キミガマリア   作:れいんいる

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A014星野瑠美衣

 星野瑠美衣。

 

 そこはかとないキラキラネーム。お兄ちゃんの名前よりはだいぶまともで良かったと思う。

 でもアクアマリンと名付けられたお兄ちゃんもセンスがおかしいのかまったく気にしていない。

 ママ、完璧なんだけど名前のセンスは無いんだよね。パパもたぶん突っ込みは入れても反対はしなさそうだからそのまま通っちゃう。あ、でも私もママに言われたら通しちゃうな。血は争えないというのか……

 

 あの時。

 病院で。

 天童寺さりなは死んだ。

 その現実は変わらない。

 でも奇跡が起きた。

 

 私はアイの娘として生まれ変わった。

 あの時、せんせに言った夢、叶うはずのない夢が叶った。

 

 アイドルのまま16歳で生んだ隠し子だった。

 そしてパパがいた。

 

 ママの子供になれたことが嬉しくて隠し子だということは気にならなかった。

 パパにはあまり関わろうとはしなかった。だって知らない人だったから。この歳でママに子供を産ませるおかしい人だと思った。

 ママに男なんていらない。

 だから私はパパをパパだとは思っていなかった。

 

 でも、一向に懐かない私にもパパはずっと優しかった。

 パパだけじゃない、ママも、お兄ちゃんも、ミヤコさんも、社長もみんな優しかった。

 

 そして、パパとママは家族だった。

 

 あのベビーベッドの中から見たパパとママは私が求めた家族だった。

 それを私はまるでテレビを見るように見ていた。

 まるでさりなに戻ったように。

 あのベッドの上でママを見ていたように。

 私には手に入らないものとしてパパとママを見ていた。

 

 それは決して奇跡なんかじゃない。

 でも私はそれがママの娘に生まれ変わったことに匹敵する奇跡に思えた。

 パパは、私に気が付いた。

 

 「ルビー?」

 

 これが家族なんだ。

 

 お母さんは私の事を愛してくれていた。

 お母さんは私の事を愛していなかった。

 どちらかなんて私にはわからない。

 でも、パパは私を決して見捨てない。そんな確信が拒絶されることなく、心の中に染み入った。

 もし私が同じように病気になったとしてもずっと一緒にいてくれる。

 

 「大丈夫大丈夫」

 

 これが家族なんだ。

 

 私がずっと欲しくて。

 私が決して手に入れられなかった。

 私の本当の理想。

 

 「ここはルビーのおうちだよ。だから全部大丈夫」

 

 ここが私の家だ。

 

 お父さんはパパで、私は星野瑠美衣なんだ。

 

 「お父さんもまだまだルビーのお父さんとしては新米だから。ルビーもお父さんと一緒にゆっくり進んでいこうね」

 

 私たちは家族だ。

 

 私には一緒に歩いてくれる家族がいる。

 

 

 

 私たちは家族だ。

 お兄ちゃんはもともと私と同じ様に生まれ変わりだったから、お兄ちゃんだと自然に思えた。

 パパには少しずつ甘えてみることにした。お父さんへの甘え方なんて知らなかったので恐る恐るだったけど。

 でもお父さんに甘え始めてちょっと経った頃、ママには少し、今までのように接することができなくなってしまった。

 パパをパパだと認識することで、私はママをお母さんだと思っていなかったことに気付いてしまった。

 

 ママのことは世界で一番好きだ。

 でもそれはさりなにとっての一番星だったからだ。

 そして私は星野瑠美衣だ。

 なら、私のお母さんはママだ。

 その事実に、私は気づいてしまった。

 

 「んー? ルビーどうしたの?」

 

 私は急に変わってしまった認識に耐えられず、パパの方に逃げてしまった。

 

 「ふふ、ルビー、パパの方が良かったの?」

 「おっと、初めて勝ったな」

 

 ママは楽しそうに笑っている。

 パパも楽しそうに笑っている。

 お兄ちゃんは不思議そうにこちらを見ている。

 

 あ。

 

 ああ。

 

 あああああああああああああ!

 

 ここだ。ここが私の家だ。

 

 声もなく涙を流し始めた私の側にお兄ちゃんが寄ってきて手を握ってくれた。

 パパは腕に抱き付いたままの私をそのままにじっとしていてくれた。

 

 「どうしたのかな? 大丈夫だよ。ルビー」

 

 ママが近づいてきて声をかけてくれる。

 そのまま私をお兄ちゃんごと抱きしめた。

 

 

 

 「ほら大丈夫。アクア、ルビー、愛してるよ」

 

 

 

 お母さんがいつものように私たちに愛してると言ってくれた。

 私は愛されている。

 ママが私のお母さんだ。

 

 みんなはそのまま声を出して泣き始めた私が寝てしまうまでずっと一緒にいてくれた。

 

 

 

 せんせ。私こんなに幸せでいいのかな……

 

 

 

 自問した私に、喜んでくれるせんせの声が聞こえた気がした。

 

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