キミガマリア   作:れいんいる

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A.星野アイを幸せにしたかっただけ



012キミニシュクフクヲ

 この世界における魂とは何だろうか。

 

 こんなことを聞いたことがある。

 臓器移植を行ったときに元の持ち主の記憶が移植者に生えてきたというものだ。

 これは人間に魂があることを前提とすると、臓器とともに切り分けられた魂の記憶が反映されたということではないだろうか。

 そういった機能の確認されていない臓器に、記憶が保管されていると考えるよりはよほど正解に近いように思える。

 大多数の人間に前世の記憶がない以上、人の魂の記憶はリセットされているということである。

 しかし、そう考えるより、もっと自然な可能性がある。

 

 

 

 魂は崩れ星と海に還っていった。もう二度と再形成される事はない。

 死は死だよ。

 

 

 

 この科白はよく覚えている。

 オレも同じように思っていたからだ。

 

 人は死んだら無に帰る。

 魂がもし存在していたとしても死ねばその魂は肉体とともに崩れ去り、何かを残すことはないのだ。

 崩れ去った魂は混ざり合い、また新たな命の燃料として使われるだけに過ぎないのだと。

 人の成長とともに、その影として魂も形作られるに過ぎないんだ。

 

 おそらくオレの魂も同様だ。

 崩れてない魂をそのまま体に突っ込まれたせいで魂に体が影響されてるが、これはバックアップが起動したようなものだろう。

 本来、人にとって肉体が主、魂が従のはずなのだ。

 いずれオレも肉体が主、魂が従の存在になるだろう。

 もうなっているのか?

 その境目は自分ではわからないのだろうけど。

 

 まあ、この世界はオカルトがある世界だ。

 もしかしたら、魂を主にし、魂のみで生き延びる方法とかあってもおかしくないか。

 興味は全くないが。

 ああ、原作の幼女は肉体ありそうだったな。

 あれ、下っ端っぽかったし魂が主になっただけの元人間の可能性もあるか。

 魂が主なら肉体的なものはどうにでもなりそうだし。

 望んでなったのか、運悪くなったのかは知らないが、ああはなりたくない。

 

 オレはこのまま、アイと普通に生きていきたい。

 いずれ死が二人を分かつまで。

 

 

 

 

 「ねー、テルくん。そんなパチパチやってないで、私に構おうよ」

 「んー? どうした。漫画見てたんじゃなかったのか?」

 「見終わった」

 

 うん。わがままでよろしい。

 アイは自分がしてほしいことをそのまま伝えることこそコミュニケーションと思っている節がある。

 せっかくのオフの休みなんだ。

 今日は外ではなく、オレの家で遊んでいる。

 家族は出かけており、二人でオレの部屋でのんびりしている。

 

 「今度のはどうだった?」

 

 アイが今まで読んでいた漫画の感想を聞く。

 今回読んでいたのは妹が読んでみてとオレの部屋に置いて行っていた少女漫画だ。

 

 「あまりよくわからなかったなぁ。なんでこの子たち友達同士で、男の子取り合ってるんだろうって」

 「あー、少女漫画だからな。恋は人の視野を狭めて他の物を見えなくさせる。友情よりも、より強く感じた恋を選ぶこともある。恋をした時の細かな感情の変化とか、そういうのに共感を感じたり、これからどうなるのかっていうのを楽しむような作品だから。女の子は割と好きだけど、やっぱり合う合わないはあるし」

 「恋ってあんまりよくわからないんだよね。どういう感じなんだろう」

 「んー、そうだな。人によって考え方も違うから、あんまりこうとは言えないんだけどな。一般的なのはネットで調べれば、ぱっと出てくるけど。これだってあまりあてにならない。オレは特定の個人に対する感情がブーストされている状態を恋だと思っている。本来感じる以上のものを相手に感じている状態だな。まあ、何でそういう状態になるかと言ったらそれも人それぞれで、これというのはない。一目ぼれなんかは見た瞬間、手に入れた情報が自分の中でぴったりはまるから起こるんじゃないかな。あとは強いインプレッション、印象だったかな? これを受けて心がバグった状態だとか」

 「ふーん、テルくんも私を初めて見たとき、凄く驚いてたけど恋に落ちた感じだったの?」

 「あー、恋とは違うなぁ。でも、確かに今言ったのと同じ状態だな。まあ、恋っていうのは双方向にならないと辛いことも多いしな。恋は基本自分に作用するものだから。実際、人によっては勘違いですませる人もいるし。そういう状態になった自分を楽しむためにする人もいる」

 

 アイは考えるようなしぐさをするとぶっこんで来た。

 

 「ねえ、テルくん。前世だと好きな人とかいなかったの?」

 

 まあ、愛が知りたいってのなら、色恋沙汰にも多少の興味がわくか。

 

