でているだけで済んでおり、ゲームでは無く実際に見るビクトリアアイランドは最新技術のCGとか比べ物にならない程綺麗で、風景とかで感動する事はあまり無い俺でも思わず見惚れてしまっている。

 

 

「はあ……」

 

 

 見惚れていても無意識に小さな溜め息を1つ零してしまい手摺りに顎を乗せる。結局一週間アムホストで訓練漬けの毎日だった。椛も時間は特に気にしてなかったので問題は無いのだが、疲れた。だが、人間こってり絞られて栄養のある食事を摂れば変わるらしい。ぽっこり出ていたお腹は鳴りを潜め割れているのが分かる位の腹筋が出来ていた。心無しかお腹の為にワンサイズ大きい物を購入した愛用のパーカーが大きく感じる。頬も無駄な肉が落ちシュッとした気がするし何より身体が軽い。不必要な贅肉が消え、必要な筋肉が増えるとこうも変わるのか。

 自分の事はさておき改めてビクトリアアイランドを眺めてみる。1つの大陸に様々な風情が取り入れられている島はゲームならではの光景だ。長閑そうな地域、工場地帯の様な地域、断崖絶壁の地域、神秘的な森が広がる地域。巨大クジラが停泊する海域。そして、中央に暗く深い森が支配する地域。

 

 

「エイダ、あそこがこの船の到着場所、リス港口。時計回りでカニングシティ、ペリオン、エリニア、少し離れた場所にあるクジラはノーチラス。そしてこれから向かうヘネシス」

『俯瞰マップ及びライブラリを更新しました』

 

 ……待て。何か見覚えの無い城と巨大な桜の木があるぞ。場所的に城はヘネシス、桜の木はエリニア関連な気がするけどどうなんだろう。

 

「椛、あそこの城と桜の木の場所って知ってる?」

「あそこですか?詳しくは分かりませんがキノコ王国とエウレルって所ですね」

 

 

 流石は楓の精、詳細は分からずとも地名とかは知識として頭に入っているらしい。正直行ってみたい。

 

(……けど、やるべき事がある。全てが終わったら色々と巡ってみたいな)

 

 

 その為にも先ずは椛の目的を果たさなければ。生きる目的を見つける事は良い事だが、目先の事すらままならないのならそれは目的では無くただの妄想だ。俺はまだ少し身体を鍛えただけの一般人という事は忘れてはいけない。T.E.M.J.I.N.もあるが毎度頼れる状況が続くとは思えない……反動も辛いし。

 それはそうと、俺達以外にも甲板には冒険者がいるのだが全員雑談に勤しんでいて景色でワーキャー騒いでいる人は誰もいないのである。まあリス港口からサウスペリに向かう間に見てると思うのでわざわざ騒ぐ程でも無いのか。

 

 

「エイダ」

『はい』

 身体を反転させ手摺りに寄り掛かりながら空を仰ぎ、思わず用も無いのに呼んでしまう。返事をさせてしまった以上何か言わなければ。

 

「あー……まあ、これから大変だろうけど頼むよ」

『プログラムである以上命令通りの指示に従います』

 

 

 命令、って程じゃ無いんだけどな……と言う言葉を飲み込むとそろそろ到着すると言うアナウンスが流れた。後ろを振り返ると船の高度は下がりリス港口は目と鼻の先だった。

 ふと、ジール教官が言っていた言葉が脳裏に過ぎる。HPの変わりとなる代物が生命バリア、と呼ばれるらしい。()()()()()()()()産まれた時から生命バリアがあり、それがある限り衝撃や攻撃等受けても大怪我しないらしくバリアが無くなった時に致命傷を受け、治療を受けないと死に至る。生命バリアは就寝、飲食等疲労回復と同等の手段で回復するとの事だ。ただ、怪我は負わなくても衝撃自体は来るから普通に気絶とかはするらしい。

 

 

「何か考え事ですか?」

 

 

 俺のアンニュイな気分を察したらしく椛が声を掛けてくれた。そう言えばまだ言って無かったな。

 

 

「ああ……生命バリアの事でね」

「生命バリアですか。私は何か沢山あるらしく将来凄い事になりそうだ、って言われましたよ。颯輝さんはどうだったんですか?」

「俺はね………どうやら生命バリアは無いらしい」

 

