「じゃあ次。この名前。なんて読むの?」
「これがアクアマリンでこっちがルビイ」
星野愛久愛海と星野瑠美衣。アクアマリンはやめて差し上げてほしい。
普通の子供ならそれだけでぐれてもおかしくない。いくら最近キラキラネームが多いとはいえ。
「あー、宝石の名前かー。良い名前だねー」
「センス」
やはりアイはアイだったか。
「アイはこの子たちを守るために刺された状態でストーカーと会話していた。それでストーカーは退散。アイは死の間際、二人の子供に今まで言えなかった愛してると口にして、それが嘘ではないことを確信したまま死んでしまう」
「そうなんだ。未練はあっただろうけど目的は果たしたんだね」
「物語ならいいアクセントだけどな。オレはそれをアイにやられるのはきついぞ」
今のお前との関係でそれが起こったら自殺するわ。いや、引き取って育つまで面倒を見るかもしれん。
アイはオレの発言を気に入ったのか機嫌がいい。
多分オレがアイのことを知っているのが原因なんだろうが、オレに対しては嘘をつく必要がないと認識したのかもしれない。
本来、超陰キャのアイさんらしからぬご機嫌さと明るさだが、うん、わかるよ。
陰キャでもいつも暗いわけじゃないんだよな。
楽しい時は明るくなる時もある。
その後もアイが死ぬまでの流れを覚えている限り伝えて話をする。
原作でのアイがどんな感じであったかなど覚えている限りは伝えきれたと思う。
アイドルとしての成功、メンバーとの確執、産休をとったこと(精一杯のマイルドな表現)、復帰後いきなりばらしてしまいそうになったこと、双子がライブでオタ芸してたこと、映画監督と仲良くなったこと、双子が処女受胎とか言い出したので父親と会わせたほうがいいのではと行動したらストーカーを差し向けられてドームライブ当日に亡くなってしまったこと、アイのことを大事に思っていた苺プロの斉藤社長は絶望して失踪してしまうこと、双子のことはその妻のミヤコさんが引き取って育ててくれたこと、いや本当にミヤコさんには感謝しろよ、アクアの方は父親が犯人だとあたりを付けて復讐に人生をかけるようになってしまったこと、ルビーはアイを追ってアイドルになることにしたこと。
少し休憩を挟んだ後、気分転換に二人で何曲か歌う。
じゃあ、続きをするかと二人で並んで座りノートを見る。
「これが最後だな」
と言ってページをめくる。
「詩? なんだかところどころ穴埋めされてない感じになってるけど」
「歌だな。アニメ推しの子のオープニング。アイドルになった君自身の歌だ。タイトルもまんまアイドル。流石にオープニングにミスリードは入れてこないだろうし、アイドルになった君そのものが書かれているからここには嘘は入ってないと思う。穴があるところはオレが覚えてなかったところだ。いくら好きだったとはいえ十年以上前の歌を全部は覚えてなかった。もともと記憶力は弱いんだ。よくここまで覚えてたくらいだ」
アイが読み込もうとするのを止める。
「試しにオレが歌ってみるから、聞いとけ。覚えてないとこは鼻歌な」
「おー」
アイが拍手する。
「そんなにうまくないから期待するなよ。曲を乗せたほうがイメージがつかみやすそうだからやるだけだからな」
カラオケの点数なら80くらいだ。
ノート一緒に見ながら歌い始める。
人差し指でリズムをとりながら歌う。
これ、曲として聞くより自分で歌ったほうが理解が深まるんだよな。
「はい、お終い。ご清聴ありがとうございました」
隣を見るとアイが目をキラキラさせていた。
体に籠った熱を吐き出すように、空気をゆっくり吐き出すとオレの方を見てこう言った。
「凄いね。テルくん。この歌。なんだかアイドルになった自分が見えたような気がしちゃったよ。暗いとこもあったけど、最後良かった」
