イチャイチャするだけの中学生活の描写は諸事情により飛ばされました。
「テルくんテルくん来て来て」
誘われるままアイの座るソファに向かう。
アイの隣に座るとそのままアイがひざの上に倒れてきた。
「ふふふ。これでテルくんと毎日一緒だね」
オレも嬉しいがその体勢は年頃の男にはきつい。ナニとは言わないが体は正直なんだ。
そのまま抱き付いてきたり深呼吸したりしてくる。かわいい。
いまだに手を出していないオレの自制心はちょっと鋼過ぎやしないだろうか。
中学を無事に卒業したあと、かねてより計画していた通り同棲を始めることにした。
アイは芸能関係の仕事をしていることもあり、一年ほど前に一足早く施設を出て一人暮らしをしている。そこに転がり込む形だ。
もちろん壱護社長の許可は得ている。本当に壱護社長には迷惑をかけてばかりだ。
壱護社長もミヤコさんと結婚したことだし、順風満帆だということで納得してほしい。これから予定された爆弾が爆発することには目を瞑ろう。
アイは中学卒業後、高校に行く気は全くないようだった。
アイドルがやはり性に合っていたのだろう。アイドル活動そのものをとても楽しんでいる。
オレは少し悩んだが、これからの予定を考えるとどう考えても行っている余裕がなさそうなので、ある程度したら高卒認定を受けて大学まで行くつもりだ。
家族には心配されたが、両親に働きかけて幼いころから家の貯蓄で資産運用をしていた分のいくらかをこちらに融通してもらっているので金銭的な余裕はあるし、中学のうちに小説家としての道を開くことができていたので、最終的には認めてくれた。
資産運用は生活に余裕を持ってもらいたいと思い始めたものだったので、こちらに融通してもらうつもりはなかったのだが、どうも両親としては元手は出したとはいえ子供が稼ぎ出したものを家族のものとして全部使うのには気兼ねがあったようだ。
オレにはもったいないほどの両親だ。
アイとともにこれからの予定を大体話していたので、どちらかというとそちらの方を心配されたが、こちらの方がもはや変える余地がないので説得の余地なしと諦められてしまった感じだ。
悪いとは思っているがこればかりはどうしようもない。
年齢が年齢なので週1のビデオ通話等は約束させられたが、もともとこまめに連絡するつもりだったので問題はない。
「はい」
「うん」
「じゃあ、これまでとこれから、現状認識と何をすればいいかを一緒に考えよう」
ホワイドボードを横において話を始める。
「はーい」
「よろしい。まずは中学三年間の振り返りだな。アイはどうだった?」
「うん。アイドルするのは楽しかったよ。最初の年は駆け足だった気もするけど、そのあとは一歩一歩着実にって感じじゃない?」
「ああ、門外漢のオレでも一年目に武道館にねじ込んできたときはマジかよと思ったしな。たくさんいるアイドルグループのうちの一組だったけど」
「いやー、凄いよね。社長」
ほんとどこから枠をとってきたのかわからない。
「でも仕事は順調だけど、B小町の雰囲気はあまりよくないかな。やっぱり私が馴染めてない感じはあるかも。できれば仲良くしたいんだけど」
少し気落ち気味にアイが話す。
結局、壱護社長にはアイのことを説明できたものの、グループ間の齟齬を解消することはできなかったのだ。
当然である。いくら説明できたとは言え、それだけでなんとかなるならそもそもそこまでひどいことにはならないはずなのだ。
アイの人付き合いが良くなったわけではないし、アイのアイドルとしての魅力に他のメンバーが近づけたわけでもない。
壱護社長のフォローがあってもどうしようもない部分は出てくる。
「人付き合いは難しいよな。オレは家族を除けばアイよりも交友関係が薄いからな。あまりそれを苦に思うこともないし、助言できるほどの経験がない。嫌がらせとかは大丈夫か?」
「うん。そういうのはないよ。前に聞いてたようなことにはなってないから社長には感謝だね」
「良かった。壱護社長には感謝するとして、関係改善についてはあまり気を負わずできる範囲で何かあれば気を付ける程度にしておこう。その辺は変にがんばっても空回りしそうだ」
「そうだね。私もあまりうまくできる気がしないなぁ」
人付き合いが苦手なのは共通認識である。二人とも当たり障りのない会話ならそつなくこなせるのだが。
B小町、人間関係、あまり気負わずに、と記入する。
「あー、あと、ララライ行ったけど、カミキくんいなかったんだよね」
「それな。前にちょっと話したけど、ちょっと垂れ込んだのがうまく作用したのかも。ララライ自体が残ってるってことはなんとかうまく処理できたんだと思う。姫川愛梨の破局報道だけは見たけど、それ以外の情報は全く入ってこなかったしな。どういう流れでどう決着したかは確認したくても無理そうだし、カミキくんはまだ中学生だろうから今どうなってるかわからないけど、アイと出会うことがなかったのなら一安心か」
「そだね。今どんな人になってるのかが分からないのは怖いけど」
「触らぬ神に祟りなしだよ。ただでさえオレたちは人にとっては神様と言って差し支えない存在に目を付けられてるだろうし」
オレは生まれた時から。アイはどうだろう?
