キミガマリア   作:れいんいる

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あまり間を空けたくなかったので本日2話目です。
まだの方は先に前話を。

そういえば前前話、アイが初っ端から堂々とお父さん呼びしてるのを誰も突っ込んでくれませんでした。哀しい。
まあ、ゴロー先生もごまかされていたからナイスセーブだったということでしょう。







A006星野愛久愛海

 目覚めれば天国に居た。

 

 推しであり、患者であったはずの星野アイの息子として生まれ変わってしまっていたのだ。

 すわ死んだのかと思えば、普通に俺自身は生きているのが確認できてしまった。

 もうどういうことなのかわからない。スワンプマンの一種だろうか……

 

 星野愛久愛海。明らかにおかしい名前なのになぜか愛着を覚える名前。

 俺が担当していた時にはいなかったはずの今の俺の父親。

 何もかもがおかしくて、何がおかしいのかが分からない状況が続いている。

 

 しかし、そんなことは割とどうでもよくなってきている。

 

 推しの! アイドルが! 思い切り甘やかしてくれる! この環境が! 疲れた社会人の心に思い切り沁みる……やはりここは天国では?

 しかし、俺はこんなにも心労を抱えていただろうか?

 アイの担当を始めてからはある意味心身ともに充実していたと思うのだが……

 

 まあ、今はただこの赤ちゃんライフを堪能したい。

 

 至福すぎて前世とか謎とか違和感とかもうどうでもいい。

 何がどうなってこうなったのかはわからないが、生まれ変わらせてくれてありがとう。やはり推しのいる生活は素晴らしい。

 アイに抱かれながら幸福に包まれていると子供の泣き声がした。

 

 「はんぎゃーっ! はんぎゃーっ!」

 

 俺は取り上げた記憶はないのだが、俺の双子の妹、星野瑠美衣。

 

 前世から関わりのある社長さん。

 と、その婦人斉藤ミヤコさん。

 

 気になるのは今生の父親月野ヒカルである。アイと同い年だから歳は16。

 アイは基本彼をお父さんと呼ぶ。パパとも言っている。

 年齢的に結婚はしていないが、子供の前で夫婦がお父さん、お母さん呼びするのはよくある話だ。

 たまにテルくんとも呼んでいる。

 名前のどこにテルくん要素があるのか。

 

 父親と認識するべきなんだろう。

 息子である僕の面倒もよく見てくれるし、妹も同様だ。

 夜に起こされても機嫌の悪そうな雰囲気を微塵も出さず対応してくれる。

 ちょくちょく抱き上げて相手もしてくれる。

 だが、今は嫉妬の方が強く出る。息子よりもその立場の方が良かったと思ってしまう。

 アイと仲が良すぎるんだよなぁ。家の中だといつもイチャイチャしてる。父と母の関係が良好なのは良いことなんだけど……

 脳が、脳が破壊される。

 推しが男とイチャイチャしているのを見るのは辛い。

 

 脳が破壊されている間に授乳されてしまったので、以降、普通に授乳することになった。

 守っていた尊厳も破壊され、ルビーの冷たい視線を浴びることになったが、お前は人のこと言えねえからな。

 もう前世のことは忘れてこの家の子として新しい人生を歩むべきなんだろう。

 よく考えれば息子が父親に嫉妬するというのも子供のころには良くある話か。

 

 大人であった記憶はあっても今が赤子であることには違いないんだ。

 そもそも前世も生きてるしな。

 前世ではいなかった両親がいるんだ。

 ルビーを反面教師として適度に甘えさせてもらおう。

 

 お父さんとの関係も少しすれば納得できるようになるだろう。

 嫉妬するにはあまりにできた父親だ。父親であったことのない俺よりずっと大人に見える。

 

 病院からここに移り、これまでずっと学校に行っている様子や仕事をしている様子はないから専業主夫なんだろうか。

 それとも内緒の子供ができたから休みを取ったのか辞めたのか。

 家庭環境に謎がありすぎて色々聞きたいことが多すぎるが、まだ喋るわけにもいかない。

 できれば普通の子供が生まれてきたと思っていてほしいんだ。

 

 こんなこと話すわけにはいかない。

 生まれた子供に別の人間の記憶がありますよ、なんて。

 でもこれは……

 そう不可抗力だ。超常現象には勝てない。僕は僕でこの幸せな家庭の中で新しい人生を楽しませてもらうことにする。

 

 ルビーが起きてきた。

 赤子にあるまじき大騒ぎをしながら。

 ちら、とお父さんの方を見る。

 育児疲れだろうか。起きた様子はなく、ソファーでぐっすり寝ている。

 ほっと息を吐く。

 

 「お前、ばれたらまずいんだから周り見てから喋れよな」

 「あ」

 

 ルビーが周りを見渡す。

 お父さんが寝ているのが目に入ったようだ。

 俺と同じようにほっと息を吐く。

 

 「ごめん。次から気を付ける。それはそれとしてNステ!」

 

 お父さんが寝入っているのに安心したのか、まくしたてるように話し出す。

 

 星野瑠美衣。俺と同じどこかの誰かの生まれ変わり。

 俺と同じアイ最推しのドルオタだ。

 本当に、アイには普通の子供を産ませてあげたかった。

 こんな変な双子じゃなく。

 

 ああ、でも雨宮吾郎が生きているというのなら、僕はただの星野愛久愛海だ。

 少し家庭環境がやばいだけの幸せな家族の一員として生きても良いんじゃないだろうか。

 




俺と僕が混在してるのは原作準拠です。


二人が知ったら顔が真っ青になります。

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