「そろそろだな」
「うん。元気な子を産むよ」
「頼む」
アイの手をぎゅっと握る。
もうすぐ子供が生まれる。子供がいたことがないので少し不思議な気分だ。
「子供たちが生まれたら当分相談できないし最後の確認だな」
「そだね」
双子として産まれる時点で介入はほぼ確定。
ただこれはここの神ではなく、オレを転生させた神だろう。
さりなちゃんの方はおそらくここの神であってるはず。
明らかに推しの子で出ている神よりも能力が高く、接触こそないが干渉力も強い。
「前言ってた通り、女の子はほぼ確定。男の子はもうどうなるのかわからない。先生がどうなるか次第だ。注意喚起だけはしたけど、そもそもアイのことは隠せているはずだから、先生がどうかなる原因そのものがないはずなんだ」
「あ、前言ってたテルくんのとこと同じとこから来た子になるとか」
ああ、オレと同じように転生してくる可能性もあるのか。
でも、アイがアイドルになってからそういう接触ってなかったみたいなんだよな。
この状況で追加の転生者ってあるのか?
愉快犯的な神ならあるだろうが……
「流石にそんなとりあえず入れてみました的なことはしないと思いたいな」
「ならやっぱりセンセ? 他に縁のある人いたっけ?」
まだオレを転生させた神の在り方が分からない。
わざわざオレを選んでこの立ち位置に転生させたなら、もしかしたら悪意がない可能性がある。
オレだって文句はあるが、今更なかったことにすると言われれば絶対拒否するし、現状オレもアイも救われてはいる。
ハッピーエンドにでもしたいだけなのか?
少なくとも命の危機に繋がるような問題は起きていない。
「いないはずだ。オレたちにとっても女の子にとっても先生しかいない」
正規ルートがそうだったからという理由でゴロー先生を殺すような神だったら正直先の展望に不安しかない。
そこまで干渉できるならもうこっちに打つ手がないからだ。
先生が特に理由もなく急死した場合、下手するとそれがアイにも起きる可能性がある。
アイが二十歳の誕生日とかドーム当日にそうなってしまう可能性なんて考えたくもないぞ。オレは。
こんな推測に推測を重ねたようなことはアイに伝える意味がない。
もし起こってしまったならその時にどうにか対策を考えよう。
「確認できるようなこともなかったな。アイも子供たちも無事であれば十分だ」
「そだね。何事もなくみんなで仲良く帰りたい」
アイが握っているオレの手に少し力が伝わる。
「ああ、きっと大丈夫だ」
アイの手を強めに握り返した。
アイが無事に双子を産んだ。
「これで退院だね。もし困ったことがあればいつでも連絡してくれ。二人ともまだ若いんだ。僕の手助けが必要な時は遠慮なくね。なんならただの話し相手でも良い」
「ありがとうございます。ゴロー先生」
「ありがとね。センセ」
そう言うゴロー先生にルビーがへばりついている。
これでお別れになることを理解しているのだろう。
ルビーは完全にさりなちゃんだよな。間違いない。
結局、ゴロー先生に何かが起こるようなことはなく、無事にアイの出産を取り仕切ってくれた。
母子ともに健康に産まれたことに安堵し、ゴロー先生には何度も感謝を伝えてしまった。
今も頼れる相手が少ないオレたちの助けになろうとしてくれている。
ゴロー先生には感謝してもしきれない。尊敬の念が湧き上がってくる。
無事であったことは嬉しいが、オレたちの子供ではなくなったことに対して少し残念に思っている自分もいる。
そんなことになってしまっていたほうが問題なので、意味のない話だ。
「ルビーはセンセが大好きだよねー」
「オレにはあまりしてくれないからな……」
「なんでこんなに懐かれているのか僕にもちょっと」
言えないけど理由は明白なんだ。
ルビーのためにもゴロー先生には健康的に長生きしてもらいたい。
でも、あの仲の良い看護婦さんといつの間にかゴールしてそう。
「アクアはちょっとおとなしめかなー?」
「どっちが抱いてもリラックスしてる感じだよな。でもアイに抱かれてる時が一番うれしそうだ」
この子もしかして普通の子なんだろうか?
特に転生とかなく?
今のとこあまりそれっぽい挙動はしてないんだよな。
「先生には世話になったな」
壱護社長もちょくちょくこちらに来ていてゴロー先生と親交があるため少し気やすい感じだ。
アイが退院なので壱護社長とミヤコさんもこの場に来ている。
みんなで一緒に帰るわけにもいかないので、オレとミヤコさん、アクアとルビーで先に帰る予定になっている。アイと壱護社長は時間をずらす予定だ。
気を付けておいて損はないからな。
「じゃ、オレたちは先に帰るから、アイまた後で、壱護社長よろしくお願いします。ゴロー先生お世話になりました」
「ああ、ヒカルくんも元気でね。あまり無理をしないように」
「おう気をつけて帰れよ」
「あとでねー。私もすぐ帰るからアクアとルビーも少しお家で待っててね」
ゴロー先生は割と気安く接してくれるようになった。まだオレが子供だからだろうか。
「じゃ、ミヤコさん行きましょう。よろしくお願いします」
「あの、ルビーちゃんが剥がれないんだけど……」
「びえええええええええ」
ご面倒おかけします。ミヤコさん。
テル「???」
アイ「???」
アクア「???」
ルビー「せんせ!」