キミガマリア   作:れいんいる

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A017解答

 アクアとルビーが前世の記憶があることを打ち明けてくれた。どうもアクアはルビーが伝えるなら僕も言っとくかなという感じだ。

 二人はそもそもあまり隠す気がなかったようだし、もう少ししたら事前の予定通り聞こうとは思っていた。

 打ち明けてくれるのに躊躇しないだけの繋がりをアクアとルビーとの間に作れたことは、オレにとっても、アイにとっても快挙と言っていいだろう。

 打ち明けてくれた目的を思えば、残念な結果に終わってしまったのだけど。

 

 ルビーの話は事前に思っていた通りの話だった。

 逆にアクアの話はオレとアイをひどく動揺させた。

 アイは表面上、特に何も変わったことのない様子で話を聞いていたが、机の下でぎゅっとオレの手を握りしめていた。

 オレも表情を変えないよう保つのがやっとだった気がする。

 

 二人が寝静まってから話を始める。

 

 「アイ」

 「うん」

 

 アイの顔は真っ青だ。オレもだろう。

 二人でソファーに横並びで座り、右手と左手で握り合う。

 

 アイもオレもそれに気づいてもアクアとルビーには気付かせないよう取り繕っていた。

 今はもうその必要もない。

 

 「だいたい見当はついたと思う」

 「ねえ、アクアは……」

 

 アイがオレに問いかける。

 

 「うん。アクアは幸せになれるよ。オレたちのアクアは」

 「だけど……」

 

 わかってる。そうだよな。

 

 「思った以上に悪意がなく、思った以上に人間への理解がなかったなぁ……」

 「テルくんにしたのと同じだったね……」

 「いや、オレはアイに会えたからな……そういう意味でも同じか……」

 「アクアの話したとおりなら間違いないよね……」

 

 溜息を吐きたくなった。

 オレへの扱いを考えれば想像できた話だ。別の世界に干渉できるならそりゃあできるだろう。

 

 「アクアはテルくんの知ってるアクアだったって事だよね」

 「わざわざ別のアクアにする意味がないしな。意図は理解できたんだ。アクアも幸せにしてあげてねってことだろ。もうこれ以上の介入はない。する余地がない。ここまで接触してきてないんだ。接触する気なんて最初からなかったんだろ。それにこっちの世界の神様はオレたちに何も関わってない可能性すらある」

 「そっか、ルビーにもかかわってない可能性があるんだ……私たちにできることって、二人を幸せにすることだけだよね」

 

 既に起こってしまったことだ。

 オレが外から連れてこられたんだ。それならこのくらいできても当然だった。問題は理解ができてもまったく意味がなかったことくらいか。

 状況証拠しかない。誰も教えてくれることはないだろう。だが確信はある。そういうことで間違いない。

 

 「そうだな」

 

 物語によくある話だ。

 記憶を失った男が幸せになる物語。

 ああ、確かに過去を失った男が幸せになるのは美しい物語だろうさ。

 

 だがそれは記憶を失う前の男が幸せになるのとイコールなのか?

 違うだろう。

 記憶を失う前の男は決して幸せになっていない。

 なんとなく幸せになったように見えるだけだ。

 

 アクアの記憶がないということは、念入りに消されたのだろう。

 記憶があると幸せになれないというくらいはわかっていたのかどうか……

 そのまま死なせてやれよと思うのは、オレのエゴか?

 

 アクアが何で死んだかはわからない。

 もしかしたら老衰で死んだのかもしれない。

 でも、もう一度は、違うだろう。

 

 アクアにとってのアイは死んで帰ってくることはなかったし、アクアにとって大事な人たちの記憶はもはや失われ、思い出すことはない。

 確かにそんな記憶を持ったままだと幸せにはなれないだろう。

 しかし、アクアの大事だったものをすべて、アクアの中からなかったことにするのは暴挙が過ぎるだろう!

 

 「アイ、話すべきだと思う?」

 「アクアに?」

 「ああ、やり口を考えるに思い出すことはないだろ。言ったところでアクアにとって負担にしかならない」

 「そだね……決して思い出せない、他に知ってる人もいない過去なんて、言うことに意味があるとは思わないかな」

 「二人に話せるのはオレも生まれ変わりだということくらいだな。あれはオレとアイだけの秘密だ。アクアの、今に影を落としたくない。これから幸せにすることだけを考えよう。今までと一緒だ」

 「神様って、怖いね……うん。このことは私たちでお墓まで持って行こ」

 

 アイが明るく話しかけてくる。

 

 「ありがとアイ」

 

 アイはオレに近づくと、オレの首に抱き付きぎゅっと力を入れる。

 

 「大丈夫。大丈夫だから。みんなで一緒に幸せになろうね」

 「……うん」

 「私はテルくんとずっと一緒。病める時も健やかなる時も、だよ」

 

 アイの背中に腕を伸ばし抱きしめる。

 

 「……アイ、それ以上は泣きそう……勘弁して……」

 「残念。テルくんの泣いてるとこ見れるかと思ったのに」

 

 縋るようにアイを抱きしめ続けた。













デリケートな回を出した直後に言うのは気が引けるのですが、次の話で一年ほど更新を停止しており、実質完結となります。
尻切れでごめんね!
アフターは割とどこで区切っても良い系の二次だったし許して。
次の次で、エンディングもすっ飛ばしてラストとなります。
内容的には唐突に明かされるこのSSの設定ばらし的な感じなので、そういうのが読みたくない方はスルー安定です。
いや、この話し方で、じゃあスルーするわって人見たことないですけど……まあそんな感じです。
二次創作的に自分が作った設定を表に出さないのはどうなのかって感じなので、どういう話になるかはともかく書くつもりはあったんですよね。
とりあえず一年ぶりに書いて楽しかったです。
途中でバーンブレイバーンの二次に浮気しそうになったけど、私は元気です。
20240916
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