 

  俺が言い終わると同時に大きな水飛沫を上げ船が海に着水した。

 

 

 

 

 

 ++++++++++++++++

 

 

 

「あいつは大丈夫だろうか……」

「おや、ジールが一人の冒険者に肩入れするなんて珍しいですね。はい、コーヒーです」

「違うわ馬鹿者ーーまあ、確かに良い眼はしていた。だがな……少し気掛かりがあってな……」

 

 

 午前の訓練が終わりギルドの壁に寄り掛かりながら新米冒険者を眺めるジールの呟きを拾ったのは同じ教官のアマルだった。緑色の癖っ毛で少女の様な大きい瞳を持つ彼は教官の中でも最年少で容姿と優しい性格も相まって教官には見えないが、彼の隠密スキルとサバイバル技術はトップクラスの腕前を持つ。

 アマルが持って来た紙コップを受け取りつつ茶化す様な発言に軽く睨み返すとブラックコーヒーを啜る。

 思い返すのは少し前まで訓練をしていた男ーー日下部颯輝の事だ。冒険者には相応しくない体型、あまりパッとしない顔だったが眼は生きていたーーいや、正確には最近生き返った、と言った方が正しいかも知れない。

 

 

「人一倍厳しい訓練させていたあの方ですよね?確かに憧れで冒険者に『なりたい』、ってより『ならなきゃ』、って顔でしたね」

「貴様もそう言う風に見えたか。いや、それだけでは無いんだが……颯輝、と言ったか。あいつ、生命バリア()()()()()()ぞ」

「それって……」

「ああ、メイプルの加護に護られていない人間と言う事だ」

 

 

 生命バリアーー個人差で量の違いはあるが産まれた人間なら誰もが持ち合わせている生命のエネルギーを変換し多少の傷なら直ぐに治癒、大きい怪我なら和らげ致命傷を防ぐモノだ。しかし、万能な代物では無く打撃や高所からの落下等における強い衝撃には弱い。椛がマイの一撃で意識を持っていかれたのもそう言った理由でもある。単純にマイの一撃が椛の生命バリアを上回る威力だった所もあるが。

 

 

「今後増える、と言う可能性は?」

「無い、とは断言出来ないが厳しいだろう。発現しても微量だろうしハイパーボディ等のスキルで増やそうとするのはもっての外だ。現状()()()()()()()()()()()()()

「……大丈夫、でしょうか?」

「大丈夫かどうかは今後のあいつ次第だな。だが、何故無いかは気になるな。機械等の人間じゃないか、死人か。それか……」

「それか?」

「……いや……可能性が無さ過ぎて戯言になる。忘れろ」

 

 

 ーー別の世界から来た人間か、と言う突拍子も無い可能性にジールは自ら自嘲するかの如くフン、と鼻を鳴らし言葉を飲み込む。アマルの問い詰めには無視を決め込み残ったコーヒーを飲み切り、サウスペリの方角を見遣る。

 

 

(死ぬなよ……)

 

 

 余計なお世話かも知れないが、ジールは教官では無く一人の冒険者として颯輝の武運を祈り未だ詰め寄って来るアマルの首根っこを捕まえギルドの中へ入って行った。

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 ーーリス港口。ビクトリアアイランド南西に位置する港町。冒険者がサウスペリから船で訪れ、各自の道を歩み出す始まりの場所。

 俺は波止場でーー流石に船の近くだと迷惑になりそうなので少し離れたがーーリスの町並みを眺めていた。新人冒険者が蔓延る中如何にも上級者ですよ〜、とアピールしている装備の冒険者が混ざり港町故か流通も良く魚や野菜、果物等販売している店が賑わっていた。

 潮風と海鳥達の鳴き声が心地良い。瞳を細め海を見遣ると水平線が映った。良い景色だ。

 

 

「あの……生命バリアの事なんですけど……」

「別に椛が気にする事じゃないよ。普通に斬られたり撃たれたりしたら人は死ぬ。それだけの話」

 

 

 何故か申し訳無さそうにする椛に笑みを見せ問題無い事を伝える。この世界では当たり前らしいが自分からすれば元より気にして無かったし認識が『当たり前』から『オワタ式』にちょっと変わったぐらいだ。

 

「それより、直ぐにヘネシス行っても良いけどギルドで情報収集がてらクエスト依頼でもしようか」

「はい!」

 

 瞳を細め水平線を見遣った後町中に向かって歩き始める。近付くと段々とあの懐かしいBGMが頭に流れてくる……いや、実際に流れてる!?