 「一度だけ恋をしたことがある」

 「え。それ本当!? 何、どういう人?」

 「なんだ。やけに食いつくな」

 「いや、だって今まで話しててそういうの感じたことなかったし」

 「まあ、片思いだったしな。こう知り合って話をして、フィーリングが合ったんだろうな。ああ、これが恋なんだろうなと思った」

 「はーわかるものなんだ。それでどうしたの?」

 「どうもしない。オレは好きになった人の顔も覚えられなかったからな。勘違いのようなものだろうと判断した。あのころは顔と名前を覚えられないことが当たり前すぎて、自分が発達障害だなんて認識してなかったからな」

 

 この欠点は下手にごまかせてしまうと医者にかかることもないからな。

 

 「あー、わたしも人の名前と顔が覚えられないのって当たり前だったし、そっか、そうだよね」

 

 アイは少し考え込んでしまった。

 このままじっとアイのことを見ているのも楽しかったが、考え込んでる姿をじっと見るのも趣味が悪いかと作業の続きをすることにした。

 

 少しするとアイから声がかかった。

 

 「ねぇ、アラフィフー」

 「んー、なに? あとアラフィフはやめてー。まだ十代だから。思った以上にグサッとくる」

 

 久しぶりに言われた。

 

 「じゃあ、お願い聞いて」

 「いいよ」

 

 別にそんなの必要ないんだけどな。

 

 

 

 

 

 「――お父さんって、呼んでいい?」

 

 

 

 

 

 「いい、い!? なんて? いや、聞こえてた聞こえてたけど。ちょっと待って。いや、最終的にいいとは言うのは確定だけど、ちょっとなんでそうなったか考えるからちょっと待て」

 「いいよ」

 

 椅子に座ったままアイの方に振り返り、右手を広げてちょっと時間をくれと要求する。

 

 何だそれ。

 どういうことだ?

 何でそういう話になるんだ???

 

 オレがアイのお父さん?

 いや、確かにオレも星野だけど。

 そもそも同い年、というには確かに年上として接してきてた感じはあるか。

 でも別に苗字が同じでもお父さんってことにはならないだろ。

 

 ええ? 何かしたか?

 覚えがないんだが。

 オレとアイの関係って友達だろ。

 あ、でもアイのことは守るものって考えが基本にあるよな。

 壱護社長にも保護者かって言われてたし。

 まあ、守るって言っても実際の現実問題にはほとんど手を出せないから、心に負荷があまりかからないように息抜きをさせるくらいしかしてない気もするが。

 

 ええ? なんでそうなった?

 確かにただの友達というにはおかしな関係ではあるという自覚はあった。

 あれってお互いが特別だって自覚があるからだよな。

 あ、でも思い返してみるとオレとアイの付き合い方って親子っぽいか?

 

 いや、これ親子だ。

 同い年だからそうとは意識してなかったけどこれは確かに親子っぽい。

 子供なんて持ったことなかったから全く意識してなかった。

 

 え、いいのかこれ?

 いや、別に問題はないのか?

 別に外でも言おうっていうわけじゃないだろうし。

 まずいのはオレの性癖が壊れる可能性がある点だけか……

 問題はないってことだな。

 

 

 「よし、いいぞ。どんとこい」

 「わかった。準備するから動かないでね」

 

 準備?

 

 アイがオレの乗っている椅子をずらし、椅子の後ろに回って首に抱き着き、オレの顔の横にアイの顔を寄せる。

 そのままアイは何度か深呼吸をした。

 

 抱き付かれたのなんて初めてだったので、心臓がばっくんばっくん鳴っている。

 顔も赤くなっているに違いない。

 

 

 「お父さん」

 

 

 耳元で呼ばれたためぞわっとする。

 一気に体が硬くなる。

 

 

 「ふふ。お父さんだーいすき」

 

 

 アイが囁くように笑う。

 思いもしない言葉を言われたため、また体が硬くなる。

 

 

 

 「お父さん」

 

 

 

 「愛してる」

 

 

 

 決定的な言葉が囁かれた。

 

 

 

 「ふふ、ふふふふふ、言えた。うん。嘘じゃない。ほんとうだぁ」

 

 「愛してるよ。テルくん」

 

 「たまに、お父さんって、呼ばせてね」

 

 

 

 アイの嬉しそうな声が耳元で響く中、オレは身動き一つ取れず混乱していた。

 

 「あ、勘違いさせちゃったら嫌だなぁ……」

 

 頬に湿った感触がした。

 その感触がなくなるとそのままアイはオレの顔を覗き込み言った。

 

 「ふふ、混乱してる」

 

 そのまま唇にキスが落ちる。

 アイはゆっくり唇を離す。

 

 

 

 「テルくんは、私に遠慮なく恋をして」

 

 「それで、16才になったら」

 

 「お父さんになってね?」

 

 

 

 

 

 

 

 目一杯の祝福を君に。

 

 

 





あとがき

でも流れてくる曲はメフィストなんだ(ゴメンナサイ

お前がパパになるんだよ!(ダブルミーニング
やべーもん書いてしまった……
人によっては合わないと思う方が出るのはわかっているのですが、変えようがなかったです。
ごめんなさい。
無理無理倒錯感えぐいってとなる人がいるのもわかるんで本当にすみません。

