キミガマリア   作:れいんいる

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A004破壊

 「お父さんでーす」

 「お腹の子の父親です。雨宮先生にはアイがお世話になっております」

 

 推しのアイドルを孕ませた男がやってきた。

 アイとは比べるべくもないが顔の良い、清潔感のある男だ。そして若い。

 

 「あー、お名前と年齢は聞いてもよろしいでしょうか?」

 「月野ヒカルと言います。歳はアイと同じ16歳です」

 

 どうしろというんだ。

 

 「あー、聞いておいてなんですが話してもよかったんですか?」

 「はい。雨宮先生のことは信頼できる方だと伺っていますし、私も当分この近くで過ごすことになるのでちょくちょく来ますから、知っておいてもらった方が良いかと思います。アイがいる時点でばれたらお終いなのは変わりませんし」

 「テルくんかたーい。センセは良い人だからもっと気楽に話していいと思うよ」

 「そりゃアイは仲良くなったんだろうが、オレは初対面だからな。礼儀は大切だ」

 「えーセンセはそんなの気にしないって」

 

 僕は、僕はいったい何を見せつけられているのか……脳が、脳が壊れる。なぜ僕は推しのアイドルの男の相手をしなければならないのか。

 推しのアイドルの担当医だからだな。そりゃあ子供がいれば相手もいるよ。

 拒絶反応でゲボ吐きそう。

 

 「あの本当にすいません。アイのことよろしくお願いします」

 「ええ、もちろん。元気なお子さんが生まれるまでサポートさせていただきます」

 

 これは思った以上にきつい。

 

 「二人とも固いよ」

 「そのうちな、そのうち」

 「はっはっはっはっは。そうですね」

 

 ぐえー。

 

 

 

 話してみると月野くんは思慮深い性格のようだった。

 

 「こちらに当分いるとのことだけど、学校とかは大丈夫なの?」

 「ええ。もともと予定にあったことなので高校には通ってないんです。子育てしながら高校は無理だと思ったので、余裕があればそのうち高卒認定とって大学ですね」

 「16で子供が予定通り???」

 

 月野くんの言い分はあまりに理解不能な内容だった。

 

 「そうですね。母体に危険があるとか、アイドルなのにとか、そういうのを飲み込んだうえで、それでもアイはこのタイミングで子供を産むことを決めてましたから。本当なら止めるべきなんですけど、そう思うだけの理由もあるので私には無理でした。理由までは話せないですけど、すいません」

 「ああ、いえ、こちらも突っ込んだところまで聞いてしまいました」

 

 思慮深いけど、ブレーキになってない。

 ああ、でもアイは言っても止まりそうにないな。

 ならこの対応が妥当なんだろうか?

 

 「いえ、患者の状況を確認するのもお仕事でしょうから、いろいろ気にかけてもらっていますし、現状を知った上で助けていただきとてもありがたく思ってます」

 「医者として当然守秘義務もありますし、口外することはないので」

 

 どう考えても、この歳で親になるタイプの子供じゃない。

 それはそれとして羨ましい。

 

 「あの、誰かに知られた場合、私たちもですが、先生や病院にも迷惑や危険があったりするかもしれないので、もし危ないと思ったら身の安全を第一に考えてください」

 「アイさんも変装していますし大丈夫だと思いますよ。もちろん僕から危険に近づくこともありませんし」

 

 やはり不安なのかな。

 アイドルが身元を隠して妊娠出産だからな。もし自分がその立場なら胃が亡くなりそう。

 それはそれとしてその立場変わってほしい。

 

 ファンとして毎日推しに会える日々は大変素晴らしいが、僕の情緒はジェットコースターだ。さりなちゃん助けてくれ。君の最推しだぞ。

 さりなちゃんも12歳で結婚してって言ってくる子だったな……

 脳が、脳が破壊される。

 

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