 

「ももも、椛っ!?この曲は!?」

「えっ!?ーーいや、流石に分からないです……」

 

 

 思わず気分が高揚し口早に椛に尋ねるが、精霊の分け身である椛も分からないらしい。

 

 

「ギルド行けば誰か知ってるかもしれない、早く

 行こ……っと…すみません!」

「…………ッチ」

 

 丁度道を曲がろうとすると黒いローブを纏い深くフードを被った3人の内の1人にぶつかりそうになるが辛うじて避け謝罪する。が、返って来たのは一瞥と舌打ちで思わず眉間に皺を寄せる程不快感を露わにしてしまう。

 

 

「ーーはぁ?随分態度悪いな。盗賊は無礼が売りなのか?」

「その通りですけどせめてもっと近い時に言ったらどうです?」

「いやぁ……まぁ…ねぇ…?」

 

 

 椛に背後から指摘されるも、いきなり赤の他人に正面から文句垂れる程の勇気は持ち合わせていないので適当にはぐらかし再び歩き始める。ふと、何かあの盗賊達に違和感を覚えたが何だったろうか?盗賊らしい服装に外套で見えなかったが紅い宝石の様な物が見えた気がする。まあ、入手方法はアレだがそう言うのを売買して生業としてるのだから不自然では無い筈だが……他にはーー

 

『前方注意』

「ニラクちゃん!前!」

「え?ーーぅお!?すみませんっ!」

「あった!?ーーすみません!?」

 

 

 突如エイダの警告と共に女性の声が聞こえ何気無く彷徨わせていた視線を正面に戻すと目の前に美形な顔があった。相手も余所見していたのか俺と同じ反応で互いに身体を右に逸らし難を逃れる。

 

 

「すみません、余所見してて……怪我は無いですか?」

「大丈夫です。此方こそすみませーーーー」

 

 

 転倒も接触も無かった為簡潔に返答し改めて謝罪しようと()を見遣る。

 

 

「?」

 

 

 大きくキリッとした目付きに蒼い瞳。凛々しく綺麗整えてある眉毛に後頭部で一つに纏め上げられポニーテールの様な髪型、通称『サムライ』ヘアーの薄茶色い髪。キョトンと此方を見る姿は中性的で一目見て女性と勘違いしてしまいそうだが相手は間違いなく男である。

 何故男と断言出来るかと問われれば先ず声が若干の幼さを残しているもののしっかりとした青年の声色だし服装も男用の装備だ。仮に女装しても間違えない自信は俺にはある、だって――――

 

 

「――ぁうぐっ!?!?!?」

 

 

 突如この世界に来て2度目のノイズが脳を刺激し痛みに思わず膝を付き頭を押さえる。

 

 

「大丈夫ですか!?やっぱり何処かぶつかったんじゃ……」

「――いや……く、ぅ…はぁ……大丈夫…収まりました……」

 

 

 屈んで俺を支えようとした彼にやんわりと頭を振り問題無い事を告げる。まだ少しズキズキと響くがゆっくりと立ち上がる。改めて彼と背後にいる連れであろう女性が心配そうに見守っていた。女性の身長は椛より少し高い、160cm位だろうか、純白のような銀髪を耳辺りで結いそこから更に膝ぐらいまで垂れていた。髪の手入れが大変だと思ってしまったのはあまり髪型とかお洒落に疎い所為だろうか。身体のシルエットは大きめな白いマントと純白のローブで覆いパッと見三角錐に頭がある感じだった。

 

 

「……持病なんです、だから気にしないで下さい。ところで何か探し物ですか?」

 

 

 これ以上触れられても時間の無駄になりそうだったので上手くはぐらかし尋ねた。彼は納得行かなさそうな表情で少し唸るも本人である俺が言わない以上深掘りするのは失礼かと判断したのか俺の問いに答えてくれた。 

 

 