12歳の、父親がいたことがなく、誰からも愛されてこなかった少女に対し、見かけはともかく親子ほど年の離れた男があのムーブをして、こうならないよう書くのは無理でした。
お父さん? この人お父さんじゃない? お父さんだ…… みたいな。

流石に匂わせないとやばそうと思ったのでちょくちょくいろいろしてたのですが言うわけにもいかず。
気付いていた方黙っていてくださりありがとうございました。

見直してみると一貫して大好きなお父さんにしている反応になっているはずです。
その後のオリ主の行動もその考えを補強してしまっています。
パパと結婚するー(同い年)な感じです。
いえ、別にアイさんに結婚願望はないんですが。
未来においても「あー、しといた方が便利なんだー。なら入れとく?」くらいな感じですね。
それに実際はそれですらなく「パパの子供産むー」ですから(コワイ
ちょっと自分の脳内アイさんエミュがバグってる可能性があります。

行動内容でクリティカル引きすぎましたね……
もう、005話の後は友達(お父さん)。テルくん(お父さん)ってルビをふってるつもりで書いてました。
もちろん本当の父親と思ってるわけじゃないですよ。
でも立ち位置が完全にお父さんなんよ。
オリ主くんもアイが子供産んでから芸能界復帰しなくてもいいやと思ってたのって、養っていく気満々だったからってことなんですよね。
アイの方も一生一緒にいる気なので相思相愛。
アイの生い立ち的にも男に対する愛情より家族に対する愛情の方が自覚しやすくなってるというのもありますし。
ルートに入るのは不可能だが入ってしまえば超イージーになる感じです。え、何で入ってんの???
自分で書いといてなんなのですが、こんなことになるとは思ってませんでした。

あとルビーの母親だし……
ルビーと違って精神的にはともかく肉体的には全く問題ないから……(ユルシテ
血は争えないんやなって。

「優しくて照れ屋なちょっと頼りないけどいつでも見守ってくれるわたしのことを何でも知ってて何でも受け入れてくれるちょっとぶっきらぼうなお父さんルート」
エンディングって感じです。

君はマリア。なら子供たちのお父さんは? マリアにとっても父なる……みたいな。
あ、でも始める前に祝福の歌詞知ってたら、題名は「君に目一杯の祝福を」になっていたと思います。
この歌を教えてもらえたのが特に嬉しかったです。

物語的にはここで完結です。
いえ、この後も続けようとは思ってますし、書きたいシーンも残ってるんですが、強制エンディングに入ってしまった感じですね。
ただ続きをどう書くか悩んでる感じなんですよね。大目標を達成してしまいましたから。
星野アイが愛を手に入れたので物語的には大団円。
あとはもう問答無用で幸せな感じです。
当初の想定ならもうちょっと普通の関係で、もうちょっと甘酸っぱく、愛を手に入れるのももっと後だったはずなんですけど。

盛り上がりをもって終われるのがここが最後なので完結って感じですね。
こう二人は幸せなキスをして終了的な。
いや、書いてれば増えるかもしれないんですけど。
ただ完結にするならこのタイミングが妥当かなと。
絶対に受け入れられると確信しているアイさんが、手に入るものを後回しにする理由がなかったのでここでエンディングとなりました。
仕込んだ伏線未消化というか、そもそもまだ原作に入れてさえいなかったんですけど、という感じなのですが、目的達成してのエンディングとなります。
話を作っているというより、キャラクター突っ込んで自動で動いてるのを書き出してる感じだから、こういうことになったりします。
RTA的にサブクエスト、何ならメインクエスト未消化も普通だから……ごめんなさい。

ここからは更新いつになるかわからないです。
ストックはすべて出してしまいましたし、書きたいシーンはあっても、書きたいことは大体書いてしまったんですよね。
ストーリー的には謎ばかり残ってますし、オリ主くんが動いた結果ここからどうなっていくのか見たい方もいると思いたいので書くつもりはあるのですが。
これからも読みたいと思ってくれる方がいるのであれば、続きはのんびり待っていてくださると嬉しいです。
エンディング後のアフターストーリーとして、話を進めて書いていこうかとは思ってます。
ただ、それより一気に時間飛ばしてアニメ2話まで行き、主人公をアイの子供に変えて過去は回想形式にしてもいいかもしれません。
この場合別作品の方が良いのかなと思います。
そうなるとこれと違ってがっつり書き込む書き方に変わるなぁ。
いえ、未定なんですが。

あと、これ書き上げたことでやりきったぜ的な満足感が出てしまい、創作意欲も満たされてしまった部分ががが。
アイさん大勝利希望の未来へレディーゴー的な。

正直書いててめちゃくちゃ楽しかったですし、自分で何これ面白いと繰り返し読んでたんで推敲も楽しかったんですけど、皆さんも楽しんでいただけていたなら幸いです。
では、長文読んでくださり、ありがとうございました。
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