「アイがオレと会わずにそのままアイドルになった場合の歌だからな。そりゃあ親和性が高いだろ」
「わたしって人を愛することができるんだって実感がわく曲だった……ちょっと待って、え、何それ? これアニメのオープニング? え? 公開処刑? みんな知ってるの?」
アイが気づいてはいけないことに気づいてしまった。
「待て、落ち着け。深呼吸しろ。知ってるのはオレしかいない(はず)。この世界じゃ広まってないからノーカンだ」
「あ、うん。そう。でも。えーやっぱり世界違ってもプライバシーって必要でしょ?」
まあ、オレも自分の半生を赤裸々に歌った曲が表に出たら世をはかなんでひきこもると思う。
「わかるけど。無理なものは無理。諦めよう」
ちょっと眉をひそめて、歌が書かれたノートを見ている。
顔が良すぎてどんな表情しててもこっちの視力が上がる。かわいい。
「……わたしも歌ってみる。聴いてて」
パネェ。この流れで自分も歌うとかすごいな。鋼の心臓が過ぎる。
オレがリズムをとり、アイがノートを見ながら身振り手振りを入れて歌い始める。
やばいな。アイさんお金が取れるレベル。いや、素人レベルではあるけど、アイがアイの歌を歌ってるというだけで脳がバグりそうになる。
さっきの、別の歌を歌ってた時とまるで違う。
簡単な身振り手振りだけで目が離せない。
こんな娘がアイドルやってたらそりゃガチ恋勢も大量発生するわ。
ライブで目が合ったと思っただけで恋する奴が出るのも当然だ。
壱護社長、見る目がありすぎる。
歌が終わる。
アイが息をつく。
「やっぱり、凄い。この歌。わたしこんな風に成長したんだ……」
オレは今まさに、君が成長している瞬間を見せられている。
アイドルはきっとアイの天職だ。
だが、やはりアイは表には出ないほうが……
こんな魅力を振り撒いたら、ストーカーが大挙して発生する。
しかも、今がはじまりだぞ。
原作でのアイだって、たった8年でドーム公演までこぎつけたんだ。
もっと早くトップまで駆け上がってもおかしくない。
「ねぇ、ここなんだけどさー」
しかし、決めるのはアイだ。
おそらく全部を話さなければ彼女の結論が変わることもあったのかもしれない。だが、言わないという選択肢がオレにはもはやなかった。
アイは結論を出した。
「わたしアイドルになる。ねえ、テルくん。アクアとルビーのこと、わたし愛せたんだよね? まだ産んでないからこの子たちが自分の子供だって実感なんてわかないし、カミキくんとなんて考えられないけれど、私は私の子供だった子を見捨てたくない。産んだからってこの子たちにはならないかもしれない。でも私はお母さんみたいになりたくない。私にできるのはアイドルになって子供を産むとこまで。そこまでは私が手を伸ばす」
おそらくは彼女が一度壊れたとどめの記憶。
ああ、駄目だ。
これを止めるのは無理だろ。
アイは愛を知るためではなく……
「テルくん。手伝って」
「わかったよ。アイ」
アイの瞳には白の星が強く輝いてるだろう。オレがゴロー先生だったら焼かれていた。いや、オレも焼かれているのか?
「星野アイは欲張りなんでしょ?」
「私が母親だというなら」
「子供は、迎えに行かないとね」
君は完璧で究極のアイドル。
焼かれてて何を手伝ってと言われているか察することができない系オリ主。
お前のやることならなんだって手を貸すさ(そこがたとえ地獄でも)くらいに思ってます。
求められてる方向性が違うんだわ。
正直このまま終わったら終わったですごくきれいに終わりそうなんですが、普通に続きます。
一区切りついたし、星9評価つけてくれてもいいのよ(チラ
あと、感想返しって楽しいですね。もっとくれてもいいのよ?(チラチラ
自分がするまでよく全員に感想返しとかできるなこの人たちとか思ってました。(ゴメンネ