「あ〜……連れの杖が盗まれちゃいまして…怪しそうな奴探してるんですけど心当たり無いですか?メイプルサラスって言う杖なんですけど」

 

 

 聞くと後ろの女性の杖が盗まれたらしい。先端に紅い宝石が施され紅葉と羽根のような装飾がある杖だそうだ。それにしても怪しい奴か……

 

 

「――あ!エイダ!さっきぶつかった盗賊の奴等分かる!?」

 

 

 咄嗟に腕を出しエイダ(メイプルウォッチ)に話し掛ける。事情を知らない2人は驚き瞳を丸く開くがお構い無しに反応を待つ。

 

 

『人物ライブラリにデータが無い為識別する事は不可能ですが、ランナーの過去に見た視界を参照する事は可能です。』

「本当か!?早速頼むよエイダ」

『了解しました。過去10分前の視界をチェック――メイプルサラスの情報から適合率を計測――スキャニング――コンプリート。盗賊らしき人物が持っている物とメイプルサラスの適合率70%』

「はぇ〜……随分高性能のAIを入れてるんですね……ベテランの冒険者さんですか?」

「いや…何と言うか……」

 

 言葉を濁らせ失言する前に感心する彼に聞くとMWにもAIを導入する事によって利便性の向上を図る事が出来るらしい。しかし、入手出来るパーツ……もといアイテムは軒並み高レベル帯、ネオトウキョウとか機械系エネミーにあるとの事。音声認識、効果は落ちるが道具の自動使用、音声による通知等々。

 

 

『私を普通のAIと一緒にしないで下さい』

「すごっ!?会話も出来んの!?」

 

 

 そう言って目の前の青年は瞳をキラキラ輝かせながらMW(エイダ)を見つめる……いかん、話が脱線して来た。後ろにいる女性も心配そうに青年の背中と俺を交互に見遣っていた――今にも泣き出しそうな表情をしていたので、若干気まずく感じた俺は慌てて距離を開け椛に後を頼む。

「ごめん椛!先にギルドに行ってこの人達と情報共有と警備兵みたいな人達呼んでおいて!」

「え!?サツキさん!?ちょっと待っ――」

 

 

 椛の制止に応える事無く俺は来た道を戻り盗賊が移動していた方角へ走る。

 

 

『敵戦力及び地形が不明瞭、現在の装備状態により交戦はおすすめ出来ません』

「だからって何もしないままだと逃がしちゃうかもだろ?場所はまあ…随時マッピングする感じで、とにかく時間稼ぎだよ」

『了解しました。偵察及び隠密行動を優先し、交戦は控えて下さい』

「りょ〜かい!」

 

 

 戦術的起動拡張抑制神経接続具現鎧(テムジン)とエイダがいるなら人助けだって簡単に出来る。無力な自分(前世)とは違うと言う事を証明出来る、そう思うと俺の口端は無意識に緩んでいた。




 青年 「男」 サツキがリス港口でぶつかりそうになった青年。女性からはニラクと呼ばれていた彼は女性と見間違えられる程整った顔立ち。メイプル的には黒のサムライヘアーに顔……何だっけかな…キリッとしていて眉が凛々しい奴。サツキの記憶に引っ掛かり頭痛の種となったが果たしてどうして…?

 女性 「銀」 青年ニラクの連れの方。投稿が遅くなった原因の一つ。結局今の今までキャラ容姿を決めあぐねていた結果、最初は皆大好き騎空団長を「ちゃん」付けする背の低いキャラみたいな容姿にしようとしたが悩んで結局KAN―SENのロイヤル装甲空母な方に。

 遅くなった理由 「遅」 前半は多忙とメンタルダメージによる無気力と、後半は妄想が捗り小説を先に進め過ぎた結果先の流さと進め方とやりたい事が沢山ある事に絶望したり、無駄な拘束及び外部的理不尽による少ないプライベート時間の中からオーバーなウォッチとかメカなブレイクとかで捗らなかった……

 これからも細々と投稿して行きたいと思うので応援して頂けたら嬉しいです。コメントとかお気に入りしてくれたらもっと嬉しいです……

 此処まで読んで頂いた方がいらっしゃるか解りませんが最後まで読んで頂き有り難う御座いました!次回の更新を気長にお待ちして頂ければ嬉しいです!
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