いまだに接触がないということは接触する気がないのか時期を待っているのか。
カミキくん、所在不明、と記入する。
「あまり実感のわかない話だよね。神様なんて」
「まあ、子供ができた時にも確認はできるだろう。普通にできる場合、双子の可能性はかなり低いはずだからな。もし双子ならほぼ確実になんらかの介入は受けていると思っていい」
「それでも私は双子だといいな」
「そうだな。オレも似たような立場だからアイがそう思ってくれるのは嬉しいよ。ただ、それっておそらくゴロー先生死んじゃうって話なんだよな。いや、生きたままコピってしまう可能性もあるのか? まあ、生まれ変わった場合でも、初期人格はともかく明らかに肉体に影響されて人格が変わってしまっていたから、どうあったとしてもオレたちの子供であるという点に曇りはないんだが」
「はやくアクアとルビーに会いたーい」
アイは今から会うのが楽しみなようだ。
「子供が一人なら普通の子供か、さりなちゃんだけ。双子ならさりなちゃんはほぼ確定、ゴロー先生はちょっとわからないが、可能性が高くなるのは確かかな。一人しかいないなら言わずもがなだし、わざわざ双子になるよう介入してくるなら魂が何とかいう理由での死産はないだろうからそこは安心してもいいと思う」
「やっぱりそこ何度聞いてもわけわかんない」
「ああ。予想に予想を重ねてるから想定そのものも間違っててもおかしくないしな。まあ、でも、もし転生してきていたとしても、3、いや4年は子供たちには内緒にしとこうな」
「なんで?」
ホワイトボードに子供、転生、4年は秘密、と記入する。
オレの提案にアイが疑問を呈する。
「子供のうちからオレたちが知っていることを知られたらどうしても遠慮が出てくるだろうしな。おぎゃばぶランドはともかく乳幼児の授乳は大事だし、ちゃんとただの子供として相手をしないと親子関係に影響が出そう」
最初から知られていることを子供たちが知った場合、親子関係がまともに築けるかわからない。なお、あとで伝えられた場合の子供たちの心労は考えないものとする。
せっかくのただの子供時代、少し短いが無条件に楽しむ期間があってもいいはずだ。
「そっかー。じゃあ、ちゃんと親子関係築けてからかな。私もあとでお父さんにおぎゃって良い?」
「うん。子供たちには悪いが内緒にしとこうな。家の中でなら好きにばぶって」
「やったー」
アイは甘え上手になったよな。うん、あと数か月の我慢。
「うん。ちょっと普通と違ってもうちの子は頭が良いんだね、で流すことにしような」
「他は何かあるかな? あ、今年中にドームは無理そうだから、やっぱりお休みの後はアイドルに復帰かなぁ」
「あー、できれば引退、休養後に女優として復帰がベストだったが。壱護社長には本当にお世話になってるからな。ならアイドル以外の仕事は復帰してから取ってく感じになるのか?」
「そうなると思う。テルくんのお嫁さんでも良かったけど、やっぱり楽しいからできれば続けたいな」
「そうだな。アイには合ってるんだろう。その辺はアイの希望第一だよ。オレは大丈夫だから」
そう言ってアイに笑いかける。
アイがアイドルでいる間は基本外に出ず缶詰だ。もともとインドア系だし、仕事も家の中で完結できるから問題はない。
「ありがとうテルくん。私テルくんのおかげでとっても幸せ」
「オレもアイと一緒にいれて幸せだよ。後ろはオレに任せてアイは好きにやるといい」
夢のように幸せな日々。