キミガマリア   作:れいんいる

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プロットなんて初期に破綻してポイしていたのですが、また元の想定から外れてしまっていることに書いてて気付きました。
本編あとがきで書いたのと現状に変化が起きてしまったことをここに報告しときます。
うん。予想とシミュレート結果は一致しないもんだよね。それができるなら作者のプロットはいつも死なない。


A011普通の日

 アクアとルビーがバズって以降、どうもアイの仕事が増えてきているようだ。

 芸能界と言う場所は才能や力量以上に、流れを得られるかが重要なのかもしれない。

 今回の件はアイがアイドル業界と言う狭い界隈から一般に知られるきっかけになったのだろう。

 あまりよく覚えてなかったが、もしかしたらもともとそういう流れだったのか?

 まあ、アイなら遅かれ早かれだったと思うが。

 

 「アクアはパパの本好きだよねー。ママ漫画しか読まないから、パパの本読んだことないんだよね。長文苦手」

 「おもしろいよ。お母さんも読んだらいいのに」

 「うん。そのうち読もうかな」

 

 アイがアクアを膝に乗せ、アクアはアイのお腹に寄りかかってオレの書いた小説を読んでいる。本を支えているのはアイだ。

 アクアは誕生日を迎えたばかりなのでまだ生後一年ほど。もう普通に会話が成立している。

 赤ちゃんが話し始める。歩き始める。ネットで調べたら出てくるその最短を基準にしたであろうそれは、可能になってから数日で普通に話し、普通に歩けるようになっていた。

 この一応段階は踏んでるから感よ。

 最近、それはオレやアイ、ミヤコさんと壱護さんへの信頼からくる甘えなのではないかと考えるようになった。

 受け入れてくれると感じたから遠慮なく出しているような気がする。

 

 我が身を振り返ってわかることもある。

 オレも小学生になったころには親に資産運用を勧めてたわ。

 何か家の助けになれることはないかと思って始めたことだったが、これは親への信頼感がないと手は出せなかった。

 

 今もそれは続けてて、月野の家はその規模の割にかなり裕福で余裕がある。

 うちの親、お金が増えても生活のランクを上げないようにとお願いした子供のころのオレの話をめちゃくちゃ律儀に守っててくれてるんだよな。

 大きな買い物とか旅行とかくらいでしか使ってないみたいだし。

 今のオレたちの儲けだと生活していくのがやっとな部分があるから援助があるのはありがたいのだが、家のためにやっていたことで自分が助けられているのはありがたくも少しもにょってしまう。

 

 「ルビーどうかした?」

 

 オレのお腹に体を預けていたルビーが顔を見上げていた。

 

 「私もパパの本読んだ方が良い?」

 「んー、ルビーが読みたくなったらで良いよ」

 

 体を傾けて、ルビーの耳元に口を持って行き、アイとアクアに聞こえないよう手で覆ってささやく。

 

 「実はパパもね、パパの本を家族に読まれるのは少し恥ずかしいんだよ」

 

 ルビーは驚いた顔でこちらを振り向く。

 

 「内緒ね」

 

 ルビーはこくりと頷くとそのまま対面になって抱き付いてきた。

 

 「ルビーは甘えんぼさんだねー」

 

 アクア、そしてルビーもだが、前は感じられたアイへの特別視が随分となくなっているような気がする。

 アイドルとしてのアイに対しては前のままだが、家の中でのアイへの接し方にかなり変化がある。

 普通の母親に対してのものになっていると表現すれば良いのだろうか。

 アクアはアイに対する遠慮みたいなものがなくなっているし、ルビーは逆にアイに甘えることに恥ずかしさを感じているように見えた。

 近頃のルビーはアイよりもオレに対して甘えてくることの方が多い。

 アクアはその分、アイの方に甘えに行ってる感じかな。アクアのそつのなさが頼もしい。

 

 「アイ、そろそろ時間じゃない?」

 「あ、ほんとだ」

 

 アイがアクアを抱えてこちらに連れてくる。

 

 「アクア、行ってくるね」

 「お母さん、いってらっしゃい」

 

 アイがアクアの頬にキスをする。

 

 「ルビー、ママにいってらっしゃいって」

 

 ルビーを抱え上げてアイに近づけるとアイはルビーを抱きしめた。

 ルビーもアイにぎゅっと抱き付く。

 

 「行ってくるね、ルビー」

 「お、おかあ、さん、いってらっしゃい。気を付けてね」

 「? ありがとねールビー」

 

 アイがルビーの頬にキスをする。

 

 「テルくんも、行ってくるね」

 「うん、気を付けて」

 

 アイが行ってきますのキスをして、荷物をもってぱたぱたと外に出ていった。

 視線を感じでもしたのだろうか。ふと見るとアクアとルビーがこちらをじっと見ていた。

 

 「どうかした?」

 「んーん、なんでもない」

 

 アクアは本当に何でもなさそうに返事をし、ルビーはコクコクと頷いていた。

 

 「おじゃましますねー。あれ? 何ですこの空気? 何かありました?」

 

 壱護社長と一緒にやってきたのであろうミヤコさんが入ってきた。

 

 「アイが仕事行っちゃったからかな?」

 

 あまりよくわかってない頭でそう答えた。

 

 

 

 

 

 「ねえねえ、お兄ちゃん」

 「ん、どうしたルビー」

 

 ルビーが覆いかぶさってきた。

 息をのむ。

 ヘビに睨まれたカエルのようにという表現するべきか。

 

 これは。この前のお母さんの……

 

 「お兄ちゃんどうだった? 似てた?」

 「あ、ああ。ぞわりとした」

 「んーなら成功かな」

 「驚いた。演技、うまいんだな。ルビーは将来女優になりたいのか?」

 

 本当にゾクッとした。あれ、真似できるものなんだ……

 てっきりお父さんとお母さんが特殊なのだとばかり思ってた。

 そもそもああいう漫画みたいなズゴゴゴゴゴって感じの現象が現実で感じられるものとは思ってなかった。てっきり比喩表現かと。

 脳の錯覚だとは思うんだけど、前世ではそういう肌に感じるほどのオーラみたいなものなんて感じたことがなかったんだけど。

 感受性が豊かだと実は感じられるものだったりしたんだろうか。

 いや、誰もが惹かれるというならそもそもアイがやっていたじゃないか。お父さんとお母さんがやっていたのはその一種なのかも。

 

 「将来……そっか。ううん、なれるならお母さんと同じアイドルが良いな。お兄ちゃんは?」

 「僕は……どうだろ。あまり考えたことなかったな……」

 「まだ1歳だもんね。遠い未来の話だね」

 「うん。まだまだ先の話だ」

 

 どうだろ。やっぱり医者かな。外科医を目指してみるのも悪くないのか。

 あまりしっくりこない。

 夢破れた職業ではあるけど、わざわざやりなおす必要があるのかと言われると……あまり心が動かない。

 僕は雨宮吾郎ではあったけれど、今は星野愛久愛海なんだから。

 記憶があるからと言って何も焼き直しの人生を送る必要はないだろう。

 雨宮吾郎の後悔は雨宮吾郎だけのものでいい。

 さりなちゃんも僕みたいに転生してたりするんだろうか……

 ルビーを見る。

 

 「お兄ちゃんもやりたいこと見つかるよ」

 「うん。ありがとう。ルビー」

 

 僕たちみたいな奇跡がさりなちゃんにも訪れていることを願う。

 




お母さんがお父さんとイチャイチャしてても何も感じなくなったな……
ママがパパとイチャイチャしてても何も感じなくなったね……
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