短いけど投下。
A001エンディングの後に
「アイさん、アイさん。大丈夫?」
アイは壁の隅に寄せられたオレのベッドの上のそのまた隅に体育座りをして顔を伏せていた。
聞こえてはいるのだろう。否定するように細かに頭を揺らしている。
うん。大丈夫じゃないんだな。
しかしこのままでは話は進まない。いや別に話が進む必要はないか。気持ちが落ち着くまで存分に部屋の隅で丸くなっていると良い。
オレはパソコン机に備え付けの椅子に戻り、椅子のアームにひじを立て頬杖をしたままアイの様子を見続けることにした。
アイに「パパになってね」宣言を食らい、見事に頭の回転が停止したオレはそのままアイに抱き付かれたままだったが、アイはアイで時間が経つごとに自分が何を言ったのか思い返してしまったのだろう。
オレがそうであったように顔を真っ赤にしたまま、ベッドに四つん這いで乗り、そのまま隅で丸くなってしまったのだ。かわいい。
アイが言ったことは理解できたと思う。
要はアイにとっていなかったはずの父親という枠にスッとオレが入り込んでしまったということだろう。
確かにアイの境遇では他人に愛情を抱くのは難しそうだ。
アイが愛を求めたのは母親であり、アイが愛を抱いたのは自分の子供たちであった。
ああ、なるほど。あのアイが子供を作った理由が分かった。
どうやっても愛が分からなかったアイは本当に最後の手段として自分の子供を作るという判断をしたのだろう。
もうこれしかないという状況にまで追い込まれたアイはそこに手を伸ばしたのだ。
あのアイは本当に死産になったとしたら……
まあ、アイがそうなることはないだろう。
そもそもよく考えてみればアイの相手がいなかったことを完全に失念していた。
うん。カミキくんどうなってるかはわからないけど、いろいろ知ったアイがカミキくんになびくわけがないんだよな。
そして、どう考えてもオレが一番身近なんだ。
アイの「愛してる」って言葉はこの世で一番重い。
アイにとってそれは特別だ。
まさかオレに言ってくれるだなんて思ってもいなかったし、父親のように思っている男との子供が欲しいというのは少々倒錯的過ぎやしないかとも思うが、別に本当に父親というわけでもないから大丈夫。大丈夫なはず。
ただちょっとオレの性癖が壊れそう。パパ活かな?
あまりのことにおかしなぞわぞわ感が凄かった……
ああ、そうだ。まだ言ってなかった。
「アイ。愛してるよ」
アイがベッドの上で体育座りをして顔を伏せたまま、体を振り子のように揺らし始めた。かわいい。
少しの間揺れたまま、それが止まると顔を少し上げ恨めしそうに言った。
「嬉しいけど、追い打ちしないで」
「でも、ちゃんと伝えた方が良いだろ」
「そうだけど。ずるい。さっきはテルくんも真っ赤になってたのに」
「あの時はアイが赤くなかったからな」
恐ろしいほど妖艶だった。まだ12才であれとかちょっと将来が怖い。
照れてるアイはただただかわいいだけなんだが。
「また真っ赤にさせてやる」
「楽しみにしてる」
オレはお前になら何をされても喜ぶ男だぞ。
10巻ラストの陰キャ中学生アイさんがこんなんなってたら語彙力はお亡くなりになる。