キミガマリア   作:れいんいる

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A009私が犯人です

 子育ても落ち着いてきた。というよりも慣れたといった方が良いのか。

 二人とも手のかからない子であるし、ミヤコさんも手伝ってくれる。何よりただの赤ん坊のように常に目を光らせないと危険というわけではないのが大きいのかもしれない。

 

 アクアも生まれ変わりであることが折々で確認でき、とても頭の良い子であるとわかった。

 理知的に感じることもあれば、子供っぽい面をのぞかせることもある。

 

 最近はアクアもルビーもいろいろ家のことに興味を示すようになってきたので、オレ自身の話やアイのこと、壱護社長やミヤコさんのことを話したりしている。

 二人とも自分たちがどういう境遇なのかが気になっているんじゃないかと思ったからだ。

 もちろん二人は、その話を二人が理解できているとわかって話しているわけではないと思っているだろう。

 

 最近はこのくらいならやっても大丈夫かなというラインを確かめるように二人はいろいろ行動している。

 でもアクア、オレの書いた本を取り出してきて読むのは赤ん坊にあるまじき行為だぞ。あと身内に読まれるのは少し恥ずかしい。

 何でアイは気付かなかったんだろうと思うが、考えたら今だってアイドル活動のために費やす時間が多く、あまり家族との時間は多く取れてないなと思い直した。

 一緒にいる時間が少ないと、どうしても物理的な接触のみを優先してしまいがちだからなぁ。

 オレなんて四六時中いっしょにいるしな。常にかまってあげられているわけではないが、ずっと同じ場所にいるのは大きい。

 アイももう少し余裕が取れるといいのだけど、そういう業界だしな。

 

 ミヤコさんに虚言を弄さなかったとしても、そのうちばれてしまっていそうな詰めの甘さがあるのは赤ん坊だからだろうか。いや、ミヤコさん育児ノイローゼ気味だったから気付かないか。

 でもこっちのミヤコさんはめちゃくちゃ生き生きしてるんだよな。

 我が世の春が来たって感じで、一緒にいるだけで皆が明るくなるほど人生を謳歌してる感じだ。

 二人の世話もいつも楽しそうにしているし、とても助かっている。

 親切だし、話してて楽しいし、壱護さんも良い人お嫁さんにもらったよな。

 よく考えたら、ミヤコさん推しの子でも最初の暴走以降は一貫してぐう聖だったし、余裕があるならこんな感じなのかもしれない。

 

 「ん? どうした?」

 

 とりとめもないことを考えながら、ノートパソコンにパチパチと打ち込んでいるとアクアとルビーが覗き込んできていた。

 少し距離を取られていた感じのあったルビーだが、最近はオレにも甘えてくれるようになってきた。

 アイがいるとアイの方に行きたがるが、オレの膝の上に座ってじっとしていることも多い。

 

 「お母さんが歌ってるとこ一緒に見ようか。ミヤコさんも少し休憩しませんか?」

 「あ、はーい」

 

 少し集中しすぎだったかなと思いながら、お茶の準備をする。

 そのままアクアとルビーを抱きかかえて一緒に録画を見ることにする。

 

 アクアとルビーは何度同じものを見ても夢中で見ている。

 もう少し隠すことを覚えるんだと思うが、赤ん坊だとその辺にまで注意が回らないのかもしれない。

 オレも昔は外から見ればおかしいところがたくさんあったのかもなぁ。取り繕えてるつもりだったんだが。

 

 そういえば、このくらいの時期か……やること自体に意味があるとも思えないし、そういう意味ではやめておいた方が良いのは確実なんだが。

 でも子供たちのことを考えるとな。子供たちには楽しい思い出もいっぱい作ってほしいし。

 オレは自分の意志で籠ってるけど、子供たちにまでそれを押し付け過ぎたくはないなぁ……

 

 「あの、ミヤコさん」

 「はい、なんですか?」

 「この子たち一度アイのライブとか見に行ったりできないでしょうか?」

 「え?」

 

 思いもよらぬことを言われたと、ミヤコさんが固まってしまった。

 

 「いえ、危険なのはわかるんです。わかるんですけど、ほら、この子たち凄く頭いいでしょう?」

 「ええ。ほんと……凄く、頭いいですよね……」

 

 目をキラキラさせながらミヤコさんの方を見ている二人に目線を向け、ミヤコさんは肯定する。

 わかります。ここまであからさまだと流石におかしくないって思いますよね。

 だから君たちはもう少し隠すことを覚えるんだ。そんなこの歳で言ってることがすべてわかってます的な態度を表に出すんじゃあないんだ。

 オレまで不安でやっぱりなかったことにした方が良いんじゃないかって思ってしまう。

 最近あまり隠そうという気がなくなってきているのを感じるぞ。皆が起きているときに喋ったりまではしてないが……

 

 「多分今のことも後になって覚えていることが多いと思うんですよね。だから一度くらいライブを見に行かせてあげたいな、と」

 

 だからそこ。頭をコクコクと上下させるんじゃない。

 

 「う、うーん」

 「もちろんオレは行けないんで全部ミヤコさんの負担になってしまうのは申し訳なく思うのですが……」

 

 これは双子が聞いてないところで打診したほうが良かったかな。でもそんなタイミングなんてほとんどないんだよな。いつも一緒にいるし。

 

 「わ、わかりました。でも内緒ですよ。本当にばれたらまずいんですからね」

 「すいません。ミヤコさん。ありがとうございます」

 

 うーん、ミヤコさんがぐう聖すぎる。

 双子がミヤコさんのところにハイハイで行き、抱き付いた。

 全く隠す気がなくなっている……

 

 「ミヤコさんも何かあったら言ってくださいね。外には出れないんでできることは限られてるんですけど」

 

 こんな頼み事する方が悪いんだけど、ミヤコさんが心配になってきた。

 

 

 

 

 

 双子は見事にミニライブでオタ芸を打ち、バズって帰ってきた。

 行けばやる可能性が高いとは思っていた。いたがしかし……

 

 「はい。すいません。主犯です」

 「ごめんなさい。実行犯です」

 

 オレとミヤコさんは壱護社長に叱られた。壱護社長に謝りながら頼みごとをすることはあっても、叱られたのは初めてかもしれない。叱られて当然のことをしてしまった。甘んじて受けねば。

 無駄に危険にさらしたとも言える。迂闊な行動だ。戒めねば。しかしなぁ、父親としての天秤がそっちに傾いてしまったんだ。

 地雷を踏むに等しいとわかっていながら、行動してしまったのは初めてかもしれない。オレも少し変わったのか?

 これは成長なのかどうなのか。

 ミヤコさんにも悪いことをしてしまった。今度ご機嫌伺いしとこう。

 

 

 

 アクアとルビーはまずいことをしたという自覚のある顔で固まっていたが、アイは終始ご機嫌だった。

 

 

 

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