明日にしようかと思ったのですが、構成が難航していたA012がなんとかなったので更新です。
「テルくんかっこいい……」
「ですよね! ですよね! いつもの飾らない格好もいいですけど、たまにはこういうのも見たいですよね!」
「お前ら……」
家族とミヤコさん、壱護社長で家に集まって何をしてるのかと言えば、先日の頼みごとの報酬代わりに着せ替えをさせられているのだ。
オレはあまり服にこだわりがないので、スマートな感じで、着心地が良く、清潔感があれば、あとはどうでも良いと言う判断基準をしている。そもそも外に出ないのだ。
アイも大概似たような感じだから気にしたことがなかったのだが、どうもミヤコさん的にはアウト寄りだったようだ。
うん。ミヤコさんここに居るときもいつもびしっと決めてるものな。そう思われても仕方がない。
髪もいつもは寝癖を直す程度で何もつけていないのだが、今日はゆるくオールバックにされている。
顔もいろいろ処理されてしまった。
着ているのはカジュアルスーツになるんだろうか。
ミヤコさんこういうのが良いのか。いや、いつもが部屋着だから少しおしゃれな外着くらいの感覚か?
それにしてもミヤコさんこんな趣味があったのか。いや、個人でこんなことを頼める相手とか普通はいないから趣味とは違うか。
今は基本家に詰めてくれているから、モデル仕事とかの見学代わりとか。
そう言えばミヤコさんホスト通いとかが趣味だったんじゃなかったかなと思っていたのだが、どうもそういうのに行ってる感じもない。
今回のはその辺の欲求があふれかけてたところに、ちょうどよく頼める相手ができたからってことかな。
美少年に囲まれて仕事したいんだっけ?
まあ、顔はぎりぎりそういっていいレベルなのか?
清潔感とか、だらしなさを感じないようにとかそういうのは気にしてはいるが、そもそも顔が覚えられないからあまり美醜にそこまで意識がいかないんだよな。
アイと一緒にいるとクラスとか学校レベルでそこそこ見れるくらいだと五十歩百歩な感じもするし。
ミヤコさんに頼まれてポーズをとる。
表情まで指定されるが、オレはアイみたくミリ単位での表情の調律とかはできないので、せいぜいポーズにあっていると思う表情をリクエストに合わせて作るくらいだ。
「きゃーーーー! 良い! これは勝てますよ!」
ミヤコさんは大はしゃぎだ。いったい何に勝つつもりなのか……
アイは少しぽーっとしている。かわいい。
これは好評だと思っていいだろう。オレだってアイが着飾ってるの見たら嬉しくなるし、たまにはファッションに気を使ってもいいかもしれない。
しかしこの服……
「あの、ミヤコさんこれ結構お高いんじゃ?」
普段着てるのとあまりに肌触りが違う……
「私が、趣味で、自分のお金で、買ってきたものなので、気にせず貰ってくださいね? そもそもヒカルくん外に出ないですし、成長期だからすぐ使えなくなりそうですし、普段使いにでもしてください」
壱護社長を見ると、渋い顔で貰っとけとでもいうかのように手を軽くしっしっと振っていた。
でもこれ逆にこっちが貰ってるから座りが悪いんだけど。またミヤコさんには別の形でお礼しないと……
「ありがとうございます。ビデオ通話で顔見せしないといけないときにでも使いますね」
「写真撮っとこ」
アイとミヤコさんが写真を撮り始める。
アクアとルビーはうわーと言った感じでこちらを見ている。
その後ツーショットで撮ったり、家族皆で撮ったりした。
素人演技だが演技することには拒否感がないので、言われた通りの構図、表情ですべてこなした。
途中でアイも着飾った服に着替えてきたので、完全に撮影会みたいになってしまった。
「テルくん。テルくん。こっち座って」
アイに促されるまま壁際に移動されたソファーに座る。
アイはそのままオレに覆いかぶさるおように両手を広げ壁につき、じっとオレの瞳を見つめた。
「これ、覚えてる?」
「? ああ、カラオケの」
「良かった。覚えててくれた。嬉しい」
「懐かしいな」
ドンされたわけではないが、壁ドンだ。両手ドン。
「再現した写真撮ってもらいたいんだけど、いいかな?」
「ちょっと待って、思い出す」
「ミヤコさーん。写真お願い。いろんな角度から撮ってね」
「はーい」
「よし、いつでも行ける」
「じゃ、行くね」
ああ、これは久しぶりの感覚だ。
アイから発される雰囲気は、まるでアイから立ち上る黒いオーラがオレに侵食しに来ているように感じさせる。もし見えるとしたならアイの瞳に灯る星は燦燦と黒く輝いてることだろう。
最近のアイはそういう面を表に出すことがなくなっていたため随分と久しぶりに感じる。
別にこういう側面がなくなったわけではない。そもそもアイの本質はこちら側だ。しかし、満ち足りてるときに表に出るような物でもないからな。
オレも同様にアイを見つめ返す。
こう、この喰いあって刺しあうようなこの感覚は今だとちょっと違うように感じるな。
あの時はそう感じなかった。今はアイと絡み合っているような気がして人に見られるのは少し恥ずかしい。顔には出さないが。
スッと圧力が抜けた。
オレも体に入っていた力を抜く。
アイがぼふっと抱き付いてきた。
「ふふふふふ」
ご満悦のようだ。
「ミヤコさん。撮れました?」
ミヤコさんは言われた通り写真を撮ってくれていたけど、少し引き気味だ。
「ええ、はい。撮りましたけど……今の何だったんです?」
オレがミヤコさんの問いに答える前にアイが言った。
「私がテルくんしかいないと思った時の再現シーンだよ。思い出のシーンだけどあの時は二人だったから写真なんてないし」
「……ごちそうさま。ちなみに何歳だったの?」
「12だよ」
「はやっ。え? 人生決めるの早くない?」
「16で子供産むアイドルなんだからそんなものだよ」
「そうだけど! 凄い説得力ね! それ!」
ああ、あの時からだったのか。うん。テンション高かったもんな。
あとアイ。それは自分で言ったら駄目なやつ。
アクアとルビーはアイの演技に飲まれたのか、二人で抱き付いてこちらを見ていた。
「ごめんね。怖がらせちゃったね」
二人を抱きかかえ、話しかける。
「お母さん普段は明るいけど、ああいう面もあるんだよ。今のは演技だったけど、もしお母さんがあんな感じの時は一緒にいてあげてね」
オレの服をつかんだアクアとルビーの指に力が入る。
二人はじっとオレの顔を見てこくりと頷いてくれた。
優しい子たちだ。
このままいい子に育ってくれると嬉しいな。
嬉しいんだけど、意思疎通ができること全く隠さなくなったなぁ。
「怖かったのはお父さんもだよ……」
「ゾクゾクした」